書籍

CARIFAS style 足部・足関節の手術エキスパートブック

: 高尾昌人
ISBN : 978-4-524-22801-0
発行年月 : 2020年5月
判型 : B5
ページ数 : 176

在庫あり

定価9,900円(本体9,000円 + 税)


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  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

足部・足関節領域の世界的トップランナーである著者が、一般的な手術書では学ぶことができない「治療戦略」&「手技」の秘策や盲点を「Point」形式で余すところなく解説。同疾患治療に特化した重城病院CARIFAS足の外科センターの症例をベースに、診療から手術、後療法までの一連の流れを400枚以上の写真とイラストで細部まで分かりやすく解説し、臨場感あふれる構成とした。

1 足関節外側靱帯損傷に対する最小侵襲手術
 a.症例:陳旧性足関節外側靱帯損傷
 b.身体所見
 c.画像所見
 d.治療計画
 e.術式
  1)肢位とマーキング
  2)灌流液の関節内注射
  3)MMポータルの作成
  4)関節鏡の刺入と前距腓靱帯の観察
  5)AALポータルの作成
  6)縫合糸アンカーの挿入
  7)Suture relay technique
  8)Modified lasso-loop stitch
 f.術後経過
 g.特殊例
  1)足関節前方インピンジメント合併例
  2)Os subfibulareをともなう例
  3)経皮的Gould augmentation
  4)術前のストレス超音波検査および術中の関節鏡評価で靱帯線維が残存していない例に対する靱帯再建術
 h.Hybrid AntiRoLL(A&P-AntiRoLL)
  1)肢位
  2)自家薄筋腱の採取と移植腱の作成
2 外反母趾に対するDLMO法(Distal LinearMetatarsal Osteotomy)
 a.症例:外反母趾
 b.身体所見
 c.画像所見
 d.治療計画
 e.術式
  1)マニピュレーション
  2)肢位とマーキング
  3)DLMO法
  4)Weil変法
 f.術後経過
 g.特殊例
  1)内反小趾をともなう例
  2)術後再発例に対するDLMO法
  3)重度外反母趾はDLMO法の適応外なのか?
3 足関節後方インピンジメント症候群に対する後足部内視鏡視下手術
 a.症例:足関節後方インピンジメント症候群(Posterior ankle impingement syndrome:PAIS)
 b.身体所見および画像所見
 c.治療計画
 d.術式
  1)肢位
  2)ポータルの作成
 e.術後経過
4 足底腱膜炎に対する鏡視下手術
 a.症例:足底腱膜炎
 b.身体所見
 c.画像所見
 d.治療計画
 e.術式
  1)術前の準備
  2)肢位
  3)内側ポータルの作成
  4)Working spaceの作成
  5)外側ポータルの作成
  6)関節鏡の刺入
  7)軟部組織シェーバーの関節鏡視野への導入
  8)Working spaceの拡大
  9)踵骨前壁の確認
  10)踵骨棘の露出と切除
  11)足底腱膜の部分切離
 f.術後経過
5 変形性足関節症に対するDTOO法(Distal Tibial Oblique Osteotomy)
 a.症例:変形性足関節症
 b.身体所見
 c.画像所見
 d.治療計画
 e.術式
 f.術後経過
6 アキレス腱付着部症に対する踵骨形成術および長母趾屈筋腱移行術
 a.症例:アキレス腱付着部症
 b.身体所見および画像所見
 c.治療計画
 d.術式
  1)肢位
  2)踵骨棘および踵骨後上角の展開
  3)踵骨隆起の形成
  4)踵骨後上角の形成と長母趾屈筋腱の採取
  5)長母趾屈筋腱への糸掛け
  6)長母趾屈筋腱の踵骨への移行
  7)アキレス腱の再接合−Double-row fixation法
 e.術後経過
7 Freiberg病に対する自家骨軟骨柱移植術
 a.症例:Freiberg病
 b.身体所見
 c.画像所見
 d.治療計画
 e.術式
 f.術後経過
8 距骨骨軟骨損傷
 A.距骨骨軟骨損傷に対する治療の考え方
  a.用語の混乱:骨軟骨損傷(OCL)?離断性骨軟骨炎(OCD)?
  b.足関節の関節軟骨の特性:老化しない関節軟骨
  c.OLTの病因:足関節外側靱帯損傷との関連
  d.OLTに対する治療法:各治療法の限界
 B.CARIFAS足の外科センターにおける治療方針
 1.逆行性ドリリング
  a.症例
  b.初診時所見
  c.術式
  d.術後経過
 2.鏡視下骨軟骨片固定術
  a.症例
  b.初診時所見
  c.術式
  d.術後経過
 3.デブリドマン,Microfracture techniqueおよびPRP治療の併用
  a.症例
  b.初診時所見
  c.術式
  d.術後経過
 4.逆行性自家海綿骨移植術とPRP治療の併用
  a.症例
  b.初診時所見
  c.術式
  d.術後経過
索引

