書籍

便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症

編集 : 日本消化管学会
ISBN : 978-4-524-21005-3
発行年月 : 2023年7月
判型 : B5
ページ数 : 144

在庫あり

定価3,300円(本体3,000円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本消化管学会編集による『便通異常症診療ガイドライン2023』の「慢性便秘症」編.Mindsの作成マニュアルに準拠し,臨床上の疑問をCQ(clinical question),BQ(background question),FRQ(future research question)に分けて解説.冒頭には診断・治療のためのフローチャートを掲載し,便秘症の定義・分類・診断基準から疫学,病態生理,診断検査,内科的治療について,前版以降の進歩や最新知見を盛り込み,日常診療に必携の一冊となっている.

第1章 定義・分類・診断基準
 CQ 1-1 便秘はどのように定義されるか? また慢性便秘症はどのように定義されるか?
 BQ 1-1 慢性便秘症はどのように分類されるか?
 BQ 1-2 慢性便秘症の診断基準は何か?
 FRQ 1-1 難治性慢性便秘症はどのように定義されるか?

第2章 疫学
 BQ 2-1 慢性便秘症の有病率はどれくらいか?
 BQ 2-2 慢性便秘症の発症リスクは何か?
 BQ 2-3 慢性便秘症はQOLを低下させるか?
 BQ 2-4 慢性便秘症は長期予後に影響を与えるか?

第3章 病態生理
 CQ 3-1 慢性便秘症の病態に小腸機能は関与するか?
 BQ 3-1 慢性便秘症の病態に結腸機能は関与するか?
 BQ 3-2 慢性便秘症の病態に直腸肛門機能は関与するか?
 CQ 3-2 慢性便秘症の病態に直腸感覚閾値(便意)は関与するか?
 BQ 3-3 慢性便秘症を二次的に起こす基礎疾患はあるか?
 BQ 3-4 慢性便秘症に加齢は関与するか?
 BQ 3-5 慢性便秘症を起こす薬剤はあるか?
 BQ 3-6 慢性便秘症の病態に心理的異常は関与するか?
 CQ 3-3 慢性便秘症の病態に腸内細菌は関与するか?
 CQ 3-4 慢性便秘症とオーバーラップする機能性消化管疾患は何か?

第4章 診断検査
 BQ 4-1 慢性便秘症の診療に有用な問診票は何か?
 BQ 4-2 慢性便秘症の診療に有用な身体診察は何か?
 BQ 4-3 慢性便秘症の診療で適宜必要な検査は何か?
 CQ 4-1 慢性便秘症における警告症状・徴候は何か?
 CQ 4-2 慢性便秘症の病態機能評価において,体外式超音波検査は有用か?
 CQ 4-3 慢性便秘症の病態機能評価において,放射線不透過マーカー法は有用か?
 CQ 4-4 慢性便秘症の病態機能評価において,MRI/CTは有用か?
 BQ 4-4 慢性便秘症の病態機能評価において,排便造影検査は有用か?
 BQ 4-5 慢性便秘症の病態機能評価において,直腸肛門内圧検査(バルーン排出検査を含める)は有用か?

第5章 内科的治療
 BQ 5-1 慢性便秘症治療の目的(目標)は何か?
 BQ 5-2 慢性便秘症に生活習慣の改善や食事指導・食事療法は有効か?
 BQ 5-3 慢性便秘症にプロバイオティクスは有効か?
 BQ 5-4 慢性便秘症に膨張性下剤は有効か?
 CQ 5-1 慢性便秘症に浸透圧性下剤は有効か?
 BQ 5-5 慢性便秘症に刺激性下剤は有効か?
 CQ 5-2 慢性便秘症に粘膜上皮機能変容薬は有効か?
 CQ 5-3 慢性便秘症に胆汁酸トランスポーター阻害薬は有効か?
 BQ 5-6 慢性便秘症に消化管運動機能改善薬は有効か?
 BQ 5-7 慢性便秘症に漢方薬は有効か?
 BQ 5-8 慢性便秘症に浣腸,坐剤,摘便,逆行性洗腸法は有効か?
 BQ 5-9 慢性便秘症に心理療法は有効か?
 CQ 5-4 オピオイド誘発性便秘症に対する治療法は何か?
 FRQ 5-1 ルビプロストン,リナクロチド,エロビキシバットを用いるべき臨床的特徴は 何か?
 BQ 5-10 慢性便秘症にバイオフィードバック療法は有効か?
 BQ 5-11 慢性便秘症に順行性洗腸法(antegrade continence enema:ACE)は有効か?
 BQ 5-12 保存的治療で改善しない大腸通過遅延型の慢性便秘症に結腸切除術は有効か?
 BQ 5-13 保存的治療で改善しない便排出障害型の慢性便秘症に外科的治療は有効か?
 CQ 5-5 難治性結腸運動機能障害型便秘に対する手術時,術式選択に考慮すべき検査は何か?
 CQ 5-6 慢性便秘症の病態に応じた治療法は有効か?

