書籍

ホントに不眠!?ナースのためのせん妄対策

: 山川宣
ISBN : 978-4-524-22573-6
発行年月 : 2022年7月
判型 : A5
ページ数 : 232

在庫あり

定価3,080円(本体2,800円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

不眠の対策は,まさにせん妄の対策.本書では,不眠とせん妄とを一体にとらえ,現場での察知のしかたと具体的な対処法を紹介.難易度の高い「予防」より,取り組みやすい「事後の対応」に焦点を当て,とくに大事となる「くすりの使い方」について,各薬剤の特性から使える場面や適応しやすい患者をくわしく解説する.よく聞かれる質問Q&A付き.不眠・不穏に悩む夜勤ナースの味方となる一冊.

第 1 章 せん妄対策の入門 せん妄を知る
不眠を制すれば,せん妄を制す?
せん妄患者はすべての一般病棟の課題
経験も知識もないと本格的な登山は無理
せん妄治療は常に正しく理想であるべき?
 1 “正しい”せん妄治療
 2 実際の病棟では
 3 正しい道は苦難の道
難所を迂回するのも
診断ツールはやっぱりむずかしい
おとなしいせん妄こそ危険
 1 おとなしいせん妄=重症!
 2 せん妄=敗血症?
簡単にせん妄に気づく❶
 1 たった 1 つで OK ! SQiD
簡単にせん妄に気づく❷
 1 せん妄ではまず不眠が起こる
 2 不穏・幻覚・妄想は思ったより少ない
 2 不眠=せん妄でOK !
参考:せん妄のツール
 1 ICD‒10
 2 DSM‒5
 3 CAM‒J
 4 CAM‒ICU
 5 ICDSC
せん妄とはなにか
 1 せん妄とは
 2 あなたもなっているせん妄
 3 意識障害
 4 意識障害:覚醒度
 5 意識障害:注意力
 6 意識障害:認知力
認知症との違い
 1 急性かどうか
 2 意識障害はあるか
 3 入院・病気に伴う変化=せん妄
せん妄の原因:直接因子
 1 “炎症”がせん妄の原因にもなる!
 2 その他の原因
 3 尿路感染にご用心
 4 看護師はキーパーソン
せん妄の原因:誘発因子(増悪要因)
 1 生理的欲求がせん妄を悪化させる
 2 環境
 3 看護師はやっぱりキーパーソン
せん妄の原因:準備因子(背景要因)
 1 予防の観点で重要
まとめ:せん妄の治療戦略
第 2 章 せん妄対策の道具 薬:基本編
薬剤使用の問題点
 1 抗精神病薬などが使われるせん妄治療
 2 使っている道具の特徴・限界・危険性
抗精神病薬とは
 1 抗精神病薬の歴史
 2 抗精神病薬の特徴
抗精神病薬の影
 1 抗精神病薬使用の弊害
 2 高齢認知症患者で死亡率増加
 3 ハロペリドールの使用量が過大
 4 なぜ,大量のハロペリドールが推奨されているのか
 5 せん妄治療=ほとんどが精神科の医師による専門家の技(アート)
 6 抗精神病薬の効果は?
睡眠薬(BZRA)の問題点
 1 「不眠時⇨睡眠薬」は危険な香り?
 2 常用量依存
 3 死亡率の増加/ 骨折リスクの増大
 4 認知症との関連
 5 せん妄の原因
 6 そもそも,睡眠薬は治療薬なのか?
薬を正しく理解するための5 つの作用
 作用1 〈D2〉:幻覚・妄想を抑える
 作用2 〈5HT〉:せん妄を抑える.催眠(〈5HT2C〉)
 作用3 〈H1〉:抗不安・催眠
 作用4 〈α1〉:鎮静:血圧低下
 作用5 BZRA:抗不安・催眠
ハロペリドール・リスペリドンはなぜ効かない?
 1 ハロペリドールは“寝ない”薬
 2 リスペリドンは“あまり寝ない”薬
せん妄の薬剤の3 つの基本
 基本1 せん妄指示は,昼と夜にわける
 基本2 眠くなる薬は,せん妄を抑える作用を使ってから
 基本3 眠くなる薬は,眠るまで使う
せん妄の薬剤上級編
ドーパミン2(D2) 受容体遮断の作用/ 副作用
2 章のまとめ
薬物療法のための地図
第 3 章 せん妄対策の地図 薬:実践編
せん妄登山に使う4枚の地図
1 枚目の地図
