呼吸器疾患最新の治療2019-2020
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 門田淳一/弦間昭彦/西岡安彦 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-24557-4 |
発行年月 | : 2019年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 534 |
在庫
定価11,000円(本体10,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
最新情報を簡潔にまとめた「最新の治療」シリーズの呼吸器疾患版。診断から処方例を含めた標準的治療を解説。巻頭トピックスでは、肺炎・IPFガイドラインのUPDATEの他、「肺炎球菌ワクチンの開発動向」、「気管支サーモプラスティ」、「免疫チェックポイント阻害薬」、「肺癌の分子標的治療耐性機構」、「血管新生阻害薬耐性機構」、「抗悪性腫瘍薬による薬剤性肺障害の状況とメカニズム研究」、「臨床がんゲノム診断における望まれる体制と現状の問題点」など注目のテーマを14題取り上げた。巻末には薬剤一覧も収載。
I 巻頭トピックス
1 成人肺炎診療ガイドラインUPDATE
2 原因菌の新規診断法
3 呼吸器感染症診療におけるバイオマーカーの進歩と意義
4 肺炎球菌ワクチンの現状と新規ワクチンの開発動向
5 喘息と気管支サーモプラスティ
6 特発性肺線維症の治療ガイドラインUPDATE
7 呼吸器疾患とオートファジー
8 肺の線維化とマクロファージ新規サブタイプ
9 免疫チェックポイント阻害薬の開発
10 免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカー
11 肺癌の分子標的薬耐性機構
12 血管新生阻害薬耐性機構
13 抗悪性腫瘍薬による薬剤性肺障害の状況とメカニズム研究
14 臨床がんゲノム診断において望まれる体制と現状の問題点
II 主な呼吸器用薬剤の作用機序と適応
1 鎮咳薬
2 去痰薬
3 気管支拡張薬
4 抗アレルギー薬
5 抗炎症・免疫抑制薬(マクロライドも含む)
6 副腎皮質ステロイド薬
7 抗癌薬
8 抗菌薬
III 呼吸器疾患の治療手技
1 気管挿管/気管切開
2 酸素吸入の流量決定と投与方法
3 侵襲的人工呼吸の適応とウィーニング
4 NPPV(非侵襲的陽圧換気)の急性呼吸不全における適応と実際
5 胸腔穿刺法と胸腔チューブの挿入法
6 心膜腔穿刺法と開窓術
7 中枢気道狭窄治療−内腔拡張術とステント留置
8 在宅酸素療法の適応と導入
9 肺理学療法
10 運動療法の実際
11 在宅人工呼吸療法の適応
12 肺移植の現状
IV 呼吸器系の救急治療
1 慢性呼吸不全の急性増悪
2 重症喘息発作
3 喀血
4 気胸
5 胸水貯留
6 気道異物(成人)
7 化学物質の吸入
8 気道熱傷
9 溺水
10 高地肺水腫
V 呼吸不全と呼吸調節障害
1 急性呼吸不全とARDS
2 慢性呼吸不全
3 睡眠時無呼吸症候群
4 原発性肺胞低換気症候群
5 過換気症候群
VI 呼吸器感染症
1 かぜ症候群,急性咽頭炎と急性気管支炎
2 百日咳(成人)
3 肺炎のエンピリック治療
4 マイコプラズマ肺炎
5 クラミジアニューモニエ肺炎
6 オウム病
7 Q熱
8 レジオネラ肺炎
9 肺膿瘍
10 肺アスペルギルス症
11 肺クリプトコックス症とその他の肺真菌症
12 MRSA肺炎
13 緑膿菌感染症
14 肺結核(症)
15 結核性胸膜炎
16 非結核性抗酸菌症
17 寄生虫,リケッチアによる肺感染症
18 ニューモシスチス肺炎
19 誤嚥性肺炎
VII 閉塞性肺疾患と気道系疾患
1 気管支喘息
2 咳喘息(cough variant asthma)
3 COPD(慢性閉塞性肺疾患)
4 びまん性汎細気管支炎/副鼻腔気管支症候群
5 気管支拡張症
VIII 間質性肺疾患
1 急性間質性肺炎
2 特発性肺線維症
3 非特異性間質性肺炎(NSIP)
4 特発性器質化肺炎(COP/BOOP)
5 肺Langerhans細胞組織球症