はじめに−当センターの診療コンセプト

 CARIFAS足の外科センターは、足関節・足部疾患に対して、最先端の治療を提供し(臨床)、医療レベルを向上させるための基礎・臨床研究を行い(研究)、次の世代を担っていく優秀な足の外科医を養成する(教育)ことを目的に、千葉県木更津市の重城病院内に2017年4月に開設された。
 「臨床」においては、足関節・足部疾患に罹患した患者が「早期に日常生活、社会活動、スポーツ活動に復帰する」ことをコンセプトに、「加速度的リハビリテーション(accelerated rehabilitation)」を積極的に取り入れ、治療を行っている。加速度的リハビリテーションでは、傷害により失われた身体の整合性を最短の時間で最大限に取り戻すことをゴールとし1)、術後の外固定はできるだけ避け、手術翌日から可動域訓練と歩行訓練を開始する(図1)。
 加速度的リハビリテーションに適合した術式として、可能な限り「最小侵襲手術(Minimally Inva-sive Surgery:MIS)」を採用している。正常な組織をできるだけ損傷しないように小さな術創から病変部にアプローチして治療する術式をMISという。関節鏡視下手術(図2)は、最も進化したMISであり、術後の痛みが少なく、日常生活やスポーツ活動に早期に復帰できる利点を有す。ただし、全ての傷害が関節鏡視下手術の適応となるわけではなく、症例に応じて関節鏡以外のMISや従来の開放手術とを使い分けることになる。
 術後の疼痛は、患者の肉体的・心理的負担となるため、患者のリハビリテーションに対する意欲を低下させる。したがって、患者自身が積極的に「加速度的リハビリテーション」に取り組むには、術後に痛くない麻酔である「末梢神経ブロックを併用した全身麻酔」が有効である。当センターでは、この分野の権威である野村岳志先生(図3左)と成島光洋先生(図3右)を招聘し、手術例全例に末梢神経ブロックを併用した全身麻酔を行っている。彼らの卓越した技術により1〜3分で末梢神経ブロックの手技は完了し、確実に術後の除痛効果が得られている。
 CARIFAS足の外科センターが開設されてから3年が経ったが、これまでに約1,000例に対して約1,300件の手術を行ってきた。また、国内外から延べ100名を超える医師が研修に訪れ、その中の多くの医師から、CARIFASで行っている治療についてのテキストを作成して欲しいという要望があった。そうした中、南江堂から、「CARIFASで行っている診療についての成書を作成したい」というありがたい申し出を受けたため、本書の執筆に着手した。
 本書では、当センターで行ってきた術式の中から手術件数が多い3つの術式(「1.足関節外側靱帯損傷に対する最小侵襲手術」、「2.外反母趾に対するDLMO法」、「3.足関節後方インピンジメント症候群に対する後足部内視鏡視下手術」)、そして研修医からの要望が多かった4つの術式(「4.足底腱膜炎に対する鏡視下手術」、「5.変形性足関節症に対するDTOO法」、「6.アキレス腱付着部症に対する踵骨形成術および長母趾屈筋腱移行術」、「7.Freiberg病に対する自家骨軟骨柱移植術」)を実際に行われている診断から手術、術後療法までの治療の流れに沿って、具体的に論述することとした。さらに、世界的にも治療方針が定まっていない「8.距骨骨軟骨損傷」について、当センターで行っている治療の基本的な考え方を記述した。
 われわれの目指す医療の最終到達点は遙かに遠く、現在の知見のみでは患者の希望に応えるのに十分といえない。われわれは、医療の発展のために研究を重ね、治療技術を進化させる義務がある。本書をご一読いただいた先生方に様々なご意見をいただき、議論を重ねることで、足の外科領域のさらなる発展の一助になることができれば幸いである。
 本書の作成にあたり、重城保之先生、岩下孝粋先生、片倉麻衣先生には、執筆に必要な資料収集や文章の校正にご助力いただいた。またOCLの項ではNew York Universityの下園由泰先生に多くの助言をいただいた。また、南江堂の仲井丈人氏、平原大輔氏、関田啓佑氏には、企画や校正だけでなく、本書の質を向上させるための多くのアイデアをいただいた。当センターにおける診療は、医師および看護師、看護助手、検査技師、事務職員、栄養士、理学療法士、薬剤師、放射線技師、保育士、ハウスキーパーなど、全てのスタッフのチームワークにより成り立っている。本書は、彼ら、彼女らの多大なる協力により完成に至った。本書の作成に関わった全ての方々に心からの謝意を表す。

