Sapira's Art & Science of Bedside Diagnosis, 5th ed.
著者 | : J.M.Orient |
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出版社 | : WOLTERS KLUWER |
ISBN | : 978-1-975117-99-3 |
ページ数 | : 742pp. |
出版年 | : 2019年 |
在庫
定価22,682円(本体20,620円 + 税)
- 商品説明
- 書評
患者との面談や身体診察の技術を,基礎レベルから最も高度なレベルまで取り扱うテキスト,改訂第5版.
筆者から直接教わっているような語り口風の形式を採用し,臨床上の要点,臨床想定場面,実用的な臨床実践,病歴,所見の生理学的意義などに関する解説のほか,EBMの広範な検討も含め,信頼性の高い真のメソッドが段階的に詳しく記述されている.
患者から最も確かな情報を得て鑑別診断や効率的な診断計画を展開するために有用なガイドブックである.
●歴史ある実践的メソッドを用いた,医療実践の個人的,自主的,およびアート的側面における重要な指針となる内容
●正確な鑑別診断と効率的な診断計画につながる確実な情報を患者から得るために役立つ方法を収載
●内分泌学,医療の歴史と哲学,整形外科学/神経学的診断/外傷性脳損傷/皮膚科学,グアリーノによる頭蓋骨触診的打診法,聴覚/前庭器官/頭蓋内圧亢進,眼底検査,足病学などを網羅する新しいトピック
●物忘れ,混乱,違法薬物の使用,言葉がわからない外国人,難聴,非友好的,曖昧な態度など,臨床でよくみられるこのような状態の患者に対する効果的なアプローチを詳しく収載
●Point of Remember(覚えておくべき点),歴史上のちょっとした興味深いトピック,関連文献,300問を超える解説付きQ&A
●本書には,タブレットやスマートフォンにダウンロードして専用アプリからいつでもアクセスできるインタラクティブなeBook版がバンドルされている
身体診察を現場で生かすための最高峰の1冊
患者から丁寧に話を聞き(問診し),患者の身体に触れながらくまなく診察し,診断あるいは治療効果の判定をしている姿こそ理想の医師像といえるのではないだろうか.ひと昔前の医師は現代のようにカンファレンスルームでパソコンの前に座り,画面とにらめっこするのではなく,患者の前でともに悩み,ともに喜び,挫折感を味わってきた.医療機器の進歩,人工知能の開発が進む今,人間らしい医療,そのための身体診察の重要性が再認識されつつある.医師が聴診器を胸に当てるだけで患者は安心し,痛みが和らぐことさえある身体診察は,医師にとって欠くことのできない神聖な行為であり,医療における最大の武器なのである.
本書は身体診察を学び,臨床現場で真に役立てたい,という人のための本である.身体診察に関する書籍は多々存在するが,記載された手技が実際に実践され,ベッドサイドで議論されている現場は非常に少ない.身体診察を学ぼうとする医学生・若手医師が直面する,身体診察指導が普及していない現状に一石を投じるのが,本書なのだ.その最大の特徴は,診察手技,所見の判定方法,鑑別疾患だけでなく,「医学生へ」「指導医への教える際のコツ」が詳細に記載されていることである.たとえば,「内頸静脈の観察」は,身体診察の書籍であれば必ず記載があるが,現場では「心エコー」の議論はあっても頸静脈の所見が議論される機会は少ない.本書は,初学者へのアドバイスとして,@ 観察の困難な心拍数100回/分以上の患者ではトレーニングしない,A 心房細動などの不整脈の患者は波形の評価をすべきではない,B 深く,速い呼吸をしている患者は観察が困難,C 動脈波が静脈波と紛らわしくなることがある,といった具合に初学者が挫折しないためのポイントが述べられている.このような実践的な記載がとくに修得や普及がなされていない所見で多くみられる.100 人,200 人,1,000 人と患者を診察し,医学生や若手医師へ指導を行うなかで,気がついたアートといえる.とはいえ,医学は科学であり,身体診察学も科学的根拠に基づいて評価するための学問である.しかし,診察手技は検査機器や薬の効果といったものとは違い,人の手によって行われるがゆえに,同じ診察でも診察者によって所見が変わってくるという科学に対するジレンマが生じる.すなわち,身体診察は不安定な科学(エビデンス)に基づいて議論しなければならない.本書にはこの点においても,エビデンスをただ提示するのではなく,偽陽性,偽陰性はなぜ,どのように起きるか,どうしたら見破れるのかまで細かく解説がなされている.
私は,医局の机に本書を置き,タブレット端末でも確認できるようにして,回診の際にチームのメンバーと「Sapira はこう言っている」と言いながら,本書を通して直接指導を受けている感覚になる.現場で生かすための身体診察学として最高峰の1 冊といえよう.
評者■ 徳洲会奄美ブロック総合診療研修センター センター長・平島 修
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