膝関節外科学
| 編集 | : 津村弘/三浦裕正/松田秀一/岡崎賢 | 
|---|---|
| ISBN | : 978-4-524-24944-2 | 
| 発行年月 | : 2021年8月 | 
| 判型 | : B5 | 
| ページ数 | : 524 | 
在庫
定価19,800円(本体18,000円 + 税)
- 商品説明
 - 主要目次
 - 序文
 - 書評
 

膝関節外科医の新・【座右の書】堂々発刊! 本書は,膝関節診療における必須の知識から診療の真髄まで,本邦のトップランナーが最新知見をもとに解説した,膝関節領域の「知る」「診る」「治す」を全網羅したほかにない書籍です.教科書にありがちな単なる知識の羅列ではなく,本書を読むことで「自ら学び,考える」ことができるようにインストゥラクティブな解説を心がけ,初学者でもゼロからはじめられ,知識の取りこぼしもありません.1,000枚以上に及ぶ精巧な解剖図,各検査画像,手術シェーマを収載した実践書でもあり,ベテラン整形外科医の要求も満たした内容です.
T 総 論 
 1 膝関節疾患の疫学・ロコモティブシンドローム 
  A 若年者における膝関節疾患の疫学(運動器検診を含む) 
  B 高齢者における膝関節疾患の疫学(ロコモを含む) 
 2 膝関節の解剖と機能 
  A 膝関節の解剖 
  B 歩行とバイオメカニクス 
 3 身体所見と各種検査法 
  A 診察法 
  B 徒手検査法 
  C 血液・血清学的検査 
  D 関節液検査(細菌学的検査を含む) 
 4 画像診断 
  A 単純X線検査(ストレス撮影を含む) 
  B 超音波画像診断法 
  C CT(造影を含む) 
  D MRI(造影を含む) 
 5 治療法 
  A 保存療法 
   1)保存療法の基礎 
   2)運動療法 
   3)装具療法 
   4)薬物療法 
  B 手術療法 
   1)膝関節手術の基本 
   2)関節鏡視下手術 
   3)矯正骨切り術 
   4)人工関節置換術 
  C リハビリテーション(術後リハ) 
 6 生体材料 
 7 各種評価法 
 8 レジストリー 
U 各 論 
 1 外傷・障害 
  A 靱帯損傷 
   1)前十字靱帯損傷 
   2)後十字靱帯損傷 
   3)内側支持機構損傷 
   4)後外側支持機構損傷 
   5)複合靱帯損傷 
  B 半月板損傷 
   1)内側半月板損傷 
   2)外側半月板損傷 
  C 軟骨損傷 
  D 骨折 
   1)膝蓋骨骨折 
   2)大腿骨遠位部骨折 
   3)脛骨プラトー骨折 
   4)脛骨顆間隆起骨折 
   5)インプラント周囲骨折 
  E 膝伸展機構損傷 
   1)膝蓋腱損傷 
   2)大腿四頭筋腱損傷 
  F スポーツ障害 
   1)離断性骨軟骨炎 
   2)伸展機構障害 
   3)有痛性分裂膝蓋骨 
   4)腸脛靱帯炎 
   5)膝窩筋腱炎 
  G 膝蓋大腿関節障害 
   1)先天性膝蓋骨脱臼 
   2)膝蓋骨脱臼および膝蓋骨不安定症 
   3)膝蓋大腿関節症(PFOA) 
   4)滑膜ひだ障害 
 2 変性疾患 
  A 変形性膝関節症 
  B 特発性膝骨壊死 
  C 神経障害性関節症(ステロイド関節症を含む) 
  D 骨系統疾患に伴う関節症 
   1)多発性骨端異形成症 
   2)爪膝蓋骨症候群 
 3 炎症 
  A 関節リウマチ 
  B 若年性特発性関節炎 
  C 成人発症Still病 
  D 脊椎関節炎 
   1)総論 
   2)強直性脊椎炎 
   3)乾癬性関節炎 
  E 感染性関節炎 
   1)化膿性関節炎 
   2)結核性骨関節炎 
   3)人工関節後の深部感染 
  F 結晶誘発性関節炎 
   1)痛風 
   2) CPPD結晶沈着症,偽痛風 
 4 先天性および発育障害性疾患 
  A 先天性反張膝と膝関節亜脱臼・脱臼(先天性膝関節過伸展) 
  B Blount病(小児内反膝変形) 
 5 腫瘍および腫瘍類似疾患 
  A 色素性絨毛結節性滑膜炎(びまん型腱滑膜巨細胞腫) 
  B 滑膜血管腫 
  C 滑膜脂肪腫 
  D 滑膜骨軟骨腫症 
  E Baker嚢腫 
 6 その他の疾患 
  A 滑液包炎 
  B 血友病性関節症 
  C 特発性膝関節血症 
  D 膝蓋下脂肪体の障害 
  E 絞扼性神経障害 
序文 
 膝関節に関する知識や治療法は,ここ30年の間に大きく進歩し,今もその勢いは留まるところを知らない.例えば,コンピュータによる画像処理技術の進歩から,膝関節の正常機能や動態に関する知識も増加した.また,軟骨代謝に関する分子生物学的な知識なども深化し,培養軟骨を用いた治療法も開発された.半月板障害の治療法や靱帯再建法,骨切り術の術式や人工膝関節の素材やデザインなども大きく進化した.私たち,膝関節外科を専門とする者は,このような時代に遭遇したことに心からの喜びを感じずにはいられない.洋々たる膝関節外科の未来を夢見ながらも,ふと我に返り,論語の「学びて思わざれば則ち罔(くら)し,思いて学ばざれば則ち殆(あや)うし」という言葉を思い出す瞬間がある.学問を究めるには,他から学び,自ら考えることが重要であるとの意であるが,独りよがりな考えは,時として道を誤ることを戒めたものでもある.やはり相応の敬意を持って先人の発見や意見を学ぶことは必須であり,系統的に学ぶことのできる書籍の必要性を強く感じていた. 
 碩学で高名な小林 晶先生と鳥巣岳彦先生が編集された「ヴォアラ膝〈・〉」という名著があった.本書の出版元である南江堂から1989年に初版が出版され好評であり,1994年には改訂第2版が出版されたが,その後,大きな改訂は行われなかった.今回,私たち4人は,「ヴォアラ膝」の後継となるべき書籍を上梓することを検討した.「不遜な考え」と感じられる先生方も多いかもしれない.私たち4人にとってもその感覚は例外ではなく,かなりの緊張感と責任感を持って本企画をスタートさせた.しかし,膝関節だけに限定した書籍であっても,その内容は数名で分担できる範囲を超えており,各分野の専門家に執筆をお願いし本書が完成した.本書のタイトルは「膝関節外科学」であるが,手術療法に限定した内容ではなく,膝関節全体を学ぶことのできる内容であり,しかも,網羅的な知識の羅列だけではなく,考え方もわかるような「学び,考える」ための本を意識した構成となっている.多くの執筆者の協力により,胸を張って世に送り出せるものとなったと自負している.膝関節の診療に携わる多くの医師に,本書を座右の書として活用していただければ,執筆者一同望外の喜びである. 
2021年6月 
津村  弘 
三浦 裕正 
松田 秀一 
岡崎  賢 
 膝関節外科は外傷による損傷やスポーツ傷害に加えて,変性疾患や炎症性疾患の頻度も高く,整形外科全体を見渡してみてももっとも治療を必要とすることが多い分野である.加えて近年の医学の著しい進歩に伴い,膝関節に関する知識や治療法もまた大きく進歩しており,われわれ整形外科医も専門的知識を常にアップデートしていく必要がある.一方で,膝関節疾患を網羅的かつ系統的に学ぶことができる教科書は決して多くはないのが現状であった.そのような現状をふまえ,津村弘先生,三浦裕正先生,松田秀一先生,岡崎賢先生の4名の先生方による編集により本書が出版された.本書は序文にも述べられているように,1989年に出版,1994年に改訂された名著『ヴォアラ膝』の後継となるべき書籍として出版された.その内容は手術療法に限定したものではなく,膝関節全体を学ぶことができる内容となっている. 
 
