書籍

小児脊柱変形治療の最前線

  • 新刊

編集 : 日本側彎症学会
責任編集 : 川上紀明/宇野耕吉
ISBN : 978-4-524-22812-6
発行年月 : 2021年11月
判型 : B5
ページ数 : 482

在庫あり

定価12,100円(本体11,000円 + 税)


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正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

小児脊柱変形は,病態・治療・経過が複雑で,脊髄神経機能や呼吸・循環器などへの影響を及ぼすことも多々ある,患者の一生を見守る覚悟がいる疾患である.本書では日本側彎症学会の事業として,小児脊柱変形の保存的治療・手術を中心に,最新知見を含め安全に完遂するためのすべてを網羅した.コンセンサスのある内容は本文に,技術的なコツは「エキスパートオピニオン」,筆者の哲学や症例紹介は「MEMO」として掲載している.

T章 総 論
 A 側弯症治療の歴史
 B 病 態
  1.病 因
  2.遺伝的要因
  3.自然経過
  4.疫 学
  5.側弯症によって生じる症状と問題点
  6.分類と用語解説

U章 診療の考え方
  1.側弯症外来診療の実際
  2.学校検診
   TOPIC 新モアレ
   TOPIC 3D 対称性解析による脊柱側弯症検診システム

V章 保存治療
  1.運動療法,装具の歴史と現在の考え方
  2.装具治療(トラブルシューティングも含めて)
   a.Osaka medical college(OMC)装具
   b.Active correction brace(Milwaukee を含む)
   c.Cheâneau装具
   d.千葉大式装具
  3.ギプス

W章 手術治療
  1.歴 史
   a.後方固定
   b.前方固定
   TOPIC 脊柱側弯症手術に対するロボット支援技術の現況
  2.手術計画の立て方とその実際
  3.手術手技
   a.さまざまな矯正手技
   b.インストゥルメンテーション手技(フック,クロウテクニック,drop entry, sublaminar wiring, S2AI screw)
   c.骨切り―前方
   d.骨切り―後方
   e.骨移植
   f.ナビゲーション下スクリュー刺入
   g.Vertebral rotation
   h.In situ bending
   i.Dual-rod rotation
   j.Rod introducer を用いた矯正
   k.Hybrid 法
   TOPIC 欧米(SRS)での動向(周術期の薬剤療法,抜釘するか否か,体内金属濃度も含めて)

X章 側弯症の長期経過
  1.非手術例
  2.手術例

Y章 各種疾患に対する治療戦略
  1.早期発症側弯症
   a.Traditional growing rod 法
   b.VEPTR(vertical expandable prosthetic titanium rib)
   c.Shilla法
   TOPIC Anterior tether, MCGR
  2.先天性側弯・後弯症
  3.症候性側弯症
   a.二分脊椎
   b.神経線維腫症(NF)
   c.Marfan 症候群
   d.神経・筋原性側弯症(NMS)
   e.脊髄係留,空洞,Chiari 奇形を合併した側弯
   f.骨系統疾患
   g.骨形成不全症(osteogenesis imperfecta)
   h.先天性多発性関節拘縮症,多発性翼状片症候群
   i.Turner 症候群およびNoonan 症候群
   j.Pradar-Willi 症候群
   k.Sotos 症候群
   l.放射線照射後脊柱変形
   m.ヒステリー性側弯
   n.先天性心疾患と脊柱変形

Z章 周術期管理
  1.麻 酔
   a.思春期側弯症
   b.早期発症側弯症
  2.脊髄モニタリングの実際
  3.術後管理と後療法
  4.側弯症治療の合併症
   a.合併症総論
   b.合併症各論
  5.麻痺発生後の医療,看護,リハビリテーション
  6.感染時の創管理
  7.側弯症治療の看護
   a.外 来
   b.入 院
   c.手 術

[章 その他の脊柱変形治療
  1.小児頚椎変形の治療
   a.骨性変形
   b.環軸関節回旋位固定(AARF)
   c.環軸椎不安定症
   d.中下位頚椎後弯
  2.姿勢異常を伴う小児脊椎疾患の治療
   a.若年性腰椎椎間板ヘルニア
   b.形成不全性すべり
   c.Ankylosing spondylitis
   d.Sheuermann 病

