書籍

異常陰影を見逃さない・的確に表現するための胸部単純X線写真読影トレーニング

監修 : 門田淳一
執筆 : 小宮幸作/岡田文人
ISBN : 978-4-524-24997-8
発行年月 : 2022年3月
判型 : B5
ページ数 : 152

在庫あり

定価3,740円(本体3,400円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

胸部X線読影の初学者や一般内科医を対象に,異常所見を“見逃さず,的確に表現する”ための胸部X線読影・スクリーニングの要点についてやさしく解説.@異常陰影を的確に表現するための基本,A“見逃し”を防ぐための読影手順と要点,B難易度順に読影のトレーニングができる実症例の3部構成で,“異常所見を見逃さないための読影ポイント”や“鑑別に導く考え方”を簡潔に学ぶことができ,明日からの診療に自信がもてる一冊.

T 異常陰影を的確に表現するには?
U“見逃さない”ための胸部単純X線写真の基本的な読み方
V 症例から学ぶ“見逃さない・的確に表現する”胸部単純X線写真読影トレーニング
 case 1 難易度★ 全身倦怠感で来院した50歳代女性
 case 2 難易度★ 関節リウマチで定期通院中の70歳代女性
 case 3 難易度★ 健診異常の精査目的で来院した50歳代男性
 case 4 難易度★ 発熱および呼吸困難で来院した80歳代女性
 case 5 難易度★ 感冒後の長引く咳嗽で来院した50歳代男性
 case 6 難易度★ 甲状腺乳頭癌の術後に定期通院中の50歳代女性
 case 7 難易度★ 難治性の肺炎で紹介になった70歳代男性
 case 8 難易度★ 慢性咳嗽で来院した60歳代男性
 case 9 難易度★ 腎癌術後に定期通院中の60歳代女性
 case 10 難易度★★ 食後に増悪する咳嗽で来院した80歳代女性
 case 11 難易度★★ 体重減少で来院した80歳代女性
 case 12 難易度★★ 腹痛と嘔吐で来院した70歳代男性
 case 13 難易度★★ 左足の疼痛を主訴に来院した70歳代女性
 case 14 難易度★★ 動悸で来院した60歳代男性
 case 15 難易度★★ 血痰で来院した40歳代女性
 case 16 難易度★★ 喘鳴と呼吸困難で来院した40歳代女性
 case 17 難易度★★ 喘息で定期通院中の70歳代女性
 case 18 難易度★★ 発熱後の労作時呼吸困難で来院した60歳代男性
 case 19 難易度★★ 血痰で来院した70歳代男性
 case 20 難易度★★ 喘息の治療中に喘鳴が悪化した40歳代女性
 case 21 難易度★★ 嚥下困難で来院した70歳代男性
 case 22 難易度★★★ 肝硬変で定期通院中の70歳代女性
 case 23 難易度★★★ 肺サルコイドーシスで定期通院中の70歳代男性
 case 24 難易度★★★ 毎年春から夏にかけて呼吸困難があるため来院した50歳代男性
 case 25 難易度★★★ 感冒症状で来院した30歳代女性
 case 26 難易度★★★ 交通事故後の気分不良で来院した70歳代女性
 case 27 難易度★★★ 潜在性肺結核の予防投与後に発熱が続き来院した30歳代女性

