書籍

リウマチ・膠原病診療ゴールデンハンドブック改訂第2版

監修 : 竹内勤
編集 : 金子祐子/齋藤俊太郎
ISBN : 978-4-524-23499-8
発行年月 : 2023年4月
判型 : 新書
ページ数 : 404

在庫あり

定価4,620円(本体4,200円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

多彩な症状を呈するリウマチ・膠原病の診療について,臨床症状の見極めかたから,各種検査の要点,治療法・治療薬に関して知っておきたい知識,各疾患へのアプローチ,エマージェンシーまで,そのエッセンスを凝縮したポケットブック,待望の改訂版.進歩の著しい薬物療法に関するアップデートを行ったほか,研修医や若手医師が知っておきたいエマージェンシー対応も充実化.最新の分類基準も反映し,リウマチ・膠原病診療の“いま”に沿った内容を提供する.

略語一覧
T 基本的アプローチ
 A.関節所見の取り方
 B.リウマチ性疾患の皮膚所見
 C.鑑別のためのアプローチ
  1.関節痛・関節腫脹
  2.不明熱
  3.筋 痛
  4.筋力低下
  5.乾燥症状
  6.皮膚硬化・手指腫脹
  7.検査異常(RF陽性,ANA陽性)

U リウマチ・膠原病領域の主要検査
 A.血液検査
 B.関節液検査
 C.画像診断
  1.単純X線
  2.MRI
  3.関節エコー

V 主要な治療法・治療薬
 A.免疫抑制療法
  1.免疫抑制療法実施にあたっての注意点
  2.非ステロイド性抗炎症薬
  3.ステロイド薬
  4.免疫調節薬
  5.免疫抑制薬
  6.生物学的製剤・分子標的治療薬
  7.免疫グロブリン大量静注療法
  8.血漿交換療法
 B.非薬物療法
  1.リハビリテーション
  2.生活指導・在宅ケア

IV 各疾患へのアプローチ
 A.関節リウマチと類縁疾患
  1.関節リウマチ
  2.悪性関節リウマチ
  3.リウマチ性多発筋痛症
  4.RS3PE症候群
  5.成人発症Still病
 B.脊椎関節炎と類縁疾患
  1.強直性脊椎炎
  2.乾癬性関節炎
  3.SAPHO症候群
  4.反応性関節炎
  5.炎症性腸疾患関連関節炎
  6.ぶどう膜炎に関連した脊椎関節炎
  7.分類不能型脊椎関節炎
 C.全身性自己免疫疾患
  1.全身性エリテマトーデス
  2.抗リン脂質抗体症候群
  3.Sjögren症候群
  4.全身性強皮症
  5.多発性筋炎/皮膚筋炎
  6.混合性結合組織病
 D.血管炎
 [大型血管炎]
  1.高安動脈炎(大動脈炎症候群)
  2.巨細胞性動脈炎
 [中型血管炎]
  3.結節性多発動脈炎
 [小型血管炎]
  4.ANCA関連血管炎
  5.免疫複合体性血管炎
 E.変形性関節症
 F.結晶誘発性関節症
  1.痛 風
  2.偽痛風
 G.感染性関節炎(細菌性・結核性・真菌性)
 H.その他の全身性疾患
  1.Behçet病
  2.IgG4関連疾患
  3.Castleman病
  4.自己炎症性症候群
  5.再発性多発軟骨炎
  6.好酸球性筋膜炎(びまん性筋膜炎)
  7.サルコイドーシス
  8.アミロイドーシス
  9.小児膠原病
  10.内分泌・代謝疾患,悪性腫瘍,血液疾患に伴う関節炎
  11.線維筋痛症
  12.免疫関連副作用

V リウマチ・膠原病領域におけるエマージェンシー
 A.間質性肺疾患と急性増悪
 B.肺胞出血
 C.血液障害を伴う免疫病態
  1.secondary ITP
  2.血栓性微小血管症
  3.血球貪食症候群
 D.強皮症腎クリーゼ
 E.結合組織病に伴う肺高血圧症
 F.ステロイド,免疫抑制薬,生物学的製剤を使用中の重症感染症
 
■付 録
 @各疾患の分類基準・診断基準
  a.関節リウマチ 
  b.悪性関節リウマチ
  c.リウマチ性多発筋痛症
  d.成人発症Still病
  e.血清反応陰性脊椎関節症,体軸性脊椎関節炎
  f.末梢性脊椎関節炎
  g.強直性脊椎炎
  h.乾癬性関節炎
  i.全身性エリテマトーデス
  j.抗リン脂質抗体症候群
  k.Sjögren症候群
  l.全身性強皮症
  m.多発性筋炎/皮膚筋炎
  n.混合性結合組織病
  o.高安動脈炎
  p.巨細胞性動脈炎
  q.結節性多発動脈炎
  r.多発血管炎性肉芽腫症
  s.顕微鏡的多発血管炎
  t.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
  u.Behçet病
  v.IgG4関連疾患
  w.Castleman病
 A各疾患の重症度分類/活動性評価/damage indexなど
  a.関節リウマチ 
  b.強直性脊椎炎
  c.Sjögren症候群
  d.全身性エリテマトーデス
  e.ANCA関連血管炎
  f.IgG4関連疾患

