小児心身医学会ガイドライン集改訂第3版
日常診療に活かす7つのガイドライン
編集 | : 日本小児心身医学会 |
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ISBN | : 978-4-524-20472-4 |
発行年月 | : 2025年10月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 320 |
在庫
定価5,280円(本体4,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

日本小児心身医学会で作成した7つのガイドライン(「小児科医のための心身医療ガイドライン」「小児起立性調節障害診療ガイドライン」「小児科医のための不登校診療ガイドライン」「小児摂食障害診療ガイドライン」「くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン」「くり返す子どもの頭痛診療ガイドライン」「小児機能性消化管疾患ガイドライン」)を収載.前版から10年が経過しこの間の進歩を盛り込み大幅改訂を行った.小児診療に携わるすべての人が読んでおきたい一冊.
■小児科医のための心身医療ガイドライン
本ガイドラインについて/子どもの心身症の定義
A.心身症の病態
1.心身相関
2.心理社会的因子
B.心身症の治療
1.心身症の初期対応
2.心身症治療の進め方
3.心身症治療のゴール
C.小児科における心身症診療の実際
1.外来診療における心身症
2.子どもの摂食障害
3.入院治療について
D.専門医へのステップ
コラム▶ 赤ちゃんからの心身医学的関わり
■小児起立性調節障害診療ガイドライン
本ガイドラインについて
A.診断アルゴリズム
1.ODガイドライン診断アルゴリズム
2.ODのサブタイプ
3.新起立試験法
4.新起立試験法によるサブタイプ判定
5.身体的重症度の判定
6.「心身症としてのOD」診断チェックリスト
B.治療アルゴリズム
1.重症度・心理社会的因子の関与に応じた治療的対応の組み合わせ
2.初診以後の通院について
C.解説
第1章 病態
1.機序
2.疫学
3.思春期のOD
4.ODサブタイプ
5.起立時循環調節機構
6.ODにおける循環調節機構の障害
7.海外の診断基準
8.類縁疾患の定義とODとの異同
BQ1-1.ODの発症および症状の増悪に影響を与える因子にはどのようなものがあるか?
第2章 診断
1.一般小児科医を受診する際のODの愁訴
2.診断アルゴリズムの注意点
3.ODのなかで心身症といえるものがどの程度存在するか
CQ2-1.小児ODの評価に能動的起立試験とヘッドアップティルト試験のどちらが有用か?
FRQ2-2.ODの診断基準を満たさない場合,どのように対応するか?
第3章 治療
1.治療の進め方
2.重症度・心理社会的関与に応じた治療的対応の組み合わせ
3.各治療法の解説
4.心身医学的対応における注意点(一般外来向け)
5.重症ODに対する心理社会的対応(専門医向け)
6.その他の治療法
7.実際のOD診察においてたびたび使う言葉と「禁句」の例
BQ3-1.小児ODの治療に神経発達症への配慮は有用か?
CQ3-2.小児ODに非薬物療法は有用か?
CQ3-3.小児ODに運動療法は有用か?
CQ3-4.小児ODに水分および塩分摂取は有用か
CQ3-5.小児ODに薬物療法は有用か?
CQ3-6.小児ODに漢方薬治療は有用か?
BQ3-7.小児ODに心理療法は有用か?
第4章 併存疾患・予後
1.併存疾患
2.予後
D.子ども・家族用ガイド(Q&A)
Q1.起立性調節障害(OD)とはどんな病気ですか?
Q2.なぜ起こるのでしょうか?(病態生理)
Q3.だらだらして怠けているのではないですか?
Q4.発症しやすい年齢や頻度を教えてください
Q5.日常生活や学校生活で注意することはありますか?
Q6.どのような治療がありますか?
Q7.いつ頃に治るでしょうか?
Q8.朝起きが悪いのですが,起こしたほうがよいのでしょうか?
Q9.不登校が続いていますが,どうすればよいのでしょうか?
