書籍

心不全療養指導士 認定試験ガイドブック

編集 : 日本循環器学会
ISBN : 978-4-524-22698-6
発行年月 : 2020年3月
判型 : A4
ページ数 : 246

在庫あり

定価3,850円(本体3,500円 + 税)


  • お気に入りに登録

正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本循環器学会より創設された「心不全療養指導士」認定制度のカリキュラムに準拠した学会編集公式ガイドブック。心臓の構造といった基礎的内容から、ガイドラインに準拠した心不全の診断・治療・療養指導について網羅的に解説しており、さらに40問超の想定問題も収載し、本資格取得をめざす受験者が自己学習のために広く活用できる一冊となっている。

第1章 心不全療養指導士の役割・機能
 1.日本心不全療養指導士制度の目的
 2.日本心不全療養指導士制度の役割
第2章 療養指導の基本
 1.患者教育に必要な基礎的理論
 2.療養指導の評価および修正
第3章 心不全の予防活動
 1.心不全における予防の重要性
 2.予防啓発活動
第4章 心不全の概念,診断,成因,検査
 1.心臓の構造
 2.心臓の働き(健常人)
 3.心不全の概念
 4.心臓の基礎疾患の特徴
  a.虚血性心疾患
  b.心筋症
  c.心筋炎
  d.心毒性心筋障害,浸潤性疾患
  e.高血圧
  f.弁膜症・先天性心疾患
  g.不整脈
  h.肺高血圧症
 5.心不全の身体所見
  a.Nohria-Stevenson分類:うっ血・低灌流の所見と自覚症状
  b.NYHA分類
  c.身体活動能力質問票(SAS)
 6.検査
  a.バイオマーカー(BNP/NT-proBNP)
  b.胸部単純X線写真
  c.心エコー
  d.心臓カテーテル検査・生検
  e.血液検査
第5章 心不全の治療(総論)
 1.薬物治療
  a.心不全治療概論
  b.β遮断薬
  c.ACE阻害薬・ARB・MRA
  d.利尿薬
  e.その他
 2.非薬物治療
  a.植込み型除細動器(ICD)
  b.心臓再同期療法(CRT)
  c.陽圧呼吸療法,在宅酸素療法
  d.運動療法
  e.手術
  f.植込み型人工心臓,心臓移植
 3.併存疾患の治療
  a.糖尿病
  b.慢性腎臓病(CKD)
  c.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  d.貧血
  e.無呼吸症候群
第6章 心不全の療養指導
 1.患者教育に活用する心不全に関する知識
  a.定義,原因,症状,病みの軌跡
  b.増悪の誘因:医学的因子と生活因子
 2.セルフモニタリングと定期受診・増悪時の対応
  a.モニタリングの方法
  b.患者手帳の活用
  c.定期的な受診の必要性
  d.増悪時の対応
 3.服薬アドヒアランスへの支援
  a.服薬内容の確認,服薬方法の理解,確実な内服管理
  b.アドヒアランスの評価
 4.栄養管理
  a.バランスのよい食事の重要性
  b.適正な塩分管理(6g未満/日)
  c.適正体重の維持
  d.飲水制限
  e.サルコペニア・フレイル・カヘキシー
 5.身体活動と運動
  a.運動の種類,強さ,時間と回数
  b.運動耐容能の評価
  c.具体的な運動の方法
  d.運動をしてはいけないとき,注意点
 6.禁煙支援
  a.禁煙の必要性
  b.禁煙支援の具体的方法
  c.禁煙外来における禁煙治療の流れ
 7.日常生活の心がけ
  a.活動の目安
  b.適切な入浴方法
  c.排便コントロール
  d.過度なアルコール摂取の危険性
  e.感染予防とワクチン接種
  f.日常生活のストレスマネジメント
 8.心理的支援
  a.心不全と心理精神的変化
  b.抑うつスクリーニング:PHQ-9,PHQ-2など
  c.専門家への連携とコミュニケーションなどの対応の検討
第7章 特殊な状況・病態時の療養指導
 a.季節の変化に伴う対処
 b.旅行
 c.認知機能低下のある患者への対応
 d.災害時・医療安全上の留意点
第8章 心不全の緩和ケア
 a.心不全におけるACP
 b.意思決定支援
 c.末期心不全における症状と緩和
第9章 病院と在宅の連携
 1.チーム医療の提供
 2.心不全における在宅医療
  a.在宅医療の基本的な考え方
  b.病院と在宅医療の連携
  c.在宅で働く職種と役割(理解)
  d.福祉制度の活用
 3.家族・介護者への支援
  a.心不全患者の家族あるいは介護者が抱える問題
  b.家族あるいは介護者への支援
 4.心不全医療における地域連携
  a.心不全医療における地域連携の重要性
  b.地域連携を促す多職種カンファレンス
付録
 知識確認問題
 心不全療養指導士【症例報告書】の記載について
索引

