書籍

ここが大事!下肢変形性関節症の外来診療

編集 : 内尾祐司
ISBN : 978-4-524-24169-9
発行年月 : 2019年2月
判型 : B5
ページ数 : 220

在庫あり

定価5,940円(本体5,400円 + 税)


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  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

下肢の変形性関節症患者の多くが保存的治療を受けており、よりいっそうの変形性関節症の外来診療の充実が必要となっている。手術的治療の詳細は他書に譲り、第一線の執筆陣らが生活指導(患者教育)、運動療法、物理療法、装具療法、注射療法、あるいは術後の後療法・リハビリテーションといった外来で行う変形性関節症の診療を解説した整形外科医必携の書。

第1章 変形性関節症とは
 1.定義
 2.疫学
 3.病因
 4.診断
 5.治療
第2章 変形性股関節症の外来診療
 1.診断と専門医への紹介のタイミング
 2.保存療法
  1)自然経過
  2)生活指導
  3)運動療法・物理療法
  4)薬物療法(内服・外用薬・注射薬)
  5)装具療法
 3.手術療法
  1)手術適応と治療法
  2)後療法・リハビリテーション
  3)術後留意点・合併症,再手術
第3章 変形性膝関節症の外来診療
 1.診断と専門医への紹介のタイミング
 2.保存療法
  1)自然経過
  2)生活指導
  3)運動療法・物理療法
  4)薬物療法(内服・外用薬・注射薬)
  5)装具療法
 3.手術療法
  1)手術適応と治療法
  2)後療法・リハビリテーション
  3)術後留意点・合併症,再手術
第4章 変形性足関節症の外来診療
 1.診断と専門医への紹介のタイミング
 2.保存療法
  1)自然経過
  2)生活指導
  3)運動療法・物理療法
  4)薬物療法(内服・外用薬・注射薬)
  5)装具療法
 3.手術療法
  1)手術適応と治療法
  2)後療法・リハビリテーション
  3)術後留意点・合併症,再手術
付録
 診療ガイドラインにおける各種治療法の推奨
索引

序文

 超高齢社会が顕現化した日本において、高齢者を悩ます運動器疾患の重要性はますます高まっています。なかでも加齢を基盤とする変形性関節症(OA)は、高齢者の運動器疼痛や機能障害を生じる主たる疾患であり、日常生活動作(ADL)を障害し、生活の質(QOL)を大きく低下させてしまいます。そのようなOAに果敢に立ち向かい、多くの人を苦悩から救おうとする人たちの切実な願いと叡智が本書にはちりばめられています。
 40億年前、太古の海から生まれた生物は、3億6千万年前、重力に抗して地上に這い上がり、陸上動物に進化しました。そして、長い進化の過程で6,500万年前、霊長類が分かれ、二足直立歩行を得たホモ・エレクトスHomo erectusは世界に拡大していきます。ネアンデルタール人は絶滅したものの、100万年前に分岐したホモ・サピエンスHomo sapiensは生き残ります。社会・経済・歴史・技術・文化・新規性をもった“賢い人”という名のホモ・サピエンスは、生き残るだけでなく、文明社会を築き地球を支配するまでに至ります。そして、疾病の克服や公衆衛生の発達によって、今やかつてないほどの長寿をも手にしています。
 しかし、陸上で重力に抗して生きる人間にとって、長寿は運動器を使用する時間を長くすることでもあります。長時間の下肢関節への負荷は、OAを招く危険性を高めます。そして、OAが発症すれば、人間は疼痛に悩まされる、ホモ・パティエンスHomo patiens(苦悩する人)ともなるのです。本来寿ぐべきはずの長寿なのに、いまなおホモ・サピエンスはOAの呪縛から逃れることはできません。下肢のOAは、個人的には慢性疼痛を伴い、ADL障害をもたらすばかりか、筋力低下が進み、関節拘縮や破局的思考やうつ状態など、様々な廃用症候群をもたらし、要介護状態への悪循環を形成します。一方、OAによる医療費および経済損失は甚大であり、社会にも大きな負荷を与えています。
 今後、日本は超高齢化の進行とともに、年少人口や生産人口が半減する人口減少社会が到来します。このため、高齢者への健康・福祉対策だけでなく元気な高齢者が日本社会を支えるシステムの構築も考えていかねばなりません。この観点からOAをどう克服していくかは、超高齢・人口減少社会日本の喫緊の課題のひとつであるといえます。このようななか、外来診療において下肢OAの病態・診断・治療の要点を認識し、適切な診断と的確な治療を行うことは、運動器の専門家としての整形外科医の使命であると考えます。
 本書は、日本における下肢OAに関する基礎・臨床研究分野で随一の専門家の方々にご執筆いただき構成したものです。OAの定義や疫学、病因などの総論、股関節、膝関節および足関節におけるOAの診断や専門医への紹介のタイミングと保存療法および手術療法などを、わかりやすくご執筆いただきました。本書は下肢のOAの外来診療の現在を総覧したガイドブックです。健康長寿延伸のために、どうか本書を診療室の机上に置かれ、診療の参考の一助になれば編集者として望外の喜びであります。
 編集者として、ご多忙のなか、精力的に執筆作業をこなし貴重な原稿をお寄せいただいたすべての執筆者の皆様に厚く御礼申し上げます。
 また、膨大な実務作業を忍耐強くかつ緻密にこなしていただいた南江堂の諸氏に改めて御礼申し上げます。

