書籍

EPS概論改訂第2版

編集 : 村川裕二/山下武志
ISBN : 978-4-524-24616-8
発行年月 : 2019年3月
判型 : B5
ページ数 : 410

在庫あり

定価13,200円(本体12,000円 + 税)


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  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

EPSの基礎的事項から検査の流れ、さらにはカテーテルアブレーション治療の実際までを網羅した“現場感覚の新しいテキスト”。今改訂では、三次元マッピングやカテーテルアブレーションの進歩、心室頻拍など不整脈発生メカニズムの解明など、新たな知見を反映。要点を把握しやすいよう各見出しでポイントをまとめ、実症例も豊富に取りあげて実践面も学べる構成になっている。不整脈診療に携わる医師必携の一冊。

第1章 EPSの黎明
 A.His束電位から
 B.カテーテルアブレーションへ
 C.アプローチの変遷
 D.臨床心臓電気生理研究会
第2章 検査に備えて
 A.心電図検査:何が出るか予測する
 B.画像診断:胸部X線,心エコー,CT
第3章 EPS/アブレーションを行う前に:ハード
 A.検査室のかたち(機器の配置)
 B.マンパワー
 C.目的に応じた電極カテーテル
 D.記録装置
 E.プログラム刺激装置
 F.カテ室を使いやすくする工夫
第4章 EPS/アブレーションを行う前に:ソフト
 A.鎮静のテクニックと全身管理
 B.カテーテル操作と穿刺法
 C.カテーテルの動かし方,電極カテーテルのポジショニング
 D.合併症とその回避
 E.検査室に入ってから出るまで
第5章 プログラム刺激とは何か
 A.EPSに必要な電気生理
 B.洞結節と房室結節の生理
 C.プログラム刺激:期外刺激法
 D.プログラム刺激:頻回刺激法
 E.EPSで用いられる用語
 F.洞結節機能の評価
第6章 検査と治療の実際
 1 洞不全症候群
  A.病態
  B.EPSで知りたいこと
  C.EPSの実際
  D.症例
  E.治療選択の考え方
 2 房室ブロック
  A.病態
  B.EPSで知りたいこと
  C.カテーテルの配置
  D.症例
  E.治療選択の考え方
 3 副伝導路の関与する発作性上室頻拍および特殊な副伝導路
  A.病態
  B.EPSで知りたいこと
  C.カテーテルの配置,およびカテーテルアブレーションの方法
  D.症例
  E.症例としては取り上げにくいが大事な所見
  F.治療選択の考え方
  G.特殊な副伝導路
 4 房室結節リエントリー頻拍をめぐる新しい展開
  A.病態
  B.AVNRTの典型例
  C.まれなタイプのAVNRT
  D.未解明の問題点
 5 洞結節リエントリー頻拍
  A.病態
  B.EPSで知りたいこと
  C.カテーテルの配置
  D.症例
  E.治療選択の考え方
  F.カテーテルアブレーションの方法
  G.不適切洞頻脈に対するアブレーション
 6 解剖学的峡部に依存する心房粗動および特殊な心房粗動
  A.定義と病態
  B.EPSの方法とそこから知りたいこと
  C.治療選択の考え方:解剖学的峡部に依存する心房粗動
 7 心房頻拍
  A.病態
  B.EPSで知りたいこと
  C.EPS中のカテーテルの配置
  D.症例
  E.特殊な心房頻拍
  F.治療選択の考え方
 8 心房細動
  A.病態
  B.EPSで知りたいこと
  C.カテーテルの配置
  D.症例
  E.大切な所見
  F.治療選択の考え方
  G.カテーテルアブレーションの方法
 9 陳旧性心筋梗塞の持続性心室頻拍・心室細動
  A.病態
  B.EPSで知りたいこと
  C.どのような症例にEPSを行うか
  D.治療選択の考え方
  E.薬物療法
  F.カテーテルアブレーション
  G.カテーテルアブレーションの具体的な方法
  H.ICD治療
 10 非虚血性心疾患に合併する心室頻拍
  A.病態
  B.EPSで知りたいこと
  C.症例
  D.基礎心疾患による頻拍の機序と特徴の差異
  E.カテーテルアブレーションの方法
 11 特発性心室頻拍:流出路起源
  A.病態
  B.EPSで知りたいこと
  C.カテーテルの配置
  D.症例
  E.その他の流出路起源頻拍
  F.治療選択の考え方
  G.カテーテルアブレーションの方法
 12 特発性心室頻拍:verapamil感受性
  A.病態と分類
  B.EPSで知りたいこと
  C.カテーテルの配置
  D.症例
  E.治療選択の考え方
  F.その他のアブレーションの方法
 13 心室細動とBrugada症候群
  A.病態
  B.EPSで知りたいこと
  C.カテーテルの配置と刺激法
  D.症例
  E.EPSを行ううえで知っておくべきこと
  F.治療選択の考え方
  G.カテーテルアブレーションの適応
 14 QT延長・短縮症候群
  A.QT延長症候群(LQTS)の病態と診断
  B.LQTSにおけるEPSの適応
  C.LQTSの電気生理学的特徴
  D.単相性活動電位を用いたLQTSのEPS所見
  E.LQTSの治療
  F.QT短縮症候群(SQTS)の病態と診断
  G.SQTSにおけるEPSの適応と電気生理学的特徴
  H.SQTSの治療
第7章 三次元マッピング法
 1 CARTO
  A.CARTOシステムとは
  B.CARTOマップの実際
  C.ピットフォール
 2 EnSite
  A.システムについて
  B.具体的な使い方
第8章 EPSで用いる薬剤:いつ,なぜ使う
 1 isoproterenol,atropine,β遮断薬
  A.isoproterenol,atropine,β遮断薬の作用機序
  B.isoproterenolとEPS
  C.atropineとEPS
  D.β遮断薬とEPS
 2 ATP(アデノシン三リン酸)
  A.薬理作用
  B.臨床における使用方法
  C.上室頻拍(SVT)に対する作用
  D.心室頻拍(VT)に対する作用
  E.EPSにおける有用性
 3 抗不整脈薬
  A.カテーテルアブレーション全盛期における抗不整脈薬の位置づけ
  B.抗不整脈薬の基本を知る
  C.EPSで抗不整脈薬をいつ使うか
索引