令和2年4月
重城病院 CARIFAS足の外科センター所長
高尾昌人

 この10年ほど、加速度的リハビリテーション(accelerated rehabilitation)という言葉をよく耳にする。早期荷重や早期可動域訓練を意味する言葉であるが、正確な定義はないようである。私は『アキレス腱断裂診療ガイドライン2019』の策定委員として治療の項目を担当したが、まさにこの加速度的リハビリテーションにより、保存的治療の成績は格段に向上し、標準的な治療法となった。本書のはじめに、CARIFAS足の外科センターでは、加速度的リハビリテーションとそれに適合した最小侵襲手術(minimally invasive surgery:MIS)により、足関節・足部疾患に罹患した患者が「早期に日常生活、社会活動、スポーツ活動に復帰する」ことを診療コンセプトにしていると述べられている。本書を通して、このコンセプトに沿った手術術式、後療法が十分に理解できる。
 本書は3分の1にわたって関節鏡視下外側靱帯修復・再建術が記載されており、高尾先生も中心メンバーとして活躍されているAnkle Instability Groupの紹介をはじめ、この領域における熱意が伝わってくる。本書は、若い先生にも理解できるように、その手術手技が多くの写真を使って丁寧に説明されている(本学足の外科の大学院生も非常にわかりやすいと感想を述べていた)。さらに術後外固定を行わず、手術翌日から荷重歩行を開始し、スポーツ復帰を4週以降とするその科学的根拠が詳細に記載されており、スポーツ診療を行う先生には必読の章であると考える。
 足関節後方インピンジメント症候群に対する後足部内視鏡視下手術では、先生がNiek van Dijk先生のもとで直接学ばれた手技の詳細が紹介されており、これから後足部内視鏡視下手術を始める先生にとってもたいへん勉強になると思う。本手技は有用であり、ぜひ習得したい術式であるが、本書の中では後脛骨動脈、脛骨神経、腓腹神経と手術操作やポータルの位置が解剖の写真を交えて説明されており、これらの血管、神経損傷には注意が必要である。外反母趾に対しては、低侵襲手術としてdistal linear metatarsal osteotomy(DLMO)法の詳細と重症例に対する手術のコツが記載されている。後療法はもちろん外固定はなく、翌日荷重である。変形性足関節症に対するdistal tibial oblique osteotomy(DTOO)では、骨切り部の矯正後はロッキングプレートで固定し、術後は弾性包帯固定として、手術翌日から膝蓋腱支持(PTB)装具を装着して歩行訓練を開始している。またアキレス腱付着部症では長母趾屈筋腱移行術や付着部再建術が紹介され、後療法はやはり外固定はなく、PTB装具が使用されている。
 足関節の軟骨損傷に特化した研究グループとしてInternational Congress on Cartilage Repair of the Ankle(ICCRA)が発足したが、高尾先生はICCRAの立ち上げメンバーの一人である。最終章の距骨骨軟骨損傷はたびたび学会でも取り上げられるが、科学的根拠に基づく確実な治療法はいまだにみつかっていないのが現状である。本章では足関節の軟骨と膝関節の軟骨の性状の違いを説明され、膝から異質な関節軟骨を距骨に移植することの是非について結論は出ていないと述べられている。またmicrofracture techniqueとplatelet rich plasma(PRP)治療の併用や逆行性自家海綿骨移植術とPRP治療の併用の良好な成績例が紹介されており、たいへん興味深く読ませていただいた。
 本書は症例の紹介とともに疾患の病態や用語の説明もあり、手術術式は多くの写真を交えてたいへんわかりやすく説明されている。また本文とは別に重要ポイントが記載されており、知識の整理にも役立つ。単著の足の外科専門書はあまりないが、高尾先生ご自身の臨床経験と研究成果、そして多くのエビデンスに基づいた教科書である。そして、何より加速度的リハビリテーションと、それを可能にするための関節鏡視下手術を中心としたMISという先生の治療に対するコンセプトが十分に理解できる。整形外科治療は社会やスポーツへの早期復帰が求められる時代であり、経験を積んだ整形外科医をはじめ、足部・足関節を専門にしようとする若い医師やスポーツ医にぜひ本書を通読することを勧める。

臨床雑誌整形外科72巻1号(2021年1月号)より転載
評者●大阪医科大学看護学部教授 安田稔人