書籍

プライマリ・非専門医でもココまでできる!潰瘍性大腸炎診療のキモ

: 加藤順
ISBN : 978-4-524-23297-0
発行年月 : 2022年11月
判型 : A5
ページ数 : 200

在庫あり

定価3,520円(本体3,200円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日ごろ多数の潰瘍性大腸炎(UC)患者の診療にあたっている著者が,UC診療の“キモ”を具体的に解説!増加の一途をたどり,診療の場が病院からクリニック・診療所へシフトしつつあるUCについて,診断,治療,外来でのフォロー,専門医への紹介のタイミング,難病申請を含む社会制度など,必要な情報を簡潔にまとめた.プライマリ・ケア医や消化器を診る機会のある他科の医師も,本書を読めばUC診療に自信がもてる.

第1章 診断
A 潰瘍性大腸炎(UC)とはどんな病気か?
 1.疾患概念と発症原因
 2.好発年齢,性別,罹患人数の推移,発症のリスク因子
 3.病態と症状と自然史
 4.治療コンセプトと予後
 5.他の疾患と比較したUCの特徴
B UCを疑う患者像
 1.どんな患者さんがきたらUCを疑うか?
C どのように診断するか?
D 鑑別診断と鑑別法
 1.感染性腸炎
 2.CDなどの他のIBD
 3.薬剤性腸炎
 4.その他
E 診断がついたら何をするのか?
 1.病変範囲と重症度を把握する
 2.診断後に必要な診察,検査各論
 3.患者さんの社会背景を把握する
 4.難病医療費助成制度の申請を考える
 5.患者さんに説明する
 
第2章 治療薬と治療法
A UCの治療目標とは?
 1.治療目標は現在および将来のQOLを最大化すること
 2.本当の治療目標を達成するためのとりあえずの目標
 3.粘膜治癒や組織学的治癒と治療目標の関係
 4.治療目標は患者さんごとに異なり,同じ患者さんでも時期によって変わってくる
B 治療薬の種類と治療の原則とアルゴリズム
 1.治療薬の種類
 2.治療の原則
 3.治療アルゴリズム
C UCの基本薬5-ASA製剤とは?
 1.5-ASA製剤の歴史
 2.5-ASA製剤の作用機序
 3.5-ASA製剤の種類と違い
 4.サラゾピリンⓇの特徴
 5.5-ASA製剤の臨床上の特徴
 6.使用する患者さんの特徴と使いかたの基本
 7.5-ASA製剤の副作用と注意点
D ステロイドの使いかたと注意点
 1.使用するステロイドの種類,剤型と使うシチュエーション
 2.経口プレドニゾロンの使用法
 3.ステロイド抵抗性とステロイド依存性
 4.静注薬を使うシチュエーション
 5.ステロイドの副作用とその対策
E 局所製剤の使いかたと注意点
 1.坐剤と注腸剤の使い分け
 2.5-ASAとステロイドの使い分け
 3.各製剤の特徴
F アフェレシスの特徴と使用法
 1.アフェレシスの特徴
 2.アフェレシスのやりかたと寛解導入療法
 3.アフェレシスを行うタイミングとアフェレシス向きの患者さん
 4.アフェレシスによる寛解維持療法
G チオプリン製剤の使いかたと注意点
 1.チオプリン製剤の特徴
 2.チオプリン製剤とNUDT15遺伝子多型
 3.チオプリン投与対象と投与開始するタイミング
 4.チオプリン製剤の使いかたの実際
 5.アザチオプリンとメルカプトプリンの使い分け
 6.チオプリン製剤の副作用とその対策
H 重症,難治例に対するadvanced therapy
 1.adcanced thrapyの種類と特徴
 2.一般医におけるBio/JAKの使いかた
 3.一般医に使いやすいBio/JAKについて
 4.その他
 
第3章 実践,UC診療
A 状況別標準治療と処方の具体例
 1.直腸炎型
 2.中等症軽めの左側型〜全大腸炎型
 3.中等症重めの左側型〜全大腸炎型
 4.重症
B 初期治療がうまくいかないとき(5-ASA不耐,ステロイド抵抗性・依存性)の対処法
 1.5-ASA不耐時(副作用で使えない)の 対処法
 2.ステロイドが効かないとき(ステロイド抵抗例)の対処法
C 5-ASAでもう一歩のときの対処法
 1.5-ASAでもう一歩をなぜちゃんと考えるべきなのか?
 2.5-ASAでもう一歩のときの対処法
D シチュエーション別再燃時の治療変更の方法
 1.5-ASAのみ使用時に再燃
 2.ステロイド漸減中に再燃
 3.チオプリン製剤で維持治療中に再燃
 4.advanced therapy使用中に再燃
E いつまで治療を継続するかと薬剤減量のしかた
 1.UCはいつまで治療を継続するのか?
 2.薬の減量の考えかた
 3.5-ASA製剤の減量法(5-ASAのみで寛解維持治療をしている場合)
 4.ステロイドの減量,中止法
 5.局所製剤の減量,中止法
 6.チオプリン製剤,advanced therapyの減量,中止法
 
