書籍

肝硬変治療マニュアル

エキスパートのコツとさじ加減

編集 : 吉治仁志
ISBN : 978-4-524-24881-0
発行年月 : 2019年12月
判型 : A5
ページ数 : 288

在庫あり

定価4,400円(本体4,000円 + 税)

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  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

合併症に対する新薬の登場、抗線維化薬の開発など進歩の著しい肝硬変治療について最新の治療方針を踏まえて解説。治療の解説では、「エキスパートのさじ加減・コツ」としてガイドラインに掲載されていない実臨床でのポイントを掲載。また、エキスパートの処方例・コツを掲載した。今後、さらに発展が見込まれる最新の治療については「肝硬変のトピックス」として紹介した。

第1章 診断・病態評価のコツ
 1.概念と臨床所見
 2.血液検査
 3.非侵襲的診断
 4.組織検査
 5.合併症の診断
 6.重症度の分類
 7.Acute-on-Chronic Liver Failureとは
第2章 病態に応じた治療のコツとさじ加減
 1.栄養評価と指導
  a.低栄養時(PEM)
  b.過栄養時
 2.肝硬変における運動療法
 3.成因別の病態と治療
  a.ウイルス性肝硬変(B型)
  b.ウイルス性肝硬変(C型)
  c.NASH肝硬変
  d.アルコール性肝硬変
  e.自己免疫疾患による肝硬変(AIH,PBC)
  f.代謝性疾患による肝硬変(Wilson病,ヘモクロマトーシス)
  g.原発性硬化性胆管炎(PSC)
 4.糖尿病合併例における糖尿病治療薬の使い方
第3章 合併症治療のコツとさじ加減
 1.胸腹水
 2.肝性脳症
 3.消化管出血(食道胃静脈瘤,PHG)
 4.サルコペニアと筋痙攣(こむら返り)
 5.門脈血栓症
 6.出血傾向,血小板減少症
 7.掻痒症
 8.他臓器関連(肝腎症候群,肝肺症候群)
 9.肝発癌予防
第4章 肝硬変治療薬のキホン
 1.亜鉛製剤
 2.肝庇護薬
 3.分岐鎖アミノ酸製剤
 4.利尿薬
 5.難吸収性抗菌薬
 6.抗凝固薬
 7.カルニチン
 8.ナルフラフィン
 9.ルストロンボパグ
 10.合成二糖類
 11.漢方製剤(筋痙攣,肝庇護)
 12.プロバイオティクス
 13.排便調節薬
第5章 非内科的治療のコツとさじ加減
 1.合併症に対するIVR治療
 2.腹水濾過濃縮再静注法(CART)
 3.肝硬変・肝癌に対する外科治療
 4.肝移植
第6章 肝硬変のトピックス
 1.肝硬変と腸内細菌
 2.肝硬変に対する再生医療
 3.肝硬変に対する抗線維化薬
 4.肝癌に対する新規治療薬
索引

序文

 この数年で、慢性肝疾患、特に肝硬変における治療は大きな変遷を遂げている。直接作用型抗ウイルス薬(direct-acting antivirals:DAAs)の導入はC型慢性肝炎、代償性肝硬変の治療にパラダイムシフトをもたらし、安全かつ効果的な治療が提供可能となった。また非代償性肝硬変では、肝性腹水、脳症さらに皮膚.痒感や低栄養・サルコペニアといった病態に対しても新規治療法が次々と認可されるようになり、C型非代償性肝硬変に対してもDAAsが認可されている。これら新たな治療法の登場によって、肝硬変診療は予後の改善だけではなく、QOLの向上をその目的とする新たなステージを迎えたと言える。また治療法の進歩に伴い、各病態の概念や評価方法も大きく変遷することとなり、実際の臨床においては、各ガイドラインに記載されている以上の幅広い知識を習得することが必要となる。
 本書『肝硬変治療マニュアル』はこれからの肝硬変診療に向けて、2017年に刊行された『肝疾患治療マニュアル』(編集:竹原哲郎、持田 智)の肝硬変領域における最新の知見をアップデートし、さらなるステップアップを目的として刊行した。まず、冒頭の第1章では「診断・病態評価のコツ」として、肝硬変の疾患概念・最新の非侵襲的診断法や合併症の評価法について概説した。次に、肝硬変の各原因疾患に沿った治療、栄養療法、運動療法について第2章「病態に応じた治療のコツとさじ加減」で、肝硬変に合併するさまざまな病態の治療を第3章「合併症治療のコツとさじ加減」で詳細に紹介した。スムーズに実臨床へ活用して頂くことを目的として、実際の処方例とともに治療におけるさじ加減をワンポイントで示させて頂いた。また、第4章では「肝硬変治療薬のキホン」として肝硬変治療薬側から焦点を当てて、各治療薬の作用機序や特徴、処方上の注意点などについて個別に論じることとした。さらに、第5章でIVR治療や外科治療などについて「非内科的治療のコツとさじ加減」で紹介し、最後に第6章で現在開発段階や臨床治験などを含めた「肝硬変のトピックス」で締めくくった。
 目まぐるしくアップデートされる情報に網羅的に対応するために、第一線で活躍する肝硬変診療のエキスパートの先生方に執筆を依頼した。重なる追記、修正をお願いしたが、多忙をきわめるなかで迅速に対応頂いた執筆者の先生方に深謝する。本書が肝硬変診療ガイドラインの理解へのサポートとなり、より深い知識を得るとともに日常臨床に役立てて頂ければ幸甚である。

