はじめてのがんゲノム医療
臨床のための基礎知識
| 著 | : 加藤真吾 |
|---|---|
| ISBN | : 978-4-524-21808-0 |
| 発行年月 | : 2025年10月 |
| 判型 | : A5判 |
| ページ数 | : 240 |
在庫
定価4,180円(本体3,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評

がんゲノム医療を学ぶ 「最初の 1 冊」として最適な,初学者必携の入門書. 第一人者による,わかりやすさに徹した丁寧な語り口で, 実臨床に必要な情報からがんゲノム医療の全体像までを一挙に解説した.事前知識がなくても,自分に必要な部分を選んで読み進められる構成.SNSで大人気のDr.ぺぺぺによる表紙・扉のイラストも必見!
Chapter 1 立場別がんゲノム医療のポイント
Chapter 2 患者さんへ説明する際のポイント
Chapter 3 がんゲノム医療の基礎知識
Chapter 4 がん遺伝子パネル検査の基礎知識
Chapter 5 質の高いデータの取得
Chapter 6 がんの分子生物学の基礎知識
Chapter 7 がんゲノム解析の基礎知識
Chapter 8 リキッドバイオプシー
Chapter 9 臓器横断的バイオマーカー
Chapter 10 がんゲノム検査の種類とレポート
Chapter 11 臓器別がんゲノム検査のポイント
Chapter 12 データベース・用語集・参考文献
Column 1 ニューヨークで始まった話
Column 2 審査する部署がありません
Column 3 8年前
Column 4 保険適用前に診療科を新設
Column 5 「診断」科
Column 6 素人質問
Column 7 保険検査の運用開始
Column 8 がんゲノム医療拠点病院となる
Column 9 無事出版されましたか
本書を手に取っていただき,誠にありがとうございます.本書のタイトルを見て手に取っていただいているということは,がんゲノム医療について「よくわからないが,勉強はしてみたい」という方だと思います.本書は,がんゲノム医療の本当に最初の部分から,詳しい話まで,幅広くカバーできる構成にしています.対象は,がんゲノム医療を初めて学ぶ研修医の先生,メディカルスタッフの方から,基礎医学に苦手意識をもつ臨床医の先生としました.臨床の部分は患者さんやご家族の方,基礎の部分は医学生の方にも読んでいただける内容ではと思います.
がんゲノム医療は難しいです.すべてを理解するには,どうしても分子生物学の知識が必要となるからです.しかし,実際には「すべてを理解はしなくてもよいが,臨床で必要な情報だけ知りたい」という先生方が大半なのではないでしょうか.看護師さんなど,メディカルスタッフの方も,同様だと思います.このため,本書は基礎的な理論は置いておいて,臨床に必要な情報だけ先にまとめました.読み進めるほど,実臨床から遠くなり,基礎医学や理屈の話にしてあります.ご自身の気になる部分だけ,読んでいただければ幸いです.
なお,本書の著者は,有名な偉い先生ではありません.「私が書いても売れないと思いますが大丈夫ですか?」と出版社に確認したくらいです.私は,がん薬物療法の専門家というわけではなく,どちらかと言えばがんの分子生物学が専門です.がんのゲノム解析が専門というわけでもありません.そもそもお前誰なんだ,と思われている方も多いと思います.私は,「おそらく日本でただ一人,教授でもないのに自費がんゲノム外来を立ち上げた人」です.そして,自費がんゲノム検査,先進医療のがんゲノム検査開発,がんゲノム医療連携病院の運用,がんゲノム医療拠点病院の運用,と日本のがんゲノム医療の中で,経験だけは多く積んできた人です.がんゲノム検査について対応してきた患者さんは,執筆時点で1,000人ほどです.多くの患者さんと話しながら,患者さんは何がわかりにくいのか,臨床主治医の先生は何を知りたいのかなどを学んできました.その知識を,できる限りわかりやすく記載しました.がんゲノム医療を学ぶ最初の1冊として,多くの方に手に取っていただければうれしく思います.また,本書の内容について2点注意していただきたいことがあります.
まず1点は,執筆時(2025年6月)の情報である,ということです.がんゲノム医療の領域は,保険収載が始まった2019年から非常に多くの変化を繰り返してきました.本書を読んでいただいている時期によっては,情報が異なる可能性がありますので,ご注意いただければ幸いです※.
もう1点は,著者の私見が多く入っているということです.これに関しては,逆に単著の良さだと思うので,あえて多く入れました.各種ガイドラインに書いてあることの羅列ではあまり本書の意味がありません.むしろ臨床現場の皆さんが知りたいことは,ガイドラインに書いていないような現実の部分であると思いますので,多く記載してあります.ただ,他の専門家の意見と違いそうなところに関しては,私見ですと書いてありますので,その点に留意して参考程度にとどめていただけますと幸いです.
2025年10月
加藤 真吾
注※ 本書では,固形腫瘍に対するがん遺伝子パネル検査のみを対象としています.造血器腫瘍に関しては取り扱っておりませんので,ご注意ください.
好奇心をかきたて,「がんゲノム医療」の世界に引き込む情熱の書
まずはじめに,本書を簡単に説明するとすれば,がんゲノム医療を学ぶ者にとって非常にわかりやすい本といえる.A5サイズのハンディータイプでかつ厚さもほどよい感じでありながら,がんゲノム医療に携わる者にとって知っておくべき内容が網羅的かつ的確,そしてシンプルに記載されている点では見事である.そして,著者みずからが「本書の使い方」として,立場別(職種別)のお勧めChapterを提示しているこだわりは,がんゲノム医療全体を熟知しているからこそであり,それぞれの立場で知ってほしいことの強いメッセージと思う.
著者が述べているように「がんゲノム医療」は,保険適用になって6年以上が経過した現在でも,難しいと思われがちであることは否めない.そのため,本書では,まずはじめに臨床で必要な内容を説明し,読者の理解を深めたあとに,徐々にがんゲノム医療の本質である基礎医学的な内容に踏み込む構成になっている点において,著者の「みんなに知ってほしい」という熱い思いが伝わってくる.おそらく,一般的な解説本であれば,はじめに「ゲノムとは?」という内容で書かれ,最後に臨床的な内容の構成になるであろう点で一線を画す.難しいゲノムの話ではなく,臨床に携わるものの好奇心を引き寄せ,「がんゲノム医療」の世界に引き込む魅力的な構成になっている.そして,臨床的な内容では,実際の診療で生じる課題を著者みずからの経験に基づいて解説しており,十分な説得力がある.また,基礎医学の内容においても,がんゲノム医療で実際に必要な内容をわかりやすく取り上げており,理解が深まる.
コラムにおいては,著者が「がんゲノム医療」を臨床導入するにあたり,さまざまな困難を乗り越えてきた経緯が赤裸々にかかれており,著者の人柄が理解できるとともに,並々ならぬ情熱が伝わってくる.私自身,2016年に著者に招かれ,京都大学病院で国内ではじめて臨床実装した「がんゲノム医療」に関する講演をさせていただいたが,その時横浜市立大学での体制整備に奔走されていたことを懐かしく思い出す.それから10年が経過し,多くのことを経験され,数多くのがんゲノム医療を実践する立場になり,その経験を活かしてよりよいがんゲノム医療を普及したい,そのために本書を発刊したという熱意に敬服する.
本書が,がんゲノム医療に携わる者,そしてこれからがんゲノム医療に携わろうとする者にとってよき道しるべになることを期待する.
臨床雑誌内科137巻4号(2026年4月増大号)より転載
評者◎武藤 学(京都大学大学院医学研究科腫瘍内科学講座 教授)

