心臓血管外科専門医テキスト
| 監修 | : 日本胸部外科学会・日本心臓血管外科学会・日本血管外科学会 |
|---|---|
| 編集 | : 専門医テキスト小委員会 |
| ISBN | : 978-4-524-21918-6 |
| 発行年月 | : 2026年2月 |
| 判型 | : A4判 |
| ページ数 | : 784 |
在庫
定価24,200円(本体22,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

心臓血管外科専門医試験に向けた本邦初の公式テキスト.学会が制定するカリキュラムに準拠し,専門医試験受験者のために必要な知識をまとめた.さらに各診療法では,実臨床と最新のガイドラインに則した実践的な情報を盛り込んだ.専門医試験受験者のみならず,若手の教育を担う指導医や,生涯学習の教科書としてベテラン医にも役立ち,心臓血管外科医の臨床能力向上に貢献する一冊.
第T章 総論
1. 心臓血管外科に必要な基礎医学
A. 解剖@
B. 解剖A
C. 解剖B
D. 生理@
E. 生理A
2. 心臓血管外科の常識的疫学
A. 先天性
B. 後天性
3. 補助循環
A. 人工心肺
B. 低体温
C. PCPS/ECMO
D. IABP
E. ImpEllA
4. 心筋保護
A. 心筋保護
5. 医療材料
A. 人工血管
6. 検査
A. 画像診断
B. 血液検査(血液学的診断)
7. 感染症,感染予防
A. 周術期感染,手術部位感染,感染対策,院内感染
B. 抗菌薬
8. 薬物治療
A. 循環作動薬(カテコラミン,PDE-V阻害薬など)
B. 血管拡張薬
C. β遮断薬
D. 抗不整脈薬(β遮断薬以外)
E. 一酸化窒素
F. 利尿薬
G. ヘパリン,プロタミン
H. ワルファリン,その他の抗凝固薬
I. 抗血小板薬
J. 血栓溶解療法
K. スタチン
9. 外科医が知っているべき内科的治療
A. PCIなどの冠動脈カテーテル治療
B. カテーテルアブレーション治療
C. ペースメーカなどのデバイス治療,デバイス・リード抜去
10. 医療安全
A. 院内安全管理体制
B. 医療事故調査制度
11. チーム医療
A. 看護師の業務
B. 臨床工学技士の業務
12. 倫理など
A. 医療倫理
B. 患者の権利
C. 心臓血管外科領域の「InFormED ConsEnt」:予期せぬ結果への対応
D. 学会発表・論文投稿・臨床研究の倫理
13. 医療制度
A. 医療保険制度
B. 保険診療,保険医の役割・義務,DPC,手術点数
C. 先進医療,高難度新規医療技術
D. 高額療養費制度
14. 外科医教育・研修制度
A. 心臓血管外科専門医制度,心臓血管外科手術データベース
B. non-tECHnICAl sKIll
C. OFF tHE JoB trAInInG
15. 呼吸器外科,縦隔外科
A. 肺癌
B. 縦隔腫瘍
C. 重症筋無力症
D. 気胸
E. 胸部外傷・血胸
F. 膿胸-a. 急性膿胸
G. 膿胸-b. 慢性膿胸
第Ua章 虚血性心疾患
1. 冠動脈単独病変
A. 疫学
B. 診断と手術適応(各種検査,画像診断を含む)
C. 術前・術中・術後管理
D. 外科的冠血行再建(CABG)
E. 早期・遠隔成績
2. 機械的合併症に対する外科手術
A. 左室自由壁破裂
B. 心室中隔穿孔
C. 僧帽弁乳頭筋断裂
D. 虚血性僧帽弁閉鎖不全
E. 左心室瘤
3. 他臓器血管病変を合併した虚血性心疾患の治療戦略
A. 脳血管病変
B. 末梢血管病変,腹部大動脈瘤
第Ub章 心不全,心筋症,その他
1. 心臓外傷・心膜
A. 心膜疾患,心臓外傷
B. 収縮性心膜炎の外科治療
2. 重症心不全に対する治療
A. 体外設置型補助人工心臓
B. 植込型補助人工心臓
C. 左室形成術
D. 心臓移植
3. 心筋症
A. 拡張型心筋症
B. 肥大型心筋症
C. 虚血性心筋症
4. 冠動脈瘤
A. 川崎病の冠動脈瘤,動脈硬化などによる冠動脈瘤
第V章 弁膜症
1. 弁膜症外科総論
A. 代用弁の種類とその選択
B. 弁置換術と弁形成術
C. 弁置換術後管理
2. 大動脈弁疾患
A. 大動脈弁狭窄
B. 狭小大動脈弁輪に対する術式と選択
C. 大動脈弁閉鎖不全
D. カテーテル弁置換術(TAVR)
3. 僧帽弁疾患
A. 僧帽弁狭窄
B. 僧帽弁閉鎖不全
4. 連合弁膜症
A. 連合弁膜症
5. 三尖弁疾患
A. 三尖弁閉鎖不全
B. 三尖弁形成術
C. 三尖弁置換術
6. 感染性心内膜炎
A. 感染性心内膜炎
7. 不整脈に対する外科治療
A. 心房細動に対する外科治療
B. メイズ手術
C. 左心耳閉鎖
8. 低侵襲心臓手術
A. 胸腔鏡下心臓弁膜症手術
B. ロボット支援下心臓弁膜症手術
9. 心臓腫瘍
A. 良性心臓腫瘍(心臓粘液腫・乳頭状線維弾性腫)
B. その他の良性心臓腫瘍および悪性心臓腫瘍
第W章 先天性
1. 2 心室修復が目標となる非チアノーゼ性心疾患
A. 動脈管開存
B. 心房中隔欠損,部分肺静脈還流異常
C. 心室中隔欠損
D. 房室中隔欠損
