書籍

現場のお悩みズバリ解決!循環器の高齢者診療“術”

監修 : 代田浩之
編集 : 荒井秀典/大村寛敏
ISBN : 978-4-524-24645-8
発行年月 : 2019年4月
判型 : A5
ページ数 : 262

在庫あり

定価4,620円(本体4,200円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

本書は、高齢者の循環器診療において直面する悩みやコンセンサスの得られていない課題について「評価」、「治療」、「管理」、「ケア」、「倫理的課題」に分類し、詳細に解説。各項目では、「なぜ悩んでしまうのか?」実臨床において問題となる背景をまず提示し、その具体的な悩みを「ズバリ解決!」する。

I 評価
 1.外来で“フレイル”の評価はなぜ必要?
 2.“サルコペニア”と“フレイル”は違うの?
 3.簡単にできる認知機能評価やADL評価とは?
 4.簡単にできる栄養状態の評価とは?
 5.簡単にできる嚥下機能評価とは?
 6.耳が遠い,認知機能に問題あり−どうやって医療面接する?
 7.典型的症状を示さない高齢者の虚血性心疾患はどう診断する?
 8.転倒しやすい患者はどうみつける?
II 治療
 1.フレイル高齢者の高血圧−どの降圧薬を選べばよい?血圧管理目標値はどれくらい?
 2.フレイル高齢者の糖尿病はどう管理する?
 3.CKDを合併した高齢者における降圧治療の注意点は?
 4.フレイル高齢者の虚血性心疾患に対する適切な治療は薬物療法か?冠動脈血行再建術か?
 5.フレイル高齢者に対する抗凝固療法はどう実践すればよい?
 6.高齢者の慢性的貧血にどう対処したらよい?
 7.潜在性甲状腺機能低下症は治療しなくてもよい?
 8.高齢者に対する不眠症治療のコツとは?
 9.フレイル高齢者に対するTAVIは何歳までが適応か?
III 予防・管理
 1.高齢者のやる気を引き出すテクニックとは?
 2.サルコペニアを予防するための工夫とは?
 3.がんのスクリーニングをどうする?
 4.超高齢者に減塩は必要?
 5.夜間頻尿はどう対処する?
 6.高齢者の栄養管理は実際にどうすればよい?
 7.誤嚥性肺炎をどうやって予防する?
 8.末梢動脈疾患を合併する高齢者にフットケアを行う際の注意点は?
 9.フレイル高齢者に対する薬剤管理の工夫とは?
IV 診療・介護ケア
 1.足のむくみを訴える高齢者が受診したら
 2.維持血液透析中の高齢者に対する循環器内科医の役割は?
 3.入院中のうつ・せん妄はどうすれば予防できるか?
 4.嚥下機能低下や経口摂取困難なときの薬物療法は?
 5.独居の高齢者に対する外来管理はどうする?
 6.介護施設・在宅におけるケアのポイントは?
 7.病診連携を上手に利用する方法は?
 8.心不全を繰り返す高齢者−どうセルフケア支援を行えばよいのか?
V 倫理的問題
 1.独居の高齢者が外来を受診しなくなったときに取るべき対応は?
 2.認知機能に問題があり,代諾者もいない高齢者に対するインフォームド・コンセント−一体どうすればよい?
 3.循環器疾患を合併する高齢者のエンドオブライフケア−どう考えて,どう対処する?
 4.集中治療が必要な高齢者に対する侵襲的治療(人工呼吸器・機械的補助循環・人工透析など)をどう考える?
 5.DNARの考え方は?
 6.循環器専門医が考えなければいけない緩和医療とは?
索引

