書籍

運動器リハビリテーションシラバス改訂第5版

セラピストのための実践マニュアル

  • 新刊

監修 : 日本運動器科学会/日本臨床整形外科学会
編集 : 星野雄一/佐藤公一/大江隆史/大井直往/志波直人/尾ア敏文/竹下克志/池内昌彦
ISBN : 978-4-524-23279-6
発行年月 : 2022年6月
判型 : B5
ページ数 : 276

在庫あり

定価3,850円(本体3,500円 + 税)


  • お気に入りに登録
  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

「日本運動器科学会運動器リハビリテーションセラピスト」研修認定資格の学会公認テキスト.セラピスト講習会に沿った教科書的内容および実地臨床で役立つ実際的な内容を網羅.今改訂では,介護保険の改定やロコモ度3の新設,フレイル・サルコペニアの解説や新型コロナウイルス感染症への対策など,前版以降の変化に対応したアップデートを行った.

I章 運動器リハビリテーションとは
 1.運動器リハビリテーションとは
 2.高齢社会における運動器疾患――健康寿命延伸に寄与する運動器リハビリテーション
 3.運動器リハビリテーションにおける診断と評価
 4.運動器疾患における機能低下の生活機能への影響
 5.併存症をもつ患者に対する運動リスク管理
II章 運動器リハビリテーションのプロセス
 1.医療安全対策および事故防止(リスク管理)
  A.リハビリテーション医療による事故事例
  B.ヒヤリ・ハット報告の活用
  C.リハビリテーション医療におけるリスク管理
  D.事故の責任を問われるのはだれ
 2.リハビリテーション治療の流れ(リハビリテーションマネジメント)
  A.リハビリテーションマネジメントの考え方
  B.リハビリテーション医療の実際
  C.押さえておきたいポイント
  D.リハビリテーションの算定日数制限
  E.リハビリテーション実施計画書の書き方
III章 運動器疾患対策の社会との関わり
 1.介護保険の仕組みと医療と介護との連携
  A.介護保険の仕組み
  B.地域包括ケアシステム
 2.特定健康診査(特定健診)といわゆるフレイル健診
  A.特定健診
  B.フレイル健診
 3.学校健診に加わった運動器検診
  A.学校における運動器検診の意義
  B.学校における運動器検診の方法
  C.学校における運動器検診の課題と対策
Topics 新型コロナウイルス感染対策
IV章 運動の仕組み
 1.解剖
  A.神経系統――電気信号の伝達経路
  B.筋・腱――運動を起こす
  C.関節――運動の中心
  D.骨――運動の軸
 2.生理
  A.筋力
  B.関節の動き
  C.立位バランス
  D.歩行
  E.運動の強度・負荷量
  F.脊椎のバイオメカニクス
 3.病態
  A.骨折
  B.捻挫,靱帯損傷
  C.筋・腱損傷
  D.筋力低下
  E.関節拘縮
  F.関節の痛み
V章 運動機能と生活の評価
 1.神経機能の評価
  A.神経障害(末梢・脊髄)
  B.感覚障害の評価
  C.腱反射
  D.特殊な神経異常
 2.痛みの測定
 3.筋・骨格系機能の評価
  A.関節可動域
  B.徒手筋力検査(manual muscle testing:MMT)
 4.運動動作の測定
  A.タンデム歩行・タンデム肢位
  B.開眼片脚起立時間
  C.立って歩けテスト
  D.ファンクショナルリーチテスト
  E.10m最大歩行速度
 5.認知症の評価
 6.生活活動の評価
  A.基本的日常生活活動(basic ADL)
  B.手段的日常生活活動(instrumental ADL)
  C.要介護度判定基準
 7.生活の質の測定
VI章 認知症と運動器リハビリテーション
 1.認知症とは何か
 2.認知症の原因疾患と頻度
  A.アルツハイマー病
  B.レビー小体型認知症
  C.血管性認知症
  D.前頭側頭型認知症
 3.認知症の診断と評価
 4.認知症に運動器リハビリテーションは有効か
 5.認知症の運動処方の注意点
VII章 物理療法の実施法および適応と禁忌
 1.温熱療法
 2.寒冷療法
 3.超音波療法
 4.低出力レーザー療法
 5.電磁波療法
 6.電気療法
 7.牽引療法
 8.水治療法
Topics 骨格筋電気刺激法――ベルト電極式骨格筋電気刺激法(B-SES)
VIII章 肢体不自由(運動器疾患と神経疾患)の運動療法
 1.運動処方の原則
  A.運動強度
  B.運動負荷量
  C.運動療法の実際
  D.水中運動
 2.関節可動域訓練(ROMエクササイズ)
  A.安静臥床時における拘縮
  B.外傷や術後の局所的不動化による拘縮
  C.麻痺による拘縮
