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ヒトの免疫学【電子書籍付】原書第3版

基本から疾患理解につなげる

: 松島綱治/山田幸宏
ISBN : 978-4-524-24545-1
発行年月 : 2019年6月
判型 : A4変型
ページ数 : 320

在庫あり

定価5,940円(本体5,400円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

重要項目をテーマごとにコンパクトに解説した免疫学の入門書。理解を助けるアイコンを設置するなど工夫された構成が特徴。また、豊富な図とともに、実際の症例や新たな知見がコラムとして掲載されており、臨床へのつながりを意識できるようなっている。免疫学を学ぶ医療系学生はもちろん、基礎免疫学の復習をしたい臨床医にもおすすめの一冊。

 1.免疫システム序論
 2.免疫システムの基本概念と構成要素
  自然免疫
  適応免疫
  免疫システムの構成要素
  能動免疫と受動免疫
  免疫応答の相
  免疫応答の種類
第II部 抗原認識分子
 3.抗原認識序論
  抗原認識分子
  B細胞レセプター(BCR)とT細胞レセプター(TCR)
  MHC分子
 4.抗原と抗体の構造
  抗原
  抗体
 5.抗体と抗原の相互作用
  抗体の抗原結合部位
  抗体や抗原に対する診断検査
 6.抗体の多様性
  免疫グロブリン遺伝子
  免疫グロブリンのクラス
 7.T細胞レセプター(TCR)
  TCRの構造
  TCR遺伝子の多様性の生成
  TCRによる抗原認識
  T細胞の機能に関与するアクセサリー分子
 8.主要組織適合遺伝子複合体(MHC)
  MHC遺伝子の構成
  MHC遺伝子の発現制御
  MHC分子の構造
  抗原認識のMHC拘束性
  集団におけるMHC多型の長所
  HLA アリルとの疾病の相関
 9.抗原認識の概要
  抗原認識分子の構造の重要な特徴
  抗原認識分子の多様性形成
第III部 免疫応答の機構と制御
 10.抗原プロセシングと抗原提示
  抗原プロセシングの経路
  抗原プロセシングの機序
  病原体によるプロセシング経路の回避
 11.B細胞とT細胞の活性化
  B細胞レセプター(BCR),T細胞レセプター(TCR)
  シグナル伝達
  シグナルの伝達経路による増幅
  T細胞とB細胞の応答
 12.造血
  造血の3つの主要な段階
  リンパ系細胞
  骨髄系細胞
 13.免疫システムの器官と組織
  1次リンパ器官と2次リンパ器官
  リンパ球トラフィキング(輸送)
 14.B細胞の分化
  B細胞の初期の分化
  末梢における成熟B細胞
  胚中心における体細胞突然変異とクラススイッチ
  胸腺非依存性抗原
  B1B細胞と自然抗体
 15.T細胞の分化
  胸腺におけるT細胞分化
  末梢におけるT細胞分化:抗原によるナイーブT細胞の活性化
 16.T細胞の相互作用とT細胞ヘルプ
  刺激,あるいは感作されたB細胞,T細胞の生成
  エフェクター細胞の生成
  病原体に対する最適な免疫応答の提供
 17.免疫記憶とホメオスタシス
  長期免疫記憶
  リンパ球のホメオスタシス
  アポトーシス
 18.免疫システムの制御
  寛容
 19.免疫応答の機構と制御の概要
  免疫システムの統合:適応免疫応答と自然免疫応答の連携
第IV部 自然免疫
 20.補体などの基本的な防御
  感染に対するバリア
  自然免疫システムの細胞外分子
 21.食細胞
  食細胞の種類
  食細胞の生成
  食細胞の動員
  食細胞のレセプター
  食細胞レセプターの分子パターン
  食細胞の作用
  食細胞の欠損
  自然免疫システムと適応免疫システムによる分子の認識
 22.免疫システムにおける殺傷機序
  寄生蠕虫への応答
  マスト細胞
  ナチュラルキラー(NK)細胞
  アポトーシスの細胞内機序
 23.炎症
  炎症の種類
  炎症におけるサイトカインネットワーク
  結核(TB)
  B型肝炎ウイルス(HBV)感染
  過剰な炎症応答
 24.免疫システムにおけるサイトカイン
  サイトカインの概要
  サイトカインレセプターとシグナル伝達分子
  免疫応答におけるサイトカインの役割の概説
  サイトカインとサイトカイン阻害薬の臨床使用
第V部 健康と疾病における免疫システム
 25.感染とワクチン
  病原体はどのように免疫応答を回避するか
  病原体に対する免疫の機序
  ワクチンの種類
  ワクチン接種スケジュール
 26.過敏症反応
  過敏症の誘発因子
  過敏症反応の種類
  過敏症の診断と治療
 27.即時型(I型)過敏症:アレルギー
  アレルギーの定義
  アレルゲン
  脱顆粒する細胞
  抗体
  Th2細胞
  アレルギーの素因
  アレルギーの早発相のメディエーター
  アレルギーの遅発相のメディエーター
  アレルギーの治療
 28.自己免疫疾患の発症機序
  自己免疫の一部は正常である
  自己免疫疾患の発症
  T細胞寛容
  T細胞寛容の破綻
  自己免疫疾患の検査
 29.抗体媒介性(II型)過敏症
  免疫介在性溶血
  II型過敏症と細胞機能に影響を与える抗体
 30.免疫複合体疾患(III型過敏症)
  免疫複合体における抗原
  免疫複合体における抗体
  免疫複合体の除去
  免疫複合体疾患における炎症の機序
  腎臓の免疫複合体疾患
  免疫複合体疾患の治療
 31.遅延型(IV型)過敏症と過敏症反応
  遅延型過敏症反応はTh1細胞により引き起こされる
  IV型過敏症
 32.原発性免疫不全
  感染は免疫不全の種類の手がかりとなる
  原発性免疫不全の原因
  重症複合免疫不全(SCID)のスクリーニング検査
  原発性免疫不全の診断
  原発性免疫不全の治療
 33.続発性免疫不全
  HIV感染
  ほかの続発性免疫不全
 34.移植
  移植に関する用語
  臓器移植
  造血幹細胞移植
  組織タイピング(適合検査)
  免疫抑制薬
  異種移植
 35.腫瘍免疫
  リンパ系腫瘍
  腫瘍免疫
 36.バイオ医薬品
  モノクローナル抗体
  遺伝子組換えサイトカイン
用語解説
索引

