書籍

緩和ケアの現場で実践する 非がん患者のこころのケア入門

編集 : 松田能宣
ISBN : 978-4-524-21161-6
発行年月 : 2025年4月
判型 : A5判
ページ数 : 200

在庫あり

定価4,180円(本体3,800円 + 税)

  • 新刊

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

非がん患者のこころのケア,がんとはどう違う? 心不全やCOPD,慢性腎臓病,アルコール性肝疾患,神経難病(ALS,パーキンソン病)といった代表的な慢性疾患を取り上げ,非がん患者の心理的苦痛に対応するための実践的知識を提供.1章では心理療法のエッセンスと実践方法を,2章では各疾患の心理過程に伴う対応とケアの実際を解説.ケースや面談のテクニックも豊富に紹介し,緩和ケアの現場で明日から役立てられる一冊.

Chapter 1 使える! 心理療法のエッセンスと実践
 01 認知行動療法
 02 マインドフルネスとコンパッション
 03 家族療法
 04 解決志向アプローチ
 05 動機づけ面接
 06 問題解決療法
 
Chapter 2 非がん疾患の心理過程とその対応
 01 心不全
 02 慢性呼吸器疾患
  A COPD
  B 間質性肺疾患
 03 慢性腎臓病(CKD)
 04 アルコール性肝疾患
 05 神経難病
  A 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  B パーキンソン病
 
Chapter 3 非がん患者のこころのケアTips & Topics
 01 治療的自己
 02 共感と共鳴
 03 防衛機制
 04 病態仮説の構築
 05 ジョイニング
 06 リフレーミング
 07 メタファー
 08 心理的ケアとしての身体診察
 09 自律訓練法
 10 漸進的筋弛緩法(PMR)
 11 共鳴呼吸法
 12 不眠症の非薬物療法
 13 ナラティブアプローチ

はじめに

 日本における緩和ケアは、主にがん患者さんを対象として発展してきました。また、疼痛や呼吸困難といった身体症状の治療・ケアが重視される一方で、精神・心理症状への対応は十分に広がっているとは言いがたいのが現状です。このように「非がん患者さんの精神・心理症状の治療・ケア」については国内で十分に均てん化されているとはいえません。
 本書は、2023年に開催された第28回日本緩和医療学会のシンポジウム「致死性慢性疾患患者の心理過程、病気の受容や対処行動」をきっかけに企画が始まりました。がんと非がんでは病状経過や精神・心理症状で共通する部分がある一方で、非がん患者さんでは疾患ごとに特有の精神・心理症状があるのだなと感心したことを覚えています。ちょうどその折に南江堂のスタッフにお会いし、「こうした知見を臨床現場で役立ててもらうために書籍化してはどうか」という話になりました。
 本書の主な特徴は三つあります。
 第一に、読者の皆様が実臨床で実践可能な心理療法のエッセンスを紹介しています。私が心療内科の研修をしていた当時、指導医から「自分がやりたい心理療法をやるのではなく、目の前の患者さんに必要な心理療法のエッセンスを組み合わせて実践することが大事」と教えてもらいました。特定の心理療法についてしっかり研修することは多くの一般医療者にとって難しいことが多いと思います。本書には事例を含めた実践的な内容が数多く載っていますので、どんどん活用してください。
 第二に、各疾患特有の心理過程や対処法、さらにはACP(アドバンス・ケア・プランニング)についてわかりやすく解説しています。非がん患者さんの治療・ケアにあたるとき、該当する疾患を参照することで、その患者さんが病の軌跡のどの段階にいて、どのような心理的苦痛を抱えやすいのかを理解しやすい構成にしています。症状マネジメントに困ったときは、具体的な対応方法や処方例の記載が役立ちます。また、ACPを実践する際に疾患ごとに押さえておきたいポイントも簡潔にまとめています。さらに、事例を紹介することでより具体的なイメージをもちやすいように工夫しています。
 第三に、非がん患者さんのこころのケアを実践するうえで知っておきたい心身医学・精神医学・心理学のTipsやトピックをまとめています。医師や看護師がこれらの分野を学ぶ機会は限られているため、実臨床で役立つ知識を厳選し、エキスパートの方々に執筆いただきました。
 本書が、読者の皆様の日常臨床の一助となり、非がん患者さんのこころの安寧につながることを心より願っています。最後に、実践的かつわかりやすい内容を執筆いただいた執筆者の皆様、そして書籍化に尽力いただいた南江堂のスタッフに深く感謝申し上げます。

2025年3月
松田能宣

9784524211616