書籍

腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021改訂第3版

監修 : 日本整形外科学会,日本脊椎脊髄病学会
編集 : 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン策定委員会
ISBN : 978-4-524-22945-1
発行年月 : 2021年5月
判型 : B5
ページ数 : 104

在庫あり

定価3,300円(本体3,000円 + 税)


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  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

腰痛などを契機に一般開業医を受診する患者も多い腰椎椎間板ヘルニアに対し,最新の知見を踏まえ患者の症状や希望も考慮して日常診療を行うための指針となるガイドライン.今回の改訂ではMindsの指針に沿って構成・内容を刷新し,発生機序や病態が未だに十分明らかでない本疾患の基本的知識をBQとしてわかりやすくまとめ,診断と治療に直結するCQを厳選して提示した.

前文
 はじめに
 1.作成組織・作成主体
 2.作成工程

第1章 疫学・自然経過
 はじめに
 Background Question 1 腰椎椎間板ヘルニアの疫学
 Background Question 2 腰椎椎間板ヘルニアの自然経過(型,大きさ,画像所見,退縮・吸収
までの期間)
 Background Question 3 どの程度の患者が手術的治療にいたるのか
 Background Question 4 腰椎椎間板ヘルニアとスポーツとの関係(予防か発症誘因か)

第2章 病態
 はじめに
 Background Question 5 腰椎椎間板ヘルニアの発生機序
 Background Question 6 腰椎椎間板ヘルニアの大きさと臨床症状
 Background Question 7 腰椎椎間板ヘルニアの発生に影響を与える環境因子
 Background Question 8 腰椎椎間板ヘルニアの発生に影響を与える遺伝的因子
 Background Question 9 腰椎椎間板ヘルニア退縮の機序

第3章 診断
 はじめに
 腰椎椎間板ヘルニアの診察手順
 Background Question 10 腰椎椎間板ヘルニアの症候
 Background Question 11 腰椎椎間板ヘルニアの臨床診断
 Background Question 12 腰椎椎間板ヘルニアの画像診断(単純X 線像,MRI,CT:診断価値,
必要性を含めて)
 Background Question 13 障害高位・神経根同定に対する補助診断とその意義

第4章 治療
 はじめに
 Background Question 14 腰椎椎間板ヘルニアに対する治療のコンセプト
 Background Question 15 各種手術術式
 Background Question 16 (緊急)手術の適応
 Clinical Question 1 薬物治療は有用か
 Clinical Question 2 硬膜外副腎皮質ステロイド薬注入療法は有用か
 Future Research Question 1 理学療法や代替療法は有用か
 Clinical Question 3 手術的治療は保存的治療と比べて有用か
 Clinical Question 4 外科的治療のなかで推奨される治療は何か

第5章 予後
 はじめに
 Background Question 17 再発率と再手術率はどの程度か
 Background Question 18 下垂足や膀胱直腸障害を伴う重度神経障害は外科的治療で改善するか
 Background Question 19 治療後に職場復帰できるのはどのくらいか
 Background Question 20 治療後にスポーツ復帰できるのはどのくらいか
 Background Question 21 手術の後療法の内容により予後は変わるか
 Background Question 22 手術成績の予後に影響を与える要因は何か
 Background Question 23 術後経過に影響を及ぼす処置はあるか

