健康・栄養科学シリーズ
栄養教育論改訂第3版
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
監修 | : 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 |
---|---|
編集 | : 丸山千寿子/足達淑子/武見ゆかり |
ISBN | : 978-4-524-26968-6 |
発行年月 | : 2013年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 318 |
在庫
定価3,520円(本体3,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
(1)行動科学と食行動における応用、(2)栄養教育の方法論、(3)栄養教育の事例と発展(管理栄養士の活動の実際)という3部分で構成。管理栄養士の栄養教育活動の理論的基盤・マネジメントが学べるよう解説を工夫。行政・社会の最新動向、また刷新された事例を盛り込み、管理栄養士国家試験ガイドライン(2010)に併せた改訂版。
第1章 栄養教育の概念
A. 栄養教育の目的・目標
1 栄養教育の定義
2 栄養教育と健康教育・ヘルスプロモーション
3 栄養教育と生活の質(QOL)
4 栄養教育と他の生活習慣(身体活動、喫煙、飲酒、休養、睡眠)
5 栄養教育の目的
B. 栄養教育の対象と機会
1 ライフステージ・ライフスタイルからみた対象と機会
2 健康状態からみた対象と機会
a. 地域保健の場
b. 産業保健の場
c. 学校教育の場
d. 給食経営管理の場
e. 福祉の場
f. 医療の場
g. 介護の場
3 個人・組織・地域社会のレベル別にみた対象と機会
C. 栄養指導・栄養教育の歴史
1 栄養素の発見と低栄養の克服
2 戦争による食糧不足と栄養失調
3 経済復興と低栄養からの回復そして疾病構造の変化
4 社会・経済構造の変化と食・健康問題の多様化
5 健康教育へのヘルスプロモーション概念の導入
第2章 行動科学理論と栄養教育
A. 栄養教育と行動科学
1 栄養教育に行動科学が必要とされる理由
2 食行動変容に必要な栄養教育のスキル
B. 行動科学
1 行動の種類(レスポンデント行動とオペラント行動)
2 学習(条件づけ)理論とそのしくみ
a. レスポンデント学習理論(新行動S-R理論)
b. オペラント学習理論(応用行動分析)
コラム 応用行動分析による上手なほめ方・注意のしかた
c. 社会的学習理論(社会的認知理論)
d. 認知行動療法
C. 行動療法
1 行動療法の定義
2 行動療法が対象とする問題
3 行動療法の特徴と利点
D. 行動療法における問題解決のしかた
1 行動のとらえ方
a. 行動には感情も考えも含まれる
b. 行動を刺激と反応の関数とみる
2 問題行動の扱いかた
a. 今の行動の現れ方を重視する
b. できること、変えられるところに注目する
3 問題解決の構造
a. 4段階のステップ
b. 問題行動の記述と評価
c. 技法の選択
E. 行動療法からみた食行動の特性
1 基本的な生命活動としての食行動
2 人の嗜好と飢えへの適応
3 自発的な食事制限や減食の影響
4 食の行動モデル
a. 食行動を引き起こす刺激
b. 食行動に伴う結果(随伴刺激)
5 運動の行動モデル
F. 教育に必要な行動の系統的アセスメント
1 身体面、行動面、心理社会面からの系統的なアセスメント
2 身体面のアセスメント
3 行動面のアセスメント
4 心理社会面のアセスメント
G. 食行動のとらえかたとアセスメント
1 食事(食行動)の記録
a. 行動科学的な食行動の把握
b. セルフモニタリングとしての食事記録
2 食習慣についての質問票
3 栄養教育における食行動のアセスメントの意義
H. 健康増進や生活習慣病のコントロールに共通した行動技法
1 目標行動の設定
2 セルフモニタリング
3 オペラント強化法(随伴性の管理)
4 刺激統制法
5 反応妨害(習慣拮抗)法
6 社会技術(自己主張)訓練
7 認知再構成法
8 再発予防訓練
9 ソーシャルサポート(社会的サポート)
10 ストレス管理
I. 行動に影響する心理社会的要因
1 行動的教育モデル
2 健康信念モデル(ヘルスビリーフモデル)