 総論では,膝関節疾患の疫学・ロコモティブシンドローム,解剖と機能,身体所見と各種検査法,画像診断,治療法,生体材料,各種評価法,レジストリーについて取り上げている.とりわけ膝関節の解剖と機能は近年もっともその理解と手法が進歩した項目であり,詳細に述べられている.また手術療法においては近年躍進著しい矯正骨切り術の記載に多くのページが割かれており,その歴史や適応,術式の詳細がわかりやすく述べられている. 
 
 各論では,外傷・障害,変性疾患,炎症,先天性および発育障害性疾患,腫瘍および腫瘍類似疾患,その他の疾患の順に項目が設けられている.それぞれの項目において代表的な疾患が取り上げられており,疾患ごとに病態,疫学,臨床症状,画像所見,治療,後療法の順でその詳細が述べられている.取り上げられている疾患も前十字靱帯損傷や半月板損傷,変形性膝関節症といった日常的に診療することの多いcommon diseaseから,先天性疾患や腫瘍性疾患などのまれではあるが知識として必須な疾患まで,非常に多岐にわたっている.膝関節というたった一つ(二つ?)の関節だけで,代表的なものだけでもこれだけ多様な疾患・病態があることに改めて驚かせられるとともに,その詳細をわかりやすく系統立てて執筆された多くの先生方に敬意を表したい. 
 
 本書は膝関節診療における必須の知識から診療の真髄まで,本邦のトップランナーが最新知見をもとに解説した,膝関節領域の「知る」,「診る」,「治す」を全網羅したほかにない書籍である.教科書にありがちな単なる知識の羅列ではなく,本書を読むことで「自ら学び,考える」ことができるようにインストゥラクティブな解説が心がけられており,初学者でもゼロから始められ,知識の取りこぼしなく学べるような構成になっている.また1,000枚以上に及ぶ精巧な解剖図,各検査画像,手術シェーマを収載した実践書でもあり,膝関節外科専門医の要求も満たした内容となっている.膝関節外科医はもとより,整形外科に関わるすべての人にとって新たな座右の書となる,おすすめの一書である. 
 
臨床雑誌整形外科73巻6号(2022年5月号)より転載 
評者●東京医科歯科大学大学院運動器外科学分野教授・古賀英之 

