コンパスシリーズ
コンパス衛生薬学改訂第2版
健康と環境
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 鍜冶利幸/佐藤雅彦 |
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ISBN | : 978-4-524-40322-6 |
発行年月 | : 2016年3月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 610 |
在庫
定価5,720円(本体5,200円 + 税)
正誤表
-
2017年09月11日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
わかりやすく、ミニマムエッセンスがコンセプトの衛生薬学の教科書。豊富な図表とポイントを押さえた解説が特長。今改訂では、統計・法規等の情報を更新し、最近の薬剤師国家試験の傾向を内容に反映させたほか、領域ごとの全体像をまとめたイラスト(キーワード穴埋め形式)を追加。親しみやすいイラストで、知識の整理に取り組みやすくなった。新薬学教育モデル・コアカリキュラム対応。
I部 健康
I-1 社会・集団と健康
1章 健康と疾病の概念
A 疾病構造の変遷
B 健康の概念
C WHOの活動
2章 保健統計
A 人口統計の意義
1 集団の健康水準と人口統計
2 健康指標
B 人口統計・傷病統計に関する指標
1 人口静態統計と人口動態統計
2 人口構成を表す指標
3 出生に関する人口動態指標
4 死亡に関する人口動態指標
5 死産など母子保健に関する人口動態指標
6 生命表と平均余命
7 傷病統計に関する指標
C わが国における人口動態の変遷と将来の人口予測
1 出生率・再生産率の変遷
2 死亡率の変遷と平均寿命の延伸
3 わが国における人口の現状と将来の人口予測
3章 疫学
A 疫学とは
1 疫学を用いた実例
2 疾病予防と疫学
B 疫学の要因
C 疫学調査
1 疫学の種類
2 記述疫学
3 分析疫学
4 介入疫学
5 疫学調査データの解釈
6 疫学における因果関係
I-2 疾病の予防
4章 疾病の予防とは
A 予防
B 健康増進政策
5章 感染症とその予防
A 現代における感染症の特徴
1 感染症の定義とその成立の条件
2 日和見感染と院内感染
3 新興感染症
4 再興感染症
B わが国の感染症関連法規
1 感染症法とその目的
2 一類感染症
3 二類感染症
4 三類感染症
5 四類感染症
6 五類感染症
7 新型インフルエンザ等感染症
8 指定感染症および新感染症
9 わが国の感染症発生状況
10 検疫法と国際感染症
C 性行為感染症とその予防対策
1 性行為感染症
2 性行為感染症の予防対策と治療
D 予防接種の意義と方法
1 予防接種の意義
2 予防接種の方法
6章 生活習慣病とその予防
1 生活習慣病の概念
2 生活習慣病の種類
3 生活習慣病のリスク要因
4 生活習慣病予防と行政
5 代表的な生活習慣病の動向・リスク要因・予防
7章 母子保健
A 新生児マススクリーニング
1 タンデムマス・スクリーニング
2 代表的な新生児マススクリーニング対象疾患
B 母子感染
1 母子感染の予防
8章 労働衛生
1 職業病と作業関連疾患
2 労働災害と業務上疾病の発生状況
3 職業病の発生状況
4 職業病の防止対策
5 過重労働による脳・心臓疾患,精神障害による自殺
6 医療における労働衛生
I-3 栄養と健康
9章 栄養
A 五大栄養素の役割
1 糖質
2 タンパク質
3 脂質
4 ビタミン
5 ミネラル
B 栄養素の消化,吸収,代謝
1 糖質の消化,吸収,代謝
2 タンパク質の消化,吸収,代謝
3 脂質の消化,吸収,代謝