夜間のせん妄(不眠時)・飲めるとき
 眠くなる薬▲トラゾドン
 眠くなる薬▲ミアンセリン
 眠くなる薬▲クエチアピン
 あまり眠くならない▲リスペリドン
 眠くなる薬▲ペロスピロン
2 枚目の地図
夜間のせん妄(不眠時)・飲めないとき
 ハロペリドール
 眠くなる薬▲ヒドロキシジン
 眠くなる薬▲プロメタジン
 眠くなる薬▲クロルプロマジン
 眠くなる薬▲デクスメデトミジン
 眠くなる薬▲オランザピン
 眠くなる薬▲ミルタザピン
 眠くなる薬▲アセナピン
 眠くなる薬▲“ベンゾ”のまとめ
 ゾルピデム
 エスゾピクロン
 ロラゼパム
 ロルメタゼパム
 ブロマゼパム
 ミダゾラム
3 枚目の地図
日中のせん妄・飲めるとき
 抑肝散
 バルプロ酸
 眠くなる薬▲アリピプラゾール
 その他の選択肢
4 枚目の地図
日中のせん妄・飲めないとき
第 4 章 せん妄山を登ってみよう
せん妄山を登る心構え
せん妄山の行程
1 合目 不穏発生!なにかがおかしい!不眠!
2 合目 夜のせん妄なら医療安全・病棟の安全を確保する,薬を使う
3 合目 日中のせん妄なら
4 合目 病態を考える,アセスメント
5 合目 増悪因子をチェックし,症状をコントロール
6 合目 増悪因子をチェックし,環境因子を軽減
7 合目 本人と会話する
8 合目 家族と会話する
9 合目 ケアをふりかえる,昨日,明日
10 合目 予防策を考える
第 5 章 Q & A
Q1 いくらせん妄予防をしてもやっぱりせん妄が起こります.予防できないものでしょうか?
Q2 高齢の患者さんが夜中,様子がおかしくなります.どこまでが認知症の症状で,どこからがせん妄の症状と考えればよいでしょうか?
Q3 せん妄の予防と対策のための評価,環境調整・ケアなどはいつ行えばよいでしょうか?
Q4 主治医に,せん妄患者さんの対応をしてもらうよう相談しても,なかなか取りあってもらえません.どうすればよいでしょうか?
Q5 せん妄対策の薬を,「毒は飲まない」などといって拒否する患者さんが多いです.どうすればよいでしょうか?
Q6 昼夜リズムを改善するために,ナースステーションで昼間,覚醒を促していますが,なかなかうまくいきません.どうすればよいでしょうか?
Q7 せん妄の薬を投与しましたが,効きません.あるときはせん妄の薬を飲んで,かえってせん妄が悪化しました.どうすればよいでしょうか?
Q8 不眠改善を目的とした夜の薬について,内服時間は夕食後と書いてありますが,就寝前のほうがよいのではないでしょうか? 夕方飲ませる場合,追加は何時から可能でしょうか?
Q9 不眠時の対策として,ラメルテオン(ロゼレム®),スボレキサント(ベルソムラ®),レンボレキサント(デエビゴ®) などの内服指示が増えました.不眠の予防もできると聞きましたが,せん妄の患者さんに飲ませてもなかなか効きません.どうすればよいでしょうか?
Q10 せん妄の講演会で,抗コリン作用のある薬は使ってはならないと聞きました.本書のせん妄対策では推奨されているようで混乱しています.どうすればよいでしょうか?
Q11 パーキンソン病の患者さんに,抗精神病薬を使ってはいけないと書いてありましたが,せん妄を起こしたらどうすればよいでしょう?
Q12 脳外科の看護師です.術後など,患者さんが暴れてしまうことも多いのですが,どの薬を使ってよいのかわかりません.どうすればよいでしょうか?
Q13 せん妄対策で,当院ではチアプリド(グラマリール®)がよく使われます.この本には書いていませんが,どうなのでしょうか?
Q14 ICU でせん妄の患者さんに対応する際のコツを教えてください.
Q15 せん妄の薬はいつまで続けて,いつやめたらよいでしょうか?
Q16 クロルプロマジン(コントミン®),プロメタジン(ヒベルナ® )などの静注は,保険適用がなく,院内で反対されます.どうすればよいでしょうか?
Q17 身体抑制をしないように,ともいわれますが,どうしても減らせません.どうすればよいでしょうか?

