書籍

セーフティテクニック心臓手術アトラス原書第5版

監訳 : 古瀬彰/幕内晴朗
: 宮入剛/金子幸裕
ISBN : 978-4-524-23778-4
発行年月 : 2018年10月
判型 : A4
ページ数 : 378

在庫あり

定価27,500円(本体25,000円 + 税)


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  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

精巧なシェーマにより心臓手術のピットフォールや注意点、術中合併症とその対処法などを詳細に解説して好評を博した手術アトラスの最新版。今版ではカラーイラストを豊富に用い、新たに血管内治療手技や経カテーテル大動脈弁置換術、先天性修正大血管転位症に対するhemi-Mastard/Rastelli手術などの新しい知見も網羅。さらにわかりやすくビジュアルに進化した手術書である。

第I部 基本的事項
 1 心臓と大血管への外科的アプローチ法
  初回の胸骨正中切開
  胸骨再切開
  胸骨閉鎖
  術後の胸骨創感染
  開胸術
  その他のアプローチ法
 2 人工心肺の準備
  心臓の露出
  送血管の挿入
  脱血管の挿入
 3 心筋保護
  大動脈基部注入法
  冠状動脈直接注入法
  逆行性注入法
 4 ベント挿入と心臓からの空気除去
  左室心尖部からのベント挿入
  右上肺静脈からのベント挿入
  左房上部からのベント挿入
  肺動脈からのベント挿入
  卵円孔からのベント挿入
  心臓内の空気除去
第II部 後天性心疾患の手術
 5 大動脈弁膜症
  大動脈弁の外科的解剖
  大動脈弁へのアプローチ法
  大動脈弁置換術
  大動脈弁置換術における同種弁,自己弁およびステントレス弁
  大動脈弁形成術
  問題となる症例
  弁周囲逆流
  経カテーテル的大動脈弁置換術
 6 僧帽弁膜症
  僧帽弁の外科的解剖
  直視下僧帽弁交連切開術
  閉鎖式僧帽弁交連切開術
  僧帽弁形成術
  僧帽弁置換術
  弁輪周囲の遠隔期合併症
  心房の閉鎖
 7 三尖弁膜症
  手技上の考察
  機能的三尖弁閉鎖不全
  器質的三尖弁疾患
  三尖弁置換術
 8 大動脈疾患
  急性大動脈解離
  大動脈瘤
  上行大動脈置換術
  大動脈基部置換術
  弓部大動脈置換術
  B型大動脈解離の治療
  下行大動脈瘤の血管内治療
  弓部大動脈瘤の血管内治療
 9 冠状動脈疾患
  内胸動脈の採取
  橈骨動脈の採取
  大伏在静脈の採取
  人工心肺を用いた冠状動脈バイパス術
  オフポンプ冠状動脈バイパス術
  冠状動脈バイパス再手術の留意事項
 10 心筋梗塞の機械的合併症
  心臓の露出と送脱血管の挿入
  急性心破裂
  心室中隔穿孔
  乳頭筋断裂
  外科的心室修復術
  仮性心室瘤
  虚血性僧帽弁閉鎖不全
  大動脈内バルーンパンピング
 11 心臓移植
  ドナーの選択
  臓器保存液
  ドナーの手術
  レシピエントの手術
  両大静脈切断法
 12 心臓腫瘍
  良性腫瘍
  悪性腫瘍
 13 心房細動
  手術手技
第III部 先天性心疾患の手術
 14 動脈管開存
  切開法
  外科的解剖
  前方からのアプローチ法
 15 大動脈縮窄
  切開法
  外科的解剖
  縮窄部の露出
  縮窄部切除術
  鎖骨下動脈フラップ法
  長い縮窄の修復
  逆行性鎖骨下動脈フラップ法
  拡大切除と吻合
  代替手術法
 16 肺動脈絞扼術
  切開法
  手術手技
  調整可能な肺動脈絞扼装置
  肺動脈絞扼解除術
 17 血管輪と左肺動脈右肺動脈起始
  重複大動脈弓
  左肺動脈右肺動脈起始
 18 体-肺動脈シャント手術
  シャント手術の種類
  Gore-Tex人工血管によるBlalock-Taussig手術変法
  セントラル・シャント
  上行大動脈-右肺動脈シャント
  体-肺動脈シャントの閉鎖法
 19 心房中隔欠損
  右房の外科的解剖
  静脈洞型心房中隔欠損
  二次孔型心房中隔欠損
  経カテーテル心房中隔欠損閉鎖
  単心房
  右側部分肺静脈還流異常
  左側部分肺静脈還流異常
 20 総肺静脈還流異常
  手術手技
  肺静脈狭窄
  三心房心
 21 心室中隔欠損
  外科的解剖
  外科的アプローチ法
  経心房アプローチ法
  経心室アプローチ法
  両半月弁下型心室中隔欠損
  筋性部型心室中隔欠損
 22 房室中隔欠損
  部分型房室中隔欠損(一次孔型心房中隔欠損)
  完全型房室中隔欠損
  不均衡型房室中隔欠損
 23 右室流出路狭窄
  右室二腔症
  Fallot四徴
  心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖
  肺動脈弁欠損症候群
  純型肺動脈閉鎖
  純型肺動脈狭窄
  右室流出路の再手術
  付記:右室流出路の計測法
 24 左室流出路狭窄
  先天性大動脈弁狭窄
  大動脈弁下膜様狭窄
  肥大型閉塞性心筋症
  左室トンネル状狭窄
  大動脈弁上狭窄
  他の心疾患を合併する左室流出路狭窄
  大血管転位,心室中隔欠損,左室流出路狭窄の合併
 25 大血管転位
  外科的解剖
  動脈スイッチ手術
  修正大血管転位
  Senning手術
  Mustard手術
  Mustard手術後の遠隔期合併症の管理
  Hemi-Mustard/Rastelli手術
 26 大動脈中隔欠損
  手術手技
 27 総動脈幹
  切開法
  手術手技
  大動脈弓離断を伴う総動脈幹
 28 Ebstein病
  症状
  新生児期の手術
  乳児期以降の手術
 29 大動脈弓離断と低形成
  大動脈弓離断
  大動脈弓低形成
 30 Norwood手術
  左心低形成症候群に対する第一期姑息手術
  大動脈弓の再建
  肺血流の供給
  Damus-Kaye-Stansel吻合
 31 Fontan手術
  単心室の病態生理
  両方向性Glenn手術(両方向性上大静脈-肺動脈吻合)
  人工心肺下での両方向性Glenn手術
  Hemi-Fontan手術
  Fontan完成手術
  上下大静脈-肺動脈吻合
 32 先天性冠状動脈疾患
  左冠状動脈肺動脈起始
  冠状動脈瘻
  両大血管に挟まれて走行する冠状動脈起始異常
索引