2019年1月
内尾祐司

 下肢の変形性関節症(OA)は、股関節・膝関節・足関節のいずれに発症しても歩容異常・歩行困難の原因となり、また疼痛や可動域制限は日常生活動作(ADL)の制限につながり、生活の質(QOL)を大きく低下させる。下肢のOAに対する診断・治療は、超高齢社会にあってはロコモティブシンドロームの予防、健康寿命の延伸といった観点から重要で、また中高年のスポーツ障害や一般外傷後のOAもあり、ますますその重要性を増している。本書は外来診療に関して下肢OAにしぼってまとめられており、今までありそうでなかったカテゴリーの書籍である。
 OAについての章に続いて、股OA・膝OA・足OAの外来診療について記述されている。各々の章は、「診断」と「専門医への紹介のタイミング」から始まっており、実際の外来診療でどうしたらよいのかという疑問点をすばやく解決しうる構成となっている。診断や治療に関する各項目では、「ここが大事!」が最初に記載され、続いて「最新のトピック」や、各々の治療に関する「ガイドラインの位置づけ」もまとめられているので、実臨床に即した理解しやすいつくりとなっている。
 外来診療と銘打っているがそれだけにとどまらず、治療については保存的治療のみならず手術的治療についても詳細にまとめられている。保存的治療として生活指導、運動療法、物理療法、薬物療法、装具療法について各々具体的にかつ実用的に記載されている。運動療法、物理療法については、リハビリテーションの観点から訓練の種類や回数や肢位など具体的に記載されており、また中止基準もまとめられておりたいへん参考になる。薬物療法については、American Academy of Orthopaedic Surgeons(AAOS)やAmerican College of Rheumatology(ACR)、Osteoarthritis Research Society International(OARSI)などのガイドラインにおける各薬剤の推奨度や変遷についても記載されていて参考になる。たとえばヒアルロン酸の膝関節注射について、AAOSのガイドラインでは症候性膝OAの患者についてはプラセボに対する優位性はないとし、推奨できないことをstrongとしている。このように欧米では、本邦でヒアルロン酸の膝関節注射が早期膝OAの症例に適応とされ、使用されている実態とはかなり異なっている可能性について言及されている。侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛などについてもまとめられていて、疼痛医学の現状に対する理解が深まる。
 分類や治療に関するフローチャート、また装具に関する図が多く掲載されており、ビジュアル的にもみやすい。こうした種々の構成には、少しでも外来の実臨床にすぐに役立つことを念頭におかれた、編者である内尾祐司氏(島根大学)の強いこだわりを感じる。このような構成と内容は、医師だけではなく、リハビリテーションに携わる理学療法士・作業療法士や、看護師、ひいては一般の人々にいたるまで幅広く参考になる書籍であると思う。
 さらに、各章末には出典として最近の文献がまとめられており、最新のエビデンスに基づいた内容であることが明確で、より詳細に内容を知りたい場合には文献にさかのぼって調べることができる。付録として、股OAと膝OAの診療ガイドラインにおける治療法のGradeと合意率も掲載され、各々の治療法がどういった位置づけなのかが客観的にわかりやすく記載されている。
 若手医師のみならずベテラン医師にとっても、最新のエビデンスに基づいたOAの現状を短時間で把握しうる親切な内容となっている。外来診療の一助として診察室においておきたい指南書である。

臨床雑誌整形外科70巻12号(2019年11月号)より転載
評者●山口大学大学院整形外科教授 坂井孝司