  D.禁忌と注意
 3.筋力増強訓練
  A.筋収縮様式と筋力増強
  B.運動方法と筋力増強
  C.筋力増強訓練の方法
  D.禁忌と注意
 4.バランス訓練
  A.高齢者に対するバランス訓練
  B.小脳性失調に対する運動療法
  C.禁忌と注意
 5.歩行訓練
  A.下肢関節疾患,術後
  B.片麻痺
  C.脳性麻痺
  D.失調,不随意運動
  E.安静臥床による廃用
  F.禁忌と注意
 6.運動器疾患の運動療法
  A.片麻痺を伴う患者の運動療法
  B.神経筋疾患を伴う患者の運動療法
  C.認知症を伴う患者の運動療法
IX章 ロコモティブシンドロームと運動器不安定症
 1.ロコモティブシンドロームの概念が提唱された背景
 2.ロコモティブシンドロームの特徴
  A.運動器疾患は患者数が多く,重複罹患が多い
  B.ロコモティブシンドロームの要因は相互に関連しながら緩徐に進行する
  C.筋力の強化は運動機能を向上させ,運動器疾患を予防・改善する
 3.ロコモティブシンドロームのリスク評価・判定法――ロコチェック・ロコモ度テスト
  A.ロコチェック
  B.ロコモ度テスト
 4.ロコモ対策としてのロコモーショントレーニング
 5.ロコモーショントレーニングの介入効果
 6.運動の注意事項
 7.ロコモティブシンドロームと運動器不安定症
 8.ロコモとフレイルとの協業
X章 アスレティックリハビリテーション
 1.アスレティックリハビリテーションとは
 2.スポーツ外傷・障害
  A.スポーツ外傷・障害の分類
  B.スポーツ外傷・障害の定義
  C.スポーツ外傷・障害の発生要因
  D.スポーツ外傷・障害の予防
 3.アスレティックリハビリテーションの内容
  A.アスレティックリハビリテーションの留意点
  B.アスレティックリハビリテーションの流れ
 4.コアトレーニング
  A.アスレティックリハビリテーションにおけるコアトレーニング
  B.段階的なコアトレーニング
XI章 上肢のリハビリテーション
 1.肩関節
  A.五十肩(肩関節周囲炎)
  B.腱板損傷
  C.上腕骨近位端骨折
 2.肘関節
  A.骨折などの外傷後拘縮
  B.野球肘
  C.上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
 3.手,手関節
  A.腱損傷
  B.関節リウマチ
  C.骨折・拘縮
  D.麻痺手
XII章 下肢のリハビリテーション
 1.股関節
  A.人工股関節全置換術(THA:total hip arthroplasty)後
  B.大腿骨近位部骨折
  C.変形性股関節症
  D.大腿骨頭壊死症
  E.関節リウマチ
 2.膝関節
  A.人工膝関節全置換術(TKA:total knee arthroplasty)後
  B.変形性膝関節症
  C.半月板損傷
  D.靱帯損傷
  E.膝蓋骨骨折
 3.足部
  A.足関節捻挫
  B.アキレス腱断裂
  C.肉離れ
XIII章 脊椎のリハビリテーション
 1.頚椎
  A.頚部痛
  B.神経根症
  C.脊髄(頚髄)症
  D.手術後
  E.頚椎装具の使い方
  F.頚椎牽引時および枕使用時の注意
  G.脊髄(頚髄)損傷
 2.胸椎
  A.側弯症の装具・体操
  B.骨粗鬆症性椎体骨折の保存治療
 3.腰椎
  A.腰痛症の生活指導(生活,腰痛体操)
  B.腰椎椎間板ヘルニア
  C.腰部脊柱菅狭窄症
  D.コルセットの処方
  E.杖の有用性
  F.職業性腰痛への対応
XIV章 切断,装具,杖,車いす
 1.切断・義肢
  A.切断部位
  B.切断術後のリハビリテーション
  C.義肢
 2.装具
  A.上肢・手の装具
  B.下肢装具
  C.体幹装具
 3.杖
  A.松葉杖
 4.車いすの種類と適応指針
  A.手動型車いす
  B.電動車いす
付録
 1.関節可動域表示ならびに測定法
 2.徒手筋力検査(MMT)
 3.運動器リハビリテーション実技プログラム(3ヵ月)
 4.内科的併存症の管理と運動器リハビリテーション
 5.JKOM(Japanese knee osteoarthritis measure)2004
 6.ロコモ25
 7.JLEQ(Japan low-back pain evaluation questionnaire)
 8.健康づくりのための身体活動基準2013(一部抜粋)(戸山芳昭座長)
 9.Mini-Mental State Examination(MMSE)回答用紙
 10.改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)検査用紙
 11.フレイル・ロコモ克服のための医学会宣言
和文索引
数字・欧文索引

