肝臓を診る医師のための肝臓病理テキスト改訂第2版
| 編集 | : 中沼安二/小無田美菜 |
|---|---|
| ISBN | : 978-4-524-21837-0 |
| 発行年月 | : 2025年11月 |
| 判型 | : B5判 |
| ページ数 | : 372 |
在庫
定価19,800円(本体18,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評

臨床現場で活かせる肝臓病理の全てが理解できる好評書の改訂版.臨床の観点から必要とされる,肝臓病理の基礎的・実践的な知識を網羅.肝臓の解剖と発生,病理の基礎知識を実践的に解説,また各疾患の病理像とその解説に加え,病期分類や診断・鑑別などの実践的な内容を貴重な写真とともに詳しく解説.初版刊行以降に変更された,WHO分類、各種ガイドラインや規約を反映して目次を再構築し,大幅アップデート.
I章 解剖と発生
A.肝臓の解剖
�T.マクロ解剖
1.肝臓の外観
2.肝区域
3.肝血流
4.肝内胆管
�U.ミクロ解剖
1.肝小葉
2.類洞
3.門脈域(グリソン鞘)
�V.染色法
1.特殊染色
2.免疫染色
3.その他
B.肝臓の発生
�T.肝臓の発生
�U.胆道系の発生
1.肝内胆管系の発生
2.肝外胆管系の発生
�V.肝臓発生の分子制御
�W.肝臓の発生異常
II章 肝臓病理の基本的な病変
A.肝細胞障害および壊死・炎症パターン
�T.代表的な肝細胞障害像
1.可逆性の肝細胞障害像
2.不可逆性の肝細胞障害像:細胞死
�U.代表的な肝細胞障害機序
1.循環障害(低酸素状態,虚血,および虚血再灌流傷害)
2.化学物質,薬物,毒物などによる肝細胞障害
3.遺伝性疾患
4.代謝障害
5.胆汁うっ滞
6.免疫学的肝細胞傷害
7.感染症
�V.肝小葉にみられる壊死・炎症パターン,反応性パターン
1.基礎疾患,背景病変
2.肝にみられる具体的な壊死・炎症パターン,反応性パターン
B.肝内胆管障害および壊死・炎症パターン
�T.代表的な胆管,胆管上皮の障害像
1.胆管上皮の主な障害像
2.胆管の障害像
�U.胆管の障害機序
1.免疫介在性胆管障害
2.感染性胆管障害
3.遺伝性胆管障害
4.虚血性胆管障害
5.薬物性胆管障害
�V.胆管炎,コランギオパチーの分類,特殊な病態
1.形態学的分類
2.特殊な病態
�W.胆管周囲付属腺の障害と膵カウンターパートを伴う胆管疾患
1.胆管周囲付属腺とその障害
2.膵カウンターパートを伴う胆管疾患
C.胆汁うっ滞
�T.胆汁うっ滞
1.胆汁の分泌
2.定義
3.分類と機序
�U.胆汁うっ滞の病理像
1.急性期の胆汁うっ滞の病理所見
2.遷延した胆汁うっ滞,慢性胆汁うっ滞の病理所見
D.肝の再生/過形成と肝ステム細胞/前駆細胞
�T.肝の再生/過形成
1.肝細胞の再生・増殖
2.肝障害と肝細胞の再生・増殖
3.肝細胞の増殖・過形成と病理
4.胆管障害と胆管上皮細胞の再生・増殖
�U.肝ステム細胞/前駆細胞
1.ヒト肝におけるステム細胞の分布
2.門脈域周辺部での肝ステム/前駆細胞とその病的状態
3.胆管周囲付属腺での胆道ステム/前駆細胞
E.肝線維化
�T.肝線維化
1.線維形成細胞と肝線維化
2.線維化の制御
3.肝線維化のパターン
4.肝組織標本での肝線維化の半定量的評価
�U.肝線維化のregression
F.肝硬変(慢性肝疾患の高度進展期),ACLF,regression
�T.肝硬変[慢性肝疾患の高度進展期(advanced stage)]