6 慢性好酸球性肺炎
7 肺胞蛋白症
8 リンパ脈管筋腫症
9 肺胞微石症
IX 免疫・アレルギー性肺疾患
1 サルコイドーシス
2 過敏性肺炎
3 アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)
4 急性好酸球性肺炎
5 ANCA関連血管炎における肺疾患
6 多発性血管炎性肉芽腫症granulomatosis with polyangiitis(GPA)
7 Goodpasture症候群
8 IgG4関連呼吸器疾患
X 医原性肺疾患
1 薬剤性肺障害
2 放射線性肺臓炎
3 造血幹細胞移植後の呼吸器合併症
XI 肺循環障害
1 肺血栓塞栓症
2 肺動脈性肺高血圧症
XII 全身性疾患による肺病変
1 腎不全,透析患者の肺合併症
2 膠原病の肺病変
3 HIV患者でみられる肺病変
4 血液疾患(白血病,悪性リンパ腫)による肺病変
XIII 腫瘍性疾患
1 肺癌の外科治療
2 小細胞肺癌の治療(手術適応と化学療法)
3 非小細胞肺癌の集学的治療
4 肺癌合併症への対策
5 肺癌の緩和ケア
6 抗癌薬の副作用対策
7 縦隔腫瘍
8 転移性肺腫瘍
9 胸膜中皮腫
XIV 先天性異常・形成不全
1 肺分画症
2 肺動静脈瘻(肺動静脈奇形)
XV 呼吸器疾患の患者指導
1 妊娠時の呼吸器薬の取り扱い方
2 慢性呼吸不全患者の日常生活指導と訪問看護
3 慢性呼吸不全に対する栄養療法
4 誤嚥性肺炎防止のための患者指導
5 肺癌の外来管理
6 禁煙指導の実際
巻末付録
索引
序文
本書、『呼吸器疾患最新の治療』は従来より3年ごとの発刊を重ねてまいりましたが、近年の呼吸器領域の診断、手技および治療の進歩は目覚ましく、そのスピードに後れを取らないように今回から2年ごとの発刊としました。呼吸器領域は感染症疾患、アレルギー疾患、肉芽腫性疾患、びまん性肺疾患、腫瘍性疾患、希少疾患など多岐にわたっていますので、これら各領域の進歩をいち早く読者にお届けすべく、多数のエキスパートの先生方に最新の情報を含めて執筆をしていただきました。
まず本書の特長である巻頭トピックスでは、オートファジーや免疫チェックポイント阻害薬の開発など、ノーベル賞に関わるトピックスをはじめ、近年、進歩の早い呼吸器疾患で注目される14テーマを選択し、執筆いただきました。感染症領域では、成人肺炎診療ガイドライン、新テクノロジーを用いた原因菌の同定法、バイオマーカー、ワクチンについて執筆いただきました。間質性肺炎では、マクロファージ、オートファジーなど病態に関わるものやガイドライン、喘息ではサーモプラスティ、肺癌では、免疫チェックポイント阻害薬、薬剤耐性機構、新薬と共に新たな段階に入った薬剤性肺障害、NGSによる診断の保険償還でがんゲノム新時代を迎えるがんゲノム診断の問題点など、いずれも興味深いテーマについて熱意のこもった内容で執筆いただきました。
II章からV章までは総論ともいうべき内容を取り上げ、呼吸器科医として必須である呼吸器用薬剤、治療手技、救急治療、および呼吸不全や呼吸調節障害への対応に関して最近の進歩とともに実際的に解説をしていただいています。呼吸器領域の中でインターベンションが重要となる呼吸器系の救急治療領域では、特に「喀血」「気胸」に対する気管支鏡を用いた治療手技や、患者の利便性と効果を考えると今後さらに普及することが予想される新しい酸素療法である高流量鼻カニュラ(highflow nasal cannula)についても、薬物療法以外の治療法として解説をしていただいています。
VI章からXIV章は各論として各呼吸器領域の疾患を取り上げて解説をお願いしました。2018年に改訂されたCOPDと喘息のガイドラインでは、新しいガイドラインに沿って改訂のポイントがコンパクトに解説されています。特に難治性喘息に対する新たな治療であるサイトカインに対する抗体医薬と気管支熱形成術(巻頭トピックス参照)は呼吸器領域における目覚ましい進歩の一つです。また、2018年に特発性肺線維症(IPF)の診断に関する国際ガイドライン、2017年にわが国の「IPFの治療ガイドライン2017」(巻頭トピックス参照)が発表されIPFに関する診断・治療が大きく変更された点、ANCA関連血管炎に対する新しい治療としてのリツキシマブなど、今注目されている分野についても解説していただきました。肺循環や肺腫瘍領域では、薬剤開発が進歩してきていることに関連して最適な使用法を見極めるために、それら薬剤の併用やシークエンス、対象の選択などに関する多くの研究が進んでいます。
