DCIS乳房超音波画像アトラス
編集 | : 日本乳腺甲状腺超音波医学会「DCIS乳房超音波画像アトラス」作成小委員会 |
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ISBN | : 978-4-524-24682-3 |
発行年月 | : 2024年11月 |
判型 | : A4判 |
ページ数 | : 160 |
在庫
定価4,620円(本体4,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評

腫瘤から非腫瘤性病変まで多彩な所見を呈し,悪性度の高い癌へ進展する傾向をもつ非浸潤性乳管癌(DCIS)について,日本乳腺甲状腺超音波医学会(JABTS)による多施設研究から収集・厳選された88の症例の超音波画像を掲載し,マンモグラフィやMRI,病理組織像も交えて,その見極め方を解説.典型例と多様なバリエーション例を網羅することで,DCISの画像所見と病理組織との関連性を正しく捉え,深く理解できるアトラス書.
T.総論
A.DCISの病態と超音波画像
1.疫学的事項およびDCISの自然経過
2.乳房の構造とDCIS
3.DCISの超音波画像と診断の考え方
4.DCISの診断に関する諸事項
5.JABTS BC‒02研究
B.DCISの病理
1.DCISのgrading
2.DCISが示す多彩な構築
3.DCISが示す多彩な増殖・進展様式
4.Paget病(Paget's disease)
5.DCISの鑑別診断
U.各論
1.腫瘤
A.充実性腫瘤を呈するDCIS
B.囊胞内腫瘤を呈するDCIS
2.非腫瘤性病変
A.乳管の異常を呈するDCIS
1.区域性で連続性の充実性エコー
2.区域性で連続性の充実性エコー:点状高エコーを伴うもの
3.区域性で連続性の充実性エコー:斑状低エコー域を伴うもの
4.区域性で連続性の充実性エコー:点状高エコーおよび低エコー域を伴うもの
5.区域性で多発性の充実性エコー:点状高エコーを伴うもの
6.区域性で多発性の充実性エコー:断面により斑状にみえるもの
7.区域性で多発性の充実性エコー
8.区域性で単発性の充実性エコー
9.局所性で境界不明瞭な低エコー域を伴うもの
B.乳腺内の低エコー域を呈するDCIS
1.局所性の斑状低エコー域
2.局所性の斑状低エコー域:乳管の異常を伴うもの
3.局所性の斑状低エコー域:多発小囊胞様にみえるもの
4.局所性の地図状低エコー域:点状高エコーを伴うもの
5.局所性の地図状低エコー域:腫瘤か迷うもの
6.局所性の境界不明瞭な低エコー域:不整形腫瘤にもみえるもの
7.局所性の境界不明瞭な低エコー域:構築の乱れを伴うもの
8.区域性の斑状低エコー域
9.区域性の斑状低エコー域:乳管の異常を伴うもの
10.区域性の地図状低エコー域
11.区域性の地図状低エコー域:点状高エコーを伴うもの
12.区域性の地図状低エコー域:乳管の異常を伴うもの
13.区域性の地図状低エコー域:対側乳腺より厚みが増しているもの
C.構築の乱れを呈するDCIS
D.多発小囊胞を呈するDCIS
E.点状高エコーを主体とする病変を呈するDCIS
医学の進歩と共に,乳癌診療における超音波検査の役割はますます重要になっています.乳癌は女性の中で最も多い癌ですが,早期に発見することによって治癒する可能性が非常に高い疾患でもあります.非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ:DCIS)は日本の乳癌の15%程度を占めており,将来的に浸潤癌へ進行する可能性があるため,正確な診断と適切な治療が求められます.しかし,DCISの超音波画像はバリエーションに富んでおり,腫瘤から非腫瘤性病変に至るまで非常に多彩です.この多彩さが,乳房超音波検査でのDCIS診断を複雑にしています.本書はこの問題に応えるために企画されましたが,日本乳腺甲状腺超音波医学会(JABTS)で行われたDCISの超音波画像に関する多施設研究(JABTS BC‒02研究)が契機となっています.本書には多くの施設から厳選収集された88例のDCIS症例の超音波画像が収録されています.必要に応じてマンモグラフィやMRI,病理組織像が掲載されており,各症例には解説もついています.これらの症例を通じて,DCISの超音波における幅広い画像バリエーションを目の当たりにすることにより,その特徴と病理組織との関連性を深く理解することができるでしょう.また,DCIS診断におけるポイントを学ぶことで,臨床現場での診断能力の向上が期待されます.
