腹腔鏡下胃切除術公式テキスト
監修 | : 日本内視鏡外科学会教育委員会 |
---|---|
編集 | : 小嶋一幸 |
ISBN | : 978-4-524-24975-6 |
発行年月 | : 2022年3月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 144 |
在庫
定価7,920円(本体7,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評

日本内視鏡外科学会教育委員会による,腹腔鏡下胃切除術における技術認定取得のための公式テキスト.幽門側胃切除,胃全摘,噴門側胃切除におけるリンパ節郭清から再建まで,ビデオ審査における評価ポイントを押さえた「推奨される術式」を豊富な写真で明快に解説.さらに,「陥りやすい悪い例」として改善・克服すべきポイントも強調しており,術者・助手をはじめとする手術チームの共通理解を深められる.円滑に腹腔鏡下手術を完遂する力を身につけるために最適の指南書である.
第Ⅰ章 腹腔鏡下幽門側胃切除
A.胃大弯側リンパ節(No.4sb,4d)郭清
推奨される術式
ポート配置
手術手技
腫瘍の確認
胃大網動静脈の走行確認
大網の切離(No.4d リンパ節郭清)
胃後壁の癒着剥離
大網枝の処理
No.4sbリンパ節郭清
胃大弯線の郭清
陥りやすい悪い例
大網切開
胃壁の把持
左胃大網動脈根部の展開
脾臓と大網の癒着の処理
胃大弯線の郭清
大弯胃枝の処理
B.No.6リンパ節郭清
推奨される術式
ポート配置
手術手技
胃結腸間膜の切離
横行結腸間膜の授動
前上膵十二指腸静脈分岐の確認~右胃大網動静脈間の剥離
右胃大網静脈の処理
膵頭前面の郭清(No.6vリンパ節)
右胃大網動脈の処理
幽門下動脈の処理(No.6iリンパ節)
陥りやすい悪い例
胃結腸間膜の切離
横行結腸間膜の授動
前上膵十二指腸静脈分岐の確認~右胃大網動静脈間の剥離・右胃大網静脈切離
右胃大網動脈の処理~幽門下動脈の処理
C.膵上縁リンパ節(No.7,8a,9)郭清
推奨される術式
ポート配置
手術手技
膵上縁郭清時の術野展開
膵被膜の切開
No.8aリンパ節郭
左胃静脈切離
左胃動脈左側郭清(左No.9リンパ節郭清)
右No.9リンパ節郭清
左胃動脈切離
陥りやすい悪い例
術野展開不良による膵損傷
過度な膵圧排
エネルギーデバイスによる熱損傷
不十分な剥離によるリンパ節損傷
D.胃小弯リンパ節(No.5,1,3)郭清
推奨される術式
ポート配置
手術手技:No.5リンパ節郭清
小網切開
No.5リンパ節郭清
手術手技:No.1,3リンパ節郭清
リンパ節郭清の視野展開
郭清時の剥離層
陥りやすい悪い例
固有肝動脈の確認不良
肝挙上不十分,右胃動脈からの出血
視野展開不良,郭清不十分
誤った剥離層による臓器損傷
E.消化管吻合
推奨される術式
ポート配置
再建の選択
再建の実際と要点
Billroth Ⅰ法
Roux-en Y法
Billroth Ⅱ法
再建における留意点
陥りやすい悪い例
胃空腸側々吻合
逆蠕動型:断端のずれ
逆蠕動型:視野確保不十分
胃脾間膜の巻き込み
挙上空腸壁の穿破
逆蠕動型:挿入口閉鎖時のずれ
胃十二指腸吻合
挿入口閉鎖時のずれ
挿入口の縫合不全
トラブル回避のポイント
第Ⅱ章 腹腔鏡下胃全摘
A.リンパ節郭
推奨される術式
ポート配置
手術手技
胃脾間膜の処理
膵上縁左側のリンパ節郭清
腹部食道周囲の剥離,No.1およびNo.2リンパ節郭清
陥りやすい悪い例
視野不良な状況での胃脾間膜切離
脾動静脈沿い郭清における超音波凝固切開装置先端の視認不足
食道噴門枝処理における左下横隔動脈本幹の切離
食道周囲剥離時の食道外膜損傷
牽引による脾臓被膜損傷
胃に近すぎるラインでの胃脾間膜切離
B.再 建
推奨される術式
自動縫合器による再建
ポート配置
手術手技
胃切除
Overlap法と機能的端々吻合法によるRoux-en Y再建
自動吻合器による再建
ポート配置
手術手技
食道断端へのアンビルヘッド挿入
食道空腸吻合
陥りやすい悪い例
ポート配置と自動縫合器・自動吻合器の挿入
陥りやすい場面と改善策
腹部食道の損傷
自動縫合器・自動吻合器本体と腹部食道の軸が合わない
共通孔の閉鎖が困難
自動吻合器におけるアンビルの挿入
自動吻合器における合体からfire①
経口アンビル使用における食道切離とアンビル誘導
自動吻合器における合体からfire②
第Ⅲ章 腹腔鏡下噴門側胃切除(再建)
推奨される術式
観音開き法再建
ポート配置
手術手技
食道の剥離
フラップの作成
食道後壁とフラップ上端の固定
