書籍

ゆるっと学ぶ肝臓病塾

これだけ押さえれば大丈夫!

: 吉田英雄
ISBN : 978-4-524-22858-4
発行年月 : 2025年8月
判型 : A5判
ページ数 : 168

在庫あり

定価3,960円(本体3,600円 + 税)

  • 新刊

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

肝疾患に関する知見を簡潔かつ分かりやすくまとめた入門書.肝臓とはどんな臓器か,どんな疾患があるのか,またどのような検査,治療が行われているのかについて,初学者が押さえるべきポイントを著者ならではの肩ひじ張らない語り口で平易に解説している.楽しく読み進めながら,肝疾患に関する幅広い知識を身につけられる一冊である.

Chapter 1 まずは,肝臓を知る
 1.人体最大の臓器=肝臓 ?その仕組みと働き?
  Tea Break 1 腫れる肝臓,縮む肝臓
 2.「肝機能障害」ってなんだろう? ?ALTが上がったら肝障害?
  Tea Break 2 シンプルに知りたい.ALT はなぜ上昇するの?
 3.どれだけ飲めば肝臓は悲鳴を上げる? ?アルコールと肝臓?
  Tea Break 3 アルコールをやめられない人がよくする質問
 4.「沈黙の臓器」が沈黙を破るとき ?肝硬変の合併症?
  Tea Break 4 肝性脳症の新しい分類
Chapter 2 肝臓を診る
 A.肝疾患を調べる
  1.血液とって何を調べる? ?血液検査でわかること?
   Tea Break 5 1日を争うか? 2?3 ヵ月なら大丈夫か? ?肝の緊急度を判断する?
  2.ここだけは押さえたい! 画像検査の読影ポイント
  3.肝臓の組織を直接見る ?病理検査に必須の肝生検?
   Tea Break 6 これぐらいはカジっておきたい! 病理所見から何がわかる?
 B.肝臓を知るための新たな道具の数々
  1.肝臓の硬さを測る ?線維化進行度の評価?
  2.腫瘍マーカーの秘密
  3.見えないものを見るために?造影剤使用の実際?
   Tea Break 7 検査をしても肝障害の原因がわからないときの考えかた
Chapter 3 劇的に変わった肝臓病治療?この肝臓病患者はこう治療する!?
 A.肝炎を治療する
  1.なぜこの患者にこの治療を行うか ?肝炎編?
  2.ウイルス肝炎の治療 ?B型肝炎・C型肝炎?
   Tea Break 8 B型肝炎ウイルスの再活性化
  3.免疫異常による肝炎の治療 ?自己免疫性肝炎(AIH)・原発性胆汁性胆管炎(PBC)?
   Tea Break 9 せっかく高いお金も使ってウイルスを駆除したのに……
 B.肝硬変を治療する
  1.肝硬変の治療は合併症の治療 ?黄疸,腹水・浮腫,肝性脳症,食道静脈瘤?
   Tea Break 10 肝臓と筋肉の関係 ?サルコペニア?
  2.新たなる肝硬変合併症の治療薬
   Tea Break 11 肝疾患と消化管出血
 C.肝癌を治療する
  1.なぜこの患者にこの治療を行うか ?肝癌編?
   Tea Break 12 手術か,ラジオ波か
  2.肝癌診療ガイドラインを噛み砕くと……
   Tea Break 13 肝癌穿刺局所療法の限界
  3.癌の種類によらず使われる薬も登場 ?肝癌に用いられる分子標的薬,免疫チェックポイント阻害薬?
  4.患者のQOLを保ちたい! ?さまざまなケースでのコツ?
 D.そのほかの治療現場
  1.それって患者に伝わってる? ?病状説明のイロハ?
  2.救命率20%! 劇症肝炎の治療
  3.肝臓治療の最終兵器,肝移植の実際
   Tea Break 14 なぜ内科医である私が肝移植にかかわるようになったか
Chapter 4 肝疾患患者はここにいる
 1.ちょっと特殊な状況の肝疾患に対応する
 2.肝疾患患者が病院で陥りかねない恐ろしい事態 ?検査・治療の合併症?
 3.慢性肝疾患患者の囲い込み
 4.フォアグラ撲滅計画 ?脂肪肝の蔓延?
  Tea Break 15 「脂肪肝」の新しい呼び名
 5.薬と肝臓の微妙な関係 ?薬物性肝障害?

 みなさん,こんにちは! 本書を手に取ってくれてありがとうございます.
 本書は医師になってから5 年目以内くらいの初期・後期研修医の先生を対象に,肝臓とはどんな臓器か,肝臓にはどのような病気があるのか,それに対して,現在日本でどのような検査・治療を行っているのか,ということを紹介しています.
 「ゆるっと」とタイトルにあるように,肩ひじ張らず,気楽に読んでもらえればと思います.筆者がゆるい人間なので,どうしても書いたものもゆるくなってしまいます.ご容赦ください.リラックスして読んでもらい,肝臓という臓器の概要をなんとなくわかってもらえればと思います.
 我々肝臓病医が頑張った(⁉)おかげで,日本においてこれまで肝臓病のラスボスであった肝細胞癌のマネージメントはこの数十年に長足の進歩を遂げました.日本で肝細胞癌の原因として最も多かったC 型肝炎ウイルスは2〜3ヵ月で駆除できるようになりました.アジア・アフリカではC 型肝炎ウイルスを上回る肝疾患の原因であるB 型肝炎ウイルスも,薬物投与により劇的にコントロールできるようになりました.それでも,未だに肝臓病で苦しむ患者さんは後を絶ちません.
 現代日本では,脂肪肝(代謝異常関連脂肪性肝疾患:MASLD)が大きな問題となっています.日本国民の3 分の1 が脂肪肝であるという報告もあります.この脂肪関連の肝疾患も,やはり肝硬変・肝癌・肝不全の原因となりうるのです.これまでの肝炎ウイルスに対峙してきた歴史同様,これからは脂肪肝を中心とする肝疾患に立ち向かっていかなくてはなりません.
 本書を読み,肝臓という病気,その臓器に起こる疾患に少しでも興味を持っていただき,肝臓病に苦しむ患者さんを助けたい,と思ってもらえる方が一人でも増えれば望外の喜びです.
 人は生き物です.生き物である以上,いつかは死を迎えます.人生100年時代といっても,100 年たてばこの世に別れを告げなければなりません.
 それならば,生きている時間を,生きていてよかったと思って過ごしてほしい.そして,ああ生まれてきてよかった,つらいこともいろいろあったけど,楽しかったなあと思って人生を終えてほしい.その中にあり,肝臓の問題で,我々ができることを最良の形で患者さんたちに提供していきたい.その入り口として,まず肝臓という臓器に興味・関心を持ってもらいたいという思いです.我々医療従事者は,病気を治すことはできません.患者さん自身の力で疾患を克服するのを手助けすることが我々のできるすべてなのです.
 さあ,本書を読み,肝臓病に苦しむ患者さんが健康に過ごせる手助けを,最高の形でしようではありませんか!
 最後に,本書を書いたらどうかと私に声をかけてくれ,遅筆・悪筆を叱咤激励して発刊にこぎつけていただいた南江堂の編集の皆様,特に上平和秀氏に感謝の意を表したいと思います.
2025 年6 月
吉田英雄

9784524228584