C 食品中の三大栄養素の栄養的価値
1 食品中の糖質の栄養価
2 食品中の脂質の栄養価
3 食品中のタンパク質の栄養価
4 臓器による異なる栄養素の利用
5 エネルギー産生における三大栄養素の相互変換
D 五大栄養素以外の食品成分の機能
1 食物繊維
2 コエンザイムQ10(ユビキノン)
3 l-カルニチン
4 グルコサミン
5 ファイトケミカル
6 トコトリエノール
E エネルギー代謝に関わる基礎代謝量,呼吸商,推定エネルギー必要量
1 利用エネルギーおよびアトウォーター係数
2 呼吸商
3 食事誘発性熱産生(特異動的作用)
4 基礎代謝量と基礎代謝基準値
5 推定エネルギー必要量
6 BMI
F 日本人の食事摂取基準(2015年版)
1 日本人の食事摂取基準(2015年版)
2 設定目標
G わが国における栄養摂取および健康状態の現状
1 平成25年国民健康・栄養調査結果より
H 栄養素の過不足による主な疾病
1 栄養素の不足による疾病
2 栄養素の過剰摂取による疾病
3 肥満,メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)
I 疾病治療における栄養療法
1 栄養サポートチーム(NSTとは)
2 栄養補給法
3 疾病別栄養療法
10章 食品機能と食品衛生
A 食品の変質:炭水化物とタンパク質の変質
1 変質の定義
2 食品の腐敗過程と腐敗細菌の関与
3 腐敗により産生される有害物質
4 食品の腐敗の指標
5 腐敗に影響する因子と腐敗の防止
6 主な腐敗細菌の種類と性質
7 食品の酵素的および非酵素的褐変化とその機構
B 食品の変質:油脂の変敗機構と変質試験
1 変敗の定義と反応機構
2 油脂の自動酸化機構と生成物
3 油脂の変質試験
4 油脂の変質試験値の経時変化
C 食品の変質に関与する因子と変質の防止
1 微生物作用による変質の防止
2 油脂の自動酸化による変質の防止
D 食品由来の発がん物質とその生成機構
1 植物性食品由来の発がん物質
2 食品の食べ合わせによりヒト胃内で生成する発がん物質
3 食品の加熱調理過程で食品成分から生成する発がん物質
4 食品の製造・加工・保存過程で混入した微生物が産生する発がん物質
5 食品添加物あるいは食品汚染物で発がん性が確認された化学物質
E 用途別の代表的な食品添加物とその働き
1 食品添加物と食品衛生法
2 食品添加物の用途とその目的
3 用途別の代表的な食品添加物
4 主な食品添加物の試験法
F 特別用途食品と保健機能食品
1 特別用途食品とその制度の目的
2 保健機能食品制度の目的と推移
3 保健機能食品の分類
4 代表的な保健機能食品
5 保健機能食品の表示
G 食品衛生に関する法的規制と問題点
1 食品添加物と食品衛生法・食品安全基本法
2 特別用途食品と健康増進法,保健機能食品と食品衛生法
3 遺伝子組換え食品と食品衛生法
11章 食中毒と食品汚染
A 食中毒の種類と発生状況
B 微生物による食中毒
1 細菌性食中毒
2 ウイルス性食中毒
C 寄生虫による食中毒
D 自然毒による食中毒
1 動物性食中毒
2 植物性食中毒
3 食用される植物に含まれる発がん物質
E マイコトキシンによる食品汚染
F 化学物質による食品汚染
1 わが国で起きた化学物質による食品汚染事故
2 農薬の使用と安全性
I部 まとめイラスト
II部 環境
II-1 化学物質・放射線の生体への影響
12章 化学物質の毒性
A 化学物質の体内動態
1 吸収
2 分布
3 代謝
4 排泄
B 第I相反応が関わる代謝・代謝的活性化
1 シトクロムP450(CYP)
2 CYPによる酸化反応
3 アルコールの酸化
4 還元反応
5 加水分解反応
C 第II相反応が関わる代謝・代謝的活性化
1 抱合反応
D 化学物質代謝に影響を与える因子
