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結核Up to Date改訂第3版

結核症+非結核性抗酸菌症+肺アスペルギルス症(CD-ROM付)

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

編集 : 四元秀毅/倉島篤行
ISBN : 978-4-524-25355-5
発行年月 : 2010年5月
判型 : B5
ページ数 : 310

在庫なし

定価10,120円(本体9,200円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

多彩な症状・所見を示す結核症について、その基礎から最新知見までを、国立病院機構東京病院の豊富な臨床経験を基に、わかりやすく解説した好評書・最新改訂版。今改訂では、2007年の感染症法の改訂への対応、「結核菌検査指針2007」、「肺非結核性抗酸菌症診断に関する指針2008」なども盛り込み、最新の内容にupdateした。本書の画像を自由に使えるCD-ROM付。

第I章 結核症
 1.結核とは何か、結核病学とは何か
 2.結核は増えているか
 3.大幅に変わった結核関係の法律
  A.結核予防法から感染症法への道のり
  B.結核関連法案の内容
 4.結核の診断はどうするか
  A.どのようなときに結核を疑い、どう診断を進めるか
  B.塗抹・培養検査はどう変わったか
  C.感染検査(ツベルクリン反応、インターフェロンγ遊離測定)とは何か
  D.画像検査
  E.気管支鏡検査
 5.結核の治療はどうするか
  A.外来治療か入院治療か(「入退院基準」)
  B.届け出と必要書類
  C.本人、家族への説明
  D.家族、集団感染への対応(「接触者健診の手引き」より)
 6.治療の基本
  A.標準的な治療
  B.各薬剤の性質と副作用
  C.副作用対策
  D.治療の継続とDOTS
 7.特殊な状態や合併症がある場合の結核の治療
 8.耐性結核菌の場合と再治療はどうするか
 9.最近の結核の外科治療
  A.肺結核症の外科治療
  B.結核性膿胸の外科治療
  C.結核患者の麻酔はどうするか
 10.肺外結核はどう診断し、どう治療するか
  A.肺外結核にはどのようなものがあるか
  B.増えている粟粒結核
  C.結核性胸膜炎、膿胸
  D.あなどれないリンパ節結核
  E.ときには致命的な結核性心膜炎
  F.むずかしい脳・髄膜結核
  G.忘れてはならない骨・関節結核
 11.院内感染、医療従事者への拡がりをどう防ぐか
 12.肺結核後遺症
  A.肺結核後遺症とは
  B.在宅酸素療法・在宅人工呼吸・呼吸リハビリテーション
  C.肺性心とは何か
 13.HIVと結核
 14.結核症学説の発展
 15.分子生物学からみた結核研究の現在
 16.多彩な症例
  A.岡IIB型の胸部X線所見
  B.粟粒結核+ARDS
  C.巨大肺胞に液体貯留を認めた肺結核
  D.結核性胸膜炎治癒期に肺内結核種を形成した例
  E.多発結節性病変を呈した肺結核
  F.肺気腫の結核
  G.胸囲結核
  H.リンパ節病変が食道および気管・気管支に穿破した結核
  I.喉頭結核
  J.無治療で4年間の自然経過を確認できた腸結核
  K.卵管結核、骨盤内結核性仮性胞、結核性腹膜炎を併発した肺結核、結核性胸膜炎
  L.脈絡膜の結核性病変を認めた粟粒結核
  M.TNF-α阻害薬による結核
  N.頸部の巨大な結核性リンパ節膿瘍の自潰により生じた皮膚腺病の一例

第II章 非結核性抗酸菌症
 1.増えている非結核性抗酸菌症
 2.中葉・舌区型MAC症の病理形態
 3.非結核性抗酸菌症の治療
 4.非結核性抗酸菌症の外科治療とその有効性
 5.比較的まれな菌種の非結核性抗酸菌症
 6.HIVと非結核性抗酸菌症

第III章 肺アスペルギルス症
 1.肺アスペルギルス症の発症と進展
 2.腐生性肺アスペルギルス症の病理
 3.非侵襲性肺アスペルギルス症の内科治療
 4.外科治療の適応とその有効性
 5.アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)