E. 先天性僧帽弁疾患
F. 先天性大動脈弁疾患(弁上,弁下を含む)
G. 先天性冠動脈異常
H. 大動脈縮窄・離断
I. 血管輪,肺動脈スリング(気管形成を含む)
J. 大動脈肺動脈窓
K. 右肺動脈上行大動脈起始
L. VAlsAlvA洞動脈瘤
2. 2 心室修復が目標となる複雑心疾患
A. FAllot四徴
B. 肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損,MAPCA
C. 総肺静脈還流異常
D. 完全大血管転位
E. 修正大血管転位
F. 両大血管右室起始
G. 総動脈幹遺残(総動脈幹症)
3. 単心室修復が目標となる心疾患
A. 左心低形成症候群
B. 単心室
C. 三尖弁閉鎖
4. 条件によって目標(単心室/2心室)が変わる心疾患
A. 純型肺動脈閉鎖,重症肺動脈弁狭窄
B. EBstEIn病
C. SHonE ComplEx,HLHS類似疾患
5. 成人先天性心疾患
A. 成人先天性心疾患総論
B. 再手術を要する成人先天性心疾患
6. その他の知っておくべき小児心臓外科の知識
A. 低侵襲手術,カテーテル治療
B. 重症心不全,移植,補助人工心臓
C. 周術期管理,補助循環
D. 人工材料
E. 遺伝疾患,染色体異常
F. 感染性心内膜炎,感染症
第X章 大血管
1. 非解離性大動脈瘤
A. 非解離性大動脈瘤の総論
B. 大動脈基部・上行大動脈瘤
C. 弓部大動脈瘤
D. 胸部下行・胸腹部大動脈瘤
2. 大動脈解離
A. 大動脈解離の総論
B. 急性A型大動脈解離
C. 急性B型大動脈解離
D. 慢性A型大動脈解離
E. 慢性B型大動脈解離
3. ステントグラフト治療
A. 下行大動脈瘤に対するステントグラフト治療
B. 弓部大動脈疾患に対するステントグラフト治療
C. 大動脈解離に対するステントグラフト治療
D. 腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療
E. エンドリーク
4. 感染・炎症などによる大動脈疾患
A. 結合織・先天性大動脈疾患
B. 炎症性胸部大動脈疾患-高安動脈炎(末梢も含めて)
C. 感染性大動脈瘤,人工血管感染(大血管特有の感染について)
D. 大動脈食道瘻,大動脈消化管瘻(胸部)
E. 大動脈気管支瘻
5. 破裂・外傷
A. 破裂性大動脈瘤(吻合部仮性大動脈瘤を含む)
B. 外傷性胸部大動脈損傷
6. 肺動脈血栓塞栓症
A. 急性肺血栓塞栓症
B. 慢性血栓塞栓性肺高血圧症
第Y章 末梢血管
1. 腹部・末梢血管外科総論
A. 腹部・末梢血管外科の診断
B. 機能検査(動脈・静脈機能検査)
C. 画像診断
2. 腹部大動脈瘤・腸骨動脈瘤
A. 非破裂
B. 破裂
C. 感染性
D. 炎症性
3. 末梢動脈瘤
A. 末梢動脈瘤(頸部・上肢・下肢)
B. 腹部内臓動脈瘤(腎動脈瘤を含む)
4. 下肢動脈閉塞性動脈硬化症
A. 無症候,間欠性跛行
B. 重症下肢虚血,包括的高度慢性下肢虚血
C. バイパス治療(鼠径靱帯以下)
D. EVT治療(鼠径靱帯以下)
E. 大動脈腸骨動脈閉塞症
5. 腹部内臓動脈閉塞性疾患
A. 腹部内臓動脈急性閉塞(腸間膜動脈閉塞,NOMI,上腸間膜動脈解離)
B. 腹部内臓動脈慢性閉塞(腎血管性高血圧,腎動脈狭窄,腹腔動脈狭窄)
6. 頸動脈,上肢動脈閉塞性疾患
A. 頸動脈狭窄
B. 胸郭出口症候群,鎖骨下動脈盗血症候群
C. RAynAuD病・症候群,BluE toE症候群
D. 四肢急性動脈閉塞症(塞栓症・血栓症)
7. その他の末梢動脈疾患
A. BuErGEr病
B. 血管炎症候群と膠原病関連の末梢動脈疾患
C. 膝窩動脈捕捉症候群,膝窩動脈外膜嚢腫
D. 遺残坐骨動脈
E. BEHcEt病
F. EHlErs-DAnlos症候群
8. 静脈,リンパ,血管腫
A. 下肢静脈瘤
B. 深部静脈血栓症
C. 慢性下肢静脈不全
D. 上大静脈症候群
E. BuDD-CHIArI症候群
F. リンパ浮腫
G. 血管腫,血管奇形
9. 透析,外傷,合併症
A. バスキュラーアクセス
B. 血管外傷
C. 吻合部動脈瘤
D. 大動脈消化管瘻(腹部)
E. 人工血管感染(四肢,鼠径靱帯以下のもの)
F. 下肢切断,創傷管理
G. 糖尿病性足病変,フットケア
索 引
『心臓血管外科専門医テキスト』 の巻頭にあたり,本書が企画され刊行にいたるまでの流れを,心臓血管外科専門医制度の歴史とともに述べさせていただきます.私はこれまで日本心臓血管外科専門医認定機構の委員を長年務め,試験問題作成委員,そして専門医試験委員長としても,制度の整備と運用に携わってまいりました.1980〜1990 年代にかけての専門医制度創設期には,全国の学会評議員がそれぞれの専門領域――冠動脈,弁膜症,先天性心疾患,大動脈,末梢血管など――から独自に問題を作成し,その集合体として試験を構成する方式が採られていました.これは黎明期としては必然の形でしたが,出題範囲も難易度も年によって大きく変動し,「試験の標準化」「質の均一化」 が制度上の大きな課題となっていました.