監修の序

 『異常陰影を見逃さない・的確に表現するための胸部単純X 線写真読影トレーニング』を刊行するにあたり、その意図と本書の特徴を監修の序として述べたいと思います。
 超高齢社会に突入して10 年以上が経過したわが国では疾病構造や医師の人材育成システムの構築に伴う専門領域の診療科偏在など、医療を取り巻く環境が大きく変化してきました。その中で総合病院では医療の高度化に伴って専門領域に特化した診療とともに医師の専門性が進みましたが、一方では複数の疾患を広く診ることのできる全人的医療の担い手が求められるようになり、総合診療医や家庭医および病院総合医などのニーズが高まってきました。
 このような時代にあっても胸部単純X 線写真は多くの情報が得られる重要な診断のツールとして侵襲が少なく簡単に行える検査の1 つであり、その読影はどの領域の医師にとっても習得していなければならない基本中の基本と考えます。しかし、1 枚の平面写真の中に含まれている情報が膨大であるがゆえに専門以外の医師にとっては読影の難しさがあり、またこれまで発刊されている胸部単純X 線写真を読影する書籍は専門以外の医師にとって詳細すぎる内容のものが多いため、忙しい実臨床の合間に読破し理解することは難しいという側面がありました。また近年では読影の際に専門領域の所見に意識が集中し、他に存在している異常所見を見落とし訴訟にいたるケースも見受けられるようになっています。
 本書はそのような臨床現場の実情から、クリニックなど地域のかかりつけ医や家庭医、総合診療医や病院総合医、および総合病院などに勤務する非専門医が、胸部単純X 線写真を読影する際に異常所見を “ 見逃さず” 専門医に紹介できることを重要視して執筆しました。T章では異常陰影を誰もが想像できるよう的確に表現するためのコツを、U章では異常陰影を見逃さないためのポイントをできる限り平易な言葉で解説しています。V章では日常診療で遭遇し見逃しやすい場面を取り上げて、症例を提示しながら “ 見逃さない・的確に表現する” 読影のトレーニングを実践形式で繰り返し行えるようにしました。
 “ 少なくともこれだけは” という観点で本書をお読みいただき日常診療に欠かせないテキストの1つに加えていただければ幸いです。

大分大学 名誉教授
門田淳一

 本書の編集を務められた長崎大学第二内科での私の先輩である門田淳一 大分大学名誉教授は,大分大学医学部呼吸器内科・感染症内科の教授を勤め上げた,呼吸器感染症・びまん性肺疾患の大家である.研究領域のみならず,一般臨床にも明るく,後進から慕われるお人柄の先生である.呼吸器画像にも造詣が深いことで知られ,2018年には南江堂から『CTパターンから理解する呼吸器疾患:所見×患者情報から導く鑑別と治療』を上梓し,好評のうちに増刷を重ねておられる.今回,その門田先生が門下の小宮幸作先生,大分県立病院放射線科の岡田文人先生をはじめとした大分大学とその関連施設の先生方の協力のもと,日常臨床に直結する胸部単純X線写真を体系的に学ぶ本書をまとめられた.  近年の医学技術の進歩は目覚ましく,CT,MRI等の機器も短時間に精密な所見を得ることができるようになった.一方で,CTが完備された施設に勤務していると,“とりあえずCT”の風潮があることを危惧する.健康診断では依然として胸部単純X線が数多く撮影されており,その簡便性や費用の点,被曝の観点からも,胸部単純X線は画像診断機器が進歩した現在でも第一選択の重要な検査である.すなわち,医学の進歩の著しい現代においてもなお,呼吸器内科医に限らず医師を続ける限り胸部単純X線を学ぶことの必要性は減っておらず,むしろ,見逃しが許されない時代背景を考慮すると,より重要性を増してさえいる.
 しかし,胸部単純X線の読影にはコツがあり,専門医でも読影に自信がもてない先生方もおられるなかで,非専門医の先生方もご多分に漏れず苦手意識をもっておられる方が少なくないものと推察する.多忙のなかにある先生方のためには,簡便に効率よく学習できる1冊に対する時代の要請があるなかで,私たちが過去に学習をしてきた類書は画像が古くなっていたり,専門医を対象としてマニアックになりがちな側面があった.本書では,症例について最初の見開き1ページで撮影に至るまでの経過と胸部単純X線を簡潔に確認することができ,ページをめくるとX線の異常所見の位置が明瞭に示され,答え合わせとして明瞭なCT所見と最終診断の解説が一目でわかるように構成が工夫されている.症例は難易度順に整理され,気軽に学習を開始することが可能である.さらに,「的確に表現する」ことを重要な視点として編集されているため,「何となく違和感がある」「このあたりがおかしい気がする」部分を的確に表現するトレーニングを積むことで,どのような異常があるかを認識する能力の向上につながるものと確信する.
 門田名誉教授ご自身のご経験と関連施設の英知を凝集した本書は,そのエッセンスを気軽に身につけることができる白眉であると保証するものであり,ぜひ,見逃しのない胸部単純X線の読影のために,本書を活用いただくことを切望するものである.

臨床雑誌内科130巻3号(2022年9月号)より転載
評者●長崎大学大学院医歯薬学総合研究科呼吸器内科学分野(第二内科)教授 迎 寛

9784524249978