食道断端の処理
後壁吻合
前壁吻合
フラップでの被覆
ダブルトラクト再建
ポート配置
手術手技
食道空腸吻合
空腸残胃吻合
空腸空腸吻合
陥りやすい悪い例
観音開き法再建における悪い例
食道固定が短い
後壁吻合
前壁吻合
フラップ被覆
ダブルトラクト再建における悪い例
食道空腸吻合
空腸残胃吻合
腸間膜の間隙
序にかえて:本書の使い方
内視鏡外科技術認定合格のためには,小手先のテクニックではなく,内視鏡外科の実力を身につけることが基本であり,本質的なことです.内視鏡外科技術認定は指導者認定であるので,単にできるというレベルだけでは不十分であり,助手やカメラ助手を指導しながら円滑に手術ができているかを評価しています.試験である以上「受験技術」を学ぼうとすることは理解できます.しかし,受験技術は,内視鏡外科の実力という幹にプラスされる枝葉に過ぎません.たとえ審査基準が変わり,あるいは厳しい審査員に自分のビデオが割り振られ枝葉が揺れようとも,幹の部分がしっかりしていれば,何の問題もないはずです.何よりも内視鏡外科の実力という幹を少しずつ太くする努力をすることが,結局はもっとも確実な合格への道であると考えます.
本書は腹腔鏡下胃切除術の真の実力が身につくように,郭清リンパ節部位ごとにビデオ審査における評価のポイントと模範的手技と陥りやすいピットフォール(悪い例)を明確に示してあります.読者はまず,模範的な手技を繰り返し読んでいただき,この手技をシミュレーションしてください(Plan).その際,助手やカメラ助手にも本書を読んでいただき,手技を共有していただくことが重要です.その後に,このチームで手術をしていただきます(Do).施行した手術動画をチームで振り返りながら,悪い例で挙げられたピットフォールに陥っていないかを確認してください(Check).そのうえでチームでどうすれば改善できるかを話し合い,改善点を挙げてください.必要があればベーシックトレーニングを繰り返し行ってください(Action).このように悪い点を改善・修正しながらPDCA サイクルを回していくことで,少しずつではありますがチーム力が向上し,真の実力がついてくると思います.本書を十分に活用していただき,内視鏡外科の実力という幹を太くし,広く社会に貢献していただけることを期待しています.
令和4年3月
獨協医科大学第一外科
小嶋一幸
編集者の小嶋一幸教授は,胃癌に対する腹腔鏡手術のエキスパートとして,多くの臨床試験を主導している第一人者である.最新の胃癌治療ガイドライン委員会外科チームでは,腹腔鏡手術に関して精緻なクリニカルクエスチョン(CQ)・ステートメントのとりまとめ役として活躍している,非常に信頼できる外科医である.本書は,日本内視鏡外科学会教育委員会が監修した「公式テキスト」と銘打たれていることから,現時点で,もっとも推奨できる腹腔鏡下胃切除手術を日本内視鏡外科学会として「公式」に認定した指南書といえる.小嶋一幸教授が序文で述べているように,「内視鏡外科技術認定」を強く意識した内容となってはいるが,本当に大切なものはあくまでも内視鏡外科手術の実力の幹となるべき技術であり,これをしっかりと伝えたいのだという熱い思いが伝わってくる良書となっている.
著者には,宇山一朗,林秀樹,永井英司,櫻本信一,福永哲,佐藤誠二,能城浩和,比企直樹の各先生方が名を連ねており,彼らはまさに腹腔鏡下胃癌手術を胃癌標準手術として発展させてきた第1世代の外科医の方々である.標準的な手術手技の工程が,美しい写真とともに解説されており,分担執筆とは思えないほどに流れるような一体感のある手術書となっている.「注意点・手技のポイント」によって,まずは標準的な手技を簡潔に解説し,その後に「陥りやすい悪い例」として,これも教育的な写真が掲載されている.多くの若手外科医を教育してきた豊富な指導経験に基づいて,ミスをしやすいポイントが過不足なく解説されている.これらは,日本内視鏡外科学会が公開している技術認定の評価ポイントに準拠した解説となっており,非常にわかりやすい.多くの類似図書が発刊されてきたが,わずか130ページほどで手軽に読める本書は,胃癌治療ガイドラインとともに胃外科医にとって必携の良書であると思われる.
外科専攻医としてはじめて胃癌手術に参加する若手外科医,消化器外科専門医試験受験予定の外科医,そして技術認定受験予定の外科医,さらには指導者にも,繰り返し熟読していただくことをおすすめしたい.手術チーム全員が,一つひとつの手技についてしっかりとしたコンセンサスを構築することのできる一押しの教科書が登場した.
[東邦大学消化器外科教授・島田英昭]
臨床雑誌外科2022年7月号より転載
