健康・栄養科学シリーズ
基礎栄養学改訂第4版
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
監修 | : 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 |
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編集 | : 奥恒行/柴田克己 |
ISBN | : 978-4-524-26949-5 |
発行年月 | : 2012年2月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 302 |
在庫
定価3,080円(本体2,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
平成22年改定の管理栄養士国家試験ガイドラインに対応した、改訂第4版。「人体の側から栄養素をみる」基本方針で編集。最初に各栄養素の特徴と代謝の全体像を概観してから各論に移る構成が、学習効果を高める。多数の図版を駆使して、栄養素の体内動態が視覚的にとらえられるよう工夫されており、豊富なコラムが、さらに理解の定着を促してくれる。
第1章 栄養の概念
A.食事の意義
B.栄養の定義と栄養学
C.栄養と健康・疾患
D.栄養素の種類とはたらき
E.食品、食物、食料
F.栄養学の歴史
1 三大栄養素の発見
2 呼吸とエネルギー代謝
a.呼吸の意義
b.呼吸とエネルギー消費量の測定
c.基礎代謝と労作代謝
d.タンパク質の栄養価(窒素平衡実験)
3 三大栄養素の消化と利用
a.消化
b.利用
4 ビタミンの発見
5 ミネラルの発見
a.発見物語
6 日本での栄養教育の歴史
G.栄養と遺伝子発現
●練習問題
第2章 栄養素の構造と機能
A.タンパク質の種類と特徴
1 種類
a.タンパク質の種類
b.タンパク質の構造(1次・2次・3次・4次構造)
c.アミノ酸の種類
2 代謝と機能
a.生体の構築材料
b.ホルモン
c.抗体
d.体液の調節因子
e.体液の酸塩基平衡
f.栄養素の運搬物質
g.エネルギー源
B.糖質の種類と特徴
1 糖質の種類
2 代謝と機能
3 食物繊維とは
4 食物繊維の一般的な性状と機能
C.レジスタントスターチ
D.脂質の種類と特徴
1 種類
a.脂肪酸
b.トリアシルグリセロール
c.リン脂質
d.ステロール
e.リポタンパク質
2 代謝と機能
a.エネルギー源
b.生体膜の構成成分の必須脂肪酸の供給源
c.ステロイド化合物の供給源
d.脂溶性ビタミンの供給源
e.薬理的機能
E.ビタミンの種類と特徴
1 種類
2 代謝と機能
F.ミネラルの種類と特徴
1 種類
2 代謝と機能
G.核酸の種類と栄養
●練習問題
第3章 栄養素代謝の概要
A.タンパク質代謝の概要
1 タンパク質の合成
2 タンパク質の分解
B.糖質代謝の概要
1 グリコーゲンの合成・分解
2 グリコーゲンの合成・分解の調節
3 グルコースの代謝
a.解糖系
b.TCA回路(クエン酸回路)
c.ペントースリン酸回路
d.ウロン酸回路
e.糖新生
f.アミノ酸への転換
g.脂質への転換
C.脂質代謝の概要
1 β酸化系
2 ケトン体の生成
3 生理活性物質の合成
D.生体エネルギー学概要
1 電子伝達系(呼吸鎖)
2 グルコースの酸化によるATPの生成数
E.酵素のはたらきと特徴
1 酵素の分類
2 酵素反応の特徴
3 酵素反応に影響を及ぼす因子
●練習問題
第4章 摂食行動
A.空腹感と食欲
1 空腹感
2 食欲
B.局所的な栄養感覚
1 味覚
2 その他の感覚
C.全身的な栄養感覚
1 摂食中枢と満腹中枢
2 摂食を調節する要因
3 規則的な生活と摂食行動
4 食事のリズムとタイミング