1.定義
2.分類
3.肝硬変に共通する病態と合併症
�U.acute-on-chronic liver failure(ACLF)
1.定義と病態
2.病理
3.急性肝障害との鑑別
�V.肝硬変のregression(いわゆる「後戻り」)
1.概念
2.肝硬変のregressionに伴う所見と意義
III章 非腫瘍性肝疾患
A.脂肪性肝疾患(SLD)
�T.SLDの疾患概念
�U.アルコール関連肝疾患(ALD)
1.概念,病因,機序
2.臨床像,検査成績
3.病理所見
�V.代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)
1.概念,臨床
2.病因
3.病態,検査成績
4.病理
5.病期・病勢判定
6.他の肝疾患合併の有無
B.感染性疾患
�T.肝指向性ウイルス性肝炎
1.肝炎ウイルスの種類
2.急性ウイルス性肝炎(AVH)
3.抗ウイルス薬治療後の肝病態
�U.その他の感染症
1.肝臓の感染症
2.ヘルペスウイルス感染症
3.その他のウイルス感染症
4.リケッチア感染症(ツツガムシ病)
5.敗血症
6.細菌感染(急性化膿性胆管炎),Q熱,肝膿瘍,真菌症,エキノコックス症
C.自己免疫性肝炎および類縁肝炎
�T.定義,疫学,症候,遺伝
1.定義
2.疫学
3.症候
4.遺伝
�U.病因,機序
1.病因
2.機序
�V.自己抗体,診断基準
1.自己抗体
2.診断基準
�W.病理
1.acute presentation(急性発症AIH)
2.慢性緩徐進行性AIH
3.活動度分類,病期分類
�X.オーバーラップ,AIH類縁疾患,鑑別診断
1.PBC-AIHオーバーラップ,PSC-AIHオーバーラップ
2.AIH類似薬物性肝炎(DI-ALH)
3.IgG4関連AIH(IgG4-AIH)
D.薬物性肝障害(DILI)
�T.疾患の概要
1.概念
2.分類,発生機序
3.臨床,検査,原因薬物
�U.病理
1.病理組織パターン
2.特異体質性DILIの診断
3.その他のDILI
4.その他の肝組織所見:肉芽腫,スリガラス様封入体など
�V.中毒性肝障害
E.代謝性疾患,遺伝性疾患
�T.金属代謝異常
1.銅代謝異常
2.鉄代謝異常
�U.ポルフィリン症
1.概要,臨床病態
2.病理学的特徴と病型
�V.糖原病
1.概要,臨床病態
2.病理学的特徴と病型
�W.アミノ酸代謝障害
1.概要,臨床病態
2.病理学的特徴と病型
�X.アミロイドーシス
1.概要,臨床病態
2.病理学的特徴と病型
3.球状肝アミロイド
�Y.ライソゾーム蓄積症
1.概要,臨床病態
2.病理学的特徴と病型
�Z.体質性黄疸
1.概要,臨床病態
2.病理学的特徴と病型
F.肝内胆管の疾患
�T.肝内小型胆管(細胆管,小葉間胆管)を障害する疾患
1.原発性胆汁性胆管炎(PBC)
2.その他の小型胆管疾患
�U.小型胆管および肝内大型胆管を障害する疾患
1.原発性硬化性胆管炎(PSC)
2.IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)および肝でのIgG4関連病変
3.二次性硬化性胆管炎(SSC)および原因不明の特殊な硬化性胆管炎
G.血液系疾患
�T.肝虚血
1.急性肝虚血
2.慢性肝虚血
3.虚血性胆管障害
�U.門脈血行障害
1.非硬変性門脈圧亢進症
2.先天性疾患,形成異常
3.獲得性疾患
�V.肝類洞や肝静脈などの流出血管障害およびうっ血性肝疾患
1.肝紫斑病