コラム▶ INOHとPOTSの病態異同について
■小児科医のための不登校診療ガイドライン
本ガイドラインについて
A.不登校への対応の基礎
1.小児科医としての不登校への関わり方
2.このガイドラインの内容について
3.不登校に対する診療の流れ
B.初診段階での診察手順
1.登校できない,しないことを主訴に受診した場合
2.登校できないこと,しないこと以外の主訴で受診した場合
C.不登校の診療にあたり知っておきたい知識
1.身体症状の治療に有用な心身症の知識
2.身体症状が基本となるもの
3.身体症状症および関連症群
4.精神疾患や配慮を要する状態
5.神経発達症
6.その他
7.不登校に推奨される検査
8.薬物の使用について
9.保険診療について
D.当初1〜2ヵ月の経過観察
1.診察と情報収集の要点
2.生活の様子や生育歴についての情報収集
3.合併する疾患や神経発達症の確認
E.1〜2ヵ月を過ぎた後の経過観察
1.長期的な経過観察の基本
2.診療の再評価と専門診療施設への紹介
3.不登校の状態評価
4.不登校状態の変化過程
5.毎回の診察の進め方
6.状態に応じた対応の要点
F.学校との関わり
1.学校と連携する目的
2.学校との情報交換までの手順
3.子どもと学校とのつながりについて話し合う
4.学校との情報交換で確認する事項
5.学校と連携するときの注意
G.不登校の予後
H.Q&A
Q1.小児/思春期の不登校状態を評価する主観的尺度はあるか?
Q2.小児/思春期の不登校状態を評価する客観的尺度はあるか?
Q3.不登校児に対して登校刺激は推奨されるか?
Q4.不登校児治療において学校連携は推奨されるか?
Q5.フリースクール利用は推奨されるか?
Q6.不登校児に対して入院治療は推奨されるか?
Q7.不登校児の家族に対して心理療法は推奨されるか?
コラム▶ 不登校のきっかけとして多いものは何か?
コラム▶ 不登校になるリスクとしては何があるか?
■小児摂食障害診療ガイドライン
本ガイドラインについて
A.摂食障害の概要
1.摂食障害とは(総論)
2.摂食障害への対応フローチャート
3.摂食障害の治療(総論)
4.小児の摂食障害におけるトピックス
B.外来治療
1.治療概要
2.神経性やせ症(AN)の外来治療
3.回避・制限性食物摂取症(ARFID)の外来治療
4.神経発達症が併存する場合の対応
5.晩期合併症
6.診療のコツ
7.治療におけるピットフォール“べからず集”
C.入院治療
1.総論
2.各論
D.Clinical Question
CQ1.経口リン製剤はリフィーディング症候群の予防に有効か?
CQ2.family based treatment(FBT)は介入として有効か?
CQ3.小児の摂食障害において心理介入(FBT以外)は有効か?
CQ4.栄養バランスより総カロリーを重視した再栄養療法は有効か?
CQ5.身体的危急がない場合,入院加療と外来加療の介入効果に差を認めるか?
CQ6.入院の再栄養計画はどのように行うべきか?
CQ7.入院の再栄養として経管栄養や末梢静脈栄養,中心静脈栄養は有効か?
CQ8.再栄養の合併症として想定すべきものは何か? その予防に有効な対応は何か?
■くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン
本ガイドラインについて
Q&A
1.くり返す痛みとは
Q1.痛みの定義とは?
Q2.「 くり返す痛み」と慢性疼痛との関係とは?
Q3.子どものくり返す痛みの頻度は?
Q4.くり返す痛みを多面的に診る際のチェックポイントは?
2.痛みとこころ
Q5.痛みと気持ちの関係は?
Q6.痛みによる疾病利得とは?
Q7.痛みのコントロールはどのようにして行うか?(マインドフルネスの観点から)
3.痛みの評価
Q8.痛みはどのように伝達されるか?
Q9.ストレスは痛みに対してどのような影響を与えるか?
Q10. 子どもの痛みの評価はどのように行うか?
4.痛みとトラウマ
Q11.逆境的小児期体験と痛みの関連性やそれが生じるメカニズムは何か?