監訳者の序

 本書の第1版、第3版、第5版は、それぞれ1993年、2005年、2018年に和訳されている。著者は、第1版がUCLAのS.Khonsari教授、第3版がS.Khonsari教授とSouthernCalifornia大学のC.F.Sintek助教授、第5版がUCLAのA.Ardehali教授とワシントン大学のJ.Chen教授である。第5版では、本書の生みの親であるS.Khonsari教授が、著者の「はじめに(序文)」に先立って、「原書第5版の序」を記しておられる。他方、監訳者は第1版と第3版が小生で、第5版が小生と幕内晴朗聖マリアンナ医科大学名誉教授であるが、監訳者の序文は第1版・第3版・第5版のすべてにおいて小生が書かせていただいている。ちなみに、訳者は、第1版が幕内晴朗・岡部英男・マチソン恵、第3版が幕内晴朗・川内基裕・金子幸裕、第5版が幕内晴朗・宮入 剛・金子幸裕である。
 さて本書の和訳は、1993年、2005年、2018年の合計25年、すなわち4半世紀を完全にカバーしている。心臓外科の歴史が74年前の1944年のBlalock-Taussig手術に始まるとすれば、本書は世界の心臓外科の歴史の最近の33.7%をカバーしているとも言えるのである。そこで今回の第5版和訳の原稿に目を通してみると、第1版や第3版に比べて、内容がすこぶる詳細になっていることに気付いた。
 また、監訳者の序文を見ると、第1版では、体外循環や心筋保護法の進歩により、心臓手術の手術適応が拡大され、市中病院でも実施可能になっているため、心臓手術の安全対策に重点を置いた本書の必要性が述べられている。第3版の監訳者の序文では、上記の心臓外科の進歩に加えて、(1)循環器内科・小児科のインターベンション治療の進歩と、(2)社会の医療事故に対する厳しい眼差しが取り上げられ、本書の重要性が強調されている。
 第5版の内容が、すこぶる詳細になっているのは、第3版以降の心臓外科の格段の進歩に対応しているためである。この進歩に見事にキャッチアップしておられる翻訳者ならびに南江堂の関係者各位に敬意を表する次第である。
 今や本書は心臓外科の安全管理学の参考書から、患者安全に気を配った心臓外科の教科書に進化している。そういう意味で、本書を現役の心臓外科医や心臓外科志望の研修医だけでなく、心臓外科以外の医療や看護などに従事しておられる方々にもお勧めしたいと思う。

