書籍

今さら聞けない心臓血管外科基本手技[Web動画付]

  • 新刊

監修 : 日本心臓血管外科学会
編集 : 横山斉/福田幾夫/坂東興/田中千陽
ISBN : 978-4-524-22748-8
発行年月 : 2020年3月
判型 : A4
ページ数 : 224

在庫あり

定価11,000円(本体10,000円 + 税)


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  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本心臓血管外科学会Under40委員会による全国アンケート調査に基づいた、心臓血管外科の基本的手技の共通項、重要なポイントを解説。心臓血管外科の基本的な手術手技の「キモ」や「こだわり」を各領域のエキスパートが余すところなく披露。専攻医の教育指導にも役立つ一冊。専攻医の手術手技の評価基準を作成しているjBLADE研究により収集された標準手技の動画(Web動画)も添付。動画を参照することで、各手術手技の標準レベルを学習でき、手術手技上達のためにも非常に有用である。

巻頭言
1.基本的手技の重要性
2.全国アンケート調査の目的と意義
3.手技の定量化と標準化の重要性−jBLADE-0研究から学んだこと−
4.開胸法(胸骨正中切開)
 A 全国調査の結果から
  開胸法のバリエーション
 B 私の方法とこだわり
  (1)胸骨正中切開から視野の展開まで:成人
  (2)胸骨正中切開から視野の展開まで:小児
  (3)左開胸法:成人
  (4)海外の研修で学んだ胸骨正中切開法における心構え
 C 応用編
  (1)胸腹部切開(rib split法含む)
  (2)胸骨再正中切開:成人
  (3)胸骨再正中切開:小児
 D jBLADE-0研究より
  開胸モジュール
5.カニュレーションと体外循環確立
 A 全国調査の結果から
  カニュレーションのバリエーション
 B 私の方法とこだわり
  (1)テーピングから体外循環確立まで:成人(1)
  (2)テーピングから体外循環確立まで:成人(2)
  (3)テーピングから体外循環確立まで:小児
 C 応用編
  (1)shaggy aorta症例の体外循環戦略
  (2)急性A型大動脈解離の体外循環戦略
 D jBLADE-0研究より
  カニュレーションモジュール
6.大腿動脈剥離
 A 全国調査の結果から
  大腿動脈剥離のバリエーション
 B 私の方法とこだわり
  (1)体外循環,MICSのための大腿動静脈剥離
  (2)EVAR,TAVIのための大腿動脈剥離
  (3)大腿深動脈形成術と大腿動脈剥離
  (4)術後リンパ漏を防ぐためのコツ
7.大伏在静脈採取
 A 全国調査の結果から
  大伏在静脈採取のバリエーション
 B 私の方法とこだわり
  (1)冠動脈バイパスのための大伏在静脈採取
  (2)distal bypassのための大伏在静脈採取
 C 応用編
  (1)内視鏡的大伏在静脈採取
  (2)Pedicle法
 D jBLADE-0研究より
  大伏在静脈採取モジュール
8.内胸動脈採取
 A 全国調査の結果から
  (1)内胸動脈採取のバリエーション
  (2)術者になって内胸動脈採取法を考え直す
 B 私の方法とこだわり
  (1)Skeletonization法(1)
  (2)Skeletonization法(2)
  (3)Pedicle法
 C 応用編
  内胸動脈損傷の際の修復法
 D jBLADE-0研究より
  内胸動脈採取モジュール
9.心筋保護
 A 全国調査の結果から
  心筋保護のバリエーション
 B 心臓手術の安全を担保するための基本
  (1)心筋保護法の原理とバリエーション
  (2)臨床的心筋保護液法とそのバリエーション
 C 私の方法とこだわり
  心筋保護法
 D 応用編
  (1)小児心臓手術の心筋保護
  (2)大動脈基部手術の心筋保護
  (3)肥大心・不全心の心筋保護
10.ドレーン管理
 A 全国調査の結果から
  ドレーン法と管理のバリエーション
 B 私の方法とこだわり
  (1)胸部大動脈瘤手術でのドレナージとドレーン管理
  (2)ドレーン管理のポイントとピットフォール
  (3)心タンポナーデの早期発見
11.閉胸
 A 全国調査の結果から
  閉胸法のバリエーション
 B 私の方法とこだわり
  (1)閉鎖手技のコツ〜心房と大動脈の閉鎖
  (2)感染予防を意識した閉胸法:成人(1)
  (3)確実な止血を意識した人工心肺離脱手順と閉胸法:成人(2)
  (4)小児症例の閉胸法〜胸骨の特徴と個人差に対応する
 C jBLADE-0研究より
  閉胸モジュール:上級医はここを見ている
12.閉創および術後創管理
 A 全国調査の結果から
  閉創と術後創管理のバリエーション
 B 私の方法とこだわり
  破裂腹部大動脈手術でのVACの応用
 C周術期感染予防
  (1)心臓手術の周術期感染予防
  (2)大血管手術の周術期感染予防
  (3)末梢血管手術の周術期感染予防
13.ECMO・PCPS
 A 全国調査の結果から
  ECMOのバリエーション
 B 私の方法とこだわり
  (2)小児の補助循環
  (1)人工心肺離脱困難症例におけるPCPS/ECMO活用
 C 応用編
  (1)補助人工心臓移行を考えたPCPSの使い方
  (2)PCPS管理
14.体外循環のde-airing:全国調査の結果から
15.CALS(The Cardiac Surgery Advanced Life Support)
16.心臓血管手術と輸血のガイドライン
編集後記
索引