2.類洞閉塞症候群/肝静脈閉塞症(SOS/VOD)
3.Budd-Chiari症候群(BCS)
4.心不全
5.Fontan関連肝疾患(FALD)
�W.血行障害と肝腫瘍
1.BCSの肝細胞癌(HCC)合併
2.FALDのHCC合併
3.先天性門脈欠損症(CAPV)の肝腫瘍合併
�X.肝疾患でのリンパ管の変化
1.慢性肝炎,肝硬変
2.肝細胞癌,小型胆管型肝内胆管癌
3.Milroy病
4.Aagenaes症候群
H.新生児期・小児期肝疾患,AYA世代肝疾患
�T.胆汁うっ滞,遺伝子異常
1.総論
2.各論
�U.胆道閉鎖症,肝胆道系の各種形成異常
1.胆道閉鎖症
2.小児期肝内胆管減少症(Alagille症候群)
3.先天性肝線維症,Caroli病
4.胆道系の形成異常
�V.自己免疫性肝炎(AIH),原発性硬化性胆管炎(PSC),PSC-AIHオーバーラップ(小児期)
1.小児期のAIH
2.小児期のPSC
3.AIH様の組織像を伴うPSC:PSC-AIH オーバーラップ,自己免疫性硬化性胆管炎
�W.AYA世代肝疾患
1.脂肪性肝疾患(SLD)
2.その他の疾患
I.肉芽腫性疾患
�T.肝の肉芽腫
�U.肉芽腫の病理と鑑別診断
1.類上皮肉芽腫
2.脂肪肉芽腫
3.フィブリンリング肉芽腫
4.柵状肉芽腫
5.その他
�V.肝に肉芽腫を伴う疾患
1.肝胆道疾患
2.抗酸菌感染症
3.その他の感染症
�W.サルコイドーシス
1.頻度
2.肝病理所見
3.肝病態
J.?胞性肝疾患
�T.非腫瘍性?胞性疾患
1.胆管と交通していない?胞性疾患
2.胆管と交通する?胞性疾患
�U.腫瘍性?胞性疾患
1.胆管と交通していない?胞性腫瘍
2.胆管と交通する?胞性腫瘍
IV章 肝腫瘍
A.肝の細胞系譜と肝に発生する肝腫瘍
�T.肝・胆管を構成する代表的な細胞とその系譜
1.肝細胞
2.肝ステム/前駆細胞
3.胆管と胆管細胞
4.胆管周囲付属腺とステム/前駆細胞
�U.原発性肝癌のスペクトラム:多様性と連続性
B.肝細胞腫瘍
�T.良性腫瘍,関連病変
1.肝細胞腺腫(HCA)
2.限局性結節性過形成(FNH)
3.その他の肝細胞性良性腫瘍/腫瘍類似病変
�U.肝細胞癌
1.背景病変,前駆病変,早期肝癌
a.概念
b.背景病変
c.前駆病変および鑑別診断
d.早期肝細胞癌
e.遺伝子異常
f.早期肝細胞癌の鑑別診断
2.古典的肝細胞癌の病理
a.概念
b.病理
c.遺伝子異常,免疫微小環境
3.肝細胞癌のサブタイプ
a.組織学的サブタイプ
b.分子生物学的サブタイプ
�V.稀な肝細胞性悪性腫瘍
1.CK19陽性肝細胞癌
2.肉腫様肝細胞癌
3.BAP1陰性肝細胞癌
4.粘液腫状間質を伴う肝細胞癌
5.肝細胞癌の自然壊死
6.calcifying nested stromal epithelial tumor(CNSET)
�W.肝芽腫
1.概念
2.臨床,検査
3.病理
4.肝細胞癌との鑑別診断
C.胆管腫瘍
�T.胆管の良性腫瘍および類似病変
1.粘液?胞性腫瘍(MCN)
2.胆道腺線維腫(BAF)
3.胆管腺腫(BDA)
4.?胞性微小乳頭状腫瘍(CMN)
5.胆管微小過誤腫(BMH)
6.その他
�U.肝内胆管癌
1.胆管癌の前駆病変および類似病変
2.肝内胆管癌(浸潤性)
3.肝内胆管癌の亜型,特殊型,稀な胆管腫瘍(1)
4.肝内胆管癌の亜型,特殊型,稀な胆管腫瘍(2)
D.混合型肝癌
�T.病態,臨床,画像
1.混合型肝癌の定義と問題点
2.臨床像
3.画像診断
�U.病理(WHO分類第5版を中心に)
