書籍

循環器科の心電図

ECG for Cardiologists

編集 : 村川裕二
ISBN : 978-4-524-23791-3
発行年月 : 2018年7月
判型 : B5
ページ数 : 224

在庫あり

定価6,600円(本体6,000円 + 税)


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正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

12誘導心電図について、新しい病態概念に関わる所見、重要性は高いものの周知されていない所見、不整脈のメカニズムや治療選択に関わる専門性が高い内容が学べる“エキスパート”向けの一冊。たこつぼ心筋症や不整脈原性右室心筋症/異形成、Brugada症候群など病態解明が進む疾患の診断の糸口として心電図をどう読み解くか、カテーテルアブレーションやCRTなどの治療選択、効果予測にどう活用するか、など12誘導心電図の理解が深まる充実の内容。循環器専門医の取得を目指している医師、循環器専門医、不整脈専門医におすすめしたい。

1 脚ブロックと心室内伝導障害−CRTの効果予測に有用か
2 二束ブロックと三束ブロック−予後予測と治療選択の考え方
3 Brugada型心電図−イコールBrugada症候群ではない
4 アデノシン感受性房室弁輪部起源心房頻拍−リエントリー回路を同定する
5 心房粗動−分類・鑑別の考え方
6 房室結節リエントリー性頻拍−逆行性P波は常に陰性か?
7 定型的な副伝導路と房室回帰性頻拍−WPW症候群と関連する不整脈
8 非定型的な副伝導路頻拍−心房−束枝間を中心に
9 流出路起源の心室性不整脈−起源特定に有用な心電図診断
10 ベラパミル感受性心室頻拍,心筋梗塞/器質的背景を持つ心室頻拍,心外膜側アブレーション−アブレーション治療の可能性
11 wide QRS tachycardiaの鑑別−治療方針の決め方
12 J波症候群−早期再分極パターンの考え方
13 不整脈原性右室心筋症/異形成−持続性心室頻拍の発現に注意
14 たこつぼ症候群の急性期心電図診断−急性冠症候群との鑑別
15 非定型的な急性冠動脈症候群の心電図−どの誘導に着目するか?
16 心臓再同期療法(CRT)−QRS幅が広い症例に有効
17 QT延長症候群−遺伝子型により変わる治療選択
18 QT短縮症候群−致死性イベントのリスクが高い
19 心房細動/心房頻拍の起源と波形−P波の形態に着目する
20 注意すべきペースメーカ心電図−下限レートより遅いor速いペーシングを見たら
21 心電図異常から画像検査へ−早期診断の手掛かりとして
22 cardiac memory−二次性T波変化の概念が変わる?
23 電解質−電解質異常が致死性不整脈を誘発する?
24 自律神経と心電図−RR間隔・QT間隔に着目する
索引

序文

 専門医を対象にした心電図テキストを作りました。
 心電図の理論や機器のことは省きました。
 高度な循環器診療に必要な情報をまとめています。
 心電図の初学者や、心臓疾患は診るけれども治療に関わる機会が少ない方には、それほど魅力的な本ではありません。
 一方、カテーテルアブレーションや急性冠動脈症候群の治療に参加している方には、現実的で興味を持てる内容を網羅してあります。
 ところで、これまで<心電図の出版物>の歴史は3段階に分かれています。
1.黎明期:1970年代まで
 心電図の理論を突き詰めようとした時期。
 教科書は難解で、排他的で、かつ独善的でした。
 現在は“心電図学”という学問にニーズはありません。
 それゆえ、「心電図学」というニュアンスの本は消えました。
2.成熟期:20世紀が終わるまで
 次の時代は、「心電図をきちんと勉強する。診療に役立てる」ための本が揃いました。心電図を根気よく学び、弁膜疾患、心肥大、虚血、複雑な不整脈を心電図だけで診断するという発想が根底にありました。
 しかし、心エコーや冠動脈造影など心臓の形態や虚血の評価に優れた検査が普及したため、「心電図ですべてを語る」ことの限界が見えてきました。
3.マニュアル期:現在まで
 初学者を念頭に分かりやすさを狙ったテキストが蔓延する現在を指します。必要なことを必要なレベルまで学べます。
 読者のニーズに応えています。執筆者が読者に親切である点で昔とは趣が違います。
 そして、今。
 虚血性心疾患や不整脈の領域で新たな治療手技が広がってきました。
 12誘導心電図判読に新たな視点や深さが加わっています。
 それらを、一般の心電図テキストに含めることは簡単ではありません。「ベーシックな考え方」の中に「ハイエンドの知識」を並べると混乱を避けられません。
 そこで、「ハイエンドの知識」だけを取り出したのがこのテキストです。
 日々の診療の一助になることを期待しています。

