書籍

特発性肺線維症の治療ガイドライン2017

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

監修 : 日本呼吸器学会
ISBN : 978-4-524-25576-4
発行年月 : 2017年2月
判型 : A4変型
ページ数 : 92

在庫なし

定価3,080円(本体2,800円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本呼吸器学会の監修によるエビデンスに基づいたオフィシャルな特発性肺線維症(IPF)の治療ガイドライン。特に臨床現場で問題となる「慢性安定期の治療」、「急性増悪時の治療」、「IPFを含む間質性肺炎(IP)合併肺癌の治療」におけるクリニカルクエスチョン(CQ)を取り上げ、標準的治療指針を示した。新規治療薬を含めた各種治療に関して国内外のエビデンスや、国内の市販後調査データの蓄積を反映。IPF診療に携わる医療者必携の一冊。

序文
背景・目的と使用上の注意
本ガイドラインの作成方法と読み方
特発性肺線維症の治療ガイドライン出版にあたって
略語一覧
第I章 クリニカルクエスチョンと推奨
 ■クリニカルクエスチョンと推奨文一覧
 慢性安定期の治療
  CQ1 IPF患者にステロイド単独療法を行うべきか?
  CQ2 IPF患者にステロイドと免疫抑制薬の併用を行うべきか?
  CQ3 IPF患者にNAC吸入単独療法を行うべきか?
  CQ4 IPF患者にピルフェニドンを投与すべきか?
  CQ5 IPF患者にニンテダニブを投与すべきか?
  CQ6 IPF患者にピルフェニドンとNAC吸入の併用を行うべきか?
  CQ7 IPF患者にピルフェニドンとニンテダニブの併用を行うべきか?
  CQ8 低酸素血症を伴うIPF患者に酸素療法を行うべきか?
  CQ9 IPF患者に呼吸リハビリテーションを行うべきか?
 急性増悪時の治療
  CQ10 IPF急性増悪にパルス療法を含めたステロイド療法を行うべきか?
  CQ11 IPF急性増悪に免疫抑制薬を投与すべきか?
  CQ12 IPF急性増悪に好中球エラスターゼ阻害薬を投与すべきか?
  CQ13 IPF急性増悪にPMX療法を行うべきか?
  CQ14 IPF急性増悪にリコンビナントトロンボモジュリンを投与すべきか?
 IPFを含むIP合併肺癌の治療
  CQ15 IPFを含むIP合併肺癌患者に対する外科治療は推奨されるか?
  CQ16 IPFを含むIP合併肺癌患者に対する術後急性増悪の予防投薬は推奨されるか?
  CQ17 IPFを含むIP合併肺癌患者に対する化学療法は推奨されるか?
第II章 IPFの診療マニュアル
 1 IPF治療の目的と管理
 2 IPF薬物治療の目標・評価法
 3 IPF重症度分類
 4 厚生労働省指定難病概要,診断基準
 5 臨床調査個人票
第III章 患者さん・ご家族および一般診療医のためのクイックリファレンス
第IV章 患者アンケート調査
第V章 パブリックコメント
■今後の課題
■索引

序文

 特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)は、原因不明の特発性間質性肺炎の多くを占める、5年生存率30%以下というきわめて予後不良の疾患で、現在に至るも我が国には確立された有効な治療法をエビデンスに基づき呈示したガイドラインがない。急性増悪や合併する肺癌により死亡する例が多いため、基本的な治療法の確立と共に、このような合併症に対する治療法の確立が喫緊の課題である。そこでエビデンスに基づいた診療を推進し、臨床現場における医療の質の向上を図り、国民への成果の還元を促進することを目的として、ガイドラインを作成することとなった。
 この度、平成26〜28年度厚生労働省びまん性肺疾患に関する調査研究班(研究代表者:本間 栄)と日本呼吸器学会びまん性肺疾患学術部会合同のガイドライン作成委員会を立ち上げ、2015年に改訂されたATS/ERS/JRS/ALATのIPF ガイドラインならびに2016年刊行の『特発性間質性肺炎診断と治療の手引き(改訂第3版)』との整合性を持たせ、かつ我が国の実情に合ったエビデンスに基づく標準的な治療法を呈示する、我が国初のIPFの治療に特化した治療ガイドラインをMinds(2014)とGRADEシステムを参考にして作成した。特に慢性安定期に加え、ATS/ERS/JRS/ALATのIPFガイドラインでは記載のない、予後を大きく左右する急性増悪ならびに肺癌合併症例に対するクリニカルクエスチョンも作成した。
 さらに特筆すべきは、厚生労働省びまん性肺疾患に関する調査研究班の中で設置されたIPF治療のガイドライン作成部会の坂東政司部会長の強力なリーダーシップとガイドライン作成専門家の中山健夫・後藤禎人委員による作成手順の緻密なご指導により、エビデンスの少ない中でIPF治療のガイドラインの作成が進められたことである。このガイドラインを骨子として日本呼吸器学会でパブリックコメントを募り『特発性肺線維症の治療ガイドライン2017』として今回、出版されることになった。
 診断および治療に関する解説書というべき従来の『特発性間質性肺炎診断と治療の手引き』と、日常臨床で最も悩むIPFの治療に特化したエビデンスに基づいた本ガイドラインを使い分けて頂ければ幸いである。また、日進月歩の医療の動向に即して、今後適切に改訂していくことが重要である。
 本ガイドラインが多くの呼吸器科医、臨床医、医療者と患者の日常の臨床の助けになることを祈るとともに作成委員の多大なるご尽力、ならびに迅速な文献検索を担当して頂いた東邦大学医学メディアセンターのスタッフの方々、出版に際しご協力頂いた株式会社南江堂の方々にあらためて深謝する。