1.肉眼所見
2.組織所見
3.類似疾患と鑑別診断
�V.WHO分類第4版の混合型肝癌サブタイプの行方
�W.原発性肝未分化癌(WHO分類第5版)の特徴,病理
E.原発性肝癌の診断補助,病態・予後を反映する分子・腫瘍マーカー
�T.原発性肝癌の診断補助マーカー
1.Hep Par1(hepatocyte paraffin 1)
2.arginase-1
3.glypican-3
4.polyclonal CEA,CD10
5.alpha-fetoprotein(AFP)
6.albumin-ISH
7.CK7,CK19,EpCAM,EMA/MUC1
8.CD56/NCAM,CRP
9.MUC5AC,MUC6,TFF1,S100P
�U.原発性肝癌の病態・予後を反映する分子・腫瘍マーカー
1.肝細胞癌(HCC)
2.肝内胆管癌(iCCA)
3.混合型肝癌
F.内分泌腫瘍(肝門部胆管系を含む)
�T.総論
1.疾患の概要
2.臨床
3.病因
4.病態,検査成績
5.画像検査
�U.NET,NEC
1.前駆病変(上皮内癌を含む)
2.病理
3.鑑別診断(肝細胞癌,胆管癌での部分的出現)
G.血管系腫瘍
�T.総論
�U.各論
1.海綿状血管腫
2.anastomosing hemangioma(AH)
3.胎児性血管腫(infantile hemangioma/infantile hemangioendothelioma)
4.hepatic small vessel neoplasm(HSVN)
5.類上皮血管内皮腫
6.血管肉腫
H.リンパ組織,間葉組織腫瘍
�T.造血系腫瘍総論
1.悪性リンパ腫
2.肝脾γδ T細胞リンパ腫
3.ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)
4.血管内リンパ腫
�U.腫瘍類似病変
1.偽リンパ腫
2.炎症性偽腫瘍
3.肝孤在性壊死性結節
4.偽脂肪腫
�V.間葉系腫瘍
1.血管筋脂肪腫
2.肝間葉系過誤腫
3.肝未分化肉腫
4.孤立性線維性腫瘍
I.転移性肝癌
�T.概念
�U.臨床
�V.病理
1.肉眼所見
2.組織学的所見
�W.原発性肝癌との鑑別
1.肝細胞癌(HCC)との鑑別
2.肝内胆管癌(iCCA)との鑑別
�X.特殊な病態
1.metastatic carcinomatous cirrhosis(転移性癌性肝硬変)/pseudocirrhosis(偽肝硬変)
2.転移性肝癌の胆管内発育
V章 移植関連
A.肝移植
�T.preservation-reperfusion障害
1.概論
2.病理
�U.liver allograft rejection(拒絶反応の病理)
1.急性拒絶反応
2.慢性拒絶反応
�V.原疾患の再発
1.ウイルス感染再発
2.自己免疫性肝疾患(PBC,PSC)のグラフト再発
3.脂肪性肝疾患(SLD)の再発
�W.de novo疾患
1.肝移植後の原因不明の慢性肝炎
2.de novo steatotic liver disease(de novo SLD)
�X.感染症
1.概論
2.サイトメガロウイルス(CMV)
3.単純ヘルペスウイルス(HSV)
4.アデノウイルス
5.Epstein-Barrウイルス(EBV)
�Y.肝移植後線維化
1.臨床的事項
2.組織学的特徴
3.発生機序
�Z.その他(1):胆道合併症,血管合併症
1.胆道合併症
2.血管合併症
�[.その他(2):非吻合性胆道狭窄
1.概論
2.胆管周囲付属腺の関与