訳者序文

 『Immunology for medical students』が第2版の刊行から実に10年ぶりに改訂されました。本書は免疫学の基礎を臨床医学的な疾患や治療法などの知識と結びつけて学ぶことができるという他書にはない特徴を持っています。複雑で理解するのが難しい免疫学について、最新の知見や臨床症例を掲載しつつ、わかりやすく整理されているため、はじめて免疫学を学ぶ医歯薬系の学生にも、免疫学を復習したい臨床医にも適しています。また、看護師、臨床検査技師,管理栄養士,診療放射線技師をはじめとする医療従事者、およびその養成課程の学生にも役立つ内容となっています。
 本書は、全36章からなる5部構成となっています。必要な免疫学の知識がコンパクトにまとめられているため、本書を通して免疫学を包括的に理解することができます。また、1つの章が1つのテーマで完結していることから、必要に応じて、興味のある章だけ読むこともできます。
 各々の章のはじめには、その章の内容が概要図としてひと目でわかるようにまとめられています。また、本書の図では免疫システムの構成要素はそれぞれ統一されたアイコンで示されており、自然免疫、適応免疫で色を変えて表示するなど、視覚的により理解しやすい構成となっています。さらに、実際の症例写真も充実しており、臨床例の理解が促進されることと思います。近年研究が進められているエピジェネティック変化に基づく免疫療法、自己免疫疾患やがんなどの臨床で実際に使用されるバイオ医薬品など、新たな治療法などについての解説も充実しています。本書の臨床に関する記述は欧米での例が中心となるため、日本の現状と異なる部分に関しては読者の理解を助けるよう「訳者註」として説明を追加しました。
 各章の終わりの学習チェック問題では、その章で修得しておかなければならない知識がまとめられています。巻末には免疫学で用いられる用語の解説が掲載されているため、わからない用語を調べる際には索引と合わせて有効活用いただければと思います。さらに、本書には日本語翻訳版の電子書籍および原書付属の「Student Consult」(英語表記)へのアクセス権がついています。電子書籍では,本文の閲覧のほか、検索することもできるため、より効率よく免疫学を学ぶうえで有用でしょう。免疫学は今後疾患の発症機序の解明や治療法の開発においてますます重要となることと考えられます。本書が読者の皆さんが免疫学に興味をもち、理解する手助けとなれば幸いです。

