書籍

乳がん薬物療法ハンドブック

編集 : 佐治重衡
ISBN : 978-4-524-24147-7
発行年月 : 2019年1月
判型 : 新書
ページ数 : 342

在庫あり

定価4,620円(本体4,200円 + 税)


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正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

乳がんの薬物療法について、有害事象対策なども含め、必要十分な情報をコンパクトにまとめたポケットサイズのマニュアル書。マイナーなレジメンも含む計44のレジメンを収載し、各レジメンの冒頭には「投与スケジュール」、「必要な検査」、「主な副作用」が一目でわかる表を掲載。臨床現場における注意点やコツも盛り込んだ、乳がん診療に携わるすべての医療者必携の一冊。

I章 総論
 1.乳がん治療の基本アルゴリズム
 2.乳がん薬物療法の概要
II章 薬物療法の実践
 A.術前・術後薬物療法
  a.化学療法
   1.FEC(前)/EC,AC(前・後)
   2.weekly paclitaxel(前・後)
   3.3-weekly docetaxel(前・後)
   4.TC(後)
   5.ddAC-ddPAC(後)
   6.classical CMF(後)
   7.tegafur・uracil(後)
   8.capecitabine(後)
   9.weekly paclitaxel+weekly trastuzumab(前・後)
   10.3-weekly docetaxel+3-weekly trastuzumab(前・後)
   11.docetaxel+carboplatin+trastuzumab
   12.trastuzumab(後)
  b.ホルモン療法
   1.アロマターゼ阻害薬(ANA,LET,EXE)(前・後)
   2.tamoxifen・toremifene(前・後)
   3.LH-RHアナログ(前・後)
 B.進行・再発乳がんに対する薬物療法
  a.HER2陽性乳がん
   1.paclitaxel+trastuzumab+pertuzumab
   2.docetaxel+trastuzumab+pertuzumab
   3.trastuzumab emtansine
   4.capecitabine+lapatinib
   5.trastuzumab+lapatinib
   6.《番外編》その他の化学療法+trastuzumab+pertuzumabもしくは+trastuzumab
  b.HER2陰性乳がん
   1.EC/AC
   2.weekly paclitaxel
   3.weekly paclitaxel+bevacizumab
   4.3-weekly docetaxel
   5.nab-paclitaxel
   6.eribulin
   7.capecitabine
   8.S-1
   9.vinorelbine
   10.gemcitabine
   11.CPT-11
   12.paclitaxel+gemcitabine
   13.docetaxel+capecitabine
   14.XC(capecitabine+cyclophosphamide)
  c.ホルモン陽性乳がん
   1.アロマターゼ阻害薬(ANA,LET,EXE)
   2.tamoxifen・toremifene
   3.fulvestrant
   4.EXE+everolimus
   5.ホルモン療法+palbociclib
   6.アロマターゼ阻害薬+lapatinib(+trastuzumab)
   7.medroxyprogesterone acetate(MPA)
   8.ethinylestradiol
  d.骨修飾薬
   1.zoledronic acid
   2.denosumab
III章 有害事象への対策
 1.白血球減少と発熱性好中球減少症
 2.貧血・血小板減少
 3.悪心・嘔吐
 4.便秘・下痢
 5.口内炎
 6.手足症候群
 7.浮腫
 8.脱毛
 9.infusion reaction
 10.心臓毒性
 11.間質性肺炎
 12.末梢神経障害
 13.B型肝炎の再活性化対策
 14.妊孕性低下
IV章 症状緩和のための支持療法
 1.疼痛に対するオピオイドや支持薬の使い方
 2.うつ・不眠などの心理反応に対する支持薬の使い方
付録
 有害事象共通用語規準(CTCAE)
索引

