書籍

腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021改訂第2版

監修 : 日本整形外科学会,日本脊椎脊髄病学会
編集 : 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン策定委員会
ISBN : 978-4-524-23055-6
発行年月 : 2021年5月
判型 : B5
ページ数 : 128

在庫あり

定価3,520円(本体3,200円 + 税)


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  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

腰痛をはじめ,しびれや倦怠感など多様な症状を呈する腰部脊柱管狭窄症のための診療ガイドライン.本症は姿勢の変化や歩行などにより症状が変化する特徴を有し,一般臨床でも遭遇する頻度の高い症候群であり,今版では新たに蓄積された知見を反映し,診断基準や治療・予後にいたるまで構成を一新.本症の基本的知識をまとめたBQと,臨床上の重要な課題をCQによる構成で臨床力アップを図れる内容である.

前 文

第1章 定義・疫学・自然経過
 Background Question 1 腰部脊柱管狭窄症の定義は何か
 Background Question 2 腰部脊柱管狭窄症の自然経過はどのようなものか

第2章 診断・評価
 Background Question 3 腰部脊柱管狭窄症を診断するために有用な病歴および診察所見は何か
 Background Question 4 腰部脊柱管狭窄症を診断するために有用な検査は何か(画像,電気生理,その他)
 Background Question 5 腰部脊柱管狭窄症を評価するために適切な指標は何か

第3章 保存治療
 Clinical Question 1 薬物治療は有用か
 Clinical Question 2 運動療法は有用か
 Clinical Question 3 装具療法,物理療法は有用か
 Clinical Question 4 ブロック療法は有用か
 Clinical Question 5 脊椎マニピュレーションは有用か
 Clinical Question 6 腰部脊柱管狭窄症に薬物治療・その他の保存治療を行うことにより,自然経過よりも良好な
   転帰がもたらされるか
 Clinical Question 7 薬物治療・その他の保存治療の長期成績はどのようなものか

第4章 手術治療
 Background Question 6 腰部脊柱管狭窄症に対する手術治療(除圧術・固定術・インストゥルメンテーション
   併用,制動術を含む低侵襲手術)の種類と意義は何か
 Clinical Question 8 腰部脊柱管狭窄症に対する除圧術は自然経過や保存治療よりも有用か
 Clinical Question 9 腰部脊柱管狭窄症に対する除圧固定術は除圧術単独より有用か
 Clinical Question 10 腰部脊柱管狭窄症に対する固定術の骨癒合状態は手術成績に影響を与えるか
 Clinical Question 11 固定術の際に用いる骨移植材料の違いは骨癒合に影響を与えるか
 Clinical Question 12 腰部脊柱管狭窄症に対する制動術は保存治療,除圧術,除圧固定術よりも有用か
  1.棘突起間スペーサー(interspinous process device:IPD)
  (1)腰部脊柱管狭窄症に対する棘突起間スペーサーは保存治療よりも有用か
  (2)腰部脊柱管狭窄症に対する棘突起間スペーサーは除圧術よりも有用か
  (3)腰部脊柱管狭窄症に対する棘突起間スペーサーは固定術よりも有用か
  2.椎弓根スクリュー
   腰部脊柱管狭窄症に対する椎弓根スクリューを用いた制動術は保存治療,除圧術,除圧固定術よりも有用か
 Clinical Question 13 腰部脊柱管狭窄症に対して低侵襲脊椎手術は従来法よりも有用か
 Clinical Question 14 超高齢者の腰部脊柱管狭窄症に対する手術治療は有用か

第5章 手術後の予後
 Background Question 7 腰部脊柱管狭窄症で術後に遺残しやすい症状は何か
 Background Question 8 腰部脊柱管狭窄症の手術成績の予後不良因子は何か
 Clinical Question 15 腰部脊柱管狭窄症の術後の理学療法は治療成績をより改善させるか

改訂第2版の序

 日本整形外科学会、日本脊椎脊髄病学会の監修によりわが国最初の『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン』が2011年に高橋和久委員長と佐藤栄修担当理事のもと作成された。本ガイドラインの発表以降も、腰部脊柱管狭窄症の疫学、診断学の進歩、新しい薬物治療や運動療法などの保存治療や低侵襲手術の手術治療に関する多くの報告があり、腰部脊柱管狭窄症に対する診療体系は変遷してきた。また、腰椎疾患に対する患者立脚型の評価法や各種治療法の医療経済効果の検証など検討すべき課題も多岐にわたる。そこで、2018年10月に日本整形外科学会診療ガイドライン委員会に本ガイドラインの改訂の理由書を提出した。2019年1月に日本整形外科学会から日本脊椎脊髄病学会に、腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン策定委員会の発足依頼があり、日本脊椎脊髄病学会で承認され、当該委員会が設立された。日本整形外科学会、日本脊椎脊髄病学会に所属する14名の委員を選出し、メール審議でBackground Question(BQ)とClinical Question(CQ)の項目を検討した。2019年5月10日に第1回腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン改訂版策定委員会を開催し、各委員の利益相反の有無、BQ/CQと執筆担当委員を決定し、作業スケジュールを確認した。以降、計4回の会議が開かれたが、3回目以降はWeb会議(全委員出席)として、BQ/CQの修正や執筆内容の査続・修正はほとんどすべてメール審議で行い、最終的に全委員で文章確認を行った。CQの推奨決定のための投票はWeb会議で無記名により実施し、委員会での合意が得られた。この場を借りて委員の先生方ならびにアブストラクト作成に寄与していただいたすべての方々に御礼を申し上げる。