便通異常症診療ガイドライン刊行にあたって

 日本消化管学会では,これまで2016年に『食道運動障害診療指針』,2017年に『大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン』を上梓した.このたび,『便通異常症診療ガイドライン』を刊行することになった.『慢性便秘症診療ガイドライン2017』は,2017年に日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断・治療研究会編集で作成されていたが,新たに数種類の下剤が上市されたり,それらの薬剤の使用経験も増え,エビデンスがさらに追加されたこともあって,慢性便秘症診療ガイドラインの改訂の必要性を感じた.そこで,日本消化管学会は,日本消化器病学会を中心として,関係学会などと相談させていただき,慢性便秘症診療ガイドラインの改訂をさせていただくことになった.それと同時に,慢性下痢症についても様々な原因があり,その診断や治療についてどこまでわかってきたかを明らかにし,日常診療の指針になるような診療ガイドラインを作成することは非常に臨床に役立つと考え,慢性下痢症の診療ガイドラインも必要であろうと理事会,代議員会で決定したので,便秘と下痢を合わせて『便通異常症診療ガイドライン2023』を作成することにいたった.
 今回のガイドライン策定委員・評価委員の選考に関しての特徴は,以下のような点である.一般社団法人日本消化管学会「医学研究の利益相反に関する指針」の細則の第7条(ガイドライン,治療指針等作成などにかかるCOI管理)に規定している内容に従った.すなわち,現在,多くの学術団体から公表されている診療ガイドラインや治療指針は,医薬品,医療機器の適正使用や治療の標準化を目指す医療現場では関心が高く,影響力の強い指針として用いられている.これらのガイドラインや指針の策定には,専門的知識や豊富な経験を持つ医師が委員として参加するが,当該分野と関連する企業との金銭的なCOI関係が生じる場合も少なくないため,企業側に有利なpublication bias やreporting biasなどの懸念を起こさせないためのCOI管理が必要となる.また,学会自体が特定企業と金銭的な関係が深い場合にはバイアスリスクが高いと社会からみられることもあり,学会自体のCOI状態(組織COI)も開示する.ガイドライン策定に参加する委員長および委員(ガイドライン委員会,ガイドライン小部会委員)には,COI状態の開示(自己申告書)を求めて適切に管理することが重要である.すべての委員のCOI状態とともに,診療ガイドラインを策定する当該学会のCOI状態も日本医学会診療ガイドライン策定参加資格基準ガイダンス(2017)に基づいて個別に当該ガイドライン中に開示する必要がある.ガイドライン委員長・ガイドライン小部会委員長の個人COIについては,指針細則中の表2に示す各項目の基準額をいずれも超えない場合に,委員長に就任し議決権を持つことができる.就任中に基準額を超えるようなCOI状態が発生した場合には,委員長は自ら役職を辞退することを検討すべきである.ガイドライン委員会・小部会参加者の個人COIについては,指針細則中の表3に示す各項目の基準額のいずれも超えない場合は,委員に就任し審議に参加して議決権を持つことができる.ただし,いずれかの基準額を超えている場合でも,委員長がガイドラインを策定するうえで必要不可欠な人材であると判断し,その判断と措置の公正性および透明性が明確に担保される場合に限り,その具体的な金額を利益相反委員会で確認のうえ,ガイドライン委員会との協議会で個別審議する.協議会の承認が得られた場合は,委員として審議に参加することは可能であるが,議決権を持つことができない.また,基準額(指針細則中の表3)を大幅に超えるようなCOI状態がある場合には,自ら就任を辞退するべきである.
 そこで,まず,上記の一般社団法人日本消化管学会「医学研究の利益相反に関する指針」の細則の第7条(ガイドライン,治療指針等作成などにかかるCOI管理)に従って,本ガイドライン策定に参画していただく委員を公募することにした.公募されてきた先生方について,COIの自己申告書や業績などをもとに,ガイドライン委員会・利益相反委員会で厳正な審議のうえ,委員の候補者を選定させていただき,理事会・代議員会で承認していただいた.専門的知識や豊富な経験を持つ医師で当該分野と関連する企業との金銭的なCOI関係(基準額を超えている場合)がある場合は,議決権のないアドバイザーとして参画していただいた.
 その後,型のごとくガイドラインを作成し,会員の皆さん,関係学会にパブリックコメントを求め,修正後,刊行の運びとなった.慢性下痢症の診療ガイドラインは最初のものである.なかなかの出来と自負している.今後,慢性便秘症については日本消化器病学会が中心となって,改訂されていくと思われる.最後に,このガイドライン策定を中心になって進めていただいた前ガイドライン委員長の春日井邦夫先生,現委員長の片岡洋望先生,小部会委員長の伊原栄吉先生,その他委員の先生方,関係学会,関係各位に深謝申し上げる.

