書籍

低侵襲心臓手術の基本と実践

始めたいひとも,始めたひとも

編集 : 日本低侵襲心臓手術学会
責任編集 : 宮本伸二/柴田利彦
ISBN : 978-4-524-24536-9
発行年月 : 2019年2月
判型 : B5
ページ数 : 230

在庫あり

定価11,000円(本体10,000円 + 税)


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  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

低侵襲心臓手術(MICS)は2018年4月に保険収載され、スペシャリストによる特別な治療の枠を超えて大きく普及しつつある。本書は、日本低侵襲心臓手術学会が種々のアプローチや手術手技の実際、体外循環法やピットフォールとその対策にいたるまで、MICSを安全に行うために必要な知識を結集。MICSを始めたばかり・これから始めたい心臓手術スタッフ必携の入門書。

巻頭言
I.MICSの歴史と近年の展開
 1.日本におけるMICSの歴史
 2.保険収載にあたって
II.MICSの特長:正中切開との比較
 1.周術期・創部・疼痛および社会復帰期間の比較
 2.コストおよびデメリット,患者選択
III.アプローチ
 A.胸骨部分切開
  1.胸骨上部部分切開法:MICS-AVRを例に泉谷裕則
  2.胸骨下部部分切開法:方法と適応
 B.右小開胸による僧帽弁手術
  B-(1)開胸器あり
   1.内視鏡補助直視下による右小開胸僧帽弁形成術
  B-(2)開胸器なし
   1.完全内視鏡下アプローチ:3-port法
   2.ポート分散型の内視鏡下僧帽弁手術
 C.右小開胸による大動脈弁手術
  1.右腋窩切開内視鏡補助下大動脈弁置換術
  2.右肋間小開胸大動脈弁置換術:前方切開と前側方開胸
 D.左小開胸による直視下MICS-CABGの術野展開
IV.症例選択基準
 A.僧帽弁(右小開胸アプローチ)
  1.リスク評価の基準
  2.総合的なリスク評価
 B.大動脈弁(右小開胸アプローチ)
  1.体外循環の視点からのMICS-AVR症例選択
  2.大動脈弁と周辺の解剖,冠動脈硬化,redo症例について
V.手術器械のあれこれ
 A.MICS手術器械総論
 B.施設別のMICS手術器械セット
  1.大阪市立大学のMICS手術器械セット
  2.千葉西総合病院のMICS-AVRセット
  3.名古屋第一赤十字病院のMICS手術器械セット
  4.一宮西病院のMICS-CABGにおける使用機器
VI.糸結びのさまざまな工夫
  1.二人で行う結紮(1)(大阪市立大学)
  2.二人で行う結紮(2)(名古屋第一赤十字病院)
  3.一人結び
VII.MICSにおける体外循環の実際
 1.心臓病センター榊原病院におけるMICS体外循環
 2.MICS体外循環の実例
VIII.手術方法・手術手技
 A.大動脈弁の手術
  1.腋窩切開によるMICS-AVR
  2.前側方開胸によるMICS-AVR
  3.MICS-AVRの体外循環
 B.僧帽弁の手術
  1.ループテクニックによるMICS僧帽弁形成術
  2.内視鏡下僧帽弁形成術(1)(東京ベイ・浦安市川医療センター)
  3.内視鏡下僧帽弁形成術(2)(名古屋第一赤十字病院)
  4.顕微鏡下僧帽弁形成術
  5.変性性僧帽弁閉鎖不全に対するMICSによる形成術
 C.三尖弁の手術:MICS三尖弁形成術
 D.冠動脈バイパス術(CABG)
  1.MICS-CABG(1)(一宮西病院)
  2.MICS-CABG(2)(兵庫医科大学)
 E.心房中隔欠損症手術
  1.心房中隔欠損孔閉鎖
  2.心房中隔欠損:小児におけるMICS
IX.ピットフォールと打開策,合併症と予防策
 A.総論:右小開胸弁膜症手術におけるヒヤリハット報告事例の解析
 B.各論:独自の理論と打開策
  1.MICSにおける出血コントロール
  2.末梢血管カニュレーションの工夫と合併症の回避(1)(大阪市立大学)
  3.末梢血管カニュレーションの工夫と合併症の回避(2)(千葉西総合病院)
  4.右小開胸MICS後の片側性肺水腫とその対策
  5.右小開胸MICSにおける空気塞栓症とその対策
X.ロボット補助下僧帽弁形成術
 1.国立循環器病研究センターのロボット手術
 2.ニューハート・ワタナベ国際病院のロボット手術
XI.孤立性心房細動に対するMICS
 1.ポートアクセス完全内視鏡下手術(Wolf-Ohtsuka法)
 2.Wolf-Ohtsuka法の成績
編集後記
エピローグ
索引

