コンパスシリーズ
コンパス衛生薬学
健康と環境
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 鍜冶利幸/佐藤雅彦 |
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ISBN | : 978-4-524-40267-0 |
発行年月 | : 2011年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 480 |
在庫
定価5,280円(本体4,800円 + 税)
サポート情報
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2015年03月12日
改訂薬学教育モデル・コアカリキュラム(平成25年度改訂版)対応表
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
わかりやすくミニマムエッセンスがコンセプトの衛生薬学のテキスト。豊富な図表とポイントを押さえたわかりやすい解説で、効率のよい学習を実現。基礎を着実に身につけることができる。知識の整理にも最適。最新の法規・基準・統計に準拠。薬学教育モデル・コアカリキュラム[C11 健康・C12 環境]対応。
I部 健康
I-1 栄養と健康
1章 栄養素
A 三大栄養素の役割
B ビタミンの構造と機能
C ミネラルの役割
D 栄養素の消化、吸収、代謝
E 血清リポタンパク質の栄養学的意義
F 食品中のタンパク質の栄養価
G エネルギー代謝に関わる基礎代謝量、呼吸商、エネルギー必要量
H 食事摂取基準
I わが国における栄養摂取の現状と問題点
J 栄養素の過不足による主な疾病
2章 食品の品質と管理
A 食品の変質:タンパク質の腐敗
B 食品の変質:油脂の変敗機構と変質試験
C 食品の酵素的および非酵素的褐変化とその機構
D 食品の変質に関与する因子と変質防止法
E 食品由来の発癌物質とその生成機構
F 用途別の代表的な食品添加物とその働き
G 食品添加物の法的規制と問題点
H 主な食品添加物の試験法
I 代表的な保健機能食品とその特徴
J 遺伝子組換え食品の現状と問題点
3章 食中毒
A 食中毒の種類と発生状況
B 微生物による食中毒
C 自然毒による食中毒
D マイコトキシンによる食品汚染
E 化学物質による食品汚染
I-2 社会・集団と健康
4章 保健統計
A 人口統計の意義
B 人口静態と人口動態
C 死亡に関する指標
D 人口の将来予測に必要な指標
E わが国における死因別死亡率の変遷
F わが国における人口の推移と将来予測
G わが国における高齢化と少子化
5章 疫 学
A 疫学とは
B 疫学の要因
C 疫学調査
I-3 疾病の予防
6章 健康とは
A 疾病構造の変遷
B WHOの活動
7章 疾病の予防とは
A 予 防
B 予防接種
C 新生児マススクリーニング
8章 感染症の現状とその予防
A 感染症の特徴
B 新興感染症及び再興感染症
C 感染症予防とその目的
D 予防接種法と定期予防接種
E 母子感染症
F 性行為感染症
9章 生活習慣病とその予防
10章 職業病とその予防
A 職業病とその要因
B 職業病の防止対策
II部 環 境
II-1 化学物質の生体への影響
11章 化学物質の代謝・代謝的活性化
A 化学物質の体内動態
B 第I相反応が関わる代謝・代謝的活性化
C 第II相反応が関わる代謝・代謝的活性化
D 化学物質代謝に影響を与える因子
12章 化学物質による発癌
A 発癌過程と化学発癌物質
B 変異原性試験
C 癌化に関わる遺伝子
13章 化学物質の毒性
A 化学物質の毒性評価
B 化学物質の安全摂取量
C 化学物質の毒性評価のための主な試験法
D 化学物質による器官毒性
E 代表的な有害化学物質の毒性
F 重金属や活性酸素に対する生体防御因子
G 有害化学物質の法的規制
H 環境ホルモン
14章 化学物質による中毒と処置
A 化学物質による中毒の解毒処置法
B 化学物質の中毒に関する情報収集