Q12.心的外傷後ストレス障害(PTSD)と痛みとの関連性やそれが生じるメカニズムとは?
Q13.被虐待体験と痛みの関係とは?
Q14.トラウマ関連による痛みへの対処法は?
5.学習性疼痛と身体不活動
Q15.学習性疼痛とは何か
Q16.回避学習性疼痛とは何か?
Q17.身体不活動と痛覚過敏の関係は?
6.疼痛性疾患
Q18.線維筋痛症とは何か? またその痛みのメカニズムは?
7.変換症(転換性障害)・作為症(虚偽性障害)と痛み
Q19.変換症,詐病,心因性疼痛の関係とその対応は?
Q20. 古典的なヒステリーはDSM-5ではどう扱われていますか?
Q21.身体症状症とくり返す痛みの関係は?
Q22.変換症(転換性障害:機能性神経学的症状症)とくり返す痛みの関係は?
Q23.作為症/虚偽性障害とくり返す痛みとの関係は?
■くり返す子どもの頭痛診療ガイドライン
本ガイドラインについて
解説
第1章 疫学
1.総論
2.くり返す一次性頭痛
3.くり返す二次性頭痛
4.慢性連日性頭痛(CDH)
第2章 診断
1.総論
2.くり返す一次性頭痛
3.くり返す二次性頭痛
4.頭痛診療に役立つツール
第3章 慢性化の仕組み
1.総論
2.片頭痛の慢性化と変容化
3.睡眠
4.環境調整
5.共存症
6.その他
第4章 治療
1.総論
2.非薬物療法
3.薬物療法(片頭痛)
4.慢性連日性頭痛(CDH)
コラム▶ Let's心理療法
■小児機能性消化管疾患ガイドライン
本ガイドラインについて
A.総論
1.定義
2.病態の解釈
3.診察
4.機能性身体症候群(FSS)における他の疾患群との合併
5.養育環境について
6.神経発達症との併存について
B.上部消化管疾患―機能性ディスペプシア,胃食道逆流症
1.機能性ディスペプシア(FD)
2.胃食道逆流症(GERD)
C.下部消化管疾患―過敏性腸症候群,機能性便秘,機能性下痢
1.定義
2.疫学
3.診断
4.薬物治療
5.心理的介入(心理療法・心身医学的対応などを含む)
6.予後
D.周期性嘔吐症候群
1.概念・定義
2.病態
3.症状
4.疫学
5.診断
6.薬物療法
7.心理的介入(心理療法・心身医学的対応などを含む)
8.予後
改訂第3版序文
今般,日本小児心身医学会編集によるガイドライン集の改訂第3版を上梓することになりました.このガイドライン集は2009年に『小児心身医学会ガイドライン集:日常生活に活かす4つのガイドライン』として出発し,初版には「小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン」,「不登校診療ガイドライン」,「小児の神経性無食欲症診療ガイドライン」,「くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン」の4つが収められていました.コンテンツは小児心身症の専門家だけではなく,一般小児科医や小児科研修医など幅広い読者を想定し,病態,診断,患者や家族,教育関係者への説明と指導内容などが丁寧に解説された画期的な一冊でした.続いて2015年,小児心身症の総論,心身症の子どもに対する際の心得ともいうべき「小児科医のための心身医療ガイドライン」を加えた「日常生活に活かす5つのガイドライン」として,改訂第2版が公刊されました.
そして,改訂第2版から10年が経ち,今回は第2回目の改訂となり,第2版の5つに加えて「くり返す子どもの頭痛診療ガイドライン」,「小児機能性消化管疾患ガイドライン」を加えた7つのガイドラインからなる「日常生活に活かす7つのガイドライン」となります.これは,今までとは異なる新しい疾患が2つ増えたのではありません.初版,改訂第2版では「くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン」のなかに「総論編」,「頭痛編」,「腹痛編」がありましたが,頭痛と腹痛とが独立したのです.実は,初版作成当時の日本小児心身医学会では,先行して起立性調節障害のガイドラインが作成され,不登校,摂食障害と続いていましたが,診療現場でしばしば遭遇する痛みの訴えをどうまとめるかは学会内で定まっていませんでした.その結果,
心身医療の現場でみられる痛みの訴えを全部まとめて「くり返す子どもの痛み」のなかに入れるという荒業になったのです.しかし,初版から15年の間に学術研究は進歩し,診断基準も変遷しています.その学術研究の流れに沿って内容を充実させ,頭痛と機能性消化管疾患というあるべき姿にまとめたのが改訂第3版の特徴です.
