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困ったウイルス肝炎パーフェクト対応ガイド

  • 新刊

編集 : 竹原徹郎/持田智
ISBN : 978-4-524-24942-8
発行年月 : 2020年12月
判型 : B5
ページ数 : 212

在庫あり

定価6,600円(本体6,000円 + 税)


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  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

肝炎診療にあたる肝臓専門医、消化器科医を対象に、ウイルス肝炎の治療におけるDAA無効例、高齢者や臓器障害などspecial populationへの対応、ウイルス駆除後の肝硬変、発癌、緊急時や重症化などの“困ること・難しく感じること”を取り上げ、その対処法までを解説。各種ガイドラインには掲載されていない、現時点でのエキスパートの対応と知恵を結集し、明日からの診療に即役立つ一冊。

第1章 困ったウイルス肝炎とは
 1.ウイルス制御の観点からみて困ることとその考え方
  1.ウイルス性急性肝不全での問題点
  2.B型慢性肝疾患における問題点
  3.C型慢性肝疾患における問題点
 2.生体側(肝疾患)の観点からみて困ることとその考え方
  1.免疫応答
  2.肝線維化
  3.肝予備能
  4.門脈圧亢進症
  5.肝発癌
  6.生活の質
  7.肝外病変
第2章 ケースで考える困ったB型肝炎の対応
 1.高齢者の場合
  1.高齢者HBVキャリアの特徴
  2.治療における問題点
 2.HIV重複感染の場合
  1.B型肝炎診療におけるHIVスクリーニングの必要性
  2.B型肝炎患者がHIV抗体陽性と判明した場合の対応
  3.HIV合併例におけるB型肝炎診療
 3.他臓器障害・他疾患合併の場合
  1.腎不全合併
  2.自己免疫性肝炎合併
 4.無治療・無症候性および非活動性キャリアの場合
  1.免疫寛容期無症候性キャリアの中で治療介入すべき症例とは?
  2.肝細胞癌を指摘されて紹介になる無治療患者のマネジメントのコツ
  3.非活動性キャリアでHBs抗原高値の患者への治療介入の必要性はあるか
  4.非活動性キャリアであるが,肝硬度が高めな患者のマネジメント
 5.他科での治療が行われている場合
  1.HBVの自然経過
  2.HBV再活性化による肝炎が発症する機序
  3.HBV再活性化による肝炎発症予防のガイドライン
  4.NA投与を開始する場合
  5.既往感染例のモニタリング
  6.免疫抑制・化学療法中に再活性化が確認された場合
  7.HBs抗原陽性キャリア例で短期間のステロイド投与が必要である場合
  8.免疫抑制・化学療法による再活性化予防のために開始したNA投与を終了する場合
 6.薬剤選択で困った場合
  1.B型慢性肝炎の治療戦略はこう考えよう
  2.PEG-IFNを選択する場合
  3.NAを選択する場合
 7.妊婦の場合
  1.妊娠時スクリーニングでHBs抗原陽性であることが判明した場合の初期対応
  2.HBs抗原陽性の母親からの出産に際しての注意
  3.NAを用いた母子感染予防
 8.小児・妊娠希望の場合
  1.小児B型慢性肝炎の治療の現状
 9.予防で困った場合
  1.ワクチンについて
  2.ワクチン無効症例への対応
  3.性感染症としてのHBV感染予防について(HIVとの初発,重複感染症例の予防)
 10.肝移植後の場合
  1.肝移植後にHBV対策が必要な2つの病態
  2.HBs抗原陽性レシピエントに対するHBV対策
  3.HBV既往感染ドナーからの肝移植後のレシピエントに対するHBV対策
 11.外国株(ゲノタイプB,C以外)の急性肝炎の場合
  1.HBVのゲノタイプについて
  2.ゲノタイプAによるB型急性肝炎の特徴
  3.ゲノタイプAによるB型急性肝炎の増加
 12.有害事象が発現した場合
  1.B型慢性肝炎治療期間中の有害事象
 13.核酸アナログ製剤治療中止を希望された場合
  1.NA治療中止の考え方
 14.核酸アナログ製剤耐性・効果不良の場合
  1.NA効果不良例の対策
 15.HBV再活性化した場合
  1.HBV再活性化のリスク
  2.HBV再活性化の臨床的特徴
  3.HBV再活性化の病態とリスク因子
  4.HBV再活性化の対策
 16.重症化した場合
  1.重症化を疑う急性肝炎の治療方針はこう考えよう
  2.急性肝不全非昏睡型(急性肝炎重症型)の治療方針はこう考えよう
  3.急性肝不全昏睡型の治療方針はこう考えよう
第3章 ケースで考える困ったC型肝炎の対応
 1.高齢者の場合
  1.超高齢社会を迎えて,高齢者からみた平均余命
  2.高齢者に対する治療選択