本書は毎回執筆者の先生方に可能な限り交代していただき、新鮮な視点から執筆していただくように努力していますが、今後2年ごとの改訂を予定していますので、これまで以上に多数の執筆者の先生方にお願いすることになるかと思います。
今回大変お忙しい中、執筆をお引き受けいただきご尽力を賜りました多数の執筆者の先生方に感謝申し上げますとともに、きめ細かなサポートを頂きました南江堂のスタッフの皆様に深謝し、本書が全国の多くの先生方の呼吸器疾患治療のバイブルとして日常臨床の場で活用されますことを編者一同期待して序文と致します。
2019年3月
門田淳一
弦間昭彦
西岡安彦
呼吸器診療を行う臨床医必携の本
『呼吸器疾患最新の治療 2019-2020』が発刊された。本書は1998年に初版発行後、21年の長きにわたり3年ごとの定期的な改訂が続けられてきたが、目覚ましく進歩する内容を早く取り入れるために、今回から2年ごとの発刊となった。呼吸器診療に携わる医療者にとって、基本的知識のみならず最新の情報も得られるので、まさしく頼りになる書籍である。
本書を開けるとまず「巻頭トピックス」が現れて、ガイドライン改訂や新規治療法・バイオマーカーの開発、ゲノム診断など、呼吸器領域の話題をまとめて知ることができる。次に「薬剤の作用機序と適応」、「治療手技」、「救急医療」、「呼吸不全と呼吸調節障害」など総論的項目の後、各論へと続き、最後は「呼吸器疾患の患者指導」で締めくくられる。呼吸器診療に必要な項目がすべて網羅されており、充実した構成となっている。また、本書はイラストや表、写真を豊富に使用していることや、文献をもとにしたエビデンスを「トピックス」と称して所々で紹介していることなどが特徴といえよう。各論は、疾患ごとに「診療のポイント」、「診断・検査と患者への対応」、「具体的な治療法」という構成で統一され、読みやすくて日常臨床での実用性はかなり高い。
呼吸器科医は、日常臨床で感染症、閉塞性疾患、間質性疾患、免疫・アレルギー性疾患、医原性疾患、肺循環障害、全身性疾患関連、腫瘍性疾患、先天性疾患など多岐にわたる領域を担当し、かつ急性期から慢性期まで幅広い診療にあたっている。昨今、数々の疾患で「診療ガイドライン」や「診療の手引き」の発刊が盛んであるが、自分の専門領域の知識を深めたり、非専門領域の診療の際に活用したりされていると思われる。気がつくと、小生の専門である呼吸器領域の主なものだけでも、肺炎、COPD、喘息とCOPDのオーバーラップ、特発性間質性肺炎、難治性びまん性肺疾患、特発性肺線維症、喘息、難治性喘息、薬剤性肺障害、ARDS、肺がんなど、ここ数年で11のガイドラインや手引きが発刊・改訂されている。これらの疾患は呼吸器領域のなかでも患者数が多く、かつ研究が盛んに行われ、多種類の分子標的薬が上市されていることなどにより、発刊のニーズが高いと思われる。ところが、多忙な呼吸器科医の日常臨床で目前の患者の診療を行う際に、これらを通読する時間の確保が困難な場合も多いと思われる。そのようななか、各疾患のエキスパートによる最新のガイドラインのコンパクトな解説とポイントを押さえた記述がなされている本書は非常に役に立つと考える。ガイドラインや手引きの発刊されていない疾患についても、言わずもがな、である。
本書は今後2年ごとの改訂がなされる予定であるが、毎回執筆者は可能な限り交代して、新たな視点から執筆がなされていくようである。本書の編集に長年携わっておられる門田淳一先生(2010-2012年版から)、弦間昭彦先生(2016-2018年版から)、本改訂で編集者にお加わりになられた西岡安彦先生に、発刊のお祝いを申し上げるとともに、呼吸器診療を行う臨床医に必携の書籍として本書をお勧めする次第である。
臨床雑誌内科124巻6号(2019年12月号)より転載
評者●近畿大学医学部呼吸器・アレルギー内科 准教授 岩永賢司