巻頭言

 このたび、日本初の本格的な低侵襲心臓手術(minimally invasive cardiac surgery:MICS)のテキストが、日本低侵襲心臓手術学会から世に送り出されることとなりました。MICSに特化した貴重な情報満載のテキストです。
 昨今の心臓血管外科領域では手術術式がより低侵襲化の方向に進んでおり、種々のデバイスの発展がこの傾向にさらに拍車をかけております。欧米などでも右小開胸僧帽弁手術が普及しており、robotic surgeryや種々のデバイスの開発なども急速に進んでいて、全世界的にもMICSへのニーズは高まりつつあると考えられます。その勢いは1990年代にMICSが初めて紹介されたときとは比べものにならないほどになっています。
 この状況を鑑み、2012年に有志とともに大阪にて心臓血管外科医、循環器内科医、麻酔科医、メディカルスタッフの方々などすべてのMICSに関わる方々を対象とした研究会をWest Japan MICS Summitとして開催し、2013年にはそれを全国規模に発展させたJapan MICS Summitを立ち上げて、Japan MICS Summit in Osakaを開催しました。その後、さらに多数の世話人に参加いただき、Japan MICS Summitの組織の規模をさらに拡大し、2015年には「一般社団法人日本低侵襲心臓手術学会」を設立して、さらなる活動を続けております。
 MICSが日本においても脚光を浴びる中、今後も一層の発展を目指し、心臓血管外科領域における安全な普及に努め、より一般的な治療へと確立していくことが、我々の使命と考えております。そのためには、実際の臨床にもすぐに役立つことを目的とした僧帽弁や大動脈弁、冠動脈領域でのMICSを中心に、術式だけでなくピットフォールの情報共有が重要と考えており、このテキストはそのような思いの中で生まれたものです。
 本書はMICSの科学的なエビデンスに基づくバックグラウンドから実際の手術手技、ピットフォールまで、留意すべきポイントをすべて網羅しております。術式も、最もポピュラーであるMICS僧帽弁形成術だけでなく、大動脈弁置換術、三尖弁形成術、さらにMICS冠動脈バイパス術や心房中隔欠損手術、孤立性心房細動に対する手術まで、あらゆるMICS手術を網羅したうえでMICS関連器具やエキスパートの先生の実際のセットアップまで含まれていますので、即、臨床応用可能なテキストとなっています。
 本テキストが日本の心臓血管外科の将来を担う、専門医、指導医、若手研修医の先生方に広く活用され、MICSの安全な普及に少しでも役に立つことを願ってやみません。
 最後に、宮本伸二先生・柴田利彦先生をはじめとする、忙しい業務の合間を縫いつつも編集・執筆に携わってくださったMICSに情熱を燃やす多くの先生方、編集に携わってくださった南江堂の方々に深い感謝の意を申し上げます。

2019年1月吉日
一般社団法人日本低侵襲心臓手術学会代表理事
大阪大学大学院心臓血管外科学教授
澤芳樹

 元号は令和となり、今や低侵襲心臓手術(MICS)は時代の淘汰を受けて新たな発展を遂げようとしている。巻頭にも記載されているが、平成初期の20年前のブームとは異なり、保険診療のうえでも内視鏡補助下弁形成手術という新たな加算が認められるようになり、MICSが患者にとって利益があるということが世間からも広く認められた治療法として確立しつつあるといってよいであろう。
 さて、「それならばうちの施設でもMICSを始めてみよう」と思っても、「従来の手術で培ってきた正中切開創からの快適な視野を犠牲にして、安全な手術ができるのか?」という疑問のもとに、躊躇してしまう向きもあるかと思う。本書では、本邦で安全かつ確実なMICSを導入することにすでに成功されている先生方が、自らの経験のもとに培ってきたすべてを、惜しげもなくつまびらかにしてくれている。それは、日本低侵襲心臓手術学会(J-MICS)が主導となり、学会の運営を担う中心となっている先生方が自らペンをとって本書を作り上げているからこそできることである。
 MICSを始めるにあたっては、おそらく施設見学などを通して、手術の器械・体位・手順など外科医としての準備事項のほかに、麻酔科医・体外循環技師・手術室看護師らのチームとして準備すべきことを学ぶ必要がある。本書には、あたかもいくつかの施設見学をしたかのような錯覚にも陥りそうなぐらい多くの写真や図が使用されており、それぞれにわかりやすい解説がなされている。
 これからMICSを始めようと考えている施設の医師やメディカルスタッフの方々、MICSを始めてみたけれどまだまだ修正をしつつ自分たちのスタイルを確立しようと思っている方々に、ぜひとも本書を手に取って読破してくださることをおすすめする。必ずや背中を押してくれる数多くのポイントを見出すことができると思う。それこそが、MICS手術を行ううえでの自信に繋がることになるであろう。

胸部外科72巻8号(2019年8月号)より転載
評者●自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科教授 山口敦司