●練習問題
第5章 消化・吸収と栄養素の体内動態
A.消化器系の構造と機能
1 消化管の構造
a.消化器系
b.消化管の一般構造
c.消化管各部位の運動と食塊の移送
B.消化・吸収の基本概念
1 消化管の自律性
2 消化管ホルモン
C.管腔内消化とその調節
1 唾液の分泌とその調節
2 胃液の分泌とその調節
3 膵液の分泌とその調節
4 胆汁の分泌とその調節
D.膜消化・吸収
1 小腸における消化と吸収
2 微絨毛の機能的構築
3 小腸上皮の構成細胞
4 吸収の機構
E.栄養素別の消化・吸収
1 タンパク質の消化と吸収
2 糖質の消化と吸収
3 脂質の消化と吸収
4 ビタミンの吸収
a.脂溶性ビタミン
b.水溶性ビタミン
5 ミネラルの吸収
a.カルシウムの吸収
b.鉄の吸収
c.その他
F.栄養素の体内動態
1 吸収された栄養素の経路
2 栄養素の吸収後のゆくえ
a.アミノ酸の吸収後のゆくえ
b.糖質の吸収後のゆくえ
c.脂質の吸収後のゆくえ
G.食物繊維・難消化性糖質の作用
1 発酵・吸収の概念
2 難消化性オリゴ糖・糖アルコールおよび食物繊維の代謝と運命
3 プレバイオティクス、プロバイオティクス、シンバイオティクス
4 難消化性オリゴ糖・糖アルコールの緩下性と腹部異状
H.生体利用度
●練習問題
第6章 タンパク質の栄養
A.タンパク質の体内代謝
1 タンパク質の合成
2 タンパク質の分解
a.リソソーム系
b.カルパイン系
c.プロテアソーム系
3 尿素生成
4 窒素出納
5 食後、食間期のタンパク質代謝
6 タンパク質代謝の臓器差
7 アミノ酸代謝の臓器差
8 アルブミン
9 急速代謝回転タンパク質
B.アミノ酸の臓器間輸送
1 アミノ酸プール
2 分岐鎖アミノ酸の特徴
C.タンパク質の栄養価
1 必須アミノ酸
2 生物価とタンパク質正味利用率
3 化学的評価法
a.アミノ酸価(アミノ酸スコア)
b.人乳価と卵価
4 アミノ酸の補足効果
D.アミノ酸の代謝
1 アミノ酸の窒素の代謝
2 アミノ酸の炭素骨格の代謝
3 アミノ酸の代謝系とそれに関連する先天性代謝疾患
a.フェニルアラニンとチロシン代謝系
b.メチオニン代謝系
c.分岐鎖アミノ酸代謝系
d.尿素回路と先天性代謝疾患
4 タンパク質摂取量とアミノ酸代謝
E.他の栄養素との関係
1 エネルギー代謝とタンパク質
2 糖新生とタンパク質代謝
3 脂肪酸代謝とタンパク質代謝
4 アミノ酸代謝とビタミン
●練習問題
第7章 糖質の栄養
A.糖質の摂取量と栄養学的意義
B.糖質の体内代謝
1 糖質の体内分布
2 肝臓における糖質の代謝
3 骨格筋における糖質の代謝
4 心筋における糖質の代謝
5 脳における糖質の代謝
6 赤血球における糖質の代謝
7 脂肪組織における糖質の代謝
8 糖質と疾患
a.腎性糖尿
b.糖尿病
c.乳糖不耐症
d.う蝕
C.血糖とその調節
1 血糖
2 耐糖能試験
3 血糖の調節
a.組織による調節
b.神経系の調節
c.ホルモンによる調節
D.エネルギー源としての糖質の意義
E.糖質と他の栄養素との関係
1 糖質摂取によるタンパク質節約作用
2 過剰糖質から貯蔵脂質の合成
3 糖質摂取とビタミンB1消費量増加
F.難消化性オリゴ糖・糖アルコールの生理効果
1 エネルギー摂取軽減効果
2 インスリン節約効果
3 う蝕軽減効果
4 腸内環境の改善効果
5 難消化性甘味糖質のその他の機能
G.食物繊維の生理効果
1 消化管における食物繊維の挙動とはたらき
a.口腔における挙動とはたらき
b.胃における挙動とはたらき
c.小腸における挙動とはたらき
d.大腸における挙動とはたらき
2 日本人の食物繊維摂取状況と疾病構造の変化
a.食物繊維摂取状況の年次変化
b.大腸がん死亡率の年次変化とその要因
3 食物繊維の目標摂取量