2019年4月
松島綱治
山田幸宏

 免疫学の基礎を臨床医学的な側面、ことに病気や治療法などを関連づけて学べる名著『Immunology for Medical Students』が約10年ぶりに改訂され、2016年に第3版として刊行された。これを受けて、このたび松島綱治先生、山田幸宏先生が渾身の翻訳を担当され、同書の日本語版『ヒトの免疫学』が出版された。本書は、基礎免疫学研究から臨床までの幅広い視点と視野をもち、国際的にも八面六臂の活躍をされているお二人の訳者による、とてもわかりやすい文章で綴られている良書である。ことに、免疫学を対象として、臨床と研究の両輪を見渡す広い視野のもと、基本的な事項の再確認から始まり、疾患の病態や治療法との関連が明快に記されている。
 本書の大きな特徴は、難解な内容を平易な文章と綺麗な図でとても理解しやすいように工夫がなされていることである。ことに、各章はテーマごとにコンパクトにまとめられている。さらに、各章の冒頭にエッセンスの図が配されており、章の全体像を俯瞰できることはとてもありがたい。とくに、多忙を極めている方々にもお役に立つのではないかと思う。各章末にはボックスと表記された各トピックスと学習チェック問題が配されている。これも修得に向けて、知識の整理の参考になる。内容としては、ことに免疫学の基礎から、実際の臨床例を意識した構成になっている。研究が急速に進んでいるエピジェネティックな変化とそれに関連する免疫療法、臨床的に広く用いられるようになってきたバイオ医薬品の解説など、新しい情報も充実している。いずれも読者のニーズに立って、複雑な免疫学をわかりやすく、親しみやすく学べる工夫が随所に見受けられる。これらの工夫により、免疫学の基本事項のポイントを押さえ、最新情報を積み上げて学ぶことができる。まさに、幅広い裾野と高い頂を同時に有する山容のイメージではないかと感じる。
 本書は、免疫学の研究をはじめ、免疫が関連する病気の診療に携わる医師はもとより、これから臨床や研究を始めようとする医歯薬系の学生、看護師、臨床検査技師、管理栄養士、診療放射線技師といった医療従事者の皆様にも響くものがあると思う。実際の症例での意義の紹介や写真も豊富であることは特筆すべき点であり、免疫学を基礎から臨床まで包括的に理解しやすいように配慮されている。これは、臨床の現場にいる医師が基本に立ち返るとともに、疾患の発症機序、最新の治療法の進歩に触れる一助になると思う。とくに非専門の医師が患者を前にして短時間で効果的に学び直すことができる点は利便性が高くありがたい。まさに、本書の帯に記載されているように「はじめて学ぶ学生からもう一度復習したい臨床医まで」の多くの読者に必ずやお役に立つであろう。ぜひご一読いただき、活用していただければと願っている。

臨床雑誌内科125巻3号(2020年3月号)より転載
評者●金沢大学副学長・医学系長・腎臓内科学教授 和田骼u

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