改訂第3版の序

『腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン』は2005年に初版が刊行され,2011年の第2版に続き,今回の改訂で第3版となります.日本整形外科学会診療ガイドライン委員会において腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン策定委員会の設立が決定され,本委員会は日本脊椎脊髄病学会の支援の下に,全日本から広く14名の先生に委員に就任いただきました.私は本ガイドラインの初版策定から参加させていただく機会を得て,多くの先生にご指導いただきました.第2版までは採用論文の構造化抄録を作成し,そのエビデンスレベルを設定して,推奨度を決定するという方針でした.しかし,第3版は『Minds診療ガイドライン作成の手引き 2014』と『Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017』を基に策定することになりました.これまでのエビデンス中心の考え方だけではなく,対象となる医師や患者さん,保険適用などを考慮し,推奨は利益相反(COI)がない委員全員による会議で投票により決定しました.当初は20のBackground Question(BQ),9つのClinical Question(CQ)を用意して検討を重ねて参りましたが,審議の結果,原案のように23のBQ,4つのCQ,1つのFuture Research Question(FRQ)となりました.この過程には吉田雅博先生のご指導を仰ぎながら,多数回会議を開催し,実に多くの検討と議論がなされたことを報告いたします.途中,COVID-19感染症により作成委員は個々の医療施設で多くの困難を経験しながらも,ガイドライン作成作業を進めて参りました.多くの医師を含む医療従事者の方々が腰椎椎間板ヘルニアの診療にあたるとき,是非本ガイドラインを有効にご活用いただければ幸甚です.
 最後に,第3版の改訂作業の機会をいただいた日本整形外科学会理事長 松本守雄先生,診療ガイドライン委員会理事 山下敏彦先生,委員長 石橋恭之先生,また,日本脊椎脊髄病学会前理事長中村博亮先生,現理事長 松山幸弘先生に深謝申し上げます.また,毎回の会議でご指導いただいた吉田雅博先生,作業に当たり細かな配慮と多くの業務の支援をいただいた国際医学情報センター逸見麻理子様,深田名保子様,上梓にあたりご尽力いただいた南江堂枳穀智哉様に心よりお礼を申し上げます.パブリックコメントでは,日本整形外科学会,日本脊椎脊髄病学会,日本腰痛学会,日本運動器疼痛学会の会員の先生方に貴重なご意見を拝聴できたことに深謝いたします.
 本ガイドラインが腰椎椎間板ヘルニアの患者さん,そのご家族のために役立つことを切に願います.

2021年4月

日本整形外科学会
腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン策定委員会
委員長 波呂 浩孝

 腰椎椎間板ヘルニアは、日常診療のなかでも頻度の高い、いわゆるcommon diseaseである。多くの整形外科医師にとって、その診断学や治療法は確立されていると思われるが、それらが単なる経験則でなく、科学的根拠に基づくものかどうかを確認する作業は必要である。また、近年の医学の著しい進歩に伴い、疾患に対する診断や治療は常に変化しており、腰椎椎間板ヘルニアにおいてもその例外ではなく、専門知識については常にup to dateしなければならない。そのなかで、本書が10年ぶりに改訂された。初版は2005年に刊行されており、今回で第3版となる。本改訂作業にあたり膨大な労力と時間を費やされた、波呂浩孝委員長をはじめとする策定委員会の先生方および関係者の方々に、心より敬意を表したい。

 本改訂版では、第2版と同様に、「疫学・自然経過」から始まり、「病態」、「診断」、「治療」、「予後」と続き、これらを通読することで腰椎椎間板ヘルニアを体系的に理解できるようになっている。本改訂は、「Minds診療ガイドライン作成の手引き2014」および「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に準拠して、全部で23のbackground question(BQ)、4つのclinical question(CQ)、1つのfuture research question(FRQ)から構成された。最新の知見による科学的根拠に基づきながらも、エビデンス中心の考え方だけでなく、日本の医療制度に合わせて、医療従事者にも患者にも双方に利益となるよう作成されている。どのquestionも実際の臨床に即して設定されたものであり、BQでは、その要約が最新の基本知識を端的に示しており、CQでは、その推奨度やエビデンスの強さだけでなく、委員の合意率を示すことによって、読者自身のなかでのquestionに対する推奨度を判断できるようになっている。FRQに関しては、本改訂版では「理学療法や代替療法は有用か」というquestionに限られるが、今後さらなるエビデンスが集積され、次回改訂時にはCQとして選定されていることが期待される。そのなかでも、本書の真骨頂は、それぞれのquestionの解説にあり、これまでの腰椎椎間板ヘルニアに対する知の集積がまとめられており、読み物としてもたいへん面白い。本改訂版では、腰椎椎間板ヘルニアの発生に影響を与える遺伝子因子として幾多の疾患感受性多型の報告が取り上げられ、慢性疼痛関連としての薬物治療の選択肢も増え、手術的治療においては、いくつかの費用対効果の報告が取り上げられているのも時代の流れを感じるものである。

 本書は、腰椎椎間板ヘルニアの診断および治療に対する現在の指針であり、医師だけでなく、メディカルスタッフや患者に対しても本疾患に関する最新の知識を提供し、円滑に整形外科診療が行われる一助となるものであろう。また、整形外科専門医にとっては、本ガイドラインを基本として、自分自身のこれまでの経験や、それぞれの患者背景を加味したワンランク上の診療をめざしたいところでもある。整形外科医はもちろんのこと、腰椎椎間板ヘルニアに興味のあるすべての方の傍らに、ぜひ本書をおいていただきたい。


臨床雑誌整形外科72巻12号(2021年11月号)より転載
評者●藤田医科大学整形外科教授 藤田順之