  3.高齢者に対するDAA治療選択-治療導入年齢の上限は設定すべきか?
  4.高齢で肝酵素が正常域の患者はDAA治療すべきか?
  5.認知症合併で理解不良の症例(認知症の有無にかかわらず,治療そのものに理解を得られない症例も含めて)
 2.HBV重複感染・HIV重複感染の場合
  1.HCVとHBV重複感染例の考え方
  2.HBV/HCV重複感染例におけるDAA治療中のHBV再活性化
  3.HCVとHIV重複感染例の考え方
  4.HIV/HCV重複感染におけるDAA治療
 3.他臓器障害・他疾患合併の場合
  1.腎不全・透析例
  2.不整脈
  3.脂質異常症合併
 4.肝硬変に進行した場合
  1.慢性肝炎症例と肝硬変症例でのDAA治療の違い
  2.非代償性肝硬変と代償性肝硬変DAA治療の違い
  3.肝硬変症例に対するDAA治療によるアウトカムの改善効果
 5.肝移植後の場合石上雅敏
  1.肝移植後C型肝炎患者の予後,治療の歴史
  2.DAAの登場-移植後C型肝炎治療を大きく変えた
  3.肝移植後C型肝炎特有の病態-拒絶とウイルス肝炎の鑑別の困難さ
 6.肝発癌後の場合
  1.HCC治療後症例の考え方
  2.DAA治療中に肝癌が見つかった場合の考え方
 7.他疾患薬剤併用の場合
  1.DAAの薬物相互作用
 8.再感染の場合
  1.再感染
  2.Late relapse
  3.Occult HCV infection
 9.小児の場合
  1.小児C型慢性肝炎の現状
  2.HCV母子感染の特徴
  3.治療
 10.ゲノタイプ1型,2型以外の場合
  1.ゲノタイプとセロタイプについて
  2.ゲノタイプ1型,2型以外の診断
  3.ゲノタイプ1型,2型以外の治療
  4.ゲノタイプとセロタイプの乖離例
 11.有害事象が発現した場合(1)
  1.AST,ALT値上昇症例
  2.T-Bil上昇症例
  3.皮疹出現症例
  4.皮膚掻痒出現症例
  5.腎機能悪化症例
  6.浮腫出現症例
  7.全身倦怠感出現症例
  8.QTc延長症例
 12.耐性変異を測定する場合
  1.DAA治療とRAS
  2.NS5A領域のRASの測定
  3.プロテアーゼ阻害薬併用IFN治療における非著効症例
  4.NS5A複製複合体阻害薬+NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬併用療法における非著効症例
 13.耐性変異例を治療する場合
  1.耐性変異陽性例(DAA治療naive症例)の考え方
  2.プロテアーゼ阻害薬併用IFN治療非著効症例の考え方
  3.IFNフリーDAA治療非著効症例の考え方
  4.NS5AP32欠損症例の考え方
 14.治療効果不応の場合
  1.治療効果不応の考え方
  2.アドヒアランス不良はこう考えよう
  3.アドヒアランス不良の背景
  4.アドヒアランス不良の影響
  5.アドヒアランス不良への対策
  6.アドヒアランス良好にもかかわらず治療不応となるケースの考え方
  7.治療効果不応となってしまった場合のその後の対応
 15.有害事象が発現した場合(2)
  1.C型肝硬変におけるDAA治療が門脈圧亢進症に与える影響
  2.門脈圧亢進症を合併したC型肝硬変例に対してDAA治療を行う場合
 16.SVR後のフォローの場合
  1.SVR後フォローアップ
  2.SVR後肝癌ハイリスク症例
  3.肝障害持続症例
  4.SVR後の脂質代謝異常への治療介入の必要性
第4章 その他のウイルス肝炎
 1.高齢者のA型肝炎の場合
  1.高齢患者のマネジメントは,ここに気をつけよう
  2.腎障害に気をつけよう
 2.A型肝炎のHIV重複感染の場合
  1.HIV感染者における急性肝障害の考え方
  2.2018年にMSM間に流行したA型急性肝炎
  3.HIV感染者におけるA型急性肝炎治療の考え方
 3.A型肝炎の予防で困った場合
  1.A型肝炎に対する感染対策
  2.A型肝炎ワクチンの有効性
  3.国内外のA型肝炎の流行状況
 4.A型肝炎(その他)の場合
  1.劇症化例について
  2.わが国の最近のA型急性肝不全の実態
  3.肝障害遷延例について
  4.遅発性IgM-HA抗体陽性化例に注意が必要か?
 5.D型肝炎の場合
  1.D型肝炎の特徴
  2.D型肝炎の病態
  3.D型肝炎の治療と予後
 6.免疫抑制薬投与中のE型肝炎発症の場合
  1.免疫抑制状態の患者におけるE型肝炎の診断
  2.E型肝炎の慢性化
  3.E型慢性肝炎の治療
  4.E型慢性肝炎からHCCの発生
 7.E型肝炎を薬物性肝炎・自己免疫性肝炎と鑑別する場合
  1.急性肝障害を疑う患者を診察した場合
  2.シカやイノシシ,ブタなどの生肉もしくは加熱不十分な状態での肉の摂食歴について
索引