2017年1月
平成26〜28年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業
「びまん性肺疾患に関する調査研究」班研究代表者
兼特発性肺線維症の治療ガイドライン作成委員会委員長
本間栄

 本書は、わが国初の科学的根拠(EBM)に基づいたオフィシャルな特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)の治療ガイドラインである。わが国ではこれまで『特発性間質性肺炎診断と治療の手引き』が日本呼吸器学会と厚生労働科学研究特定疾患対策研究事業びまん性肺疾患研究班の合同で刊行されてきた。今回は、特発性間質性肺炎7疾患のなかで、最も予後不良で治療に難渋するIPFに的を絞り、その治療法を提案している。臨床現場で遭遇する3つの重要な課題、すなわち「慢性安定期の治療」、「急性増悪時の治療」、「IPFを含むIP合併肺癌の治療」についてクリニカルクエスチョンの形式で推奨の強さ(強い1、弱い2)とエビデンスの質(高い順にA、B、C、D)を組み合わせて提示している。
 「慢性安定期の治療」については、これまで日常臨床で使用されてきたステロイド、免疫抑制薬(cicrosporin、azathioprine)、N-アセチルシステイン吸入薬、抗線維化薬(pirfenidone、nintedanib)およびこれらの薬剤併用による治療について推奨できるか、または推奨できないかをエビデンスをあげて提案している。たとえば、慢性安定期の治療として抗線維化薬は推奨できるとしている(推奨の強さ2、エビデンスの質B)。一方、ステロイド治療は推奨できない(推奨の強さ1、エビデンスの質D)としている。そのほか、慢性安定期における酸素療法やリハビリテーションについても推奨できるか否かを提案している。なお、抗線維化薬は高額な薬剤であるので、難病医療費申請を行い、さらに軽症例では軽症高額制度を受けることを勧めている。
 「急性増悪時の治療」については、パルス療法を含めたステロイド療法、免疫抑制薬療法、好中球エラスターゼ阻害薬療法、ポリミキシンB固定カラムを用いた血液直接灌流療法、リコンビナントトロンボモジュリン療法について推奨の有無を提案している。このうちパルス療法を含めたステロイド療法(推奨の強さ2、エビデンスの質D)と免疫抑制薬療法(推奨の強さ2、エビデンスの質C)については行うことを提案している。しかし、そのほかの療法については行わないことを提案している。
 「IPFを含むIP合併肺癌の治療」については、外科療法(推奨の強さ2、エビデンスの質C)や化学療法(推奨の強さ2、エビデンスの質D)は行うことを提案している。しかし、術後急性増悪の予防投与(抗線維化薬は除く)は行わないことを推奨している。
 以上述べたように、『特発性肺線維症の治療ガイドライン2017』は臨床現場で遭遇する課題の治療法を具体的に推奨の強さとエビデンスの質に基づいて提示した画期的なガイドラインで、臨床現場で使用しやすい。IPFは進行性・非可逆性疾患で治癒は望めず、進行抑制が現実的な治療のゴールである。予後改善のために優れた抗線維化薬の開発が待たれている。
 本書は呼吸器疾患診療を専門とする医師のみならず、非専門医、医療スタッフ、患者ならびに家族を対象としており、IPFをよりよく理解してもらうための診療マニュアルや患者アンケートなども掲載されている。一読必見の書として推奨したい。

臨床雑誌内科120巻3号(2017年9月増大号)より転載
評者●表参道吉田病院名誉院長 安藤正幸

9784524255764