付 録
  1.症候群性側弯症リスト
  2.手術同意書

序 文

 日本側彎症学会の事業として2013年4月に『脊柱変形治療の最前線―基礎編』,2014年6月に同『手術編』を発刊し10年弱が経過しました.多くの皆様からご評価いただいておりましたが,諸事情によりこの2冊が絶版になってしまいました.今回内容を一新し,2冊を1冊にダウンサイジングし,『小児脊柱変形治療の最前線』として,保存治療から手術治療までこの間の最新知見を含め網羅しました.内容は一新しておりますが,前著と同じ方針,すなわち,従来の教科書にありがちなauthorityによるreview的な引用の羅列ではなく,実際に最前線で治療に従事している人が自分の思い入れ(哲学)も含めてclinical basedで執筆する,ということを踏襲しています.したがいまして希少疾患に関しては,どうしても年寄り? の責任編集の2人が執筆せざるをえないという状況になりました.その分,思春期特発性側弯の保存,手術治療は,令和の日本の側弯症治療を背負って立つ若手の先生方にお願いいたしました.Clinical basedとはいえ,教科書ですので,エビデンスないしはコンセンサスのある内容は本文として,技術的なコツなどは「エキスパートオピニオン」,筆者の個人的な意見や経験症例の紹介は「MEMO」として掲載しております.また前著以上に医師だけでなく,脊柱変形治療にかかわるすべての人たちに有益な情報を提供できるようにも努めました.前著でとくに好評だった「側弯症手術の合併症とその対策」は,「側弯症手術の合併症 合併症各論」として,新たに清水敬親先生に加わっていただき,かつ筆者それぞれ症例を提示してリスクマネジメントにより具体性を持たせております.それに加え,「麻痺発生後のリハビリテーション」として,神経合併症発生例に対し,退院ないしは回復期リハに転院するまでの期間,医師だけでなく担当看護師,理学療法士がどのように向き合っていくかについても記載いたしました.ただし,これらはあくまでも長年脊柱変形治療に携わっている医療従事者の個人的見解,経験論であり,しかもまったく正反対の意見も記載しておりますので,これらの章はほぼエキスパートオピニオンとMEMOとお考え下さい.したがって,令和の脊柱変形治療のリスクマネジメントにおいて,医療従事者が最低限身につけておかねばならない,知っていなければならないstandardではないということはご理解ください.

 最後になりましたが,日本側彎症学会は,発足52周年の2019年2月に社団法人化いたしました.法人化して,そして令和になって初めての日本側彎症学会編集の教科書の責任編集を任せていただき,伊東学理事長,松本守雄前理事長をはじめとした日本側彎症学会理事,評議委員の皆様には大変感謝しております.また南江堂には,内容は刷新したとはいえ,絶版になった書籍の再発刊を引き受けていただき,この場を借りて厚く御礼申し上げます.本書が,令和の脊柱変形治療発展の一助になることを切に願っております.

令和3年(2021年)11月15日
独立行政法人国立病院機構神戸医療センター 院長
宇野耕吉



推薦のことば

 この度約7年ぶりに日本側彎症学会より,『側弯症治療の最前線―基礎編,手術編』の内容を一新した最新版のテキストブック『小児脊柱変形治療の最前線』が川上紀明,宇野耕吉両先生の責任編集の下,南江堂より出版されましたことは誠に喜ばしく,編集企画および執筆者の皆様のご尽力に心より敬意を表します.

 本書を手にとってみると,まず,脊柱変形治療に関する現在の「STATE OF THE ART」が網羅されていることに感銘しました.この7年間における脊柱変形治療の進歩は目覚ましく,思春期側弯症の手術的矯正率など80%に達し,難しい症候性脊柱変形の矯正も改善され,合併症も減少できるようになりました.しかし,であるが故にQOL改善のため,更に複雑高度の,これまで手がでなかった変形矯正にも取り組むことが求められるようになってきました.

 本書は脊柱変形治療について豊富な経験と知識技術をもつ計52名のエキスパート,脊椎外科専門医のみならず,治療を側面から支えてくれるチームメンバーの看護部,麻酔・全身管理,リハビリテーションのスペシャリストが多く含まれ,関連部門についても,詳しく実戦に即した親切丁寧な解説がなされていて心強く感じました.新しく改良開発された手術手技とともに,それを可能にした新手術器具の使用方法についても,ふんだんに盛り込まれた図と写真で具体的詳細に解説されています.

 申すまでもなく,小児脊柱変形患者,ことにタフな神経筋疾患である症候群性の側弯・後弯の治療には,脊髄神経機能や呼吸・循環器などへ影響を及ぼすことが多々あり,手術では術前準備から周術期の治療,そして更にその後,長い一生をフォローしていく特別な配慮が求められると思います.本書ではこれら関連する問題に対応しながら,最善のglobal alignmentを構築するためのポイントとなる解説が広く網羅されていると思います.  本書を最後の1 ページまで読ませて戴きました.たとえエキスパートであっても,これだけ広範な領域を一人でカバーすることは不可能に近く,本書から得られる情報は多大で,学ぶがところ多く,若手の脊椎外科医からエキスパートまで日常診療上おおいに役立つことと思います.