序文

 webサイトで、“ハンドブック”を検索してみると、「ハンドブック(英:Handbook):便覧とも呼ばれる。ある分野において、使用頻度が高い内容を簡潔にまとめた書物のことである」と出てきます。
 本書は、“乳がんの薬物療法”分野において、“使用頻度の高いレジメンと有害事象”を簡潔にまとめた、“診療現場で使える手軽な書物”です。
 とはいえ、目次をみていただくとわかりますが、使用頻度は低いものの、“あれ、どうするんだっけ?”となりそうなクラシカルなレジメンや、保険適用のないもの、エビデンスレベルの低めなものも編者の特権で入れさせていただきました。これらは、いざというときに、またふっと忘れかけた頃に役立ってくれると思います。目の前の患者さんに対して使いやすいように、治療設定(術前・術後、進行・再発)とレジメン(薬剤ごとではなく組み合わせとして)の組み合わせで1項目にしています。そのため、同じ薬剤のレジメンが術前・術後と進行・再発の2回登場することがあります。
 レジメンはそのまま投与指示に使えるように、支持療法や生食流しなども含め、各執筆者が普段使用しているものを一例として掲載しています。投与・減量・中止基準は、そのまま現場では適用できないかもしれませんが、薬剤によっては、ふっと忘れてしまいそうな重要なチェック項目の見逃しを避けられると思います。また、時系列の副作用発現タイミング図や、「私の工夫」のようなワンポイントアドバイスは現場できっとお役に立つと思います。「基本的な治療成績」と「患者への指導」は、患者さんに治療の説明をする前に是非ちらっとご覧ください。
 執筆者の先生方には、何度かご苦労をおかけしつつできるだけ正しく、工夫して書いていただいています。しかし、どうしても細かな間違いが残っているかもしれません。そのときは、是非出版社へご一報ください。みなさまのご意見をいただきながら、本当に“診療現場で使える手軽な書物”に育てていきたいと思います。

2019年1月
佐治重衡

 「マニュアル」「ハンドブック」と名のついた医学書は数多い。マニュアル本に対してこれまでは必ずしも好意的に捉えられない向きもあった。とくにオーソリティからは、“考えることのない医療の横行”や“杓子定規で工夫のない医療の助長”といった批判的意見が寄せられることがしばしばあった。しかし、現実の医療で100点満点の満足いく行為ができることはほとんどなく、何とか及第点を得ようと泥臭く現場で努力しているのが医療者の実際ではないだろうか。これは医療が社会システムのなかに構築されていて、人間という不可知なものを扱うゆえの宿命のようなものである。
 限られた社会的リソースという制限のなかにあって、日々時間に急かされ同時に医療安全を念頭に置かねばならない医療者にとって「よいマニュアル本」は誠にありがたい存在である。
 ところで、よい本には共通するものがあると普段から感じている。これはマニュアル本とて例外ではない。一つ目は、全体に貫かれた強い方針、格好よくいえば「フィロソフィー」を読み手が感じられるもの。それがない単なる知識を羅列しただけの本はWEBで調べればあらかたのことがわかる昨今、どんどん淘汰されてしまうだろう。
 二つ目は、著者の体験に基づいて書き込まれていること。実際に体験してもいないのに外国の文献を参考に書かれている文章を読者は鋭く見破るものだ。
 最後の三つ目は、これを伝えたいという情熱や覇気が本のそこかしこに滲み出ているもの。これがあると知らず知らずのうちに読者は引き込まれ、読後感も爽やかとなる。
 さて、『乳がん薬物療法ハンドブック』である。マニュアル本には違いない。しかし、少々違う。多数の著者で書いた本にありがちな、項目ごとの不統一感は最小限に抑えられている。各レジメンには用法、用量、副作用がコンパクトに記載されており大変読みやすい。「基本的な治療成績」は文献とともに詳述されているため基本事項を振り返るのに便利である。第III章の「有害事象への対策」は乳がんに限らず広くがん薬物療法全般に通用する事項である。また、本の大きさから白衣のポケットに入れて臨床ですぐに使えるという点も読み手のことを考えられていてありがたい。
 これまで多くのマニュアル本をみてきたし、自らが責任者として執筆した本もあるが、正直なところ質も内容もピンキリである。そんななかにあって『乳がん薬物療法ハンドブック』は上記3つの要件を見事に満たした本であり、ぜひ手に取られることをお勧めする次第である。

臨床雑誌内科125巻3号(2020年3月号)より転載
評者●国立がん研究センター東病院乳腺・腫瘍内科 医長 向井博文