糖尿病最新の治療2016-2018
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編集 | : 羽田勝計/門脇孝/荒木栄一 |
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ISBN | : 978-4-524-25833-8 |
発行年月 | : 2016年2月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 342 |
在庫
定価8,800円(本体8,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
最新情報と治療方針を整理し、簡潔にまとめた「最新の治療」シリーズの糖尿病版。巻頭トピックスでは、「腎再生の最前線」「DPP-4阻害薬の大規模臨床試験」「合併症治療への新たなアプローチ:神経障害を中心に」などの注目テーマを取り上げた。各論では、基本的治療だけでなく、各病態、合併症がある場合の治療も具体的に解説し、一冊で糖尿病の最新の治療法が網羅できる。
I 巻頭トピックス
1.糖・エネルギー代謝における臓器間ネットワーク
2.膵/膵島再生の最前線
3.腎再生の最前線
4.肝臓病と糖代謝異常
5.インクレチンの膵外作用
6.DPP-4阻害薬の大規模臨床試験
7.糖尿病性腎症病期分類
8.合併症治療への新たなアプローチ:神経障害を中心に
9.高齢糖尿病患者の血糖コントロール目標
II 糖尿病治療の基本
1.糖尿病の病型分類と診断基準,コントロール目標(総論)
2.1型糖尿病
3.2型糖尿病
4.その他の特定の機序,疾患による糖尿病と糖代謝異常
5.妊娠糖尿病
6.小児・思春期の糖尿病
7.高齢者の糖尿病
8.境界型の管理
9.メタボリックシンドロームへの指導・管理
III 食事療法
1.食事療法の効果と実際,注意点
2.「食品交換表」の活用
3.カーボカウントの活用
4.糖尿病腎症合併時
5.脂質異常症合併時
IV 運動療法
1.運動療法の効果と実際,注意点
2.合併症時の運動療法
V 経口薬療法
A.インスリン分泌促進系
1.DPP-4阻害薬
2.スルホニル尿素薬(SU薬)
3.速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
B.インスリン抵抗性改善系
1.ビグアナイド薬
2.チアゾリジン薬
C.糖吸収・排泄調節系
1.αグルコシダーゼ阻害薬
2.SGLT2阻害薬
D.その他
1.配合薬
VI 注射療法
A.病態に応じた注射療法の基本
1.1型糖尿病
2.2型糖尿病
3.糖尿病妊婦
B.インスリン治療法
1.強化インスリン療法
2.持続皮下インスリン注入療法(CSII)
C.インスリン製剤
1.超速効型・速効型インスリン製剤
2.中間型・持効型溶解インスリン製剤
3.混合型インスリン製剤
D.GLP-1受容体作動薬
1.GLP-1受容体作動薬
VII 糖尿病昏睡
1.糖尿病ケトアシドーシス
2.高浸透圧高血糖症候群
3.低血糖
4.乳酸アシドーシス
VIII 糖尿病腎症
1.腎症前期
2.早期腎症期
3.顕性腎症期
4.腎不全期
5.透析療法期
IX 糖尿病網膜症
1.糖尿病黄斑浮腫
2.単純網膜症
3.増殖前・増殖網膜症
4.網膜症以外の眼合併症
X 糖尿病神経障害
1.感覚運動神経障害
2.単神経障害
3.糖尿病筋萎縮症
4.自律神経障害
5.勃起障害
XI 糖尿病大血管障害
1.脳血管障害
2.冠動脈疾患
XII 糖尿病足病変
1.足潰瘍・足壊疽
2.Charcot関節症
3.下肢動脈狭窄・閉塞
XIII その他の合併症
1.高血圧
2.脂質異常症
3.慢性腎臓病(CKD)
4.感染症
5.歯周病
6.皮膚病変
7.骨病変
8.認知症
9.糖尿病患者の手術
XIV 二次性糖尿病
1.ステロイド糖尿病
2.肝疾患を合併した糖尿病
3.膵疾患による糖尿病
XV 糖尿病療養指導
1.生活指導と自己管理
2.シックデイの対応方法
3.災害時への備え
4.血糖自己測定の指導法
5.CGMの活用と注意点
6.予防的フットケア
7.心理的支援
8.糖尿病療養指導士の役割
9.糖尿病におけるクリニカルパスの活用
巻末付録 糖尿病治療薬一覧
索引
序文