 今回の改訂第2版を出版するにあたり,初版刊行から6年という月日が経過したが,この期間におけるリウマチ・膠原病領域の診療の進歩を実感する改訂作業となった.リウマチ・膠原病診療は,数多の疾患を鑑別とし全身の臓器にわたる広範な知識を背景として行う必要があり,この6年で新しい分類基準,治療選択肢が多く生まれた中で,そのハードルはいっそう高くなったようにも感じられる領域の1つである.一方で,世界に誇る長寿国であるわが国では,関節痛や原因不明な発熱を訴える患者数,およびその代表的な疾患であるリウマチ・膠原病患者への診療機会に触れる医療者数はいずれも増加している.
 このような状況の中で,本書は初版から変わらない執筆理念として初学者へのわかりやすさ,簡潔さに加え,診療内容の具体的記述性を兼ね備えており,本書の存在は日常臨床でますます重要になったと自負している.初版の内容からの変化がわかりやすいよう,分類基準の一部などについては初版の内容をあえて残したうえで追記する形式をとった.今回の改訂作業も,初版と同様に慶應義塾大学医学部リウマチ・膠原病内科の第一線で診療にあたっている若手医師が中心となってまとめており,その絶え間ない努力と熱意にこの場を借りて感謝の言葉を述べたい.
 引き続き,本ゴールデンハンドブックが,リウマチ・膠原病が疑われる患者,その診療に携わる医療者の皆様に役立つことを心から願っている.

2023年3月
金子 祐子
齋藤俊太郎

 本書は,リウマチ性疾患の診療,研究,教育で日本のみならず世界のトップを走る慶應義塾大学リウマチ・膠原病内科のスタッフの英知がぎっしり詰まったコンパクトな一冊である.手に取って表紙をめくって読み進めると,「基本的アプローチ」の章では,関節所見の取り方,リウマチ性疾患の皮膚所見のポイントが示され,次いで,関節痛・関節腫脹,不明熱,筋痛,筋力低下,乾燥症状,皮膚硬化・手指腫脹,検査異常が順にまとめられている.さらに読み進めると,「リウマチ・膠原病領域の主要検査」の章では血液検査,関節液検査,画像診断では単純X線,MRI,エコーが要領よくまとめられている.「主要な治療法・治療薬」の章では,免疫抑制療法の注意点が冒頭で述べられ,非ステロイド性抗炎症薬,ステロイド薬,免疫調節薬,免疫抑制薬,生物学的製剤・分子標的治療薬の使い方が,最新の知見とともに目に飛び込んでくる.免疫グロブリン大量静注療法,血漿交換療法の基本もおさえてある.非薬物療法ではリハビリテーション,生活指導・在宅ケアにも対応していて漏れがない.

 「各疾患へのアプローチ」の章では,関節リウマチ,脊椎関節炎がコンパクトにまとめられており,それらの類縁疾患への対応についても行き届いている.全身自己免疫疾患,血管炎も含められ,変形性関節症,結晶誘発性関節症,感染性関節炎に加えて,整形外科医にはなじみの薄いリウマチ性全身性疾患についてもまとめられている.「リウマチ・膠原病領域のエマージェンシー」の章では,間質性肺疾患,肺胞出血への対応,血液障害,腎クリーゼ,肺高血圧症,ステロイドはもとより,免疫抑制剤や免疫調節剤使用中の重症感染症対応についての基本もしっかりまとめられている.付録も充実していて,各疾患の分類基準・診断基準が網羅され,疾患の重症度分類,活動性評価も俯瞰できる.お得感満載の一冊である.リウマチ性疾患の対応に追われる整形外科医にとってはたいへんありがたい.整形外科領域でも専門化,細分化はさらにすすんでいるように感じるが,併存疾患,合併症を抱えリウマチ性疾患を患う患者の手術対応を依頼されることも多い大学病院,基幹病院で,その一線に立つ整形外科医にとっても,本書にさっと目を通して臨むといっそう心強い.超高齢社会の到来に合わせてリウマチ性疾患の患者の高齢化も大きな課題となっている.変形性関節症や脊椎症などロコモティブシンドロームに関連して,リウマチ性疾患患者の運動器疾患の治療を検討する機会や骨折などの外傷治療を担当する機会も少なくない.そんなときにも大いに役に立ちそうである.

 忙しく病棟外来を右往左往していた若かったあのころを思い起こすと,ハンドブックの類いにはたいへんお世話になった.何しろ知識や経験がない状況でも日々さまざまな患者に向き合う必要があった.時代はすすんで今はデジタル時代である.スマートフォンやタブレット端末でさまざまな情報が容易に手に入る時代となった.ハンドブックが白衣のポケットから消えつつあるようにも感じる.そんな時代の中にあっても,本書を実際に手に取ってみると,紙のぬくもりと安心感がある.文庫本と同じサイズなので,診療時のみならず,出張のときなど鞄にそっと忍ばせて,わずかな時間でさっと目を通しても勉強にもなるし,気分転換にもなりそうである.研修医や専攻医のみならず,中堅,ベテランにおすすめの珠玉の一冊といえる.次の第3版ではどんな展開となるのか,さらに楽しみである.

臨床雑誌整形外科74巻12号(2023年11月号)より転載
評者●山形大学整形外科教授 高木理彰

9784524234998