1 生理的因子
2 遺伝的因子
3 化学的因子
E 化学物質による器官毒性
1 肝臓に毒性を示す化学物質
2 腎臓に毒性を示す化学物質
3 神経系に毒性を示す化学物質
4 呼吸器系に毒性を示す化学物質
5 血液系に毒性を示す化学物質
6 皮膚に毒性を示す化学物質
F 代表的な有害化学物質の毒性
1 重金属類
2 農薬
3 有機溶剤
4 ポリ塩化ビフェニル(PCB)
5 ダイオキシン類
6 一酸化炭素
7 シアン化物(青酸:シアン化水素)
8 硫化水素,アジ化物(アジ化ナトリウム)
G 重金属や活性酸素に対する生体防御因子
1 重金属に対する生体防御因子
2 活性酸素に対する防御系
H 薬物の乱用による健康影響
1 乱用薬物の動向
2 乱用薬物の種類と健康影響
I 中毒原因物質の解毒処置法
1 中毒原因物質の分類
2 中和・解毒処置法
J 中毒原因物質の試験法
13章 化学物質の安全性評価と適正使用
A リスクコミュニケーション
B 毒性試験法
1 一般毒性試験
2 特殊毒性試験
C 化学物質の毒性評価
1 一般的な有害化学物質の量-反応関係
2 発がん物質の量-反応関係
3 栄養素の量-反応関係
D 化学物質の安全摂取量
1 1日許容摂取量(ADI)
2 実質安全量(VSD)
3 ヒトへの推定曝露量(EHE)
4 安全マージンあるいは曝露マージン
5 食品中の農薬の残留許容基準
6 半数致死量(LD50)
E 有害化学物質の法的規制
1 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)
2 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化学物質排出把握管理促進法:化管法)
3 化学物質による生体に対する影響を防ぐための法的規制
F 環境ホルモン
1 環境ホルモン作用の特徴
2 環境ホルモンの作用機序
14章 化学物質による発がん
A 発がん過程と化学発がん物質
1 がんの発生
2 がんの原因
3 多段階発がん
4 発がん物質の分類
5 イニシエーターとプロモーター
6 代表的なイニシエーターおよびプロモーター
7 遺伝毒性をもつ発がん物質
8 遺伝毒性をもたない発がん物質
B 遺伝毒性試験
1 遺伝毒性
2 遺伝毒性試験の種類
C がん化に関わる遺伝子
1 がん細胞の特徴的な形質
2 がん原遺伝子とがん抑制遺伝子
3 代表的ながん原遺伝子とがん抑制遺伝子
15章 放射線の生体への影響
A 放射線による生物影響
1 主な電離放射線
2 放射性同位体の壊変と半減期
3 放射線障害の特徴
4 直接作用・間接作用
5 細胞内での放射線障害と修復
6 放射線による細胞死
7 分割照射や低線量率時の障害度低下(亜致死損傷からの回復)
B それぞれの臓器・組織への放射線による影響の違い
1 臓器・細胞による放射線感受性の違い
2 放射性同位体の体内での分布・集積
3 各臓器・組織への影響
4 放射線による個体死
C 晩発影響
1 発がん
2 白内障
3 再生不良性貧血
4 胎内被曝
5 放射線による突然変異と遺伝的影響
D 日常生活における放射線被曝(天然放射性核種と人工放射線核種)
1 自然放射線
2 天然放射性核種
3 人工放射性核種
E 放射線を防護する方法
1 体内被曝と体外被曝
2 放射線防護の方法
3 しゃへいによる減衰と半価層
F 非電離放射線
1 紫外線
2 赤外線
II-2 生活環境と健康
16章 地球環境と生態系
A 地球の階層構造と生物圏
B 生態系
1 生態系の構造
2 生態系における物質循環
C 地球規模の環境破壊とその対策
1 オゾン層の破壊
2 地球温暖化
3 酸性雨
4 残留性有機汚染物質による地球規模の汚染とその対策
17章 環境保全と法的規制
A 典型七公害と四大公害