 せん妄は,今日ますます医療現場に負担となっている問題です.10 年前にはそれほどたくさん書籍もありませんでしたが,今は違います.よく私は,研修医に「専門外のことだったら,看護師さん向けの本を読むとよいよ.医療知識・参考文献などもしっかりしていて,ひととおりのことがよくわかるから」とおすすめしたりしています.せん妄についても,私は日本で出版された医師向け・看護師向けの書籍はひととおり目をとおしていますし,どれも非常にすぐれた内容です.国立がん研究センター先端医療開発センター主導で開発されたDELTA(DELirium Team Approach)プログラムのような対策パッケージがあります.にもかかわらず,今日の医療現場で「楽になった」,「もう大丈夫」とは感じにくい,なぜなのでしょうか?
 本書は,その理由を解明し,困っている看護現場と,さまざまなすぐれたせん妄治療・対策との橋渡しをすることを目標にしています.私自身は,せん妄の専門家=精神科医のトレーニングは受けていません.内科,そして緩和ケア病棟・チームでの診療が主です.だからこそ,精神科の専門家の発信する正しい情報が,一般の医療スタッフにいかに届きにくいかを知っています.
 橋渡しが目的のため,せん妄の医学・看護学の教科書的知識は最小限に留めています.「せん妄のことはよくわからない,でも今日なんとかしなければならない」,そんな精神科が専門ではない一般の医療スタッフが,精神科的な詳細な判断方法や,薬剤の知識をそのまま吸収するのは,医療情報が数年で倍になるといわれている現在,大きな負担で時間もかかることだからです.
 せん妄は「意識障害」が中核となった精神症状です.意識障害・認知機能の改善がせん妄自体の治療の目標となりますが,看護現場で困っているのは,意識障害や認知機能の低下そのものでなく,特に人手の限られる夜間の不眠・不穏だと思います.一方,入院環境はもともと不眠になりがちです.目の前の不眠がせん妄の症状の1つなのか,単なる不眠なのか,判断には専門的スキルが必要です.しかし入院患者の高齢化の現実から,「入院するような病気を抱えているせん妄ハイリスク患者の不眠」は,せん妄が生じるものとして対応しないと不都合が生じます(いわゆる睡眠薬は,せん妄の原因となるため).そうであるなら,専門的知識を駆使して,夜間の不眠をせん妄か不眠か判断するのは,二の次でもよいかもしれません.
 また,せん妄はさまざまな疾患の全身的影響としての意識障害であることも多く,どんなにせん妄を予防しようとしても,入院のきっかけとなった疾患の影響を大きく減らしたり,疾患が治療もせずに改善するわけではありません.これらから,せん妄予防には根本的な限界があり,せん妄が生じることは避けられません.現場で困っている不眠への対応は,まさにせん妄対策の一部となるわけです.
 今日行わなければならない第一の課題は,専門的知識を駆使して意識障害・認知機能の低下を食い止めること(=せん妄そのものの専門的治療)ではなく,病気を治すための医療安全を乱す夜間の不眠・不穏を,看護師さんが使いやすい薬剤でどのように対応するかです.
 本書が,せん妄対策でありながら,せん妄そのものではなく,まず不眠をターゲットにしているのはこの理由からです.
 せん妄をくわしく勉強したい方には,本書の内容は物足りない部分もあるでしょう.そのような意欲や知識のある方は,ぜひ他のすぐれた成書をあわせてご覧ください.そして,得られた専門的な知識を,まわりの医療スタッフが無理なく実践できるようにする工夫を,本書と一緒に考えていただけると幸いです.そして私のホームページ「せん妄.jp」に,ぜひご意見ください.
2022 年5 月
神鋼記念病院緩和治療科
山川 宣

9784524225736