第4章 外来フォロー
A 外来診療の心構え,診察法など
 1.心構え
 2.外来診察法
 3.診察頻度と診療予約
B 外来で行う検査とその見かた
 1.全般
 2.血液検査
 3.便検査
 4.腸管エコー検査
 5.内視鏡検査
 6.その他
 7.各検査の検査間隔,頻度
C 再熱の診断
 1.再燃のきっかけは?
 2.再燃の診断は? 感染性腸炎合併などとの鑑別は?
 3.再燃形式は?
 4.再燃の病勢と範囲の推定
D 紹介と逆紹介
 1.どこまで診てどこから紹介するか?
 2.紹介先の選びかた
 3.臨床情報提供書に記載すべき事項とは?
 4.逆紹介を依頼されたら?
E UCからの発癌とその対策
 1.UCからの大腸発癌のしくみと通常の大腸癌との違い
 2.発癌率はどれくらいであり,リスク因子は何か?
 3.発癌のサーベイランス法
 4.dysplasia/cancerの治療法
 5.発癌予防
F 手術療法の適応とタイミング
 1.手術の適応
 2.術式
 3.患者さんは手術後どのような生活になるのか?
 4.手術の合併症
 
第5章 スキルアップ
A 食事をどう指導すればよいか?
 1.UCに対する食事療法のエビデンスはほとんどない
 2.厳格な食事療法は状態を改善する可能性はあるが,若い人には無理
 3.エレンタールなどの栄養剤は好ましくない
 4.お酒がいけないとのエビデンスもない
 5.食事制限の患者さんのQOLを下げてはいけない
B 日常生活を制限すべきか?
 1.制限すべき日常生活はない
 2.学校での生活,学校行事を含む旅行,その他
 3.UCの治療目標をもう一度よく考えよう
C 服薬アドヒアランスを上げるコツ
 1.UC患者の服薬アドヒアランス
 2.服薬アドヒアランスを上げるコツ
 3.局所製剤のアドヒアランスを上げるコツ
 4.アドヒアランス向上のために日常診察で心掛けること
D UC患者へのワクチン,予防接種
 1.ワクチンの種類と考えかた
 2.成人における各生ワクチンと対処法
 3.免疫抑制治療開始前に生ワクチンを接種するか?
 4.UC患者が出産した乳児への生ワクチンについて
 5.免疫抑制治療患者にそもそもワクチンは有効なのか?
E 小児例の特徴
 1.小児は何歳くらいから発症するか?
 2.小児UCの特徴
 3.小児例の治療
 4.小児だからとくに気を付けること
F 高齢者UCへの対処法
 1.高齢者UCの特徴
 2.高齢者UCの治療
 3.介護が必要な高齢者のUC
G UCの貧血の対処法
 1.UCの貧血の特徴と診断
 2.UCの貧血の治療法
H 腸管外合併症の種類とその対策
 1.腸管外合併症とは
 2.皮膚病変
 3.関節炎,関節痛
 4.膵炎,高アミラーゼ血症
 5.その他のまれな腸管外合併症
I その他の合併症(CMV感染症,感染症,血栓症)
 1.感染症
 2.血栓症
J UCの妊娠・出産の考えかた
 1.妊娠経過にもっとも影響を与えるのは薬ではなく疾患活動性である
 2.妊娠中に活動性が変わる場合がある
 3.妊娠中の薬剤投与について
 4.授乳について
 5.新生児の予防接種について
K 難病医療費助成制度のしくみと申請方法
 1.難病医療費助成制度について
 2.申請方法
 3.申請時,更新時の注意点
 4.小児慢性特定疾病について
 5.その他の社会制度について
 
コラム
 UCの発症原因は? なぜ日本で増えているのか?
 そのUCの常識はもう古いかも
 UCをプライマリ・ケア医や非専門医が診るべき理由
 漢方薬,健康食品,プロバイオティクスと糞便移植
 新薬,新規治療の開発状況
 UC患者は何に困っているのか?
 UCと新型コロナウイルス
 特殊なUC