巻頭言

 日本心臓血管外科学会若手医師の会(U-40:Under-Forty)は、上田裕一理事長(2014年当時)の発案で立ち上がった40歳以下の会員の集合体である。全国8地区からの代表が集まり活動方針を討議する。お互いの情報交換の中で、手術手技や周術期管理において施設ごとの流儀やこだわりがあり、基本手技においても全国的なバラツキがあることが明らかになった。U-40は、施設間の違いを情報共有するために全国アンケートを行い、日本心臓血管外科学会雑誌に発表した。基本手技の全体像と、なぜそのように行うかの理論的基盤が各章のアンケート調査報告から垣間見える。
 今回、『今さら聞けない心臓血管外科基本手技』と題した本書の最終的目標は、心臓血管手術手技の標準化である。手術手技においては、なぜそのように行うかという外科医各個人の理論的背景があるはずである。「昔からウチではこのようにしている」、「慣れた方法だから」という場合でも、当初は原理原則があったはずである。
 さらに、エキスパート心臓血管外科医に現時点で基本手技と考えられるテクニックとその理論的根拠について解説していただいた。症例の状態や解剖的特徴などで、どの手技を選択するか、またどの手技を追加するかなど現場での判断(decision tree)も含まれている。手技の理解を助けるjBLADE-0研究を中心としたビデオクリップも有用である。
 本書は、現時点での基本手技ベンチマークである。この書籍は、吟味検討され、これから進化してゆく。最終的には、心臓血管外科定型的手術の標準化と、標準化による医療安全を目指している。シンプルで確実、安全な方法の共有化は、多くの恩恵を患者にもたらす。多職種のチーム医療である心臓血管手術において、施設ごと、外科医ごとのバリエーションが多く含まれれば含まれるほど、医療安全には脅威となる。また、標準手技を多くの外科医が共有していれば、インシデントやアクシデントによる教訓や再発防止策も共有化される。手術器械の整理削減、労務削減、コスト削減にもつながるであろう。
 本書の企画編集に多大な尽力をいただいたU-40担当 福田幾夫理事、U-40 田中千陽代表、jBLADE研究グループプロトコル作成委員会 坂東興委員長、およびご協力いただいた多くの関係者の皆様に感謝するとともに、まずは誕生の産声をあげた本書が将来どのように進化し成長していくか楽しみである。

2020年2月
日本心臓血管外科学会理事長
福島県立医科大学心臓血管外科教授
横山斉

 私たちはみな、最初は「駆け出し」であった。誰もが活躍したいと願ってスタートをきるわけだが、新参者に憧れの主役が早々に巡ってくるわけもない。当分の間、任せてもらえるのは脇役、つまり心臓外科手術でいえば、大腿動脈の剥離とか大伏在静脈採取といった基本手技になる。ところが、特に一般外科研修である程度の実力をつけたつもりでいると、これらはとても容易で退屈に思え、あまり興味も湧かず、我流だとか見よう見まねになりがちである。もちろん、それでも問題が起きないことのほうが多いが、グラフト損傷や術後トラブルを生じ、はじめて顔色を失いつつ成書を繙いてみると、中心的でない手技のことを詳述している書物が意外に少ないことに気づくものである。しかし基本手技について教授・部長クラスに教えを乞うのは随分時代がかわったとはいっても畏れ多く、それでは、とすぐ上の先輩に尋ねてみると、なんと同じように見よう見まね、まるで外科手技の“do処方”のようであったりする。しかし基本手技についても、原理原則を少なくとも一度はきっちりと学んでおくべきである。
 基本手技がテーマである本書は、多くの点で画期的である。巻頭言にもあるように標準化を目標として編まれているが、本書は解剖や理論、原則だけを羅列した堅苦しい本ではなく、全国調査の集計結果が豊富に紹介されており、また10もの手技で「私の方法とこだわり」と題して各施設のやり方をかなりオープンに紹介してくれているので、読者は自分の手技と比較しながら楽しく読み進めることができる。またエキスパートばかりでなくU40の役員、つまり「質問するには少し緊張する程度に上」の先生も多く執筆しており、実臨床に即した事項をそういった先輩に教えていただいているような気分にさせてくれる。
 そしてもっとも有益な点がトラブル・シューティングに注力している点である。内胸動脈など、損傷だけに数ページが割り当てられている。ビデオ・ライブラリーみたいな流れるような手術は、実は見学してもあまり役に立たない。そのようにできればよいことなんて、見る前からわかっているわけで、問題はそのために何に注意せねばならないか、あるいはどう立て直すかなのである。この点、本書は多くの基本手技についてjBLADE-0研究での注意点が示されているうえに、Web動画で「悪い例」がいくつも供覧されている。これらイマイチの実例こそが、華麗にではないまでも堅実に手術を実施するために、とても参考になると思われる。
 最後になるが、本書のタイトルは最高で、表紙では吹き出しで「今さら聞けない」と追加されている。U40ぐらいの先生なら何でもどんどん聞けばいいではないか、と思う一方、私ぐらいの年齢になると「『今さら』というのは確かにあるなぁ」と感じてしまった。しかし本書を拝読して、恥ずかしながらアルコールがシリコンの劣化を早めるとは知らなかったし、CALS courseがこんなにも世界各国で系統立って講義されていることも知らなかった。もちろん、これらは私の浅学ゆえだが、アンケート集計をはじめ、おそらくあらゆる立場の方にとって参考になる点がいろいろとあるはずである。画期的で有益な書籍の上梓に感謝したい。

胸部外科73巻6号(2020年6月号)より転載
評者●埼玉医科大学総合医療センター心臓血管外科教授 今中和人