最小侵襲アプローチで究めるTHA・BHA
トップサージャンの極意
| 編著 | : 西脇徹 |
|---|---|
| 著 | : 赤石孝一/鈴鹿智章/森島達観/坂越大悟 |
| ISBN | : 978-4-524-21069-5 |
| 発行年月 | : 2026年2月 |
| 判型 | : A4判 |
| ページ数 | : 152 |
在庫
定価16,500円(本体15,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評

初めて筋腱や軟部組織を温存する最小侵襲手術(MIS)を行う術者が安全に執刀できるようになることを目的に,各進入法の第一人者によるノウハウを豊富なイラストとともに詳述する.一般的な手術書とは異なり,術者の思考過程や技術的工夫,導入初期に陥りやすいピットフォールや術中トラブルへの対処法までを網羅し,読者の技術向上と合併症の回避に貢献する内容となっている.
総論01 股関節の進入路
1 進入法の種類
2 進入路の概要
総論02 手術進入で知っておくべき解剖
1 表面解剖
2 骨・軟骨・関節包
3 筋・腱
4 血管
5 神経
各論01 AMIS ─Anterior Minimally Invasive Surgery(組織間温存前方進入法)
各論02 ALS ─Anterolateral-Supine Approach(仰臥位前外側進入法)
各論03 SuperPATH ─The Direct Superior Portal Assisted Total Hip Approach(最小侵襲股関節上方進入法)
各論04 DSA ─Direct Superior Approach(小侵襲後上方進入法)
各論05 CPP ─Conjoined Tendon Preserving Posterior Approach(共同腱温存後方進入法)
索 引
人工股関節置換術は,20 世紀における最も成功した外科手術の一つとされています.近年では人工股関節の長期耐用性が期待できるようになり,手術を受ける患者の年齢層は若年化し,求められるニーズもより高度で多様なものへと変化しています.筋腱をはじめとする軟部組織を温存することで,こうした高い患者ニーズに応えられると期待されます.
ドイツの物理学者であり量子論の創始者の一人であるマックス・プランクは,「新しい科学的真実は,その真実に精通した新しい世代が成長することで勝利する」と述べています.軟部組織を温存する最小侵襲手術は,若い世代の整形外科医を中心に関心が高まり,今後さらに発展していくことは明らかです.
このたび,人工股関節置換術における最小侵襲手術の手技書の編集を担当させていただきました.これまでにも多くの手術手技書が発刊されていますが,その多くは大まかな流れを説明するものです.本書では,各最小侵襲手術の指導経験が豊富なエキスパートに執筆を依頼し,各術者独自のノウハウや手技の背景にある思想を,可能な限り詳細に言語化していただきました.多数のイラストや写真を用いて詳しく解説しており,実際の手術に直結する実践的な内容になっています.
本書の目的は,最小侵襲手術の優劣を示すことではありません.導入初期の医師や,ある程度習熟した医師がさらに技術を高め,より正確で安全な手術を実現できるよう支援することにあります.導入初期に陥りやすいピットフォールや想定される術中トラブル,それに対する対処法についても詳述しました.
ただし,文字やイラストのみでは限界があります.本書を熟読されたうえで,執筆者をはじめとするエキスパートの手術見学やキャダバートレーニングに積極的に参加されることをお勧めします.これらの経験を経て本書を再読すれば,理解が一層深まり,手技の習得もより早まるでしょう.
本書が,皆様の手術技術の向上に寄与し,手術を受けられる患者様のADL 向上に貢献できれば幸いです.最後に,本書の発刊にあたり多大なご尽力を賜りました南江堂の杉山孝男様,平原大輔様,川島早苗様,提坂友梨奈様,ならびにイラストレーターをはじめ関係各位に心より感謝申し上げます.
2026年2月
山王病院股関節低侵襲治療センター センター長
国際医療福祉大学臨床医学研究センター 教授
西脇 徹
私事ではあるが,筆者自身,人工股関節全置換術(THA)および人工骨頭置換術(BHA)においては最小侵襲手術(MIS)の一つである前方進入法(DAA)を行っている.筑波大学に赴任した際,筆者の手術手技を勉強しようと見学にやってきた後輩医師が,熱心に手元に携えていたのが本書であった.初学者が貪るように読み込み,ベテラン医師の執刀を前に自らのイメージを膨らませる―.本書がすでに,臨床の現場でいかに若い世代から高い信頼を寄せられているかを象徴する,非常に印象的なできごとであった.
近年,人工股関節の長期耐用性が実証されるに伴い,手術適応は若年層へと拡大し,早期の社会復帰・スポーツ活動復帰という患者ニーズは高度化・多様化している.筋腱などの軟部組織を温存するMISへの関心は,若い世代の整形外科医を中心に急速に高まっているが,限られた術野で安全・確実に手技を完遂するのは容易ではない.そうした中,まさに待望の書として発刊されたのが,西脇徹先生が編著を務められた『最小侵襲アプローチで究めるTHA・BHA』である.
本書の最大の魅力は,股関節MISにおける主要な5つの進入法[組織間温存前方進入法(AMIS),仰臥位前外側進入法(ALS),最小侵襲股関節上方進入法(superPATH),小侵襲後上方進入法(DSA),共同腱温存後方進入法(CPP)]について,国内の第一人者(トップサージャン)たちが一堂に会し,それぞれの「極意」を惜しみなく開示している点にある.単なるプロトコルの羅列にとどまらず,「術者の思考過程」や「独自の技術的工夫」がきわめて克明に言語化されている点が秀逸である.各術者が手術の局面において何を指標とし,どのように困難を切り抜けているのかという記述からは,技術を極めた外科医たちの凄みと,凄まじいまでの創意工夫の軌跡がリアルに伝わってくる.
また,読者を強く惹きつけるのが,A4判という大きな判型を最大限に活かした,豊富で緻密なイラストや写真の存在である.皮切から深部展開,インプラントの正確な設置にいたるまで,術者目線のリアルなイラストが多用されており,術野の展開プロセスが非常に直感的に理解しやすい.さらに,導入初期に陥りやすいピットフォールや,予期せぬ術中トラブルに対する実践的な対処法まで先回りして詳述されているため,読者は安全な執刀への確固たる自信を得ることができるだろう.
本書は,トップサージャンの思想と極意を追体験し,安全な最小侵襲アプローチを究めるための一書である.これからMISを導入しようとする若手医師にとって最良の羅針盤となるだけでなく,すでに多くの症例を経験している中堅・ベテラン医師にとっても,自らの手技を再点検し,さらなる高みへ技術をアップデートするための格好の指南書となる.股関節外科に携わるすべての整形外科医の机上に,常におかれるべき不朽のスタンダードテキストとして,本書を強く推薦したい.
臨床雑誌整形外科77巻11号(2025月10号)より転載
評者●(筑波大学整形外科教授・本間康弘)