3 コントロールの座(ローカスオブコントロール)
4 セルフエフィカシー(自己効力感)
5 行動の意図
6 ソーシャルサポート(社会的サポート)
7 行動変容に対する準備性(行動変容ステージモデル、汎理論的モデル)
J. 習慣変容に必要な条件
1 習慣とは何か
2 習慣が変わりやすくなる状況
3 意欲とは選択と決断
a. その気だけでは長続きしない
b. 内容を理解した上での判断が必要
4 実生活に即した、役に立つ知識
a. 生活行動は複雑な行動
b. 習慣変容に必要な知識の条件
5 心理的方策としての技術
a. 新しい行動を一定期間、意識して繰り返す
b. 意欲を持続し、気を取り直すための行動技法
K. 食行動変容と心理
1 うつ病、食行動異常の有無
a. うつ病
b. 神経性過食症
c. 神経性無食欲症(神経性食欲不振症)
2 感情面
3 行動レパートリー(スキル)
4 認知的側面
5 心理的側面の把握
第3章 カウンセリングの基本と栄養カウンセリング
A. カウンセリングとは
B. カウンセリングにおける方法論(問題解決のプロセス)
C. 治療者(カウンセラー)−患者(クライアント)関係
1 信頼関係が基本
2 カウンセリングの姿勢
3 役割による治療者−患者モデル
D. 行動変容面接の実際
1 面接の準備(環境を整える)
2 カウンセリングへの導入
3 大切な情報を聞き取る
4 実行できそうな具体策を一緒に考える
5 記録を具体的に残す
E. 対人コミュニケーション
1 コミュニケーションは信頼関係に基づく共同作業
2 コミュニケーションの要素
a. 言葉以外のコミュニケーション
b. 言語コミュニケーション
3 カウンセリング全体を通じたコミュニケーションの留意点
コラム コミュニケーション技能を高めるための実践課題
F. 栄養カウンセリングのポイント
コラム コーチング
第4章 組織づくり・地域づくりへの展開と食環境づくり
A. 学習段階の発展
1 人間関係・家族関係づくり
2 ネットワークづくり
3 自助集団の形成
4 個人・組織・地域エンパワメント
5 組織づくりと連携
B. 食環境づくりと栄養教育
1 食環境の概念
2 食環境づくりの必要性
3 食物へのアクセスと栄養教育
a. 食物の生産・加工段階における食環境づくり
b. 食品の流通段階における食環境づくり
c. 外食の場における食環境づくり
4 情報へのアクセスと栄養教育
a. マスメディアの影響
b. 情報端末の利用
c. 食品広告の規制
5 食環境にかかわる組織・集団への栄養教育
6 食環境整備に関連した法律・制度・施策
コラム 大規模集団や地域全体の変化に関する行動科学理論
第5章 栄養教育マネジメント
A. 栄養教育の特性
B. 栄養教育の対象
C. 栄養教育のマネジメントサイクル
1 アセスメント(assessment)
2 栄養教育計画の立案(plan)
3 栄養教育の実施(do)
4 栄養教育の評価(check)
5 評価のフィードバックと新たな問題点の把握:改善(action)
第6章 栄養教育のためのアセスメント
A. 栄養教育におけるアセスメントの意義と目的
1 栄養アセスメントとは何か
2 栄養アセスメントの目的
3 優先課題の特定
B. 情報収集の方法
C. 栄養教育におけるアセスメントの種類と方法
1 身体的栄養状態の指標
a. 身体計測
b. 生理・生化学検査
c. 臨床診査
2 健康・食物摂取に影響を及ぼす要因のアセスメント
a. 食事調査
b. 環境要因(家庭、組織、地域)のアセスメント
c. その他の調査
第7章 栄養教育計画
A. プログラム
1 栄養教育プログラムの基本理論
a. 栄養教育プログラムの定義
b. 栄養教育プログラムの基準
c. 食行動変容をめざす栄養教育プログラム
2 個々のニーズに適応する栄養教育プログラムの立案
B. 目標設定
1 目標設定の意義と方法
2 学習目標(知識・態度・スキル)
a. 知識の理解と定着をはかるための目標
b. 態度の形成をめざした目標
c. スキル習得のための目標
3 行動目標
4 環境目標
5 結果(アウトカム)目標
C. 栄養教育方法の選択
D. 学習形態選択と組み合わせ
1 学習形態の種類と方法
a. 一斉学習
b. グループ学習
c. 一斉学習とグループ学習の混合型学習
d. 個別学習
2 学習形態・方法の選択と組み合わせ
