Q&AでわかるDKD(糖尿病関連腎臓病)薬物療法のコツとエビデンス

著 | : 川浪大治 |
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ISBN | : 978-4-524-22272-8 |
発行年月 | : 2025年6月 |
判型 | : A5判 |
ページ数 | : 128 |
在庫
定価3,520円(本体3,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

糖尿病関連腎臓病のエキスパートが非専門医向けに糖尿病関連腎臓病の治療の実際を詳細に解説.どういった患者にどの薬剤を選択するか,各薬剤の使い方はもちろんのこと,臨床試験などのキーとなる情報を余すことなく掲載し薬剤選択のエビデンスもわかる.糖尿病関連腎臓病の明日からの診療に活かせる一冊.
第1章 糖尿病性腎症と糖尿病関連腎臓病
Q01 糖尿病性腎症の成因はどのようなものが考えられていますか?
Q02 糖尿病性腎症の診断方法や病期分類について教えてください
Q03 糖尿病性腎症と糖尿病関連腎臓病はなにが違うのですか?
Q04 アルブミン尿とeGFRをどのように診療に取り入れるべきですか?
第2章 糖尿病関連腎臓病(DKD)薬物療法の基本
Q05 DKDの治療目標は?(体重,HbA1c,血圧,脂質など)
Q06 DKDにはどのような薬剤が使われるのですか? 治療薬の選択の基本の考え方は?
第3章 SGLT2阻害薬
Q07 どんなエビデンスがありますか? どのような患者さんに有効でしょうか?
Q08 標準的な処方例を教えてください.増薬,ほかの薬剤への切り替えのタイミングは?
Q09 SGLT2阻害薬がDKDに有効なメカニズムはなんですか?
Q10 クラスエフェクトと考えてよいでしょうか?
Q11 アルブミン尿が出ていない症例にも有効なのでしょうか?
Q12 高齢者でも積極的に投与すべきなのでしょうか?
Q13 注意すべき副作用とその対策はどのようにすればよいのでしょうか?
第4章 GLP-1受容体作動薬
Q14 心血管アウトカム試験(CVOT)でGLP-1受容体作動薬はどのような腎保護効果を示したのでしょうか?
Q15 GLP-1受容体作動薬でeGFR slopeは緩和されますか?
Q16 標準的な処方例を教えてください.どのように使い分けますか?
Q17 GLP-1受容体作動薬の腎保護効果はどのようなメカニズムで発揮されますか?
Q18 GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドに腎保護作用はありますか?
Q19 注意すべき副作用とその対策はどのようにすればよいのでしょうか?
第5章 MR拮抗薬
Q20 どうしてMR拮抗薬が必要なのでしょうか?
Q21 ステロイド型MR拮抗薬と非ステロイド型MR拮抗薬の違いはなんですか? 薬剤はどうやって使い分けますか?
Q22 フィネレノンにはどのようなエビデンスがありますか?
Q23 エサキセレノンにはどのようなエビデンスがありますか?
Q24 標準的な処方例を教えてください.増薬のタイミングは?
Q25 ガイドラインではどのような位置づけになっているのでしょうか? MR拮抗薬はどの段階で投与を開始すべきですか? RAS阻害薬との併用が原則でしょうか?
Q26 日本人でのフィネレノンの腎保護効果はどのような報告があるのでしょうか?
Q27 注意すべき副作用とその対策はどのようにすればよいのでしょうか?
第6章 その他の薬剤による治療,多剤併用療法
Q28 SGLT2阻害薬,GLP-1受容体作動薬,MR拮抗薬以外に使われる薬のエビデンスと作用メカニズムはどのようなものですか?
Q29 どのような症例にSGLT2阻害薬,GLP-1受容体作動薬,MR拮抗薬以外の薬が使われるのですか?
Q30 多剤併用療法にはどのようなエビデンスが あるのでしょうか?
Q31 どのような患者さんに多剤併用療法をするべきですか? どのような順番で薬剤を加えていくべきですか?
Q32 DKDに併存しやすい疾患や病態にはどのようなものがありますか? その治療はどうすればよいですか?
第7章 症例から考える治療選択
症例1 微量アルブミン尿を呈する症例
症例2 正常アルブミン尿にもかかわらずeGFR低下を呈する症例
症例3 SGLT2阻害薬を導入したもののアルブミン尿が持続する症例
症例4 肥満を合併し,顕性アルブミン尿を呈する症例
症例5 高齢でCKDを合併する2型糖尿病の症例
症例6 血圧が高く,アルブミン尿が持続している症例
1998年,私が研修医1年目のときに,若くして透析導入を目的として入院してきた1型糖尿病の方を担当することになりました.それまで糖尿病を専攻することは全く考えていませんでしたが,その方から多くのことを学ぶなかで,糖尿病による透析導入を何とかしてなくせないものかと考えるようになり,その後の進路を決めるきっかけとなりました.この患者さんとの出会いが今でも私のモチベーションとなっています.だからこそ,糖尿病診療において腎保護作用のある薬剤を適切に組み合わせ,積極的に投与するべきだという強い考えが私にはあります.そして,臓器連関を意識し,臨床的アウトカム(心血管・腎合併症)を基盤とした治療を指向することが大切だと感じています.
腎臓を守ることは,心臓を守ることにつながり,糖尿病の治療を受けている方々に大きなベネフィットをもたらすと確信しています.その考えを多くの先生方と共有したいという思いを込めて本書を執筆しました.各薬剤のメカニズムやエビデンス,そして論文だけではわかりにくい投与のポイントについてQ&A方式で可能な限りコンパクトにまとめたつもりです.「なぜこの薬剤を投与しなければならないのか」,「どんなエビデンスがあるのか」を簡潔にお伝えすることを心がけ,関連する話題や最新のトピックスについてはコラムで紹介しています.いずれの項目も数分程度でお読みいただける構成となっていますので,診療の合間などの空き時間に手に取っていただけ
ると幸いです.
当初,本書を書き上げることができるのか自信がありませんでした.曲がりなりにも完成させることができたのは,多くの人々の支えがあったからです.東京慈恵会医科大学の宇都宮一典名誉教授,田嶼尚子名誉教授のお導きがなければ現在の私はなく,本書の出版にはつながりませんでした.執筆を熱心に勧めていただき,約束以上のサポートをしてくださった南江堂の河野壮一氏,的確な助言をくださった達紙優司氏に心より感謝申し上げます.そして,私が執筆する時間を確保するにあたり,医局員そして秘書,技術職員の方々の存在が欠かせませんでした.日頃の献身的な働きに敬意を表し,厚くお礼を申し上げます.
糖尿病による透析導入抑制に本書が少しでもお役に立てば,これ以上の喜びはありません.
2025年5月
福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科学講座 教授
川浪大治