序文

 急速に高齢社会を迎えている私たちの社会で、循環器専門医はどのような医療を提供すべきだろうか。
 最近の高齢循環器疾患患者の増加とともに、循環器診療の内容も変化している。これまで循環器診療は主に救急の現場で急性期医療を提供することが中心だったが、現在は急増する高齢患者に急性期から慢性期まで、高齢者特有の病態に対応しなければならない。まずは、高齢者へのケアを基本として行い、次に循環器治療を提供することが当たり前の時代である。すなわちそれが、フレイルに代表される高齢者の病態への対応であり、また認知症への対応である。現在、フレイルには様々な定義が存在するが、その対応として栄養、運動指導や服薬指導から転倒防止まで多職種の総合的なアプローチが必要である。より重症になると、口腔ケア、誤嚥対策、肺炎予防も加わる。循環器の専門治療を提供する場合も、複数の併発症の診断と管理に加えて、その適応に社会的な判断が必要な場合も多い。積極的治療を控えなければならない場面も往々にしてある。入退院にあたっては集中治療を専門とする医療スタッフも、社会復帰だけでなく介護保険や在宅医療、そして退院先として老人ホームや介護施設などを念頭においた診療連携を意識する必要がある。認知症においては、その評価と対応に加えて、医療倫理的な側面も重要である。高齢者医療をいかに包括的に、かつ有効に提供できるかが、私たちのミッションのひとつになった。救急医療を得意としていた循環器チームにとって若干の発想の転換が必要である。
 本書『現場のお悩みズバリ解決!循環器の高齢者診療“術”』では、循環器診療の現場で必要な高齢者への対応を、評価、治療、予防・管理、診療・介護ケア、倫理的問題に分けて、その分野のエキスパートに実践に即して解説していただいた。研修医から循環器専門医まで、幅広く利用できる手軽な一冊である。日常診療の一助になれば幸いである。

2019年3月
監修者・編集者

 近年どの診療科においても患者の多数を高齢者が占めており、“高齢者を診る技能”は専門診療領域を超えて必要な“術”になっている。
 ここで、患者を紹介させていただく。85歳のBMI 19の男性患者。高血圧症、糖尿病(腎症3期、網膜症あり)、心房細動、陳旧性心筋梗塞(PCI後)による慢性心不全があり、軽労作で息が切れる。また、骨粗鬆症、変形性脊椎症・膝関節症のため整形外科にも通院している。前立腺肥大症による排尿障害がある。近所に買い物には行けるが、運動はできない。漠然とした訴えが多く、「背中と膝が痛い」「足がむくむ」「ときどき胸が痛む」「もの忘れがだんだんひどくなる」などとしばしば訴える。実際、認知症かどうかは調べたことはない。難聴があるため、会話に時間を要する。処方した薬は飲んでいるはずだが、詳細は不明である。
 このような患者を診療する機会は増えているのではないだろうか。有病高齢者の特徴は、多病でフレイルであることである。このような患者に厳格な塩分制限や、心不全予防のための水分制限を求めれば、夏場に脱水から熱中症にいたる危険が高い。かといって、心不全の管理を疎かにすれば、心不全による入院を繰り返すことになる。一口に「高齢者」といっても身体機能や認知機能に個人差が大きく、すべての高齢者を年齢で一様に扱うのは適当でない。また、上記の患者に対してエビデンスに基づく医療をそのまま実践すれば間違いなくポリファーマシーになるし、そうすれば薬物有害事象が生じる危険も高い。ほかにも、転倒リスクのある高齢者に対する抗凝固療法はどのようにするのか? フレイルな高齢者の血圧管理の目標値は? CKDを有する患者の管理上の注意点は? 合併症を有する糖尿病の管理目標は? もしも急性冠動脈イベントを発症したらインターベンションの適応は? など悩むことが多いのではないだろうか。
 このようなことを考えて診療を行うためには、フレイルや高齢者総合機能評価(CGA)、転倒リスクなどを客観的に評価する必要があり、フレイルやプレフレイルに基づいて診療方針を立てていく必要がある。たとえば、日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会が作成した『高齢者糖尿病診療ガイドライン2019』に記載されている「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」では、高齢者でしばしば問題となる低血糖症を回避するために、低血糖症を起こしやすい薬剤を使用する際に認知機能とADLなどに基づいてHbA1cの目標値をやや高めに設定し、かつ下限値が設定されている。すなわち、ここではフレイルやCGAの考え方が導入されている。
 これからますます増え続ける高齢者に対する循環器疾患の管理をどのようにしたらよいのか? 本書はその答えを提供してくれる1冊である。

臨床雑誌内科124巻5号(2019年11月号)より転載
評者●杏林大学医学部高齢医学 主任教授 神崎恒一

9784524246458