 2023年5月吉日
 一般社団法人 日本消化管学会 第5代理事長
 日本消化管関連学会機構 理事長
 樋口 和秀

便通異常症診療ガイドライン刊行にあたって

 日本消化管学会ガイドライン委員会は,日本消化器内視鏡学会,日本胃癌学会との三学会連名にて2016年にDigestive Endoscopy誌へ掲載された早期胃癌の拡大内視鏡診断アルゴリズム「Magnifying Endoscopy Simple Diagnostic Algorithm for Early Gastric Cancer(MESDA‑G)」を皮切りに,日本食道学会との協力で作成し2016年に南江堂より出版された『食道運動障害診療指針』,そして日本消化器病学会,日本消化器内視鏡学会,日本インターベンショナルラジオロジー学会の協力のもとで作成し,2017年日本消化管学会誌に掲載された『大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン』を発刊してきた.
 日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会により『慢性便秘症診療ガイドライン2017』が作成され2017年に南江堂より出版された.この時期は,新規便秘治療薬の上市が続いており,経験的に従前の既存薬を処方していたわれわれが,新しい時代の幕開けを感じた瞬間でもあった.発刊から数年が経過し,新規治療薬は実地臨床で浸透しエビデンスが蓄積されてきた.時宜を得て樋口和秀理事長のもと,便秘のみならず,下痢をも含めた診療ガイドラインを策定する気運が盛り上がり,春日井邦夫ガイドライン委員長のもと,「便通異常症診療ガイドライン 慢性便秘症および慢性下痢症」の策定が決定し,片岡洋望ガイドライン委員長に引き継がれ,伊原栄吉小部会委員長の陣頭指揮の下,日本消化器病学会,日本消化器内視鏡学会,日本大腸肛門病学会にもご協力をいただき,このたび出版の運びとなった.
 本書の構成は,他のガイドラインに倣いCQ(Clinical Question)のうち既知の知識の整理をBQ(Background Question),今後の研究課題をFRQ(Future Research Question)とし,便通異常症の基礎知識,診断治療,そして未来を総覧することが可能である.便秘,下痢の定義についても,委員会での喧々諤々の討論により新たに定義された.特筆すべきは,診断治療のフローチャートが記載されたことである.慢性便秘症のエビデンスも決して豊富とはいえないが,特に慢性下痢症については,エビデンスがほとんどなく,委員の先生方はかなりご苦労されたに違いない.
 このガイドラインは,便通異常症診療に携わるすべての医療者にとっての新たな道標になるに違いない.素晴らしいガイドラインをまとめられた委員の先生方,協力学会の先生方,携われたすべての方々に感謝申し上げたい.
 日本消化管学会では,『大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン』の改訂に着手した.常にup dateのガイドラインを先生方にお届けすることが使命であると心得ている.

 2023年5月吉日
 一般社団法人 日本消化管学会 理事長
 永原 章仁

熟読すれば慢性便秘症の大家になれる一冊

 2017年に日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会編集で作成された『慢性便秘症診療ガイドライン2017』(以下「2017年版」とする)が,日本消化管学会が中心となり,日本消化器病学会,日本消化器内視鏡学会,日本大腸肛門病学会の協力のもとで改訂され,『便通異常症診療ガイドライン2023:慢性便秘症』として南江堂から発刊された.便秘という症状はあまりにも一般的であり,経験的に診療が行われていたなかで,2017年版の作成には評者も作成委員として参加したが,便秘の定義や慢性便秘の病態に関わっている消化管運動の評価,さらに本邦では一般的に使用されている刺激性下剤の位置づけなど,多くの難題を抱えながら作成された.ガイドラインには,実地医家が簡便に使用することができるように診療フローチャートが必要であるが,2017年版ではそれを作成することができなかった.また,エビデンスレベルA,推奨の強さ(合意率)1の治療薬は,浸透圧性下剤と小腸上皮機能変容薬lubiprostoneの2剤であった.
 その後,慢性便秘症は生存率を低下させ心血管イベントの発症リスクを上昇させること,さらに排便回数が少ないほど心血管疾患による死亡リスクが上昇することなど,慢性便秘症の長期予後に関する成績が発表された.治療薬としては,浸透圧性下剤ポリエチレングリコール,小腸上皮機能変容薬linaclotide,胆汁酸トランスポーター阻害薬elobixibat,オピオイド誘発性便秘症治療薬naldemedineが次々に発売され,また漢方薬の再評価も行われたため,2017年版のガイドラインの改訂が求められていた.そのような状況のもと,発刊された『便通異常症診療ガイドライン2023:慢性便秘症』であるが,実地医家に求められていた診療フローチャートが作成されており,治療薬としては前述したすべての薬剤がBackground Question(BQ)あるいはClinical Question(CQ)として取り上げられ,評価されている.また,本書ではこれからの実地診療を見据え,CQとして「慢性便秘症の病態機能評価において,体外式超音波検査は有用か?」が取り上げられている.体外式超音波検査を消化管運動の機能評価に用いてきた私にとっても最良のガイドラインとなっている.
 本書は慢性便秘症の定義,疫学,病態生理,診断検査,治療がコンパクトにまとめられており,実地診療に役立つとともに,読み終わったときには慢性便秘症の大家となれること間違いなしの一冊である.

臨床雑誌内科133巻3号(2024年3月号)より転載
評者●春間 賢(川崎医科大学総合医療センター総合内科2 特任教授)

9784524210053