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胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021改訂第3版

編集 : 日本消化器病学会
ISBN : 978-4-524-22741-9
発行年月 : 2021年4月
判型 : B5
ページ数 : 178

在庫あり

定価3,520円(本体3,200円 + 税)


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  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本消化器病学会編集による診療ガイドライン.Mindsの作成マニュアルに準拠し,臨床上の疑問をCQ(clinical question),BQ(background question),FRQ(future research question)に分けて記載.CQではエビデンスレベルと推奨の強さを提示.胃食道逆流症(GERD)診療における,疫学,病態,診断,内科的・外科的治療,上部消化管術後食道炎,非定型的症状および食道外症状,Barrett食道等について,エビデンスに基づき現時点の標準的な指針を示す.

クエスチョン一覧
第1章 疫学
 BQ 1-1 日本人のGERD の有病率はどれくらいか?
 BQ 1-2 逆流性食道炎では食道狭窄,出血を合併するか?
 
第2章 病態
(1)GERD の病態
 BQ 2-1 胃酸のGER はGERD の食道粘膜傷害の主な原因か?
 BQ 2-2 胃酸のGER のメカニズムは?
 BQ 2-3 食道裂孔ヘルニアは食道の過剰な胃酸曝露の原因になるか?
 BQ 2-4 食道運動障害は食道の胃酸曝露の原因になるか?
 BQ 2-5 胃酸以外のGER もGERD の原因になるか?
 BQ 2-6 NERD の病態は逆流性食道炎の病態と同じか?
(2)GERD の要因
 BQ 2-7 日本人の胃酸分泌能は増加しているか?
(3)胃食道逆流(GER)の要因
 BQ 2-8 GERD の誘発因子は何か?
 
第3章 診断
(1)自覚症状の評価
 BQ 3-1 GERD の定型的食道症状は何か?
 BQ 3-2 GER により定型的食道症状以外の症状(胸痛や食道外症状)が出現することがあるか?
 BQ 3-3 自己記入式アンケートはGERD の診断,治療効果の評価に有用か?
 BQ 3-4 食道粘膜傷害の内視鏡的重症度は自覚症状の重症度と相関するか?
 BQ 3-5 PPI テストはGERD の診断に有用か?
 FRQ 3-1 P-CAB テストはPPI テストよりも有益か?
(2)内視鏡診断
 BQ 3-6 逆流性食道炎の内視鏡的重症度分類にロサンゼルス分類は妥当か?
 BQ 3-7 内視鏡検査でみられるminimal change はどう取り扱うべきか?
 BQ 3-8 GERD の診断において画像強調観察・拡大内視鏡観察は有用か?
 BQ 3-9 薬物治療抵抗性GERD の鑑別診断は何か?
(3)逆流現象の評価
 BQ 3-10 24 時間食道pH モニタリング,食道インピーダンス・pH 検査はGERD 診療に有用か?
 
第4章 内科的治療
(1)治療の目的
 BQ 4-1 GERD 治療の目的(目標)は何か?
(2)治療手段
 BQ 4-2 生活習慣の改善・変更はGERD の治療に有用か?
 BQ 4-3 酸分泌抑制薬はGERD の治療に有用か?
 BQ 4-4 アルギン酸塩,制酸薬はGERD の治療に有用か?
 BQ 4-5 消化管運動機能改善薬,漢方薬など酸分泌抑制薬との併用で上乗せ効果が期待できる薬剤はあるか?
 CQ 4-1 軽症逆流性食道炎の初期治療として,PPI とP-CAB のどちらを推奨するか?
 CQ 4-2 重症逆流性食道炎の初期治療として,PPI とP-CAB のどちらを推奨するか?
 CQ 4-3 常用量のPPI で効果が不十分な場合に推奨される治療法は何か?
 CQ 4-4 軽症逆流性食道炎の長期管理については,PPI とP-CAB のどちらを推奨するか?
 CQ 4-5 重症逆流性食道炎の長期管理については,PPI とP-CAB のどちらを推奨するか?
 CQ 4-6 GERD 治療薬として,PPI の長期維持療法は安全か?
 FRQ 4-1 NERD の初期治療として,PPI とP-CAB のどちらを推奨するか?
 FRQ 4-2 常用量のP-CAB で効果が不十分な場合に推奨される治療法は何か?
 FRQ 4-3 初期治療に反応するNERD の長期管理については,PPI とP-CAB のどちらによる間欠療法,オンデマンド療法を推奨するか? 79
 FRQ 4-4 GERD 治療薬として,P-CAB の長期維持療法は安全か?81
 