E. 教材
1 教材とは
2 教材利用の目的
3 教材の提示方法
4 栄養教育教材の種類
a. 食生活指針
b. 食事バランスガイド
c. 食品群
d. 日本人の食事摂取基準
e. 日本食品標準成分表
f. 栄養表示
g. 食育ガイド
F. プログラムの作成
1 学習者の決定
2 全体計画・プログラム案・栄養教育案の作成
a. 全体計画の作成
b. プログラム案の作成
c. 栄養教育案の作成
3 期間・時期・回数・時間の設定
4 場所の選択と設定
5 実施者の決定とトレーニング
第8章 栄養教育の実施
A. 栄養教育実施者の技術
1 トレーニング
2 プレゼンテーション技術
3 コミュニケーション技術
B. 実施に向けての準備作業
1 予算の確保
2 マンパワー(人的資源)の確保
3 学習者の募集、周知
4 場の設定、設営
第9章 栄養教育の評価
A. 評価の意義
B. 評価の種類
1 企画評価
2 経過評価(プロセス評価)
3 影響評価
4 結果(アウトカム)評価
5 総合評価
6 経済的評価
C. 評価の手順
D. 評価の質を高める
1 評価デザインの選択
2 測定評価項目や手法の信頼性と妥当性
a. 信頼性
b. 妥当性
3 評価の妥当性
a. バイアス
b. 反応効果
4 内的妥当性と外的妥当性
E. 評価結果のフィードバック
第10章 ライフステージ・ライフスタイル、健康状態と栄養教育
A. 妊娠・授乳期
1 妊娠・授乳期の特徴と栄養教育
a. 妊娠・授乳期の特徴
コラム リプロダクティブ・ヘルス/ライツ
b. 妊娠・授乳期の栄養教育の留意点
c. 妊娠・授乳期の栄養教育におけるアセスメント(対象の理解)
d. 妊娠・授乳期の栄養教育の目標
e. 妊娠・授乳期の栄養教育教材
2 妊娠期の栄養教育
3 授乳期の栄養教育
B. 乳・幼児期
1 乳・幼児期の成長・発達を重視した栄養教育の特徴と課題
a. 食機能・食行動を踏まえた栄養教育
b. 人とのかかわりを通した味覚の発達、嗜好形成を重視した栄養教育
c. 食事リズムの形成を重視した栄養教育
2 乳幼児期の食生活の現状と栄養教育のためのアセスメント
a. 乳幼児の食生活の現状
b. 乳幼児期の栄養教育のためのアセスメント
3 乳幼児期の栄養教育の目標
a. 乳幼児の栄養教育の目標 食を営む力」の基礎を培う観点から
b. 保護者の栄養教育の目標 食を通した子育て支援の観点から
4 乳幼児期の栄養教育の内容
5 市町村母子保健事業における栄養教育
a. 市町村保健センターでの母子保健サービス
b. 母子健康手帳の活用
6 保育所・幼稚園を拠点とした食育
a. 保育所における食育の目標
b. 保育所における食育の計画
c. 食育の評価
d. 食育を通した保護者への支援
C. 学童期
1 学童の食育の特徴
a. 栄養教育の特徴
b. 食育を計画、評価する上での留意事項
2 学校を拠点とした食育
a. 食育の計画
b. 食育の実施
c. 食育の評価
D. 思春期
1 思春期の特徴
a. 身体的な発達
b. 精神的な発達
c. 生活の変化
2 思春期にみられる疾患・症状
a. 摂食障害
b. 肥満
c. 起立性調節障害
d. 貧血
e. 便秘
3 思春期における生活習慣の問題点
a. 生活リズムの乱れ(欠食、夜食、間食)
b. 外食
c. 運動不足
d. 薬物乱用、飲酒、喫煙
4 思春期の栄養教育
a. 栄養アセスメント
b. 栄養教育のポイント
5 栄養教育の実際
a. 思春期やせ症の予防と治療
b. スポーツ活動と栄養教育
c. 学校における栄養教育
E. 成人期
1 成人期の栄養教育の特徴と留意事項
a. 成人期の特徴
b. 成人期における食生活等の現状と課題
c. 生活習慣病の予防・治療と栄養教育のあり方
d. 特定健康診査・特定保健指導(事例T、U)
2 労働と栄養教育
a. 技術革新と栄養教育の役割
b. 職域における栄養教育の位置づけ
c. 職場給食と栄養教育
d. ワーク・ライフ・バランスと栄養教育
e. 勤務形態と栄養教育
3 地域における栄養教育
a. 職域に属さない成人(非就業者)に対する栄養教育
b. 就業者を対象とした地域レベルでの栄養教育
4 外食と栄養教育
5 単身生活と栄養教育
コラム 単身赴任男性の食生活と身体状況
6 在日外国人に対する栄養教育
7 成人を対象とした栄養教育における連携