 古来より運動という行為は健康の維持・増進に役立つと考えられ,その実践が推奨されてきました.二千年以上前のギリシア時代に,かのアリストテレスは“Life is motion”という言葉により運動することの重要性を説いています.西洋医学で近代までの千年間バイブルとされてきた,イスラム世界で刊行された『アビセンナ医学典範』にも,健康維持の基本は運動・食物・睡眠であり,各器官別に適する運動方法,行う強度と量,実施に適する時刻など,驚くほど精緻な運動処方が記載されています.さらには,すべての人が実感していることと思いますが,運動には爽やかさや達成感という精神に対するポジティブな効果や,内臓など他の臓器の機能を健康に保つ作用もあります.

 近代医学の発展により,運動の効果として筋線維の肥大化,心肺機能の向上,骨量の増加などがそのメカニズムとともに明らかにされてきました.新しい展開として20 年前頃から,筋で生成され全身に放出される生理活性物質であるマイオカインが注目されています.その代表的なものであるIL-6 は糖代謝に関与し,アイリシンは脳機能向上に作用し,またスパークは大腸がん細胞のアポトーシスを促すなど,筋骨格系以外の臓器への作用が続々と解明されています.運動器リハビリテーションの目的は,直接的には種々の原因により低下した運動器の機能回復ですが,同時に精神や他の臓器への好ましい効果も副次的な目的といえると思います.

 このように健康維持を根幹から支えている運動器の重要性を広く国民に啓発するため,日本運動器科学会は平成18(2006)年から運動器リハビリテーションセラピスト資格取得研修会を開始し,これは診療報酬加算要因として厚生労働省から認められている稀有な制度の一つです.制度開始以来17 年目を迎える本年の時点で,全国津々浦々で1 万人程のセラピストが運動器リハビリテーションの実践に日々励んでいます.改訂第5 版となる本書では,ロコモティブシンドローム関連の新展開(ロコモ度3,年代別基準値の設置など),令和4(2022)年4 月1日に日本医学会連合から発出された「フレイル・ロコモ克服のための医学会宣言」など,国民の健康寿命延伸を目指す活動の最新情報も紹介されています.臨床の現場や地域社会で運動器リハビリテーションの実践者として活躍なさっている皆様の健闘を期待するとともに,本書が少しでも皆様のお役に立つことを願う次第です.

2022 年6 月
編集者代表 星野雄一