乳腺専門医はもちろん,超音波検査士,そして乳房超音波を学ぶすべての医療従事者にとって,本書が貴重な学習資料となり,DCISの診断における洞察と理解を深める手助けとなることを願っています.また,最新の研究と臨床経験を基に編纂された本書が,読者の皆様の専門知識の向上と患者へのより良い診療に貢献することを心から願っております.この分野におけるあなたの学びと成長を支援するために本書を手に取っていただき,その内容を深く掘り下げていただければ幸いです.あなたの専門性を磨く旅の中で,本書が一助となりますように.
末筆になりますが,BC‒02研究に参加してくださった施設の皆様,ならびに本書の執筆者の先生方に深謝いたします.特に,病理の項を執筆いただいた森谷鈴子先生にはオリジナルのわかりやすいシェーマで解説いただき,感謝申し上げます.
2024年9月
「DCIS乳房超音波画像アトラス」作成小委員会
委員長 渡辺隆紀
本書は,乳房超音波診断のエキスパート達による日本乳腺甲状腺超音波医学会(JABTS)での研究部会活動の果実であり,非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ:DCIS)の超音波画像のエキスが凝集された画像集となっている.88例ものDCISの画像がまずは腫瘤,非腫瘤性病変に分けられ,少しずつ所見の違う画像が体系的に並べられ,初学者にも学び直しのベテランにも気づきを与えてくれるアトラスである.症例ごとに鑑別診断と最終病理,わかりやすい手書きの超音波画像のシェーマ,必要に応じマンモグラフィやMRI画像も提示されているので,全体像もつかみやすい.
乳癌検診における超音波の有効性を示したJ-START試験は日本が世界に誇れる貴重な試験結果である.第2弾としてマンモグラフィで,高濃度乳房だけでなく非高濃度乳房においても超音波を追加したほうが乳癌の検出率が高いことも示された.生存率向上のデータがないという理由で政策型検診への導入はまだ実施されていないが,特に,日本人を含むアジア人の乳房における超音波の有用性は間違いなく,任意型検診で超音波を取り入れている施設は増えている.乳癌患者の急速な増加もあいまって,乳房超音波を担当する医師および技師の需要は急速に増加しているが,乳房超音波はむずかしいという印象をもっている技師が多いと聞く.その要因の一つとして,囊胞などの良性病変のほうが超音波上目がいきやすいということ,二つ目としては非腫瘤性病変の存在があるであろう.非腫瘤性病変はDCIS画像の6割を占めている.そもそも非腫瘤性病変(non-mass abnormalities)という概念は世界に先駆けてJABTSが提唱したものであり,BI-RADS第6版に非腫瘤性病変の概念が追加される方向で議論されていると聞いている.スクリーニング施設でトレーニングを受ける場合,みつかる所見の多くが良性病変であり,要精査の病変に出合う確率は10%弱,ましてや悪性を疑う非腫瘤性病変に出合う機会はもっと少ないであろう.みたことがないものはみえてこない場合もある.ぜひともこのアトラスを活用いただくことをおすすめする.
2021年の日本乳癌学会の登録では,DCISは全乳癌の15%弱である.DCISの超音波像を語るに,最強メンバーによるともいえるのが本書であり,本書が皆様の診断能力向上に役立つものと確信している.
臨床雑誌外科87巻8号(2025年7月号)より転載
評者●明石定子(東京女子医科大学乳腺外科 教授)
