書籍

脳神経内科ゴールデンハンドブック改訂第3版

編集 : 鈴木則宏
ISBN : 978-4-524-22772-3
発行年月 : 2020年6月
判型 : 新書
ページ数 : 428

在庫あり

定価4,400円(本体4,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日常診療において知っておくべき情報を簡潔かつ具体的にまとめたポケット判マニュアル、ゴールデンハンドブックシリーズの脳神経内科版。臨床現場に即した「Emergency」、「外来パート」、「入院パート」の場面別構成。2018年の第2版増補版刊行以降の新薬・ガイドラインの情報を加えた。研修医はもちろん、脳神経内科医、一般内科医も白衣のポケットに入れておきたい一冊。

I.Emergency
 1.意識障害
 2.てんかん重積
 3.高血圧脳症
II.外来パート
 1.身体診察
  A.脳神経所見のとりかた
  B.高次脳機能のみかた
  C.運動機能のみかた
  D.反射のみかた
  E.感覚機能のみかた
  F.小脳症状のみかた
  G.髄膜刺激症状のみかた
 2.記憶障害,健忘
 3.視力・視野障害
 4.複視,眼瞼下垂
 5.瞳孔異常
 6.構音障害,嗄声,嚥下障害
  A.構音障害
  B.嗄声
  C.嚥下障害
 7.運動麻痺,筋力低下,筋萎縮
 8.感覚障害,しびれ
 9.運動失調
 10.歩行障害
 11.髄膜刺激症候
 12.頭痛
  A.片頭痛
  B.緊張型頭痛
  C.群発頭痛
  D.三叉神経痛
 13.めまい
 14.膀胱直腸障害
 15.Bell麻痺
III.入院パート
 1.脳血管障害
  A.脳梗塞
  B.一過性脳虚血発作(TIA)
  C.脳出血
  D.脳静脈血栓症
  E.くも膜下出血
  F.慢性硬膜下血腫
 2.てんかん(重積を除く一般的治療)
 3.認知症
  A.Alzheimer病(AD)
  B.軽度認知障害(MCI)
  C.Lewy小体型認知症(DLB)
  D.大脳皮質基底核変性症(CBD)
  E.前頭側頭葉変性症(FTLD)
  F.脳血管性認知症(VD)
  G.正常圧水頭症(NPH)
  H.プリオン病
  I.進行性多巣性白質脳症(PML)
  J.HIV関連認知障害(HAND)
  K.梅毒
 4.脱髄疾患
  A.多発性硬化症(MS)
  B.急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
 5.運動系の障害
  A.Parkinson病(薬剤性パーキンソニズム,血管性パーキンソニズム)
  B.進行性核上性麻痺(PSP)
  C.本態性振戦
  D.ジストニア
  E.舞踏運動,アテトーゼ,ジスキネジア
  F.ミオクローヌス
  G.Huntington病
  H.脊髄小脳変性症,多系統萎縮症(MSA)
  I.レストレス・レッグス症候群(RLS)
 6.運動ニューロン疾患および類縁疾患
  A.脊髄性筋萎縮症(SMA)
  B.球脊髄性筋萎縮症(SBMA)
  C.筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  D.若年性一側上肢筋萎縮症(平山病)
  E.脊髄空洞症
 7.末梢神経疾患
  A.Guillain-Barré症候群(GBS)
  B.Fisher症候群
  C.慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)
  D.multifocal motor neuropathy with conduction block
  E.その他免疫性ニューロパチー(CFS,MGUS)
  F.薬剤性ニューロパチー
  G.糖尿病性ニューロパチー
  H.血管炎性ニューロパチー
  I.圧迫性ニューロパチー
  J.傍腫瘍性ニューロパチー
  K.アミロイドポリニューロパチー
  L.遺伝性ニューロパチー(CMT,HSAN)
 8.筋疾患
  A.重症筋無力症(MG)
  B.Lambert-Eaton筋無力症候群(LEMS)
  C.多発性筋炎(PM),皮膚筋炎(DM)
  D.筋強直性ジストロフィー
  E.筋ジストロフィー
  F.ミトコンドリア脳筋症
  G.周期性四肢麻痺
  H.ポンペ病
 9.神経系感染症
  A.脳炎(ウイルス性,細菌性,真菌性,結核性)
  B.髄膜炎(ウイルス性,細菌性,真菌性,結核性)
  C.ヒトTリンパ球向性ウイルス脊髄症(HAM)
 10.代謝性疾患
  A.肝性脳症
  B.Wernicke脳症
  C.ペラグラ(ナイアシン欠乏症)
  D.ビタミンB6欠乏症
  E.亜急性脊髄連合変性症
  F.Korsakoff症候群
  G.Wilson病
  H.Fabry病
 11.脳死(脳死判定基準)
IV.主要検査手技
 1.画像検査
  A.CT
  B.MRI
  C.血管造影
  D.核医学
 2.脳脊髄液検査
 3.脳波
 4.筋電図検査
  A.神経伝導検査
  B.針筋電図検査
 5.誘発電位検査(ABR,SEP,VEP)
  A.聴覚脳幹応答(ABR)
  B.体性感覚誘発電位(SEP)
  C.視覚誘発電位(VEP)
V.主なスケール小堺有史
 A.NIH stroke scale(NIHSS)
 B.Frontal assessment battery(FAB)
 C.JCS,GCS
 D.長谷川式簡易認知症スケール(HDS-R)
 E.パーキンソン病評価尺度(UPDRS)
 F.脳,脳幹,血管の解剖図
 G.感覚神経のデルマトーム
 H.主な反射の中枢レベルおよび求心・遠心性神経
 I.筋肉の支配神経および脊髄神経根のレベル
付録.特殊抗体検査の依頼先と依頼方法の一覧表
索引