1 公害の定義と典型七公害
2 典型七公害の現状
3 わが国の公害事例および四大公害
B 環境基本法
1 基本理念
2 環境基本計画
3 環境基準
C 公害・環境汚染防止関連法規
1 大気汚染を防止するための法規制
2 水質汚濁を防止するための法規制
3 土壌汚染を防止するための法規制
18章 水環境
A 上水
1 水の必要性
2 水道の種類
3 水 源
4 上水の浄水法
5 水道水の水質基準
B 下水
1 下水道の種類
2 下水の性質
3 下水の集め方
4 下水処理法
5 し尿処理
6 有害廃水処理
C 水質汚濁
1 水質汚濁に係る環境基準
2 水質汚濁の主な指標
3 水質汚濁の動向
D DO,BOD,CODの測定
1 DOの測定
2 BODの測定
3 CODの測定
E 富栄養化
1 富栄養化によってもたらされる問題点
2 富栄養化の対策
19章 大気環境
A 大気
1 地球環境と空気
2 空気の組成
B 大気汚染
1 大気汚染とは
2 大気汚染物質の種類
3 大気汚染物質の発生
4 主な大気汚染物質
C 逆転層
1 逆転層とは
2 逆転層の成因
3 大気汚染への影響
20章 室内環境
A 室内環境を評価するための代表的な指標
B 室内汚染物質と健康
C 室内環境の保全とその法的規制
D シックハウス症候群と化学物質過敏症(多種化学物質過敏状態)
21章 廃棄物
A 廃棄物の種類
1 一般廃棄物
2 産業廃棄物
3 特別管理廃棄物
4 医療廃棄物
B 廃棄物処理の問題と対策
1 最終処分場
2 不法投棄
3 有害廃棄物の越境移動
4 廃棄物処理関連法規
5 マニフェスト制度
II部まとめイラスト
巻末付録
Exercise 解答・解説
索引
改訂第2版の序
早いもので、本書初版が発行されてから5年の歳月が経過した。健康と環境に対する人々の関心はますます高まり、衛生薬学の果たす役割はさらに重要性を増した。薬剤師も創薬研究者も薬事衛生従事者も、衛生薬学の知識と視点を抜きに活躍することはできない時代になった。
衛生薬学は伝統と歴史を持った薬学の一領域である。薬学は、「薬を創る」ための科学や「薬を正しく有効に使う」疾病治療の科学だけではなく、「人の健康の維持・増進に貢献する」ための疾病予防の科学、すなわち衛生薬学を重要な構成要素として含んでいる。薬学の最も大きな特徴は、その視点が原子・分子から地球環境に及ぶことであるが、衛生薬学はその特徴の重要な部分を担っている。衛生薬学で学んだことは、薬学出身者が身の回りの化学物質の有害性を考え、その健康影響を人の集団単位で分析し、個々の健康障害事例を研究し、人の体内における化学物質の動態を解明し、その化学物質の有害性を分子構造や代謝反応から理解するのに不可欠なものである。
しかしながら、衛生薬学は視点が極めて広く大きいだけでなく、その範囲も公衆衛生学、食品衛生学、毒性学、異物代謝学、環境衛生学を包含する大きな領域であり、学ぶことは容易ではない。幸い、本書は分かりやすく、それでいて高度な専門性を失わない教科書として高い評価を得てきた。今版(改訂第2版)では、新しい薬学教育モデル・コアカリキュラムに準拠し、本書のコンセプトである「分かりやすさ」と「高い専門性」を維持しつつ、新たにイラストによって学習内容を俯瞰するという工夫を取り入れた。本書が分かりやすく、それでいて高い専門性を維持した教科書となっているのは、ひとえに執筆者諸氏の力量と努力の賜物である。
疾病の原因究明や化学物質の毒性発現機構の解明を通じて人の健康の維持・増進に貢献しようとする科学は衛生薬学以外にはなく、これは薬学だからこそ為し得たものである。本書で衛生薬学を学ぶ若き諸君が、衛生薬学の伝統ある成果を身に付け、人々の疾病予防と健康増進に寄与し、社会で活躍することを心から念願している。
2016年2月
編者