第5章 外科的治療
(1)外科的治療適応対象の基準
 BQ 5-1 外科的治療の適応となるGERD はどのような病態のものか?
(2)外科的治療の効果
 BQ 5-2 GER 防止手術の長期成績はPPI 治療と同等以上か?
 BQ 5-3 外科的治療はPPI 治療よりも費用対効果が良好か?
 BQ 5-4 GER 防止手術の成績は外科医の経験と技能に左右されるか?
 BQ 5-5 逆流性食道炎の外科的治療として,Nissen 法はToupet 法より優れているか?
 BQ 5-6 開腹手術に比べ腹腔鏡下手術は有用か?
 CQ 5-1 薬物治療抵抗性逆流性食道炎に対する外科的治療は有用か?
 CQ 5-2 薬物治療抵抗性NERD に対する外科的治療は有用か?
 FRQ 5-1 P-CAB 抵抗性逆流性食道炎に対する外科的治療は有用か?
 FRQ 5-2 P-CAB 抵抗性NERD に対する外科的治療は有用か?
 FRQ 5-3 薬物治療抵抗性逆流性食道炎に対する経口内視鏡的治療は有用か?
 FRQ 5-4 薬物治療抵抗性NERD に対する経口内視鏡的治療は有用か?
 
第6章 上部消化管術後食道炎
(1)定義
 BQ 6-1 術後食道炎の原因となる食道粘膜傷害性を持つ逆流内容物は何か?
(2)要因
 BQ 6-2 術後食道炎の発生に影響する要因は何か?
(3)術後食道炎の病態評価
 BQ 6-3 術後食道炎の病態評価の診断に有用なものは何か?
 BQ 6-4 術後食道炎に特有な病理組織像はあるか?
(4)術後食道炎の治療
 BQ 6-5 術後食道炎の治療に生活指導は有用か?
 BQ 6-6 術後食道炎の治療に薬物治療は有用か?
 BQ 6-7 術後食道炎の治療に手術療法は有用か?
(5)術後食道炎の長期経過と合併症
 BQ 6-8 術後食道炎の自然経過はどうなるのか?
 CQ 6-1 噴門側胃切除後の食道残胃再建における噴門形成術は術後食道炎の予防に有用か?
 
第7章 非定型的症状および食道外症状
(1)非心臓性胸痛
 BQ 7-1 GER により虚血性心疾患と見分けのつかない胸痛が生じるか?
(2)慢性咳嗽・喘息
 BQ 7-2 GER により慢性咳嗽・喘息が生じるか?
(3)咽喉頭症状
 BQ 7-3 GER により慢性咽喉頭炎(自覚症状のみのものを含む)が生じるか?
(4)睡眠障害
 BQ 7-4 GER により睡眠障害が生じるか?
(5)酸蝕症
 BQ 7-5 GER により歯の酸蝕症が生じるか?
(6)その他の食道外症状
 BQ 7-6 GER によりその他の食道外症状が生じるか?
 
第8章 Barrett 食道
 BQ 8-1 本邦においてBarrett 食道はどのように定義されるか?
 BQ 8-2 Barrett 食道の発生の要因は何か?
 BQ 8-3 一般日本人および日本人GERD 患者のなかでBarrett 食道の合併頻度は,それぞれどれくらいか?
 BQ 8-4 日本人のBarrett 食道からの発癌頻度はどれくらいか?
 BQ 8-5 Barrett 食道における発癌の危険因子は何か?
 BQ 8-6 日本人のBarrett 食道はすべて内視鏡による経過観察が必要か?
 CQ 8-1 Barrett 食道の発癌予防に薬物治療は有用か?

