書籍

日本整形外科学会診療ガイドライン

脊柱靱帯骨化症診療ガイドライン2019

監修 : 日本整形外科学会/日本脊椎脊髄病学会
編集 : 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/脊柱靱帯骨化症診療ガイドライン策定委員会
ISBN : 978-4-524-22752-5
発行年月 : 2019年10月
判型 : B5
ページ数 : 104

在庫あり

定価3,300円(本体3,000円 + 税)


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  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

脊柱靱帯の骨化により脊柱管が狭小化し脊髄症や神経根症などを引き起こす頚椎後縦靱帯骨化症・胸椎後縦靱帯骨化症・胸椎黄色靱帯骨化症を包括した最新のガイドライン。近年の基礎・臨床両面の新しい知見を反映して作成され、エビデンスに立脚し、患者の希望や日本の医療制度に即した診療指針を提供する一冊。

略語一覧
用語解説
前文
 作成組織・作成主体
 スコープ
 頚椎後縦靱帯骨化症診断基準
 胸椎後縦靱帯骨化症診断基準
 胸椎黄色靱帯骨化症診断基準
 頚椎後縦靱帯骨化症診断・治療アルゴリズム
第1章 OPLLの疫学・自然経過
 Background Question1 頚椎OPLLの疫学
 Background Question2 OPLLの自然経過(症状,画像,発症様式,外傷の関与,脊髄損傷のリスク)
第2章 OPLLの病理・病態
 Background Question1 食生活・併存症・力学的要素はOPLLの発生・増大に影響を与えるか
 Background Question2 脊髄症発症に影響を与える画像的特徴は
 Background Question3 OPLLの病理学的特徴は
 Background Question4 OPLLに関連する遺伝子・タンパク,バイオマーカーは
第3章 OPLLの診断
 Background Question1 OPLLの主な症状・徴候および神経学的特徴は
 Background Question2 OPLLの画像所見(単純X線,MRI,CT)の特徴は
 Background Question3 MRIの髄内信号変化は手術後の予後予測に有用か
第4章 OPLLの治療
 Background Question1 頚胸椎OPLLに対する保存療法は有用か(増悪予防も含め)
 Background Question2 頚胸椎OPLLに対する手術療法の有用性,手術適応,適切なタイミングは
 Background Question3 頚胸椎OPLLの予後に影響を与える因子は
 Background Question4 頚椎OPLL手術合併症の頻度,原因,危険因子は
 Background Question5 胸椎OPLL手術合併症の頻度,内容,危険因子は
 Background Question6 頚胸椎OPLL手術において脊髄機能モニタリングは神経合併症予防に有用か
 Background Question7 頚胸椎OPLL術後遺残症状に有用な治療法は
 Background Question8 胸椎OPLLで後方法を選択する患者に固定術を追加することは有用か
 Background Question9 頚椎OPLLに対する術式選択は(前方法と後方法について)
 Clinical Question1 脊柱管内骨化占拠率が高いOPLLや後弯症例に対して前方除圧固定術は推奨されるか
 Clinical Question2 頚椎OPLLで後方法を適応する患者に固定術を追加することは有用か
第5章 OLFの疫学・自然経過
 Background Question1 OLFの疫学
 Background Question2 OLFの自然経過
第6章 OLFの病理・病態
 Background Question1 OLFの発生・増大に影響を与える疾患と力学的要素,食生活の関連は
 Background Question2 OLFの脊髄症発症に影響を与える画像的特徴は
 Background Question3 OLFの病理学的特徴は
第7章 OLFの診断
 Background Question1 OLFの主な症状や神経学的所見・徴候は
 Background Question2 OLFの診断において有用な画像検査は
第8章 OLFの治療
 Background Question1 OLFに対する手術療法は有用か(効果,予後,成績不良因子)
 Background Question2 OLFに対する手術合併症の頻度,原因,危険因子は
 Clinical Question1 OLFに対する除圧固定術は,除圧単独よりも手術成績が良好か
索引

序文

 本ガイドラインは『脊柱靱帯骨化症診療ガイドライン』初版とした。脊柱靱帯骨化症についてはこれまで『頚椎後縦靱帯骨化症診療ガイドライン』として初版(2005年)および改訂第2版(2011年)が刊行されているが、今回は疾患として胸椎後縦靱帯骨化症と胸椎黄色靱帯骨化症を含めたため、初版という形をとっている。
 本ガイドラインの作成は2014年に改訂された『Minds診療ガイドライン作成の手引き』を参考としたため、これまでの『頚椎後縦靱帯骨化症診療ガイドライン』の記載とは大きく異なっている。すなわち構成をBackground Question(BQ)とClinical Question(CQ)に分けた。BQはいわゆる教科書的な記述で、これまでの知見をまとめる形をとった。CQは多くの文献を参考にしたうえで、全委員の出席のもと、エビデンスの強さと推奨度を決定し、その合意率を記載した。
 今回の作業においては、大阪大学整形外科学の秘書様に脊柱靱帯骨化症の疫学・病因、診断・治療に関する必要な文献を検索する作業をお願いしたところ、快くお引き受けくださった。また、各委員と査読協力者には、それら膨大な論文から一次選択、論文査読、構造化抄録作成といった一連の作業を経て推奨度と解説文に修正を加え、多くの時間と労力を費やして改訂版の作成に尽力いただいた。さらに、日本医療機能評価機構の吉田雅博先生には詳細なアドバイスをいただき、一般財団法人国際医学情報センターEBM研究センターの深田名保子様、南江堂の枳穀智哉様には、文章の取りまとめに多大なご協力をいただいた。皆様には心から深謝申し上げたい。
 脊柱靱帯骨化症はわが国からの文献が非常に多く、この分野では世界をリードしていると言っても過言ではない。本ガイドラインも世界に先んじてわが国から発刊できたことは意義深い。編集委員一同、本ガイドラインが一般臨床医の診療においてよりよい指標になり、本疾患に苦しむ患者への説明や治療に活用されることを願っている。一方、本疾患の治療は個々の症例によって担当医が幅広い知識と豊富な経験から状況に応じて適切に判断することが前提であり、患者個人の希望や価値観および医師としての裁量が尊重されることを強調したい。よって、本ガイドラインが脊柱靱帯骨化症診療の内容を制限したり否定したりするための材料として使用されることなく、一般臨床医の診療をサポートするガイドとして適切に使用されることを心から願っている。
 なお、医学的知識を持っていない方は、患者や一般向けの手引として作成された『患者さんのための頚椎後縦靱帯骨化症ガイドブック−診療ガイドラインに基づいて』(南江堂、2007年)を参考にすることを推奨する。