 今版で新しく設けられた点として,各項の初めにそのテーマについての基本知識が囲み記事の[Point]の中に記載され,途中には要所要所に「MEMO:エキスパートオピニオン」として技術上のコツやヒント,合併症予防のポイント,トラブルシューティングなどとともに,問題点についての各エキスパートの哲学,思い入れ,こだわりが述べられ,興味深い内容となっています.小児整形外科疾患は患児の一生を見守っていくという医の心が必要です.読者が将来,特殊疾患のdemandingな症例を担当した場合でも,本書の各章の解説は十分参考になると思います.

 本書が小児脊柱変形治療を担当する皆様のお役に立ち,本疾患診療の進歩発展に必ずや貢献することを信じ,推薦いたします.

推薦のことば

令和3年(2021年)11月15日
旭川医科大学 名誉教授
竹光義治

 小児脊柱変形とは思春期特発性側弯症,先天性側弯・後弯症,症候性側弯症とさまざまな原因による幼児から思春期に生じる脊柱変形をさす.本書の姉妹本である『成人脊柱変形治療の最前線』に揃えて,タイトルを『小児脊柱変形治療の最前線』としたと思われる.本書は設立55年となる日本側彎症学会が総力をあげて作成した教科書である.本書が刊行された経緯は,前書きに詳しく述べられている.日本側彎症学会教育研修委員会で日本語で書かれた側弯症の教科書を作成することが企画され,2013年に『側弯症治療の最前線―基礎編』,2014年に『側弯症治療の最前線―手術編』が発行された.病態から最先端の治療まで側弯症のすべてを網羅し評価の高かった本であったが,残念ながら絶版となり各方面から惜しまれていた.今回,内容を一新して2冊を1冊にまとめて刊行された.本書の執筆陣をみると,側弯症のオーソリティから気鋭の若手までが執筆している.特徴的なのは,全員が現役で手術を行い,患者を診ていることである.そのため,実際的で説得力に富んでいる.

 内容をみると,診療の考え方の章では,外来でのチェックポイントが詳しく述べられており,これから側弯症診療を始める若手医師にとって大いに参考になる.学校検診に多くのページが割かれており,日本における検診の歴史,兵庫県を例にした現況,問題点を明らかにしている.従来使われてきたモアレ検査機器が現在手に入らないため,その代替となる検査システムが紹介されており,これらの機器の普及が望まれる.保存的治療では,日本で発展してきたOsaka Medical Colledge(OMC)装具,千葉大式装具をはじめ,Milwaukee装具,Boston装具,Chêneau装具が紹介されている.手術的治療の章では,最新の手術手技が網羅されており,豊富な図と写真により最新のインストゥルメントの使用法が詳細に解説されている.

 評者がもっとも感銘を受けたのは,周術期管理の章の合併症各論と麻痺発生後の医療,看護,リハビリテーションの項であった.合併症各論では重度側弯症治療の豊富な経験がある川上紀明先生,松本守雄先生,清水敬親先生,宇野耕吉先生が,術後に遭遇しうる重篤な合併症に対する心構えから,患者,家族への説明,対処法について,ご自身の言葉で語っている.たとえば,手術中の異常察知と手術中止の判断,その際インプラントはどうするか,家族への説明のタイミング,麻痺に対する術者としての姿勢(患者,家族への謝罪も含めて)が取り上げられている.いずれもきわめて重大な判断である.これらに正解はないと思われ,4名の脊椎外科医としての哲学が語られている.側弯症治療にあたる医師は一読することを推奨する.麻痺発生後の医療,看護,リハビリテーションの項では,不幸にも術後に麻痺が発生した小児患者に,医師の立場,看護師の立場,訓練士の立場から,どのように対応していくかが述べられている.急性期から退院ないしは回復期リハビリテーション病院への転院までのさまざまなタイミングで,患者,家族の心情に配慮して言葉をかけ,患者が自立していけるようにリハビリテーションをすすめている.執筆者のこれまでのご苦労が垣間見えるとともに,その経験を読者に伝えたいとの思いが伝わる.

 随所にMemoとしてエキスパートオピニオンが掲載されている.外科医は徒弟制度,つまり先輩の経験で育つものであり,統計処理されたevidence-based medicine(EBM)に従っていても手術の腕は上がらない.Memoではその道の専門家の経験が語られている.これだけを読みすすめても面白い.最後に付録として同意書のひな型がのっている.最初から最後まで小児脊柱変形治療の実践に,とことん役立つ書と感じた.

臨床雑誌整形外科73巻7号(2022年6月号)より転載
評者●東北医科薬科大学整形外科学教授・小澤浩司