刊行にあたって

 日本消化器病学会は,2005 年に跡見裕理事長(当時)の発議によって,Evidence-Based Medicine(EBM)の手法にそったガイドラインの作成を行うことを決定し,3 年余をかけて消化器6疾患(胃食道逆流症(GERD),消化性潰瘍,肝硬変,クローン病,胆石症,慢性膵炎)のガイドライン(第一次ガイドライン)を上梓した.ガイドライン委員会を積み重ね,文献検索範囲,文献採用基準,エビデンスレベル,推奨グレードなどEBM 手法の統一性についての合意と,クリニカルクエスチョン(CQ)の設定など,基本的な枠組み設定のもと作成が行われた.ガイドライン作成における利益相反(Conflict of Interest:COI)を重要視し,EBM 専門家から提案された基準に基づいてガイドライン委員のCOI を公開している.菅野健太郎理事長(当時)のリーダーシップのもとに学会をあげての事業として継続されたガイドライン作成は,先進的な取り組みであり,わが国の消化器診療の方向性を学会主導で示したものとして大きな価値があったと評価される.
 第一次ガイドラインに次いで,2014 年に機能性ディスペプシア(FD),過敏性腸症候群(IBS),大腸ポリープ,NAFLD/NASH の4 疾患についても,診療ガイドライン(第二次ガイドライン)を刊行した.この2014 年には,第一次ガイドラインも作成後5 年が経過するため,先行6疾患のガイドラインの改訂作業も併せて行われた.改訂版では第二次ガイドライン作成と同様,国際的主流となっているGRADE(The Grading of Recommendations Assessment,Development and Evaluation)システムを取り入れている.
 そして,2019〜2021 年には本学会の10 ガイドラインが刊行後5 年を超えることになるため,下瀬川徹理事長(当時)のもと,医学・医療の進歩を取り入れてこれら全てを改訂することとした.2017 年8 月の第1 回ガイドライン委員会においては,10 ガイドラインの改訂を決定するとともに,近年,治療法に進歩の認められる「慢性便秘症」も加え,合計11 のガイドラインを本学会として発刊することとした.また,各ガイドラインのCQ の数は20〜30 程度とすること,CQ のうち「すでに結論が明らかなもの」はbackground knowledge とすること,「エビデンスが存在せず,今後の研究課題であるもの」はfuture research question(FRQ)とすることも確認された.
 2018 年7 月の同年第1 回ガイドライン委員会において,11 のガイドラインのうち,肝疾患を扱う肝硬変,NAFLD/NASH の2 つについては日本肝臓学会との合同ガイドラインとして改訂することが承認された.前版ではいずれも日本肝臓学会は協力学会として発刊されたが,両学会合同であることが,よりエビデンスと信頼を強めるということで両学会にて合意されたものである.また,COI 開示については,利益相反委員会が定める方針に基づき厳密に行うことも確認された.同年10 月の委員会追補ではbackground knowledge はbackground question(BQ)に名称変更し,BQ・CQ・FRQ と3 つのQuestion 形式にすることが決められた.
 刊行間近の2019〜2020 年には,日本医学会のガイドライン委員会COI に関する規定が改定されたのに伴い,本学会においても規定改定を行い,さらに厳密なCOI 管理を行うこととした.また,これまでのガイドライン委員会が各ガイドライン作成委員長の集まりであったことを改め,ガイドライン統括委員会も組織された.これも,社会から信頼されるガイドラインを公表するために必須の変革であったと考える.
 最新のエビデンスを網羅した今回の改訂版は,前版に比べて内容的により充実し,記載の精度も高まっている.必ずや,わが国,そして世界の消化器病の臨床において大きな役割を果たすものと考えている.
 最後に,ガイドライン委員会担当理事として多大なご尽力をいただいた榎本信幸理事,佐々木裕利益相反担当理事,研究推進室長である三輪洋人副理事長,ならびに多くの時間と労力を惜しまず改訂作業を遂行された作成委員会ならびに評価委員会の諸先生,刊行にあたり丁寧なご支援をいただいた南江堂出版部の皆様に心より御礼を申し上げたい.