●練習問題
第8章 脂質の栄養
A.脂質の体内代謝
1 食後、食間期の脂質代謝
2 脂質代謝の臓器差
3 β酸化経路とTCA回路
4 ケトン体
B.脂質の臓器間輸送
1 リポタンパク質
2 遊離脂肪酸
3 ホルモン感受性リパーゼ
C.貯蔵エネルギーとしての作用
1 トリアシルグリセロールの合成
2 脂肪細胞の役割
D.コレステロール代謝の調節
1 コレステロールの合成・輸送・蓄積
2 フィードバック調節
3 ステロイドホルモン
4 胆汁酸の腸肝循環
E.摂取する脂質の量と質の評価
1 脂肪エネルギー比率
2 必須脂肪酸
3 飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸の摂取
4 n-6系およびn-3系不飽和脂肪酸の摂取量
5 脂肪酸由来の生理活性物質(プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサン)
6 食事性コレステロール
F.他の栄養素との関係
1 ビタミンB1節約作用
2 エネルギー源としての糖質の節約作用
3 糖質から脂肪酸の合成
4 脂質の酸化および生合成とビタミン
●練習問題
第9章 ビタミンの栄養
A.ビタミンの構造と機能
1 脂溶性ビタミン
a.ビタミンA
b.カロテノイド
c.ビタミンD
d.ビタミンE
e.ビタミンK
2 水溶性ビタミン
a.ビタミンB1
b.ビタミンB2
c.ナイアシン
d.ビタミンB6
e.ビタミンB12
f. 葉酸
g.パントテン酸
h.ビオチン
i.ビタミンC
B.ビタミンの代謝と栄養学的機能
1 ビタミンのホルモン様作用
2 補酵素
3 抗酸化ビタミン
4 高齢者とビタミン
5 止血作用とビタミン
6 一炭素単位代謝とビタミン
7 神経とビタミン
8 貧血とビタミン
9 脂質代謝とビタミン
C.ビタミンの相対生体利用率
D.他の栄養素との関係
1 エネルギー代謝とビタミン
2 核酸、タンパク質代謝とビタミン
3 カルシウム代謝とビタミン
●練習問題
第10章 ミネラルの栄養
A.ミネラルの分類と機能
1 からだを構成するミネラル
a.リン(P)
b.カルシウム(Ca)
c.マグネシウム(Mg)
2 電解質ミネラル
a.ナトリウム(Na)
b.カリウム(K)
3 微量ミネラル
a.鉄(Fe)
b.亜鉛(Zn)
c.銅(Cu)
d.マンガン(Mn)
e.ヨウ素(I)
f.クロム(Cr)
g.セレン(Se)
h.モリブデン(Mo)
4 鉄代謝と栄養
a.代謝
b.欠乏と過剰
5 日本人の食事摂取基準で必要量が策定されていないミネラル
a.塩素(Cl)
b.硫黄(S)
c.コバルト(Co)
B.ミネラルの栄養学的機能
1 硬組織
a.骨
b.歯
2 浸透圧の調節
a.ナトリウム(Na)
b.カリウム(K)
c.塩素(Cl)
3 代謝調節とミネラル
a.酸素と電子の輸送−鉄含有タンパク質−
b.遺伝子発現との関わり−亜鉛含有タンパク質−
c.タンパク質の分解酵素−亜鉛含有タンパク質−
d.抗酸化系との関わり
e.アミノ酸代謝との関わり
f.生理活性アミノ代謝との関わり
g.核酸塩基代謝との関わり
h.アルコール代謝との関わり
i.リン酸化と脱リン酸化による代謝調節
j.細胞の刺激応答現象
C.吸収率に影響を与える要因
1 カルシウム
2 鉄
D.他の栄養素との関係
1 食品中の共存物質
a.フィチン酸
b.不溶性食物繊維
c.ポリフェノール
d.シュウ酸、その他の成分
2 生体内での相互作用
a.ラクトフェリン
b.カゼインホスホペプチド
c.吸収の拮抗
d.フルクトース、その他の成分
●練習問題
第11章 水・電解質の栄養的意義
A.水の出納
1 体内の水の分布
2 水の特性と機能
3 水の出納−動的平衡−
4 体液の調節
5 体液調節の異常−脱水・浮腫−
