書籍

今日の治療薬2023

解説と便覧

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

編集 : 川合眞一/伊豆津宏二/今井靖/桑名正隆/北村正樹/寺田智祐
ISBN : 978-4-524-20334-5
発行年月 : 2023年1月
判型 : B6
ページ数 : 1440

在庫品切れ・重版未定

定価5,280円(本体4,800円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 書評

臨床で使われる医薬品を薬効群ごとに解説と便覧で構成したベストセラー. 手に取って調べるのにちょうどよいサイズながら,医薬品の最新情報はぎっしり.2023年版では,解説章末コラム「薬剤師の視点」を新設.その他,書籍未掲載情報(薬価,後発品,製剤写真)をオンラインで提供する付録サービス「e-OMAKE(いいおまけ)」を開始.

今日の治療薬2023改訂ポイント
■巻頭トピックス
・「新型コロナウイルス感染症治療薬」「心不全治療薬アップデート」「リフィル処方箋」の3点を掲載.
■解説
・章末コラム「薬剤師の視点」を新設.薬学的ケアのポイントや医療安全上の注意点を掲載.
■便覧
・各章冒頭に「同効薬インデックス」を追加.各薬効分類(中分類)の特徴とそれに属する薬剤を一覧で掲載.
・特定薬剤管理指導加算及び薬剤管理指導料「1」の算定対象となる薬剤(いわゆるハイリスク薬)に【Hi】マークを新たに追加.
・処方に際して研修受講や登録が必要な薬剤に【講】マークを新たに追加.
■オンライン付録サービス
・書籍には掲載しきれなかった情報(薬価,後発品,製剤写真)をオンラインで提供する付録サービス「e-OMAKE(いいおまけ)」がスタート.
・書籍に掲載したQRコードを読み取れば,すぐにサービスを利用できる(登録不要).

 本書は1977年に初版が発行され,毎年改訂を重ねて今回が改訂第45版である.巻頭には2023年版の序文と並んで初版序が掲載されていて,そこには「著書として読んでいただいても,日常の診療に便覧として用いていただいても役立つよう工夫した」と述べられている.医師となって以来,常に身近に,手の届くところに,まるで空気のように存在していたのが本書であり,外来診療などで困るとすぐに本書を開き,優秀な便覧として幾度となくお世話になってきた.しかし,正直著書として本書をみたことは一度もなかったし,またその意識もなかった.今回改めて本書を手に取ってみると,索引から特定の薬剤を検索しているだけでは気づけない部分に多くの読むべき文章があり,その質が非常に高いことに気づかされた.

 巻頭トピックスとして,「新型コロナウイルス感染症治療薬」,「心不全治療薬アップデート」,「リフィル処方箋」の3点がピックアップされて,それぞれ1ページで簡潔にまとめられている.専門分野以外の事情に疎くなりがちな身としては,世間で関心の高い分野の最新情報を端的に学ぶことができてたいへんありがたい企画であると感じた.また各薬剤の便覧,たとえば抗菌薬や鎮痛薬など各セクションには,冒頭に最新の動向と主な診療ガイドラインの情報に加えて,わかりやすくまとめられた解説文が掲載されている.2023年版からはここに「薬剤師の視点」として,薬学的ケアのポイントや医療安全上の注意点が箇条書きされており,医師の立場から読んでもたいへん勉強になる.

 また2023年版から新たな付録として「e‒OMAKE(いいおまけ)」サービスが開始となった.早速QRコードからアクセスしてみたところ,書籍内に掲載されていない情報として,薬価,後発品,製剤写真を簡単に検索することができた.患者から時折,「あの大きくて細長いオレンジ色の薬」などという曖昧な情報を教えていただくことがあるが,疾患分野から推測さえできれば製剤写真を活用して特定することが可能になるかもしれないと思い,ぜひこれは今後活用してみたい.

 筆者は関節リウマチを専門とする整形外科医であり,免疫疾患治療薬のセクションを詳細に読んでみたが,内容の正確性はまず間違いない.最新の動向には12項目あげられていたが,そのうち関節リウマチ関連の項目はわずか二つであった.6剤目のtumor necrosis factor(TNF)α阻害薬であるオゾラリズマブとメトトレキサート皮下注射製剤の2剤が2022年に承認されたという情報のみであり,2000〜2010年代の華々しい新薬ラッシュを知る身としてはやや寂しい気持ちになった.しかし,抗リウマチ薬がおおむね出尽くした状況が本書においても明らかで,かつ「薬剤選択に迷った時」の項目に「一般に生物学的製剤は感染症に注意すれば低分子薬よりも安全性管理を行いやすい」と明記される現在,改めて整形外科リウマチ医が診療を行いやすい環境になってきたなと感じた.

 日進月歩ですすんでいくのが医学の世界であり,かつて国家試験で勉強した知識は完全に古典と化している.自分の専門分野であればもちろん勉強してキャッチアップしていくが,それ以外の分野は本当に心もとない.しかし,日常診療では他分野もしくは他科の知識を求められる場面が少なくなく,その際に必要となるのは信頼できる情報源ということになる.最新かつ正確な情報を盛り込みつつ毎年改訂を重ねる本書は,今後もその重要性を保ち続けるであろうと思う.若い先生方にはぜひ解説文を熟読して,各薬剤分野における最新の概要を把握することをおすすめしたい.またベテランの先生方にも,ぜひ本書の解説文には明日からの診療にすぐに役立つ新たな知識が隠れている.今後も最新かつ質の高い医療を提供し続けることができるように,デスクの手に届くところにいつでもいる本書を正確な情報源として,また心強い相棒として活用していきたい.

臨床雑誌整形外科74巻10号(2023年9月号)より転載
評者●愛知医科大学整形外科主任教授 高橋伸典

9784524203345