B.造血細胞移植後の肝障害の病理
�T.概論
�U.移植片対宿主病(GVHD)
1.臨床診断基準と分類
2.発症機序
3.病態および検査所見
4.肝生検の適応
5.病理学的診断
6.病理所見
�V.GVHDと鑑別が必要な移植後肝病変
1.類洞閉塞症候群/肝静脈閉塞症(SOS/VOD)
2.自己免疫性肝炎(AIH)類似移植後肝炎
3.ステロイド抵抗性GVHDと胆管消失症候群
4.ウイルス性肝炎
5.薬物性肝障害
6.リンパ腫,移植後リンパ増殖症
「肝臓を診る医師のための肝臓病理テキスト」初版は,2013 年に南江堂から発刊され,多くの医師,医療関係者に愛読されてきた.しかし,すでに12 年余りが経ち,この間に肝臓学,肝臓病理学は大きく進歩,変貌した.初版で用いられている疾患名称や概念では,現在の肝疾患の分類や名称,病態理解に対応することができなくなりつつあり,この機に,第2版が南江堂から上梓されることになった.
まず,この12 年間で脂肪性肝疾患や原発性胆汁性胆管炎など,非腫瘍性肝疾患の再整理と疾患名称の変更があり,また新しい診断基準が提唱され,臨床の現場で用いられている.また肝腫瘍に関しても,ウイルス性肝炎背景の発癌から脂肪性肝疾患に代表される非ウイルス性肝炎からの発癌へと変わり,肝癌の特徴も変化するなかで,がんゲノム医療が標準化されると同時に,新しい疾患が提唱され,新規の概念が確立されており,疾患名称の変更も行われた.
さらに,臨床医学や非観血的な肝疾患の診断学,治療医学が著しく進歩し,ウイルス性肝炎,特にC 型肝炎や急性肝炎では,肝生検による診断や,抗ウイルス治療開始前の肝生検による病態把握が非常に少なくなってきている.また,複合免疫療法などを含む有効な薬物療法の開発と普及により,多方面からの肝細胞癌の治療が現実のものとなり,小型で早期の高分化型肝細胞癌あるいは前癌病変に対するアプローチを肝生検で行うこともかなり少なくなってきた.慢性肝疾患での線維化の把握も画像診断技術が進歩し,有効なバイオマーカーが開発され,針生検は依然として絶対的な評価方法であるが,非観血的なsurrogateも開発され,その臨床応用が進んでいる.
しかし,このような潮流にあっても,肝臓病学における肝病理の重要性はいささかも下がっていない.肝疾患のほとんどは病理形態変化を基盤に理解され,分類され,診断され,治療が行われている.免疫関連事象肝障害や,脂肪性肝炎が他疾患に重複する病態の増加に伴い,肝臓病理の十分な理解なしには,肝疾患の病態理解や診断,それに基づく治療法の選択はできないといっても過言ではない.また,現在の臨床医学をもってしても,非観血的な方法では診断が困難な症例が少なくなく,これらの症例では肝生検による診断あるいは病理情報が重要である.
本書第2 版には,いくつかの特徴がある.1つは,豊富な写真,解説図を用い,肝病理理解のための肝臓の解剖・発生から始まり,肝臓病理の基本像,そして非腫瘍性および腫瘍性肝疾患,移植関連の疾患が網羅的,かつ詳しく記載されていることである.Up-datedな内容を収載し,この1冊で,肝臓病理のすべてを理解できる教科書的書籍であり,肝臓病理を専門としている医師,医療関係者,専門としていない臨床医も,本書を傍らに置いて,肝疾患を病理学の観点から,しっかり勉強できるようになっている.また,特に本書の執筆陣は,わが国を代表する,病理診断経験や知識が豊富な肝臓病理医であり,外国居住の日本人病理医も加わり,オールジャパンの肝臓病理の専門医であるのも特徴の1つである.