また,その他のガイドラインも,第2版のときとは異なり,各所に大きな改訂が行われています.それは,この間の子どもを取り巻く環境の変化に基づく疾患概念の変化を反映していたり,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル」の作成プロセスに沿うようにというガイドライン作成委員の努力によるものであったりします.しかしながら,今回の改訂はまだ進化の途中です.今後,読者の皆様のご意見をフィードバックいただき,皆様とともに成長するガイドライン集を目指したいと願っています.子どものこころを支え育てていくために.
2025年5月5日 子どもの日に
日本小児心身医学会理事長
石ア優子
小児心身医学会ガイドライン集改訂にあたって
このたび,『小児心身医学会ガイドライン集』は,各疾患ワーキンググループ(WG)の総力により大幅な改訂が行われ,10年ぶりとなる改訂第3版を刊行する運びとなりました.
本ガイドライン集の初版は,小児心身症・精神疾患の診療に携わる専門医の不足が社会問題として顕在化するなか,一般小児科医の診療支援を目的として研修委員会が担当となり,2009年に刊行されました.「起立性調節障害」,「摂食障害」,「不登校」,「くり返す痛み(総論・頭痛・腹痛)」といった日常臨床で遭遇する頻度の高いテーマについて,エキスパートが集結してガイドライン作成にあたりました.これらの成果は多くの支持を得て,2015年には各疾患ガイドラインを支える基盤となる「小児心身医療総論」が新たに加わった改訂第2版が刊行され,さらに広くご活用いただくことができました.
第3版の改訂にあたっては,2020年に永光信一郎前理事長により新設されたガイドライン統括委員会を中心に,各WGによる大規模な改訂が行われました.引き続き一般小児科医を主な対象としつつ,メディカルスタッフ,家族会,教育委員会など,子どもに関わる多様な領域の方々から貴重なご意見をいただき,内容の充実に活かしました.
本改訂では,臨床現場での利便性を高めるためにCQ(Clinical Question)形式を新たに導入し,また日本と海外との文化や体質の違いを考慮したうえで,エビデンスに基づいた文献検索を行い,より幅広く,かつ実践的な知見の提示に努めました.さらに,心身症の背景として注目されている神経発達症の併存症例への対応についても新たに章を設け,内容の充実を図っています.特筆すべき点として,これまで一括して取り扱われていた「くり返す痛み(総論・頭痛・腹痛)」に関する診療ガイドラインを,「くり返す痛み」,「くり返す頭痛」,「機能性消化管疾患」として,それぞれ独立した3つの診療ガイドラインへと刷新し,より実践的かつ深みのある構成としました.
完成した診療ガイドラインはWGの熱意と新たな知見にあふれた大作となり,紙面の都合上,本ガイドライン集への掲載を割愛した箇所もあります.フルバージョンは日本小児心身医学会の会員専用ウェブサイトにてご覧いただけますので,ぜひ併せてご参照ください.
ここ数年,不登校の小中学生は年におよそ5万人というペースで増え続け,2023年度にはついに34.6万人に達しました.今,私たちの目の前で子どもたちの世界にかつてない変化の波が押し寄せています.しかし,残念ながら専門医はまだまだ不足しています.本ガイドライン集が少しでも皆様の診療のお役に立ち,子どもたちが心身ともに健康で笑顔あふれる社会になるよう,心から願っております.
2025年5月
日本小児心身医学会ガイドライン統括委員会委員長
吉田誠司