付録 読んでおきたい書籍ガイド
索引

最近のインターネット上での選挙運動の解禁が示すように、法律は世の動きに連動し、制定された法律は社会を規定する。社会と法律との間には「唄は世に連れ世は唄に連れ」と似た関係があるが、わが国の結核の歴史を振り返るとき、これもそのよい実例であることを感じる。
 1951年の結核予防法の全面改定は、当時国民病であった結核に対する果敢な挑戦であった。20世紀前半、わが国の結核死亡率は人口10万あたり200台のプラトーで推移したが、この改定後の半世紀に結核罹患率は人口10万あたり数百レベルから20程度へと劇的に低下した。これは法整備が疾病の制御に大きな貢献をした好例で、国民皆保険に先行した結核予防法の改定は、わが国の医療改革の先触れとなったのである。
 このように、わが国の健康増進に貢献した結核予防法も2005年に大きな改定を受け、さらにそのわずか2年後に感染症法に取り込まれることになった。当時、結核を一般感染症と同一範疇におくことについての危惧の念も表明されたが、その後の流れをみるとこの心配は杞憂であったようである。すなわち、わが国で結核はもはや法的に特別視すべき感染症ではなくなったのである。
 では、結核はさほど気にする必要のない疾患になったかというと、それは誤りである。罹患率は欧米先進諸国で人口10万あたり10以下の“低まん延状態”になっているのに対して、わが国はまだ“中まん延状態”にあり、慢性感染症としての結核の危険性は依然として続いているのである。わが国の結核の特徴として、かつての高感染率を反映して高齢者の既感染率が高いために当分の間はこの層からの発病が見込まれる点や、大都市圏などで若年者や東南アジアなど、罹患率の高い地域出身の移民における発病が少なからずみられる点などがあげられる。すなわち、わが国では結核はまだいつでもどこでも遭遇しうる疾患なのである。
 本書は1999年の初版以来、好評を得てきたが、今回、法律改定を受けて第2版から時を経ずして再度の改訂が必要になった。本版では感染症法に盛り込まれた結核関連法律の内容を解説しながらその具体像を示すとともに、この間の結核治療の見直しに基づいてその項を書き改め、さらに外科治療についても大幅に拡充した。また、診断の項ではインターフェロンγ法などを含めて最新の方法を紹介し、分子生物学の進歩に関しても新たな情報を盛り込んだ。一方、非結核性抗酸菌症については国の内外で発表された新たなガイドラインを解説し、アスペルギルス症の治療の項なども書き改めた。コラムでは本文で触れられていない事項などについて興味ある情報を盛り込んだ。新たに加えた画像を収めるCD‐ROMは、教材としてご利用いただけるものと考える。
 ヒトを宿主とする結核菌感染症を制圧するには、発病者の早期発見と確実な治療、および感染の広がりの制御が肝要である。本書が引き続き、多くの方々に受け入れられ臨床や行政の場で役立つことを願っている。
2010年4月
編者

『結核Up to Date』が第3版となった。初版は1999年であるが、2005年の新感染症法の施行を受けて早くも2回目の改訂が行われた。クウォンティフェロンやPCR検査など診断法の進歩と、超多剤耐性結核菌の出現、rifabutinの保険導入、間欠療法の試みなど、治療法に関わる話題も多く、誠に時宜を得た改訂となり、本書のタイトルにふさわしいといえる。
 副題として「結核症+非結核性抗酸菌症+肺アスペルギルス症」とあり、いうまでもなく呼吸器内科の専門書である。肺結核の診療を主とする専門医であっても、本書を開いて確認する機会の多いことは想像に難くない。加えて非結核性抗酸菌症と肺アスペルギルス症は、肺結核の関連疾患として呼吸器内科医の診療機会が多く、また専門的知識や診療のコツを要求される分野だけに、専門医にとってありがたい組み合わせである。この両疾患は近年新薬も導入される一方、治療の限界も明らかにされて、外科療法も導入される機会が少なくないが、その点についても過不足なく触れられている。
 それでは本書は呼吸器専門医のためだけのものかと問われれば、答えは“No”である。なぜなら結核は今でもわが国で最大の感染症であり、少なくなったとはいうもののすべての医療者に診療機会があるためである。その取り扱いは新感染症法に基づいた届け出が必要であり、何より院内感染や医療従事者への感染防止策が不可欠で、本書はこのような問題に対しても適切な手引となりうるものである。したがって、呼吸器内科医のみならず、どの病院や診療所でも本書を一冊備えておけば、ちょっと気になる画像に遭遇したとき、抗酸菌検査でGaffky陽性との報告が届いたとき、保健所への届け出などで必ずや有用である。
 本書にはCD−ROMが付属しており、胸部X線写真、CTをはじめ、病理組織像も数多く収載されている。いうまでもなく、書籍として印刷された画像は、解像度に難点があり、シャーカステンなどでみる写真の質には及ぶべくもない。本書では本文の図に収載されたCD−ROM内の番号が付記されているため、画像が簡単に参照できるようになっている。またこれらの画像の二次利用として、出典が本書であることを明記すれば、著作権者の許諾なしに講演や講義などの学術目的に使用してよいとされており、筆者のような教職に身を置く者にとって大変ありがたい配慮である。
 また本書の特徴の一つとして、「Tea Break」のコラムをあげたい。「喫煙と結核」、「BCG」、「LAMP法」、「間欠療法」などの新しい話題から、「風立ちぬ」における文学との関わり、さらには「結核病棟の苦悩」のような現代日本人のモラルに関する記述なども自由に取り上げられており、医療に関わるものとして共感を覚えながら読むことができる。本書は国立病院機構東京病院の総力をあげて、その臨床経験を基盤に書かれたものであるが、あちらこちらに編集の四元秀毅先生と倉島篤行先生のご配慮が垣間見え、ご両者をよく知る筆者にとっても心に残る一冊となっている。
評者● 金澤實
臨床雑誌内科106巻6号(2010年12月増大号)より転載

