図解 スキンケア
正しいスキンケアから皮膚病治療へ
| 著 | : 野村有子 |
|---|---|
| ISBN | : 978-4-524-21186-9 |
| 発行年月 | : 2025年5月 |
| 判型 | : B5判 |
| ページ数 | : 224 |
在庫
定価6,380円(本体5,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評

スキンケアの極意がこの一冊に! 洗い方や保湿など皮膚疾患の治療に重要なスキンケアが,“図解”をコンセプトに写真やイラスト,動画で“見て”わかる.「スキンケアはどうして必要?」「いつ,どうやる?」「何を使ったらいい?」など,あらゆる疑問を解決!部位や症状ごとに適切なケアを学び,満足度の高い治療・患者指導をめざしたい方におすすめ.正しいスキンケアで皮膚をきれいに治しましょう.
第1章 スキンケアの基本
A 皮膚のしくみとスキンケアの必要性
スキンケアについて
皮膚のしくみ
皮膚のバリア機能
スキンケアを行う前に知っておきたい皮膚の現象
B 守るためのスキンケア
UVケア
気温と湿度
花粉・黄砂など飛んでくるもの
ダニ・カビなどの室内環境
衣類・金属など肌に触れるもの
第2章 スキンケアの実際
A スキンケアに必要なグッズ
最も大切なものは「手」
スキンケアに必要な基本グッズ
B 洗う(頭,顔,体,手,足)
洗浄剤を選ぶポイント
肌質を知る
肌質に合う洗浄剤を選ぶには
洗浄剤の使用方法
クレンジング剤(化粧落とし)の正しい使用方法
C 保湿(頭,顔,体,手,足)
正しい保湿の方法
自分に合う保湿剤を選ぶには
各保湿剤の特徴
保湿剤と外用薬,どちらが先?
ローションの正しい使用方法
ジェル・ミルク・クリーム・オイルの正しい使用方法
皮膚トラブルがあるときのスキンケア製品の選び方
D スキンケアの落とし穴
デリケートゾーンのケア
ハンドケア
スキンケアをやって差し上げる
誤ったスキンケアに注意
第3章 皮膚疾患へのアプローチ
A かさつき(乾燥)⇒保湿ケア(皮脂欠乏症,魚鱗癬,軽症のアトピー性皮膚炎)
B 皮むけ(落屑・鱗屑)⇒皮をむかないケア+角質正常化ケア(亀裂性湿疹,汗疱,皮脂欠乏症,尋常性乾癬,脂漏性皮膚炎,白癬症)
C ブツブツ(丘疹)⇒疾患別ケア(虫刺され,疥癬,痒疹,尋常性痤瘡,伝染性軟属腫)
D 赤み(紅斑,膨疹)⇒こすらないケア(アトピー性皮膚炎,薬疹,酒さ,エリテマトーデス,蕁麻疹)
E 赤紫(紫斑)⇒出血を悪化させないケア(IgA血管炎,紫斑病,打撲)
F 腫れ(腫脹)⇒疾患別ケア(接触皮膚炎,丹毒,蜂窩織炎,凍瘡,注射部位反応,感染性粉瘤,化膿性汗腺炎,薬疹,ケロイド)
G 黒ずみ(色素沈着)⇒美白ケア(老人性色素斑,炎症後色素沈着)
H 水ぶくれ(水疱)⇒疾患別ケア(帯状疱疹,単純ヘルペス,水疱症,熱傷)
I 傷(びらん・潰瘍・亀裂)⇒傷の深さと時期で決まる適切ケア(外傷,伝染性膿痂疹,下腿潰瘍,褥瘡)
J かゆみ(瘙痒)⇒クーリングケア(アトピー性皮膚炎,接触皮膚炎,蕁麻疹,虫刺され,疥癬,皮膚瘙痒症)
K におい⇒においのもとからケア(臭汗症,腋臭症,多汗症)
第4章 巻末付録
スキンケア製品の選び方
サンプルの試し方
クレンジング製品リスト
洗浄剤製品リスト
ローション製品リスト
保湿製品リスト
UVケア製品リスト
シャンプー等製品リスト
スペシャルケア製品リスト
スキンケア製品メーカーリスト
スキンケア製品に使用されている主な成分
界面活性剤
「スキンケア」は皮膚疾患治療のうえで,重要な位置を占めています.いくら効果的な外用薬を処方しても,内服薬や生物学的製剤などの積極的な治療をしても,日頃のスキンケアが正しく行われていなければ,その効果は激減してしまいます.正しいスキンケアの重要性については,さまざまな皮膚疾患の診療ガイドラインにも掲載されています.しかしながら,具体的な方法についての記載は少なく,疾患や肌の状態に合わせた正しいスキンケア法を学ぶチャンスは皆無といえます.