現在,世界には,2 つの肝臓病理の教科書が汎用されている.MasSween の“Pathology of the Liver”とSaxenaの“Practical Hepatic Pathology”である.前者では病態の理解に力点が置かれ,後者では病理診断プロセスが中心となっている.今回上梓された本書第2版は,疾患や病態の理解および病理診断プロセスの両方に力点が置かれ,編集されており,世界的に汎用されている2つの肝臓病理書に勝るとも劣らない著者陣と内容になっていると自負したい.
2025年9月
中沼 安二
小無田美菜
肝病態の深淵に迫る:臨床医の視点で編纂された待望の改訂版
臨床医が日々遭遇する肝疾患は,病名は同じであっても症例ごとに病態は千差万別であり,日常診療の場で病気の本質を見極めようとする姿勢が肝要である.肝臓という臓器は,代謝の中心を担うがゆえにその病態はきわめて多彩であり,臨床医にとって肝病態を血液検査や画像診断のみで正確に把握することは必ずしも容易ではない.近年,非観血的な検査法が進歩するなかで肝組織検査が減少傾向にあるのは事実だが,依然として肝生検による組織診断は「ゴールドスタンダード」であり,炎症の活動性,線維化の程度,腫瘍の悪性度を確定させるきわめて重要な役割を担っている.しかし,臨床医自身が十分な病理評価を行えず,病理診断レポートを頼りに診断・治療を判断することに,一抹の物足りなさを感じている方も多いのではないだろうか.
本書は,そのような臨床医と病理医との溝を埋めるべく企画された一冊であり,2013年の初版から内容をアップデートし本書改訂第2版がこのたび上梓された.
編集の中沼安二先生は肝胆道病理学の世界的権威であり,小無田美菜先生もまた臨床と病理の接点に精通したエキスパートである.執筆陣には,肝臓病理を牽引する精鋭が名を連ねており,内容の信頼性はきわめて高いものとなっている.
本書の最大の特徴は,「肝臓を診る医師のための」と冠されているとおり,臨床医の視点に立って構成されている点にある.構成として「解剖と発生」と「肝臓病理の基本的な病変」の章が前半に組み込まれ,各論では掲載されている豊富な病理像がきわめてきれいなカラー写真であり,併せて詳細な解説があることからとても理解しやすい内容となっている.また,疾患ごとに最新の概要,病因,病態が端的にまとめられており,臨床医は教科書や顕微鏡を覗かずとも,臨床病態と病理学的診断推論をリンクさせることができる.
近年の肝臓学の進歩は著しく,非アルコール性脂肪性肝疾患(non—alcoholic fatty liver disease:NAFLD)から代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(metabolic dysfunction associated steatotic liver disease:MASLD)への呼称変更や,免疫チェックポイント阻害薬による肝障害,さらには肝細胞がんの分子病理学的分類など,アップデートすべき知識は膨大である.本書は,これら最新の知見を網羅しつつも,単なる知識の羅列に終わっていない.私自身が専門とする,自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis:AIH)領域おいても疫学,病因,診断基準が明確に記載されており,急性肝炎型AIHの組織像の解説,鑑別となるAIH類似薬物性肝障害や原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitis:PBC)/原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis:PSC)とのオーバーラップといった日常診療で多々苦慮する症例に対しても対応が可能である.さらに,COVID—19ワクチン接種後肝炎など新たな話題についても記載されており,明日からの診療に直結する知識を得ることができる内容となっている.
肝臓専門医のみならず,肝臓診療に携わる医師のデスクに,本書が常備されることを強く勧めたい.ページをめくるたびに,肝臓学の奥深さとおもしろさを再発見できるはずである.病理レポートの行間を読む力を養うことは,患者への説明の説得力を高めることにもつながるだろう.
臨床雑誌内科137巻6号(2026年6月号)より転載
評者●大平弘正(福島県立医科大学医学部消化器内科学 教授)