はじめに

臨床電気生理検査は不整脈の病態を解き明かす手法である。

本書は、必要な機器、病態の考え方、診断と治療の方法を扱っている。
基礎生理から現場のテクニックに至る全体を取り上げているが、もとよりひとつのテキストに漏れなく集約できるわけではない。
そのゆえ、書名を「概論」とした。

初版は2010年。その後、カテーテルアブレーションやデバイス治療の進化、病態に関わる経験と報告がいっそう蓄積された。情報の刷新のために、ここに版を改める。

カテーテル室の構成、診断と治療へのアプローチは多彩である。それらを均一化することが喫緊に求められるわけではないが、およその標準を掲げることにより、これからこの検査に携わる方に本検査の概要を提供したい。

一方では、診療現場を担う専門医の診断的思考や手技の洗練にも寄与するために、業績が広く周知される各執筆者に個人的経験やフィロソフィーにも踏み込んだ記述を依頼した。

現在の臨床電気生理学は膨大な知識に支えられており、短時間に習得できるものではない。しかし、心筋の伝導性や不応期など基本的パラメータは不変であり、プログラム刺激法そのものにも大きな変更はない。

臨床電気生理に関わる人々は解析から結論への道筋が明解であることを求める。本書の読者には、テクノロジーの変遷のみにとらわれることなく、この領域に特有な「ロジックの端正さへのこだわり」も共有されることを願う。

2019年2月
編者

 われわれの学生時代、「〇〇学概論」といった題名の入門書を教科書として使用した経験は諸兄にも多いのではないか。近年、情報のデジタル化が進み、医学生でも教科書をもたない者が多いという話を聞かされる。いかに情報取得が容易かつ速やかに可能となったからといっても、いかがなものかと思う次第である。
 今日行われている素晴らしい不整脈に対するカテーテル治療も、多くの試行錯誤があり、これまでの経験を集積した結果を反映し、診療ガイドラインが示されている訳である。すなわち、現在お勧めとされる方法論も、時代とともに変遷していく。このような臨床医学の進歩に遅れをとることなく対応するために、重要と思われる要素がある。1つ目は、常に更新される新たな情報を収集し、その変化を考察する能力をもつこと、2つ目は、今日では当たり前となっている手技や理論がどのような背景から提案されたかを知ること、ではないかと思う次第である。このように考えると、本書「EPS概論」は、EPS黎明期の話から、心電図学的な推論を心内電位の記録により進化・発展させた時代の心臓電気生理学的な理論構築、カテ室に臨む準備状況から、心房中隔穿刺術に関わる実践的な内容まで丁寧に解説がなされている。今日では、心房細動を対象として広くカテーテル治療が実施されている。当初、不整脈発生起源ないし回路を遮断することから始まったアブレーションは、今日では線状焼灼をさらに広範に適応させた心筋の電気的隔離へ応用されている。カテ室で術者として参画するためには、このような歴史的背景と流れを踏まえた対応をしいていただきたいものである。EPSとは本書の題名でもあるが、electro physiological studyの略であり、電気生理学的視点で不整脈の発生機序探索、あるいは心筋の電気生理学的特性から病態を評価する目的で行われる侵襲的検査である。当初、心室に期外刺激を与えることは、積極的には実施されなかった時代もあったが、今日では各種心室細動に対するカテーテルアブレーションも積極的に実施され、その臨床医学への貢献は目覚ましいものがある。
 本書では、それぞれの不整脈で、EPSで知りたいことは何か、カテーテルの基本的な配置をどうするか、そして例題としての実際の症例提示がなされ、実践に必要な具体的な記述がなされている点は指南書としての活用価値を高めている。さらに、テクノロジーの進歩による三次元マッピング、診断補助薬、治療薬の解説まで実臨床で役立つと考えられる内容が記述されている。各章は、経験豊富な第一線で活躍している著者によりまとめられ、参考とすべき内容が豊富にある。電気生理学的背景への理解を深め、医療機器の進歩にも対応した内容をコンパクトにまとめた一冊である。そして、本書の編纂は、それぞれ現場の問題を熟知し、世に多くの著作を出されている機知とアイデアに富んだお二人による企画である。循環器疾患、とくに不整脈領域に興味をもたれる幅広い読者へのお勧めの一冊といえる。

臨床雑誌内科124巻3号(2019年9月増大号)より転載
評者●南八王子病院 院長/日本医科大学 名誉教授 新博次