 潰瘍性大腸炎って最近増えているけど,診療はどうも難しそうで…という方も多いのではないかと思います.
 実は,みなさんが潰瘍性大腸炎の診療があまり得意でないのには理由があります.まず,私と同世代の先生があまり得意でないのは,経験値が少ないからです.私たちの若い頃には,潰瘍性大腸炎の患者数はいまほど多くありませんでした.若い頃に十分な診療経験を積むことができなかったことが診療に及び腰になる理由の1 つだと思います.
 一方で,いまの若い世代の先生が潰瘍性大腸炎患者に出くわすことは以前よりだいぶ多くなりましたが,「〇〇〇マブ」というような,似たような名前の高価な薬がいくつもあったりする割には,どの薬も効いたり効かなかったりするなど,なかなか診療に対するイメージがつかめないのではないかと思います.5-ASA 製剤で落ち着く軽い人から大腸手術になる重症例まで,患者さんによって病態があまりに違うことも戸惑う理由の1つかもしれません.
 しかし,近年の潰瘍性大腸炎患者数の増加により,みなさんはイヤでも潰瘍性大腸炎患者の診療をしなければならない状況になっています.そのようななかで,できるだけ多くの先生に適切に潰瘍性大腸炎の診療をしていただければ,患者さんがわざわざ遠くの大学病院まで来なくても済むようになり,われわれ専門医も,プライマリ・非専門医の先生も,そして患者さんにもメリットのある,三方良し,ということになります.
 そこで今回,プライマリ・非専門医の先生方でも一読していただければ,一般的な潰瘍性大腸炎診療が可能となることを目指して,本書を執筆しました.時間のない方は,第3章の「実践,UC診療」から読んでいただき,あとは必要な部分を拾い読みすることで,だいたいの潰瘍性大腸炎診療ができると思います.本書が,みなさま方の診療に少しでも役に立ち,より多くの潰瘍性大腸炎患者がhappy になることを祈っています.

2022 年9 月
加藤 順

潰瘍性大腸炎診療に対して尻込みするなかれ

 わが国では潰瘍性大腸炎の患者が増加している.本書によれば,患者は推定で約30万人いて,毎年1万人程度が新規発症している.例えるなら,山手線の1編成の乗車定員が約1,700人なので,そのなかに潰瘍性大腸炎患者が4〜5人はいる勘定になる.潰瘍性大腸炎は「難病」でありながら「common disease」化した疾患といえるかもしれない.
 一般の内科医は潰瘍性大腸炎に対してどのようなイメージをもっているであろうか.「難病で何だか難しそう」「さまざまな治療薬があって,どれを使えばよいかよくわからない」「わるくなったときの対応に困る」「重症例があるなどと聞くと怖い」といったところであろうか.こうしたイメージは一部では正しいかもしれないが,誤っている部分も多い.本書には,そうした誤ったイメージを解いて,一般の内科医に少しでも自信と勇気をもって潰瘍性大腸炎の患者をみてほしいという著者の願いが込められている.
 一読してまず気がつくのは,著者らしい語り口調で記されていて,堅苦しくなく気楽に読み進めることができるという点である.強調したい部分にはアンダーラインが引かれているので,読者は蛍光ペンを手にして重要事項を探しながら読まなければならないというような緊張感をもつ必要もない.
 ガイドラインをはじめとして,潰瘍性大腸炎の診療について記された書籍は多数あるが,本書には著者ならではの独自の視点がいくつもみられる.たとえば,中等症の考え方,治療目標の設定の仕方,外来カルテの書き方など,目新しいことではないかもしれないが,読み手にとってはハッと気づかされることばかりである.複雑な事柄を簡潔にまとめる能力に長けた著者の本領発揮といえるであろう.
 また,著者の豊富な診療経験に基づいたノウハウが本書のいたるところにちりばめられ,診療の現場ですぐに役立つ内容が満載である.たとえば,メサラジン製剤や次々に登場する分子標的治療薬が一覧表にまとめられているが,著者の経験を踏まえた特徴が記載されており,非常にありがたい.そのほか,最近増えているメサラジン不耐や,新型コロナウイルス感染症流行下での潰瘍性大腸炎診療といった新しい話題についても,十分な頁を割いて解説されている.
 一つだけ難点をあげるとするならば,(紙質の問題かもしれないが)内視鏡画像があまり鮮明でないという点である.しかしながら,本書の目的は内視鏡診断学のウンチクを語ることではないので,それもご愛敬であろう.
 町の普通の消化器内科医として潰瘍性大腸炎の患者をみることの多い評者も,本書から多くのことを教えられ,少し自信をもって外来診療ができるようになった.また,診断や治療の基本的な事項についても記載されているので,研修医や専攻医にとっても有用である.そして何よりも本書のタイトルにあるように,プライマリケアを担っている一般の内科の先生方に本書をご一読いただき,潰瘍性大腸炎の患者を少しでも診療できるようになっていただきたい.これが著者の一番大きな願いであろう.

臨床雑誌内科132巻1号(2023年7月号)より転載
評者●JR東京総合病院消化器内科 部長 岡本 真

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