2006年12月20日午後5時59分、国連総会で糖尿病の撲滅が決議された。当時、世界の2億4,600万人が糖尿病であり、20年後には3億8,000万人に達するとの推計に基づいている。その後、”Unite for Diabetes”の標語の下、世界中で糖尿病に関する啓発活動が行われてきた。このような努力にもかかわらず、世界の糖尿病症例数は、2013年にはすでに3億8,000万人を突破し、2040年には6億4,200万人に達すると推計されている。
この国連決議から10年目にあたる本年、「糖尿病最新の治療2016−2018」を刊行することとなった。特に近年、新しい糖尿病治療薬が発売され、糖尿病の治療は新たなステージに入ったと考えられている。DPP−阻害薬は今や日本では処方率第1位の糖尿病治療薬となっており、2014年にはSGLT2阻害薬が相次いで発売された。また、インスリン製剤にも様々な改良が加えられ、2006年と比較すると糖尿病治療法は格段に進歩してきていると考えられる。
また、糖尿病合併症に関しても、網膜症による重度視力障害は減少の傾向にあり、腎症に起因する透析療法導入の割合も軽度ながら減少に転じている。さらに米国では、大血管症の罹患率も減少していると報告されており、糖尿病治療を基本とした合併症治療も進歩してきていると推察される。
しかし、問題点が存在することも事実である。第一に、糖尿病症例数の増加に歯止めがかかっていないこと、そのため合併症の罹患率が低下しても実数が減少したわけではないこと、第二に社会の高齢化に伴い糖尿病症例も高齢化していること、などがあげられる。今、これらの問題点に適切に対応することが、私達に求められている。
本書は、糖尿病の診療に携わるすべての医療関係者を対象に執筆されたものである。ご執筆いただいた方々に深謝申し上げるとともに、本書が、糖尿病および合併症の診療の進歩の一助となれば、編集担当者として存外の喜びである。
2016年1月
編集者一同
近年の糖尿病治療薬の開発は目覚ましく、治療は各症例の合併症やインスリン分泌能を考慮したオーダーメイドとなりつつある。さらに、日本の糖尿病有病者(糖尿病が強く疑われる者)は950万人と推計され、糖尿病を専門としていない医療者も治療に携わることが求められる時代にきている。このような状況にあって、最新の治療とエビデンスが詰まった本書は、まさしく糖尿病診療に携わるすべての人の期待に応えるものである。
本書は初巻から12年を迎え、今回で改訂第5版となるが、執筆・編集にあたり多くの専門家が関わりブラッシュアップされていることが特徴である。内容は「糖尿病治療の基本」から始まり「糖尿病療養指導」までの15章と前版とほぼ同じ構成だが、基礎研究から臨床、さらに糖尿病にまつわるさまざまな合併症について、それぞれに最新の知見が網羅されている。とくに本書のタイトルにあるように、糖尿病の治療について重点が置かれ実践的な内容となっている。
今回の巻頭章に掲げられたトピックスのトップは、山田哲也先生、片桐秀樹先生による「糖・エネルギー代謝における臓器間ネットワーク」である。ここでは、個体レベルでの糖・エネルギー代謝調節機構についての概説や、最近明らかになりつつある液性因子による臓器連関について紹介されている。巻頭トピックスは、「膵/膵島再生の最前線」、「腎再生の最前線」と続き、基礎研究の内容を多く含み、臨床だけでは触れることが少ない項目について学ぶことができる。また、改訂された「糖尿病性腎症病期分類」の項目についても押さえておく必要があるだろう。
糖尿病治療については、SGLT-2阻害薬といった新薬はもちろんのこと、従来の経口血糖降下薬やインスリンについてもわかりやすく記載され、それぞれに具体的な処方例が紹介されていることが良点である。さらに、糖尿病ケトアシドーシスといった急性期治療から、食事・運動療法や合併症予防、療養指導といった慢性期管理まで網羅されており、非専門家にとっても有用な内容となるだろう。また、妊娠糖尿病や透析中の糖尿病管理、二次性糖尿病、CSIIといった専門スタッフに求められる知識についても盛り込まれており、これから糖尿病を学び始めるスタッフが読み進める書として、さらに専門医がこれまでの知識を整理・更新するために読む書としても適している。
本書が日々の糖尿病診療に関わっている多くの方々の力強いパートナーとなり、活用いただけることを願っている。
臨床雑誌内科118巻3号(2016年9月増大号)より転載
評者●朝日生命成人病研究所附属医院糖尿病内科 若林沙矢香