皮膚疾患の性質や患者さんの年齢,部位によりケア方法は微妙に異なります.いつのタイミングで,何をどのような順番で使用するのか,洗い方や塗り方はどうしたらよいのかなど,実はスキンケアは奥深いのです.また,自分が正しいと思って行っているスキンケアが誤っている例も多くあります.
そこで,本書は実践に基づくスキンケアのノウハウを,図解しながらわかりやすく,そしてあますことなく解説し,臨床現場に直結する書籍として企画しました.スキンケアの具体的な方法については,写真やイラストで“見て”わかるように工夫したのと同時に,“QRコード”をつけて動画が見られるようにしました.困ったときはいつでも参照できて,すぐに実践できる内容となっています.
本書は4部構成となっています.第1章は「スキンケアの基本」として,スキンケアのために知っておくべき基礎知識について解説しました.第2章は「スキンケアの実際」として,スキンケアに大切な手の動かし方から,洗い方,保湿の方法などについて具体的に解説しました.第3章は「皮膚疾患へのアプローチ」として,かさつきや赤み,水ぶくれ,傷などよくある皮膚の症状に応じたケア方法について,具体的な疾患も入れながら解説しました.最後に巻末付録として,「スキンケア製品の選び方」とともに具体的な製品名について,コメントも入れた一覧表を付けました.第1章から第3章までは,「3つのポイント」としてそのコーナーのキーポイントを,「スキンケアミニマム」として最低限必要なスキンケアの内容をまとめましたので,その部分にさっと目を通すだけでも,スキンケアへの理解が深まると思います.
日々の診療のコツや工夫など,一歩進んだスキンケアのアドバイスをわかりやすく掲載しましたので,皮膚科医のみならず,皮膚疾患を診療する小児科医や内科医,さらには看護師などメディカルスタッフや薬剤師,スキンケア製品メーカーの方々にも役立つと思います.正しいスキンケアで,一人でも多くの皮膚疾患の患者さんが,早くきれいに治りますように願っております.
最後に,企画から出版までご尽力いただきました南江堂の松下淳史様,高橋龍之介様,細かなイラストチェックでご苦労をかけましたが素晴らしいイラストを描いてくださったワタナベ・イラストレーションズ様,企画発案から最終チェックまで戦友のように寄り添ってくださった黒川一郎先生に深謝申し上げます.
2025年3月8日(プレミアム美肌の日)
野村有子
日常に息づくスキンケアのエビデンス
皮膚という臓器は体の最も外側にあり,外界のさまざまな刺激から私たちを守ってくれている.その健康を保とうとすることは,すなわち私たち自身の健康を守ることに直結している.さらに,気候変動や環境問題といった変貌する地球環境を考慮すれば,皮膚を健やかに保つためのスキンケアは,単なる日常の手入れに留まらず,きわめて重要な医療的知識と実践であるといえる.
皮膚科診療では,薬剤の選択に留まらず,日常生活の指導やスキンケアの継続といった包括的な対応が必要である.それに応える書籍は数あれど,私が教本を選ぶ際に重視しているのは「身につまされる」内容かどうかだ.つまり,実際の診療で困ったこと,助けられたことが思い起こされるような,リアリティと実践に根ざした知識かどうかという点である.
その観点から,本書はまさに現場で使える一冊である.著者の野村有子先生は,患者の生活背景を深く理解したうえで,豊富な知識と経験をもって治療にあたっておられる.患者のメリットになりそうなことはまずみずから試し,実際に有用と判断すれば躊躇なく取り入れる.そして,それらを単なる経験に留めず,科学的視点から検証し,論理的に整理する姿勢は一貫している.本書には,その臨床実践の積み重ねが余すところなく反映されている.
まず手にとって目を引くのは,色彩の工夫である.章ごとの小口の色分けは見た目にも楽しく,目的の項目に素早くアクセスできる.行間や文字サイズのバランスもよく,文字の圧迫感がないため,気軽に斜め読みもできる.かわいらしいイラストが要所にちりばめられており,視覚的にも親しみやすく,内容への理解を助けてくれる.漫画で育った世代には愛着がもてる.
内容面では,専門医である私にも多くの「気づき」を与えてくれる.アトピー性皮膚炎やドライスキンといった主要なトピックに留まらず,創傷管理,被覆材の使い方,包帯の巻き方など,見落とされがちながら臨床で重要なテーマが数多く網羅されている.しかも,それぞれの項目が患者にも伝えやすい平易な言葉で書かれていながら,内容は高度に専門的で,新たな視点が得られる構成となっている.そのまま患者説明に使えるだけでなく,医療者自身も納得して伝えられる点が本書の大きな強みだ.
帯にある「スキンケアの極意がこの一冊に!」というキャッチコピーは決して誇張ではない.診療現場で困ったとき,迷ったときにすぐ手にとれる,信頼のおける一冊である.スキンケアに関わるすべての医療従事者に,ぜひ手にとっていただきたい.
臨床雑誌内科136巻6号(2025年12月号)より転載
評者●室田浩之(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚病態学 教授)