改訂第3版 序文

 このたび『脳神経内科ゴールデンハンドブック改訂第3版』を刊行することとなった。2009年の初版以来「臨床現場に直結」そして「簡潔」をモットーに編集された本書は、神経内科専門医のみならず初期研修医ならびに内科・神経内科をローテートする専修医の若き医師にも好評をもって受け入れられてきた。近年の神経内科領域の臨床は診断技術のみならず特に治療における進歩は著しく、新たな神経疾患治療ガイドラインの公表、新規治療薬の登場、既存薬剤の適応症拡大などが次々に実現し、その都度の内容の刷新が必要であったが、幸い2011年には『増補版』を出版し、2014年には『改訂第2版』を出版、さらに2018年には『改訂第2版増補』を出版することができた。
 しかし、その後も神経内科診療の進歩は著しく、特にここ数年の神経内科領域における新規治療薬の登場は目を見張るものがあり、『改訂第2版増補』でさえ内容がすでに古くなってしまったことを実感するようになった。そこで、さらなる改訂版の編集に着手し、ついに完成したのが本書『脳神経内科ゴールデンハンドブック改訂第3版』である。
 お気づきのように、初版から書名は一貫して『神経内科ゴールデンハンドブック』を継承してきたが、第3版からは『脳神経内科ゴールデンハンドブック』に改訂された。これは一般社団法人日本神経学会が、2017年9月の理事会において学会として標榜診療科名を「神経内科」から「脳神経内科」に変更することを決定し、2018年1月の社員総会で報告されたことによる。
 したがって第3版は書名が変わるとともに、心機一転、内容も大胆に刷新された。「てんかん重積」「てんかん」「めまい」の項目についてはガイドライン改訂や診断基準の改訂に基づき記載内容を一新した。「脳血管障害」では超急性期治療および慢性期再発予防治療の新たな治療指針の追加、「認知症」ではLewy小体型認知症での標準的治療の刷新、「脱髄疾患」において多発性硬化症のMcDonald2017診断基準および抗MOG抗体についての新知見と、数多くの最近上市された疾患修飾薬の特徴のまとめ、「運動系の障害」の「パーキンソン病診療ガイドライン2018」の公表に伴う改訂と新規治療薬の追加、「運動ニューロン疾患および類縁疾患」における新規治療薬の具体的使用法、そして「末梢神経疾患」ではCIDPで免疫グロブリン皮下注製剤ハイゼントラ®20%皮下注、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EPGA)でメポリズマブ(抗IL-5抗体)の記載、「重症筋無力症」のエクリズマブ、「ミトコンドリア脳筋症」のタウリン、そしてアガルシダーゼアルファやベータなどのFabry病の新規治療が盛り込まれた。さらに付録の「特殊抗体検査の依頼先と依頼方法の一覧表」においては抗MOG抗体などの新規抗体が追加された。
 今回もこれまでと同じく、慶應義塾大学病院とその関連病院の神経内科で活躍しているスタッフの先生方に執筆をお願いした。初版時には全員新進気鋭の脳神経内科医であったが第3版執筆時には私自身も大学を退職しており、多くが独立した医療機関の責任者となり、皆脳神経内科学の様々な領域での泰斗となっている。時の流れと人の成長を思うと、きわめて感慨深い。
 われわれ臨床医は日進月歩の神経内科臨床を時々刻々とらえ、神経疾患患者に最新の情報と治療を提供する努力が必要である。本書が、そのような神経内科に携わる方々のニーズに応え、実際の臨床に役立てば幸いである。