本書の初版は1999年に出版されたが、今回の改訂第3版では結核の分子生物学を含む新しい学術的な知見が披瀝されているだけでなく、わが国における結核治療の臨床最前線について実践的な知識が網羅されている。序文にもあるように本改訂版では「感染症法に盛り込まれた結核関連法律の内容を解説しながらその具体像を示す」とともに、本書出版までに行われた「結核治療の見直し」について随所書き改められている。まさに書名のとおり結核臨床のup-to-dateが記されているものである。特に結核関係の法律に関する章においては、2007年4月から結核予防法が新しい感染症法に統合されたことに対応して、実際に結核患者を診断した場合に行うべき患者の法律的手続きや入院治療の適応決定、治療支援、接触者への対応法などが詳述されている。まさに一般病院勤務医師が目の前にいる結核患者を適切に診断・治療する場合にガイドブックとして有用な書である。
 本書の編者は結核治療で伝統のある、東京病院名誉院長の四元秀毅先生と前臨床部長(現複十字病院)の倉島篤行先生であり、また著者の多くは東京病院の現役スタッフおよびOBの先生方である。いずれの共著者も結核に関するEBMの記載にとどまらず、豊富な臨床経験に基づいた理解しやすくかつ興味のある内容を、多数の画像や図表を交えて記されている。
 「多彩な症例」の項では、典型的あるいは特異的、または治療上の問題点を有する症例14例が提示され、各症例における考察が加えられており、本疾患に対する理解をさらに深めることができる。
 近年非結核性抗酸菌症の患者は増加しており、呼吸器外来でしばしば遭遇することがある。本書ではこの非結核性抗酸菌症およびアスペルギルス症についても記述が増やされた。非結核性抗酸菌症の病態、新しい診断基準および治療ガイドラインについて詳述されている。
 本改訂では外科治療の項目も増補された。長年結核治療に従事された東京病院・中島由槻院長が主に外科治療に関して著されているが、多剤耐性肺結核、結核性膿胸や非結核性抗酸菌症、アスペルギルス症に対する手術適応・術式について自験例に基づいた方針が明確に述べられている。特に非結核性抗酸菌症の治療においては、日本結核病学会の指針に示された外科療法の基本的な考え方、すなわち治療法の主体が肺切除術であること、目標は病状のコントロールであり根治的治癒を目指すものではないことを実際の症例を示しつつ解説されているため、特に外科系の読者には参考になるものと思われる。
 本書の随所に散りばめられた「Tea Break」は、外気舎や人工気胸など過去の治療法から現在にいたる結核診療の歴史、途上国の国民や社会的弱者の結核に関連した問題や結核病者の芸術など、結核と人類の長い付き合いの様相を知るうえで別の視点から興味深く読めるものであり、本書をさらに魅力づけるものとしている。
 付録のCD-ROMには、本書内の胸部X線像やCT約200枚がpdf形式で収められている。この画像データによって本書がさらに親しみやすくなっている。また、本画像データを学会発表や講義資料などに活用することが許されている。
 以上のように本書は主に呼吸器疾患の臨床に携わる臨床医にとって、結核症、非結核性抗酸菌症、肺アスペルギルス症に対する理解を深める書として非常に有用であると思われる。
評者● 中島淳
胸部外科63巻13号(2010年12月号)より転載

9784524253555