刊行にあたって

 心不全はあらゆる循環器病の終末像であり、増悪と寛解を繰り返しながら、運動耐容能の低下をきたし、生命予後を悪化させる症候群である。心不全の増悪による再入院は医療負荷増大の原因となることに加え、心不全特有の症状や運動耐容能の低下は生活機能の低下や精神状態の悪化を引き起こし、患者や家族の生活の質(quality of life:QOL)は低下する。さらに治療抵抗性の心不全に移行すると、患者は苦痛を伴う症状や病状の進行に対する不安を抱えた生活を強いられる。このような特徴を持つ心不全は加齢性疾患であり、高齢化が急速に進行しているわが国において心不全が増加することが予測されている。様々な問題を抱える心不全患者を包括的に支援し、患者や家族のQOLを維持し、かつ医療負荷の増大を抑えるためには、適切な治療の実施に加えて、医療専門職がチームを組み、それぞれの専門性を活かしつつ協働するチーム医療の推進が不可欠である。
 日本循環器学会が日本脳卒中学会とともに、2016年12月に策定した「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」のなかで、心不全は重要3疾病のひとつと位置づけられ、人材育成、医療体制の充実、登録事業の促進、予防・国民への啓発、臨床・基礎研究の強化の5戦略が提案されている。そのうち人材育成への取り組みのひとつとして、日本循環器学会が主体となり「心不全療養指導士」資格を創設する。本書は、心不全療養指導士の資格取得を目指すメディカルスタッフが心不全の病態や治療、療養指導の実際、緩和ケアや地域連携に関する知識を学習することを目的に構成されている。本書とe-ラーニングを活用しながら、資格取得に向けた学習を進めてほしい。
 日本の心不全医療の向上のために、本資格が広く普及し、心不全療養指導士に心不全チーム医療の中心的役割を担っていただくことを期待したい。

2020年3月
日本循環器学会

心不全療養指導士を目指すメディカルスタッフにぴったりのガイドブック
 新しく発足した心不全療養指導士資格、これを早速取得したいメディカルスタッフのための認定試験ガイドブックが日本循環器学会から上梓された。令和元年(2019年)11月1日に施行された「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(循環器病対策基本法)に真摯に応えようとする学会からの一つの回答である。
 心不全ほど老化と病跡(病の軌跡)に注意しながら予防・診療・療養に取り組む疾病はない。健康寿命延伸活動は未病時から始まる。やがて迎える老化と心臓・血管病に備える予防である。いかに遺伝子背景に恵まれようとも、わるい生活習慣に染まれば循環器病はいつかは発症する。しかも皮肉なことに、発症時の適切介入が普及すればするほど心不全の危険性は高まる。一度発症した心不全には重症化や再発の繰り返しが待っている。一方、心不全高齢者ではフレイルが顕在化し、加速する。老年病の定めである。こうして少子・超高齢社会を日々深化させている日本は、フレイルを伴う高齢心不全患者の爆発的増加に悩まされている。結果、重い医療負担や介護負担を現役世代やその次の世代に強いている。国家のみならず人類の喫緊の課題となってきた。これに応えようと学会が対策基本法を発議し、法制化にいたった経緯がある。
 心不全患者の病跡を丁寧にたどればたどるほど多職種連携が必須となる。心不全診療を担う循環器病センター病院はこの要請に応えて当初より連携活動を育み、発展させてきた。畢竟、心不全は致死的疾患であり、循環器病の終末像である。心不全診療や療養の成績が向上し、高齢化が進めば進むほど地域包括ケア体制との密接な連携が問われる。施設内の多職種連携から地域連携への展開である。かたや高齢患者は個性豊かである。病状が多彩なばかりでなく、人生を語り、故郷を重んじ、そして人とのつながりにこだわる。生理的にも認知能力が衰え、精神的には浮き沈みが大きく、身体活動がままならない。また、心不全は病態が不安定な多疾患有病者である。心不全の病態そのものよりもフレイルや低ADLを病む高齢者も多い。地域包括ケア体制が想定していた高齢者病像と大いに異なる。地域の体制を揺るがし始めた。病院と地域をまたいだ心不全連携の必要性が叫ばれている。つまり、専門職を取り揃えて心不全患者に適時対応する連携ばかりではなく、患者の特性にマッチした連携の組み合わせを選択し、即座に地域に提供するニーズの登場でもある。コーディネーター機能といえよう。
 応募者に求められている役割はきわめて明瞭である。既存の多職種連携活動の組み合わせを簡素化し、必要な患者に簡素な療養内容を提供し、当該患者やケア提供者、それに地域体制に明快なアウトカムをもたらすことである。高齢心不全患者のなかには、病跡が深まるにつれていたずらに療養内容が膨らみ、患者のみならずケア提供者や地域までもが戸惑っている事例がたくさんある。また“簡素な療養対応をよしとしない”風土が醸成された過去もある。従来の専門職に加味して心不全療養指導士を目指す応募者は“心不全患者への医療や介護負担が本当に少子・超高齢社会にふさわしい療養内容になっているだろうか?”と自問・自答するような探究者マインドももち続けていただきたい。また、その気持ちを実践し、次の心不全療養指導士のあり方に盛り込んでもらいたい。
 このような意図と経緯の下に、心不全療養指導士制度が発案され、今回の発刊にいたった。執筆いただいた諸家の努力に敬意を表する。認定試験を念頭に置いた40の問題や症例報告書作成法までも添えられている。日本循環器学会心不全療養指導士応募者の必携書として高く推奨する。

臨床雑誌内科126巻2号(2020年8月号)より転載
評者●北里大学 名誉教授/恒仁会新潟南病院 統括顧問 和泉徹