2019年10月
吉治仁志

 このたび南江堂から上記タイトルのテキストが刊行された。編集者は肝硬変領域で近年とみに活躍著しい奈良県立医科大学第三内科の吉治仁志教授である。これまでにも何度か書評を書く機会があったが、その際重要なことは編集者や著者がどのような感性あるいは哲学をもって一冊のテキストを創り上げたかを重要視してきた。私と吉治教授の間には浅からぬ因縁がある。彼は奈良県立医科大学腫瘍病理学講座で学位を得ているが、研究指導者は故小西陽一教授で、1971年から数年間、フェルス癌研究所(米国フィラデルフィア)に勤務した間柄でもある。吉治教授は学位取得後、NIH(米国ベセスダ)に留学され、Thorgeirsson UP(肝発がんで有名なThorgeirsson Sのパートナー)の下でがんの増殖と血管内皮細胞増殖因子の関連を研究された。ちなみに、Thorgeirsson Sの研究室にはかつての私の教室からも寺井崇二君(新潟大学消化器内科教授)ほか4人ほど留学しており、ここにも浅からぬ因縁があるように思う。それに加え、ご教室の歴史を紐解くと初代の故辻井 正、二代目の福井 博教授もともに肝硬変を専門にされており、本書の編集にまさに人を得たといって過言ではない。
 さて、私自身は執筆の姿勢は“起承転結”である。読者がテキストを手に取って興味をもつのはテキストのアレンジであり、“起”としての第1章で読者にいかに興味をもたせるか、そして最後の“結”でいかに満足感を覚えていただくかが肝要である。本書の第1章は「診断・病態評価のコツ」として第2章から始まる近年著しく進歩した肝硬変診療を理解するための序章となっている。第2章には「病態に応じた治療のコツとさじ加減」として成因別にみた肝硬変とそれに応じた病態の違いに対する治療のあり方を紹介しているが、従来にない内容であり、肝疾患の診療に日常的に従事している先生方にはきわめて参考になる内容となっている。第3 章「合併症治療のコツとさじ加減」、第4 章「肝硬変治療薬のキホン」、第5 章「非内科的治療のコツとさじ加減」は“承・転”で、本書で最大の盛り上がりの内容が含まれ、読者にはポスト・ウイルス肝炎時代を迎え進歩著しい肝硬変診療の現状をぜひとも目のあたりにしてほしいものである。第6 章「肝硬変のトピックス」はこれから話題となる領域であり、肝硬変診療の奥の深さを実感していただきたい。“起承転結”として述べれば、これまで“死にいたる病”としてさほど関心が寄せられなかった肝硬変ではあったが、治療技術の進歩や治療薬の開発により病態に応じた治療の介入が可能になったことをまるで一冊の小説を読むかのような感覚で読破でき、結びにきて肝硬変学の完成に向けてのこれからの取り組みに期待する気分にさせる、そんなテキストである。
 本書は、日本肝臓学会を担う、いわゆる“旬”の方々が得意とされる項目をそれぞれ分担執筆されており、今やシニアとなった小生としても、肝臓病に関する専門家であろうが、非専門家であろうが、一冊の読本として購読されることをお勧めしたい。

臨床雑誌内科126巻2号(2020年8月号)より転載
評者●山口大学 名誉教授 沖田極