 本ガイドライン改訂版は2019年までのBQ/CQに関する論文を系統的に検索し、公益財団法人日本医療機能評価機構(Minds)が発行した『Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017』に準じて、この編集委員の一人である吉田雅博先生のご指導のもと、当委員会で執筆したものである。

現時点での腰部脊柱管狭窄症に関する最新の知識をまとめたものであると自負している。是非、日々の診療におけるひとつの指標として役立てていただきたい。しかしながら、ガイドラインの策定は発表された論文をもとになされているため、個々の患者の実臨床には完全に合致しない可能性は否めない。腰部脊柱管狭窄症の的確な診断のもと個々の患者に則した治療が望まれるのは当然であるが、インフォームド・コンセントや共有意思決定が十分なされる必要があるのはいうまでもない。

本ガイドライン改訂第2版が患者に対する診断および治療に関する施設間の偏りを是正し、向上を図るために有用であるか、医療者そして患者の双方にとって有益な情報を提供し、医療従事者間や医療を受ける側との相互理解に役立てることができるか、効率的な治療により人的・経済的負担を軽減することが期待できるか、など今後検証すべき課題は多い。

 発行にたどり着いた本ガイドライン改訂第2版ではあるが、策定直後より新しい知見が日々報告されていることから、常に改訂の必要があるといっても過言ではない。そのためには臨床倫理に基づいた質の高い臨床研究が今後いっそう発表されることを期待したい。  最後に、本ガイドライン改訂第2版作成にあたって、日本整形外科学会診療ガイドライン委員会事務局・武内翔様の利益相反の確認やガイドライン策定に関する様々なご指導に感謝いたします。 また、文献検索からメール審議、Web会議の準備などのための事務局を引き受けていただきました、一般財団法人国際医学情報センターの逸見麻理子様、深田名保子様、加治美紗子様、ならびにガイドライン作成方法を丁寧にご指導賜りましたMindsの吉田雅博先生に深謝いたします。


2021年4月

日本整形外科学会 腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン策定委員会
委員長 川上 守

 腰部脊柱管狭窄症は脊椎手術のなかでもっとも執刀する機会が多い疾患である.日本整形外科学会,日本脊椎脊髄病学会の監修によりわが国最初の『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン』が2011年に作成された.本ガイドライン発表以降も,腰部脊柱管狭窄症の疫学,診断学の進歩,プレガバリン,デュロキセチン塩酸塩,オピオイドなどの新しい薬物治療や運動療法などの保存的治療や側方経路腰椎椎体間固定(lateral lumbar interbody fusion:LLIF)などの低侵襲手術の手術的治療に関する多くの報告があり,腰部脊柱管狭窄症に対する診療体系は変遷してきた.そのなかで,本書が10年ぶりに改訂された.本改訂作業にあたり膨大な労力と時間を費やされた,川上守委員長をはじめとする策定委員会の先生方および関係者の方々に,心より敬意を表したい.本書は,現時点での腰部脊柱管狭窄症に関する最新の知識をまとめたものである.

 今版は,「定義・疫学・自然経過」,「診断・評価」,「保存治療」,「手術治療」,「手術後の予後」の章に分かれ,8つのBackground Questionと15個のClinical Questionについて,現在わかっている見解と解説を述べており,腰部脊柱管狭窄症についておさらいをする書籍としても役に立つ.自然経過に関しては,重症の症例の自然経過は明らかになっておらず,重篤な併存症をもっていて,手術ができない患者に,手術をしないことによるメリット・デメリットについて話ができない歯がゆさは残る.保存的治療としての神経根ブロックは神経根型の腰部脊柱管狭窄症患者に対して,また手術以外で治したい患者に対しては,私はよく行っている.ただし,本ガイドラインでは,「ブロック療法におけるステロイドの併用は短期的に疼痛およびQOLをさらに改善するが,中長期的にその効果は消失する」としている.2018年の『慢性疼痛治療ガイドライン』を読むと,腰部脊柱管狭窄症における神経根ブロックは1B(施行することを強く推奨する)と記載してある.本邦においては,神経根ブロックは神経鞘内に薬液を注入する手技で,経椎間孔ブロックとは異なるとする考え方もあるが,その概念は統一されていない.神経根ブロックは診断的ブロックを扱う一部の論文に使用され,治療を目的とした研究のほとんどが経椎間孔ブロックについて扱っているが,明確には区別できないため,2018年の『慢性疼痛治療ガイドライン』では同一の手技として扱う,としている.本ガイドラインでは,ブロック療法として,経椎弓間または経仙骨裂孔の硬膜外ブロックの記述しかなく,神経根ブロックのガイドラインについても示してほしかった.手術に関しては,医療技術の進歩,手術点数などの点から,腰椎固定術が増えている傾向にあるが,本ガイドラインでは,不安定性を伴う腰部脊柱管狭窄症患者に対する腰椎固定術群は腰痛を中心に臨床的には効果的であるが,併発症のリスクも高くなるため患者選択や適応決定に関しては慎重に行うべきである,としている.また,変形や不安定性を伴わない症例に対する固定術の併用は行うべきではない可能性が示されている.

 本書は,腰部脊柱管狭窄症に関して最新の知見を盛り込んでおり,整形外科医,脊椎外科医のみならず,メディカルスタッフや患者に対しても,治療法を決めるうえで参考になる一冊であり,購入することをおすすめする.

 最後に,改訂第3版が出版されるであろう10年後までに,さらに腰部脊柱管狭窄症の診断と治療についての新しいエヴィデンスが多く発表されることを期待する.

臨床雑誌整形外科73巻7号(2022年6月号)より転載
評者●信州大学運動機能学教室教授・橋 淳