2018年7月
編者

 このたび、村川裕二先生の編集による「循環器科の心電図」が刊行された。分担執筆された先生方はいずれもわが国の心電学をリードしてきた先生方である。しかし、考えてみれば奇妙なタイトルのテキストである。心電図は循環器科の専売特許ではないにしても、あえて循環器科と冠する編者のこだわりを知りたい気がした。心電学のテキストは枚挙にいとまがない。事実、編者もこれまで数多くの心電学のテキストを上梓しているが、序文で書かれているように心電学のテキストは時代的に大きく3つに分けられる。引用すると、(1) 黎明期(〜1970年代)は心電図の理論(心電図の成因や誘導理論)を重視した時代で学生には難解なテキストが多かった。(2) 成熟期(〜20世紀末)は心電図を不整脈のみならず虚血や弁膜症、心筋症などの診断に応用した時代で、心電図を時間的(ホルター心電図など)、空間的(体表面マッピングや心内電位図など)に展開した時代でもあった。そして、(3) マニュアル期(〜現在まで)になり、初心者向けのわかりやすいテキストが多くなった。これだけマスターすれば当面は困らないというレベルを意識している。
 昔の心電学者は、そのような心電学の時代の変遷を個人的にもたどってきた。循環器の初期臨床から入って心電図や不整脈に興味をもち、それらを深く理解するために心筋の微小電極法に進み、不整脈をカテーテルで治療する時代となった今、古典的な心電学の知識の見直しと再構築を強いられている不整脈医は評者だけではない。このような変遷を経てこれからの心電学のテキストはどのような方向に向かうのであろうか。さらに一般受けする初心者向けのわかりやすいテキスト、逆により玄人好みの専門書的なテキスト、波形別のテキスト(実際に心電図のP波、QT間隔、J波のみに焦点を当てたテキストに評者もタッチしてきた)など方向性はさまざまであろうし、いずれもニーズはあると思われる。
 今回、編者がどういう意図で本書を上梓されたのかを考えてみた。本書のレベルからいって心電図の初心者向けでないことは明らかである。心電学を時空間的に展開するのが意図でもなさそうである。まして数多く売れればという意図は微塵も感じられない。「循環器科の心電図」というタイトルからわかるように、心電学のプロはぜひ押さえてほしいというキモを解説したものといえるであろうか。「その道のプロとは例外的な症例にきっちり対応できること」と研修医のころに先輩医師から教わったが、心電学のプロになりたい、心電学をもっと深めたいと考える後期研修医やレジデントがチャレンジしても期待にそぐわない内容である。「わかる人にわかってもらえればよい」という嫌味を感じない。心電図の典型例を例示して解説するテキストではなく、あえて例外的な心電図や稀有な症例、盲点となるポイントを取り上げて丁寧に解説する本書は、各章が一つのテーマで完結しているのでどこからでも読み始めることができる。心電図のイラストは鮮明でレイアウトにも工夫が感じられ、心電図と関連した冠動脈造影所見やMRI所見は循環器専門医を目指す若い先生方の本書への敷居を低くしている。心電学の奥深さをしみじみと感じる珠玉の一冊として、若い循環器医の先生方にも広く薦めたい書である。

臨床雑誌内科123巻4号(2019年4月増大号)より転載
評者●九州大学基幹教育院健康支援センター教授 丸山徹