さらに,長く専門医試験の現場に立つなかで痛感したことがあります.それは,心臓血管外科の3 分野――小児心臓外科・成人心臓外科・末梢血管外科( 血管外科)――の間で生じる,知識の “構造的な不均衡” です.日常臨床のなかで形成される知識には当然ながら偏りが生まれ,受験者が試験内容を完全にカバーすることは容易ではありませんでした.
この問題に対し,まず私たち試験委員会は「 総論」 と「 各論」 という二層構造を明確化しました.従来のカテゴリー分類を再編し,
•総論:小児・成人・末梢血管のいずれにも共通する基礎領域( 解剖・生理・薬理・人工心肺・集中治療・感染管理・医療安全・チーム医療・医療倫理・保険診療など)
•各論:各分野の固有の専門領域( 成人弁膜症・冠動脈,大動脈,先天性心疾患,末梢血管)として体系的に整理しました.特に総論では,「3 分野に共通する必須基盤」 を強化するため,生理学・薬理学・循環動態の基本を重視する方向へと改革が進みました.これは,ECMO・VAD・TAVI など新たなデバイスの普及により,基礎に立ち返った安全性の担保が必須となったためです.
一方,3 分野間の不公平を軽減する目的で,各論には選択制を導入しました.専攻領域に応じて重点的に回答できる構造としつつ,総論では80%以上を目指す正答率を求めることで,心臓血管外科医としての普遍的資質を担保する仕組みが整いました.この時期には,試験問題の収集とブラッシュアップが体系化され,適切な問題はデータベース化され,教育的にも妥当性の高い問題群が蓄積されていきました.
しかし近年,制度を取り巻く環境が大きく変わりました.日本専門医認定機構の方針転換により,「サブスペシャリティであっても,領域全体を俯瞰しうる専門医であるべき」 という理念が明確に示され,選択制は縮小し,全問解答型への移行が求められる時代となりました.幅広い領域を一定の水準で理解し,急性期・救急・地域医療などで幅広い症例に適切に対応できることが,社会的要請としても強く求められているためです.
こうした「 二つの大きな潮流」――試験制度の体系化と,専門医認定機構が求める “全領域を俯瞰する専門医像” への移行が重なったところに,今回のテキスト企画の必然性があります.私は,専門医試験の変遷を長年見てきた立場として,「新しい時代の専門医試験を支える体系書の必要性」 を強く感じました.すなわち,
•認定機構が整理したカテゴリーに準拠し,
•3 分野に共通する基礎から,各論の専門領域までを体系的に網羅し,
•本書を通読すれば自然と “試験に必要な知識” だけでなく “専門医としての臨床判断の基盤” が身につく,
そのような新しいコンセプトを持った書籍が必要であると考えたのです.
編集主幹には,学会の教育研修理事である筑波大学の平松祐司先生に依頼し,多忙のなかご快諾をいただきました.また,心臓血管外科領域の最前線で活躍する200 名を超える先生方に執筆をご協力いただき,企画から2 年というスピードで本書が完成いたしました.この一大プロジェクトに尽力いただいた平松先生,全国の執筆陣の先生方,南江堂編集部の皆様には心より感謝申し上げます.
本書を改めて読み返し,「専門医試験の歴史的変遷」 と「 現代の臨床に求められる知識体系」 が見事に統合されていることに大きな喜びを感じています.本書が今後も時代の変化に合わせて進化し,多くの専攻医の座右の書として,そして心臓血管外科の臨床力向上の基盤として,日本の心臓血管外科診療のさらなる質向上に寄与することを心から願っております.
2026 年1月
日本心臓血管外科学会 前理事長
横山 斉