15章 電離放射線の生体への影響
A 電離放射線の性質
B 放射線による被曝
C 放射性核種
II-2 生活環境と健康
16章 地球環境と生態系
A 地球環境と生態系
B 生態系における物質循環
C 地球規模の環境破壊とその対策
17章 水環境
A 上水
B 下水
C 水質汚濁
D DO、BOD、CODの測定
E 富栄養化
18章 大気環境
A 空気の成分
B 大気汚染
C 逆転層
19章 室内環境
A 室内環境を評価するための代表的な指標
B 室内汚染物質と健康
C 室内環境の保全とその法的規制
D シックハウス症候群と化学物質過敏症(多種化学物質過敏状態)
20章 廃棄物
A 廃棄物の種類
B 廃棄物処理の問題と対策
21章 環境保全と法的規制
A 典型七公害と四大公害
B 環境基本法
C 公害・環境汚染防止関連法規
巻末付録
Exercise解答・解説
索引
衛生薬学はわが国の薬学において伝統と歴史をもった領域である。衛生薬学は、生物化学、有機化学、物理化学の基礎薬学はもちろん、ほかのあらゆる学問領域を活用して人の健康を総合的に学び研究するところにその特徴がある。たとえば、環境汚染物質と呼ばれる化学物質が人の健康に悪影響を及ぼすとき、われわれはこの化学物質に汚染された環境(身近な居住環境から地球環境にまで及ぶ場合がある)を調べ、その健康影響を人の集団単位で分析し、個々の健康障害事例を研究し、人の体内における化学物質の動態を解明し、その化学物質の有害性を分子構造や代謝反応から理解する。すなわち、人の健康を守るためには、地球環境〜地域環境〜居住環境〜社会〜人〜原子・分子という幅広い視点からの研究が必要になるのである。これはきわめて困難なことであるが、この困難を時代の要請に応えながら新しい領域として発展させてきたことは、衛生薬学の誇るべき伝統である。
衛生薬学(健康と環境)は、疾病予防と健康増進を目的とする薬学領域である。そもそも薬学は、「薬を創る」ための科学や「薬を正しく有効に使う」疾病治療の科学だけではなく、「人の健康の維持・増進に貢献する」ための疾病予防の科学を含んでいる。これが衛生薬学である。衛生薬学は、栄養と健康、社会・集団と健康、化学物質の生体への影響、および生活環境と健康、の4分野から成り立っている。これらは、栄養状態の改善、食の安全性の確保、生活習慣病の広がり、環境汚染、などの時代が要請する健康に関する諸問題に、衛生薬学が科学的根拠をもって応えてきた学と術の結晶ともいうべきものである。疾病の原因究明や化学物質の毒性発現機構の解明を通じて人の健康の維持・増進に貢献しようとする科学は衛生薬学以外にはなく、これは原子・分子から地球環境までを網羅する幅広い視点を有する薬学だからこそなし得たものである。
このような衛生薬学を一冊の教科書にまとめることは簡単ではないが、今回、全国の大学で衛生薬学の講義・実習を担当し、それぞれの専門分野で独自の研究を発展させている新進・中堅の教員諸氏の協力を得ることができた。学生諸君が衛生薬学をかなり専門的なところまで堅苦しい思いをせずに学ぶことができる教科書をつくろうという編者のお願いを快諾していただいた先生ばかりである。本書がわかりやすく、それでいて専門性を失わない教科書となっているのは、ひとえに執筆者諸氏の力量と努力の賜物である。読者は、本書の随所に多くの工夫が凝らされていることに気付くであろう。編者の高い要望に見事に応えてくださった執筆者諸氏に心より御礼申し上げる。
2006(平成18)年度より薬学部は医療薬学教育の充実に基づく薬剤師養成を行う6年制と、これまでの薬学研究を活かした学部教育・大学院教育を通じて薬学研究者養成を目指す4年制(4+2制)の2つの教育制度をもつことになった。それぞれの特色が活かされ、多様な職種によき人材が輩出されていくことが期待されている。しかしながら、薬学で学んだことを活かしながら社会で活躍するときに、衛生薬学が不要な場所は存在しない。本書で衛生薬学を学ぶ若き諸君が、衛生薬学の伝統ある成果を身に付け、社会で活躍することを心から念願している。
編者