F. 高齢期
1 高齢期の栄養教育の特徴と留意事項
a. 高齢期の特徴
b. よりよく生きるため、QOL向上のための栄養教育
c. 栄養状態の向上のための栄養教育
2 高齢期のライフイベント(退職、死別、病気、介護など)と栄養教育
3 介護予防・介護と栄養教育
a. 一次予防事業
b. 二次予防事業における栄養改善プログラム
c. 予防給付における栄養改善サービス
d. 介護給付における栄養ケア・マネジメント(栄養改善サービス)
G. 障害者
1 障害者とは
a. 障害に関する定義
コラム 障害の分類
b. 障害者の現状
2 障害者に対する栄養教育の
特徴と留意事項
a. 身体障害者に対する栄養教育
コラム 視覚障害者への食事支援
b. 知的障害者に対する栄養教育
c. 精神障害者に対する栄養教育
3 障害者の共生と栄養教育
a. ノーマリゼーションと栄養教育
コラム ノーマリゼーションの起源
b. 障害児と栄養教育
H. 傷病者
1 傷病者に対する栄養教育の目的
2 栄養教育が適用される疾患
3 傷病者における栄養教育の特徴と留意点
a. 入院診療
b. 外来診療
c. 医療の連携における栄養教育
コラム 栄養サポートチームにおける栄養教育の位置づけ
コラム 医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進
4 医療機関(病院)における栄養教育の実際
a. アセスメント
b. 栄養教育の立案
c. 教育目標の実施
d. 栄養教育の評価
コラム 患者から学ぶこと
5 医療と保健・福祉の連携による栄養教育
付録 栄養指導(栄養教育)と法律
参考図書
索引
管理栄養士の専門性は、栄養士法に「傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導、個人の身体の状況、栄養状態等に応じた高度の専門的知識及び技術を要する健康の保持増進のための栄養の指導、並びに特定多数人に対して継続的に食事を供給する施設における利用者の身体の状況、栄養状態、利用の状況等に応じた特別の配慮を必要とする給食管理及びこれらの施設に対する栄養改善上必要な指導等を行うことを業とする者」と定義されている。
つまり、管理栄養士は「人間の生命を維持し、健康を保持増進するための栄養の指導ができる」専門的な能力を備えた者であるから、管理栄養士が行う栄養の指導・教育は確実に成果が得られることが期待されている。そのような管理栄養士が備えるべき能力を担保すべく、2005年に「栄養教育論」の初版を上梓してから早くも8年あまりが経過した。この間、急速に少子化と超高齢化が進む国内状況だけでなく、めまぐるしくグローバル化して変化する国際社会や、予測不能な地球自然環境に備えて、対応しなければならない新たな課題が山積である。管理栄養士が果たすべき役割は増大する一方であり、確かな実力をもって成果を上げていかなければならない。
今回の改訂では、2010(平成22)年に管理栄養士国家試験ガイドラインが改定されたことを受けて内容を精査し、他教科との重複を極力省き、栄養教育に特化した内容となるように努めた。具体的には、ガイドラインに準じ章立てを再構成し、栄養カウンセリングの技法、栄養教育を発展的に展開するための組織づくり・地域づくりと食環境づくりの章を3、4章に新設した。また、行動科学理論の解説の精査、基礎となる5章から9章の栄養マネジメントについては、重要な概念、方法の解説を充実させ、常に全体の流れを総合的に関連づけて学習できるようにした。また、各論10章については近年の日本の現状を把握し、それに対する栄養教育の取り組みについて紹介した。栄養教育の法的根拠となる関連法規は、検索しやすいよう付録とした。
なお、本書の目的は、管理栄養士が栄養教育を科学的に展開し、成果を上げることができるようになる基礎を学ぶことであるから、本書で学ぶことにより、多様な個人や集団、健常人から傷病者までさまざまな健康状態の人に対して、効果的かつ実践的な栄養教育計画を立てることができ、栄養教育を行えるようになるものと期待する。したがって本書の1章から9章の基礎的事項を十分に理解したうえで各論10章を学んでいただきたい。
管理栄養士の行う栄養教育が、人々の命と生活を支えて平和に貢献できるように、本書が役立つことを願う。
2013年3月
編集者を代表して
丸山千寿子