2021 年4月
日本消化器病学会理事長
小池 和彦

 GERD患者数は年齢とともに増加し,60歳以上の占める割合は男女ともに75%以上である.2025年には65歳以上の人口割合が30%を超え,未曾有の超高齢社会を迎えようとしているわが国において,今後もGERD患者数は確実に増加していくものと思われる.現状でも,消化器専門医のみならず,実地医家の先生方も多くのGERD 患者さんを診療なさっており,多くの臨床的疑問を抱えていらっしゃると推察される.私もGERD についての講演をさせていただくことがあるが,その際の質問で最も多いのは,「P-CAB とPPIの使い分けは?」と「P-CABやPPIの長期投与の問題点は?」の二つである.私なりに文献を読んだり,自身の経験からお答えをしているが,これは研究デザインとしては「専門家個人の意見」に相当しており,残念ながらエビデンスの質は「low」あるいは「very low」である.そのためではないが,多くの先生方と同様に私も,本書の発刊を心待ちにしていた一人である.
 日本消化器病学会編集による『胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン』は2009年に初版が,2015年に改訂第2版が発刊され,その後の6年間での最大のトピックは,2015年2月に世界に先駆けてpotassium-competitive acid blocker(P-CAB)がわが国で上市されたことである.この強力な酸分泌抑制薬の登場によりGERD診療の新たな知見が集積され,今回の改訂第3版に反映されることとなった.
 日本消化器病学会のガイドライン委員会において,今回の改訂では改訂第2版において使用されていたCQを整理し,診療の方向を左右する疑問かつ網羅的文献検索によって推奨と根拠基準を決定できるものをCQ(clinical question)とし,すでに結論が明らかなことはBQ(background question),今はエビデンスが不足していて明確な答えを出すことができないものはFRQ(future research question)として取り扱うことになった.そのため,今版では疫学,病態,診断はBQとなり,内科的治療は6個のCQと4個のFRQが,外科的治療は2個のCQと4個のFRQが設定された.また,重要臨床課題として,@逆流性食道炎と非びらん性胃食道逆流症(NERD)に分けた治療アルゴリズムの導入,A逆流性食道炎の重症度別の治療アルゴリズムの導入,BP-CABのGERD(逆流性食道炎,NERD)治療の位置づけ,の3項目が決められた.
 これらの背景を理解したうえであらためて本書を眺めてみると,まず冒頭に示されたフローチャートに苦労の跡がうかがえる.改訂第2版では一つにまとめられていたフローチャートが,重症,軽症逆流性食道炎とNERDに分けられ,それぞれで初期治療,維持療法,抵抗性の対処方法が示されている.一見,やや複雑な印象ではあるが,重要臨床課題についてエビデンスをもとに,かつ一般臨床医にわかりやすく作成されているものと思われる.P-CABについては,わが国をはじめとして限られた国でしか使用されていないため,エビデンスに限界はあるが,可能な限りフローチャートに反映されている.一方,GERD治療薬の評価には内視鏡的粘膜傷害の治癒と症状の改善という一見同じ方向を向いているようで,その実際は両者は必ずしも相関しないという問題があるため,症状からみた場合の診療の流れは少しわかりにくくなっているような印象である.後半では,上部消化管術後食道炎,非定型的症状および食道外症状,Barrett食道についても詳しく記載されており,GERD診療のほぼすべてが網羅され,現時点での最適なガイドラインに仕上がっていると思われる.
 本書により,実地医家のGERD診療のレベルアップとさらなる均てん化が可能となるとともに,われわれ消化器専門医にとっては,エビデンスの不足している部分が明らかとなり,新たな臨床研究を推進することでこの分野での研究の発展が期待される.

臨床雑誌内科129巻1号(2022年1月号)より転載
評者●愛知医科大学内科学講座消化管内科 教授 春日井邦夫