書籍

結核診療ガイド

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

編集 : 日本結核病学会
ISBN : 978-4-524-24145-3
発行年月 : 2018年6月
判型 : B5
ページ数 : 154

在庫品切れ・重版未定

定価3,300円(本体3,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本結核病学会編集。「結核診療ガイドライン」は、医療者および行政関係者における結核の診療指針として2009年より発行し、3年ごとに改訂を行っている。今版では書名を「結核診療ガイド」に改めたが、基本方針・内容は「結核診療ガイドライン(改訂第3版)」を踏襲し、外科治療の記載の充実、気管支鏡検査時の感染対策、救急診療における感染対策を追記するなど、最新の内容を反映、ブラッシュアップしている。

I章 結核の現状
 1.世界の結核の現状と対策
 2.日本の現状
 3.新たな対策
II章 結核の診断
 1.結核の発症・治癒の様式
 2.臨床症状
 3.画像診断
 4.喀痰検査以外の検査
 5.ハイリスク者の結核
 6.肺外結核
III章 結核菌検査
 1.抗酸菌検査の臨床上の注意点
 2.塗抹検査
 3.培養検査
 4.同定検査
 5.薬剤感受性検査
 6.核酸増幅法検査
IV章 結核患者の管理
 1.患者の発生届
 2.保健所による積極的疫学調査
 3.入院および退院の基準
 4.結核医療費の公費負担制度
 5.保健指導,治療支援
 6.DOTS
V章 結核の治療
 1.結核治療の原則
 2.化学療法の原則
 3.標準治療の実際(活動性結核)
 4.標準治療における主な副作用への対応
 5.過去に治療歴がある場合,治療中悪化の場合
 6.標準治療が行えないとき(活動性結核)
 7.化学療法以外の治療
 8.小児,妊婦および合併症がある場合の治療
 9.附:主な抗結核薬の分類と種類
VI章 潜在性結核感染症
 1.潜在性結核感染症(LTBI)とは
 2.LTBIの治療対象の選定
 3.感染診断法
 4.接触者健康診断の方法と事後措置
 5.LTBI治療の実際
 6.LTBIをめぐる制度
VII章 医療従事者に対する対策
 1.医療従事者の院内感染
 2.医療機関における感染防止対策の考え方
 3.組織的な対策
 4.環境上の感染防止(作業環境管理)
 5.個人の感染防止(作業管理)
 6.結核患者発生時の対応
 7.気管支鏡検査時の感染対策
 8.救急診療における感染対策
索引

序文

 この度、日本結核病学会は「結核診療ガイド」を発刊することになりました。本書の前身は「結核診療ガイドライン」であり、初版は2009年に発刊されました。その後、2012年に第2版、2015年に第3版が発刊され、3年ごとの改訂が行われてきました。第3版から3年が経ち、今回、第4版としての改訂発刊予定でした。しかし、近年「ガイドライン」の定義が厳しくなり、「結核診療ガイドライン」の一部はガイドライン作成マニュアルに沿っていないこともあり、第3版を改題し「結核診療ガイド」として内容を刷新し発刊することになりました。本学会ではガイドライン施行委員会を立ち上げ、「ガイドライン」作成の準備に入りましたが、「ガイドライン」作成までに時間を要し、結核診療を取り巻く状況は変化していますので、「ガイドライン」ができあがるまでは本書を活用していただければと考えています。
 内容的には今までの「結核診療ガイドライン」の主旨に沿っており、さらに新情報を盛り込んでいます。各項目はそれぞれの専門家に原稿を依頼し、現在の結核診療を理解するうえで必要な事項をすべて網羅していると考えています。画像診断では大幅に誌面を増やし、新しい核酸増幅法検査や多剤耐性肺結核の治療薬としてのベダキリンの記載など結核診療に必要な最新情報を加えています。
 結核患者数は減少したとはいえ、結核中蔓延国の日本では結核患者に遭遇する機会はすべての医療機関にあります。状況によっては自ら結核治療を行ったり、結核院内感染対策を行うことになるでしょう。「結核診療ガイドライン」は研修医教育を目的に作成されたという経緯がありますが、本書は一般臨床医や呼吸器専門医にも活用いただける内容になっています。
 結核罹患率が人口10万対10を切って結核低蔓延国の仲間入りをするためには、結核を熟知し、治療を貫徹し、感染対策・発症予防を徹底する必要があります。本書は日常の結核診療における疑問点を解決してくれるものと自負しており、本書が活用されて結核患者数の減少に役立つことを願っています。

2018年5月
「結核診療ガイド」編集責任者
永井英明

 この書名をみて、それが2009年以来、日本結核病学会が3次にわたって世に出してきた「結核診療ガイドライン」の続編であるということを認識するのに一瞬時間がかかる。序文によれば、本来本書は同ガイドライン改訂第4版となるべきところ、ガイドラインの定義が厳しくなり、現在の準備状況ではその要件を満たさない箇所が一部にあることから、今回の名称になったとのことである。次回改訂時にはこれらの問題を克服して再びガイドラインの名称で出すべく準備が続けられているという。
 本書は、基本的にはこれまでの本シリーズの記述スタイルを踏襲している。すなわち、新規発生は着実に減少しつつあるとはいえ、いまだ中蔓延国レベルにあるわが国では、すべての医療現場で結核に遭遇する機会があり、それに向き合うであろう医療関係者、とくに若手医師への教育を意図しつつ、医療行政従事者、一般臨床医、呼吸器専門医にも、これまでの知識を整理し、アップデートしてもらえる内容となるよう配慮されている。
 全体としては第3版と比べ大幅に増ページされ、いくつかの点でより充実した内容となっている。
 診断部門では、結核菌の検査技術として、核酸増幅法の記述が詳細になっており、最近の進歩を知ることができる。特筆すべきは画像診断の項で、大幅な増ページとなり、記述が本格的なものとなった。一人の患者において数年〜時には数十年に及ぶ結核症の病像は、進展形式(気道散布性、血行性)、空間的分布、そこにさらに時間的要素も加わり実に多彩である。その全貌を、結核病学の先達たちが解明した古典的な病理学的理論の上に立って、そこに現代のHRCTの読影理論を応用しつつ、豊富な症例に基づいて展開・解説されている。とくに粟粒結核についての項は、意外に多彩なこの病態の画像所見のバリエーションについて、またその成立機序について詳細に解説されており、読み応えがある。ただ、写真の印刷が全体に暗めで、本文の記述を読者に納得させるだけの画質に仕上がっていないことが惜しまれる。増刷の際に修正されることを期待したい。
 治療面では、標準治療が行えない場合の対応について記述が大幅に増やされた。また、多剤耐性肺結核の新しい治療薬についても言及されている。ただ、「副腎皮質ステロイドの有効性について、明確な結論は出ていない」との記述はやや納得しがたい。肺結核症についてはいまだ十分とはいえないが、結核症全体については、十分に規模の大きいメタアナリシスの結果、ステロイドの併用は死亡率を減少させるとの結論が出ていると筆者は理解している。
 さらに医療従事者が結核患者を診療する場合の感染防止の項で、気管支鏡検査時の感染対策の項が新設されたことも評価される。
 前回の第3版からわずか3年をおいての第4版であるが、最近の技術的・治療学的進歩が紹介されており、またとくに重要な画像診断の項の充実により、第3版をすでに所有している読者にとっても購入を検討する価値のある魅力的な内容に仕上がっていると思われる。

臨床雑誌内科123巻4号(2019年4月増大号)より転載
評者●JCHO東京山手メディカルセンター呼吸器内科 徳田均

9784524241453