2019年10月
日本整形外科学会
脊柱靱帯骨化症診療ガイドライン策定委員会
委員長 川口善治

 脊柱靱帯骨化症に対する診療ガイドラインの初版が2019年9月に上梓された。この『脊柱靱帯骨化症診療ガイドライン2019』(以下、ガイドライン2019)は頚椎後縦靱帯骨化症(OPLL)に対する診療ガイドラインの改訂第3版としての位置付けも有する。頚椎OPLLについては、これまで2度、診療ガイドラインが刊行されていた。2005年の初版は米延策雄先生が策定委員会の委員長としておまとめになり、2011年の改訂第2版(以下、ガイドライン2011)では岩崎幹季先生が委員長として改訂を担当された。今回のガイドライン2019は川口善治先生(富山大学)が委員長として、頚椎OPLLだけでなく胸椎OPLL、胸椎黄色靱帯骨化症を含む内容で取りまとめられた。上梓に際し、策定委員会の先生方をはじめ、膨大な編集作業に携わられたすべての皆様に心より感謝を申し上げたい。
 ガイドライン2019の策定は、日本整形外科学会から委託を受け、厚生労働省研究事業「脊柱靱帯骨化症に関する調査研究班」[班長:大川淳先生(東京医科歯科大学)]が作業をすすめた。ガイドライン改訂版策定委員会が組織され、6年間の大川研究班の集大成として策定にいたった。
 初版、改訂第2版と比べて、本書はガイドラインとしての形式が大きく異なる。「Minds診療ガイドライン作成の手引き」が2014年に改訂され、策定の方針が大きく変更になったためである。これまではエビデンス重視であったが、2014年以降はエビデンス単独で評価すべきでなく、患者や医療制度に配慮し、益と害のバランスを考慮するべきとしている。
 ガイドライン2011と本書ガイドライン2019を比較してみると、上記の方針転換がよく理解できる。ガイドライン2011では、疫学・自然経過、成因・病理・病態、診断、治療ごとにClinical Questionを設け、それに対する回答(要約)の推奨度を採用論文の「エビデンスレベル」をもとに決定していた。一方、本書はBackgroud QuestionとClinical Questionに分けて構成されている。Backgroud Questionはこれまでのガイドラインにはなかった形式である。教科書的な記述で、これまでの知見を系統的に網羅・整理して記載している。Clinical Questionについては、策定委員の間で相対する見解があった場合に、推奨を設けるかたちで記載されている。採用論文(397編)のシステマティックレビューおよびメタアナリシスの結果から相対的なエビデンスが決定される。エビデンスの強さに加え、益と害のバランスを参考にして推奨の強さが決定される。最終的には策定委員の投票がなされ、合意率が提示される。
 例をあげると「脊柱管内骨化占拠率が高いOPLLや後弯症例に対して前方除圧固定術は推奨されるか」というClinical Questionに対しては、「占拠率の大きいOPLLや後弯症例に対して、前方除圧固定術を行うことを提案する。ただし合併症発生率、再手術率は前方法で高く、症例に応じた術式選択を行うことが重要である」という推奨草案が提示され、推奨度は2(行うことを弱く推奨)、合意率は88.9%、エビデンスの強さはC(弱)と記載されている。頚椎OPLLに対する前方除圧固定術は、脊髄圧迫要素そのものを取り除き完全な脊髄除圧を達成できる優れた術式であるが、一方では、難度が高く、誰でもが安全に施行できる術式ではない。このことを考えると、適切な結論であると考えられる。
 読んでみて驚いたのは、本書の大部分がBackgroud Questionで構成され、Clinical Questionが少ないことである。このことは、ガイドライン2011で議論されていた多くのClinical Questionの内容について、この8年間で研究がすすみ、ほぼ共通の知識として全国の整形外科医に浸透したということを意味する。一方、本書で取り上げられたClinical Questionについては、いずれも合意率が100%ではない。これらは依然として今後の重要な研究課題であると認識すべきであろう。
 ガイドライン2019は脊柱靱帯骨化症に対する診療を行ううえで、教科書的な存在である。実践的かつ専門的な本書は、安全・安心、確実な診療を行ううえでのよきナビゲーターであり、整形外科・脊椎外科診療に携わる医療者にとって最良の手引書であると確信する。

臨床雑誌整形外科71巻4号(2020年4月号)より転載
評者●筑波大学整形外科教授 山崎正志