 ウイルス肝炎の治療は進歩が目覚ましい。C型肝炎は直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antiviral:DAA)の登場で、ほぼ全例でウイルスを排除できるようになった。B型肝炎はウイルスを排除できないが、核酸アナログ(nucleos[t]ide analogue:NA)とペグインターフェロン(pegylated interferon:PEG-IFN)を併用ないし使い分けることで、肝炎を沈静化させ、肝発癌リスクを低下させることが可能である。「ウイルス肝炎はもはや非専門医でも治療できるのでは?」との極論もささやかれている。しかし、臨床の現場では、肝臓専門医でも判断に苦慮する場合がしばしばある。「突発性難聴の治療でも、B型肝炎再活性化は注意する必要があるのか?」「肝機能が正常の高齢のC型肝炎患者でも、DAA治療はするべきか?」「A型急性肝炎のMSM患者はどのように治療したらよいのか?」などなど、肝臓専門医でも意見が分かれる難問は数知れない。
 これらのような、肝臓専門医でも悩む難問を取り上げたのが本書である。まず、30〜40歳台で脂ののった肝臓専門医8名にご協力いただいて、臨床の現場で遭遇する「難しい局面」を、取り上げていただいた。これらの難問の解答を、各領域で経験が豊富な肝臓専門医に解説をお願いし、いずれの問題でも、執筆者ご自身が経験した症例を提示し、得られた教訓を“Lesson”としてまとめていただいた。各問題の要点は、冒頭に“ポイント!”として提示した。また、第1章ではわれわれ編者が、これら難問の背景をウイルス側と生体側の視点からそれぞれ解説した。問題の抽出と解答をお願いした肝臓専門医の編集協力者・執筆者各位に深謝する。
 われわれ編者は、本書が肝臓専門医のみならず、消化器領域の専門医を目指す若手医師、肝臓病の診療機会がある非専門医にも、お役に立てると考えている。通読されるもよし、遭遇した症例に合わせて事典的に用いるのもよし。ウイルス肝炎の臨床と研究は、いまだ奥行き深きことを再認識していただければ幸いである。

2020年10月吉日
竹原徹郎・持田智