2020年4月
湘南慶育病院 院長
慶應義塾大学名誉教授
鈴木則宏

 本書は、小生が大学卒業以来、神経学的所見のとり方やカルテの書き方からご指導いただいた慶應義塾大学名誉教授の鈴木則宏先生が企画・編集された。神経内科のすべての臨床分野を包含し、しかも白衣のポケットに入るコンパクトさであることは、今までにない素晴らしい書といえる。本書は2009年に初版、2011年に初版の増補版、2014年に改訂第2版、2018年に改訂第2版増補が出版された。臨床現場に直結し、膨大な内容を簡潔にまとめてあるため、多くの脳神経内科医に利用された実績をもつ書である。今回改訂第3版が出版された。
 脳神経内科の守備範囲は広く、脳、脊髄、末梢神経、筋と多岐にわたり、しかも疾患の原因も血流障害、感染症、変性疾患、脱髄疾患、遺伝性疾患、糖尿病や悪性腫瘍など全身疾患に伴うさまざまな疾患、栄養障害に伴う神経障害、免疫系が関係する重症筋無力症など広範囲な疾患を考えながら診断していく必要がある。これら各疾患の成書を集めると膨大な量になることは想像に難くない。しかし、本書はポケットに入るサイズでありながら、活字が小さくなく読みやすい版となっている。しかも各分野の多くの疾患について簡潔にまとめてあるが、各薬剤の投与量など臨床現場で必要な情報は実際的で、臨床現場ですぐに使用できるよう網羅されている。さらに、最近作られたさまざまな疾患のガイドラインも必要に応じて掲載されており、まさに痒いところに手が届くような出来映えである。
 今回の改訂によりさらにup-to-dateな内容となっており、最近認可された薬剤の使用に関しても、即現場で使える内容である。その一端を紹介したい。末梢神経疾患であるCIDP(慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー)における免疫グロブリン皮下注射製剤(ハイゼントラ)の使用法、EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)での抗IL-5抗体mepolizumab(ヌーカラ)の使用法などが紹介されている。その他、重症筋無力症におけるeculizumab、ミトコンドリア脳筋症に対するタウリン療法など、非常にup-to-dateな内容が盛り込まれている。
 臨床の現場で寸暇を惜しんで患者さんの治療にあたる研修医、専修医には必携の書といえる。また、脳神経内科の基礎知識を習得した学生にもその知識の整理に大変役立つ書である。さらに本書の末尾には、脳死判定基準やさまざまな疾患のスケール、各筋の神経支配などの表がまとめられており、私たち専門家でもポケットに入れてときどき知識を確認するのに役立つ書といえる。
 以上のように、臨床の現場で、どのような状況下でもすぐに役立つ、文字通りの“ゴールデンハンドブック”であるといっても過言ではない。

臨床雑誌内科126巻5号(2020年11月号)より転載
評者●よみうりランド慶友病院 副院長/埼玉医科大学 名誉教授 荒木信夫

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