2018年9月
古瀬彰

 心臓血管外科手術における成績向上は、近年めざましいものがある。日本胸部外科学会の学術調査によると2014年度には66,453件の心臓大血管手術が施行され、本邦の手術成績は世界をリードしている。これはひとえに先人達のたゆまぬ努力の積み重ねの結果であり、最近の学会主導による医師教育システムの充実が大いに貢献していると思われる。心臓血管外科領域においても患者第一をめざす医療安全・質向上は必須項目であり、その枠組みの中ですべての心臓外科医は日々学術的・技術的向上の必要性に迫られ、厳しい環境のもと日々研鑽を積んでいる。しかしながら、外科医にとって技術について学ぶことは至福のときであり、それを実践して患者に還元できたときにその苦労は報われ、その深みにはまってゆく。心臓手術は一つ歯車がずれると患者の生死に直結する分野であり、慎重かつ時に大胆な判断が要求される。開胸、人工心肺確立、各術式に纏わるピットフォールが待ち受けている。それらを予見して回避する必要があり、常に瞬間的な判断を要求される。これらのテクニカルスキルは先輩医師の指導により学ぶ点も多いが、自ら学ぶ姿勢がきわめて重要で、その助けとなるテキストがあってほしい。
 筆者と本書の最初の出会いは20年前にさかのぼる。当時研究留学が終わり、意気揚々と臨床に戻ろうとする時期に、米国の大学書店で実践的な教科書を探していた。そのとき一番に目に飛び込んできたのが本書の原書第2版であった。それぞれのテクニックのポイントが詳細に記載され、その説明のためのイラストは実に美しく、手術に必要な解剖の理解を大いにうながしてくれた。またDo notに相当するピットフォールには進入禁止マークが描かれており、ほかの教科書とは一味違った読者をワクワクさせる構成になっていた。先人達の失敗から学ぼうとする教科書は少なく、若手心臓外科医にとって喉から手が出るほど知りたい貴重な情報がトラブルシューティングとともに簡潔に記載されていた。本書の原書第2版を毎日眺め、「いつか一人前の術者になりたい。しかもこんな手術記録が描ければどんなに素晴らしいことか」と希望に満ち溢れていた当時の記憶が蘇る。
 原書第5版の序にKhonsari先生が35年前の執筆のきっかけを書かれている。「当時私は、心臓外科レジデントが手術手技を習得する助けとなり、初心者が陥りやすく、時に致命的となる落とし穴を避けるのに役立つ情報を提供したいと考えたのである」。当時レジデントであった筆者がすっかり虜になったわけである。その基本方針は確実に脈々と受け継がれ、さらに最新の術式に纏わる情報が満載されている。第I部は基本的事項で開胸、人工心肺確立、心筋保護、各種ベント挿入法について、きわめて実践的で教育効果の高い記述がなされている。たとえば逆行性心筋保護カニューレやベントチューブ挿入時の心臓損傷など、心臓外科医人生を積み重ねるとどこかで遭遇するトラブルであり、そのとき本書の戒めを思い出す。第II部は後天性心疾患である。本書のタイトルは『セーフティテクニック心臓手術アトラス』であるが、大動脈手術に関しても記載されている。大動脈を専門とする筆者にとっても再認識させられる事柄が多く、読んでいて嬉しくなる。第III部は先天性心疾患であり複雑な解剖の理解を要求される分野であるが、原書第5版ではイラストがカラー表示され、読者の理解をさらに深め、本書の真骨頂を発揮している。
 本書は故古瀬彰先生をはじめとする先生方の尽力により日本語訳がなされており、その努力に敬意を表するともに、本邦の若手心臓外科医が将来手術場で立ち向かうことになるさまざまな困難を乗り切る助けとして、大いに寄与することを切望するものである。

胸部外科72巻6号(2019年6月号)より転載
評者●神戸大学心臓血管外科教授 岡田健次