a.水の欠乏
b.水の過剰
B.電解質の代謝
1 人体の構成元素
2 体液のpHの調節
a.体液中の電解質
b.酸塩基平衡
●練習問題
第12章 エネルギー代謝
A.エネルギー代謝の概念
1 物理的燃焼値
2 生理的燃焼値(生体利用エネルギー量)
B.エネルギー消費量
1 基礎代謝量
a.体格・身体組成の影響
b.加齢の影響
c.性差の影響
d.身体活動レベルの影響
e.ホルモンの影響
2 安静時代謝量
3 睡眠時代謝量
4 活動代謝
a.メッツ(METs)
b.Af(動作強度)
5 食事誘発性熱産生
C.臓器別エネルギー代謝
1 骨格筋と心筋
2 脂肪組織
3 肝臓と腎臓
4 脳
D.エネルギー代謝の測定法
1 直接法と間接法
a.代謝チャンバーによる直接法
b.ダグラスバッグへの呼気採取による間接法
c.開回路呼吸チャンバーを用いた間接法
d.二重標識水法
e.心拍数記録法
f.加速度計法
g.身体活動調査票
2 呼吸商と非タンパク質呼吸商
3 呼気分析
●練習問題
第13章 遺伝子発現と栄養
A.遺伝形質と栄養の相互作用
1 栄養素に対する応答の個人差の遺伝的背景
a.遺伝
b.遺伝形質と環境因子、栄養との関わり
c.ゲノムと遺伝子
2 生活習慣病と遺伝子多型
a.遺伝性素因と環境要因
b.生活習慣病
c.遺伝子多型とSNPs
3 倹約(節約)遺伝子仮説
4 栄養指標としての遺伝子型
B.後天的遺伝子変異と栄養
1 がんのプロモーション、イニシエーションの抑制
2 植物性抗酸化物質の作用
●練習問題
参考図書
練習問題解答
索引
本書は、新しい管理栄養士に求められる高度な知識・技能を取得させるために、国家試験出題基準に準拠した「標準的なテキスト」となることを目指して企画されている。2010年12月に厚生労働省から新しい出題基準が発表されたので、これに対応する必要がある。新しい出題基準は科目によっては大幅な改定もあるが、「基礎栄養学」についての改定はわずかであった。
今回の本書改訂は、この新しい出題基準に対応するためのもので、ガイドラインの改定箇所のみの内容を見直すこととした。一方で、管理栄養士に期待される活動内容が、ただ単に栄養素を供給する食品を適切に摂取させるということから、摂取した食べ物中の栄養素が体の中で適切に変化している(吸収、配分、代謝、排泄=ADME;absorption、distribution、metabolism、excretion=栄養素の体内運命)のかを管理することに変わってきている。本書は従来からこの点、すなわち、栄養素の体内運命が理解できるように書かれた本である。この編集方針が本書が好評を得ている大きな要因であると自負している。
今回の主な改訂点は、項目名の変更や項目の掲載順序の入れ替えなどが主となり、内容の追記や変更はわずかであるが、近年話題になっている時間栄養学に関すること、ならびに食事摂取基準に示されている身体活動レベル(physical activity level、PAL)についての解説を新たに加えた。また、新出題基準から削除された生化学的内容については、これまでの本書全体の編集方針、すなわち構造式等を少なくして栄養素の体内運命の理解を促すということを踏襲した構成とするために、敢えて削除しなかった。本書は「基礎栄養学(2単位分)」としては内容が多すぎるが、本書単独で基礎栄養学の知識取得と理解ができるように配慮した構成は、そのまま維持している。それゆえ、他の科目と重複する部分は必要に応じて飛ばして講義を進めることも可能である。今回の改訂は、新しい出題基準に合わせるための最小限の変更であったが、今後とも読者諸賢のご批判を仰ぎながら、より充実した教科書に改善したいと考えているので、忌憚のないご意見をお聞かせいただければ幸いである。
平成24年2月
奥恒行
柴田克己