健康・栄養科学シリーズ
食べ物と健康 食品の安全
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
監修 | : 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 |
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編集 | : 有薗幸司 |
ISBN | : 978-4-524-26847-4 |
発行年月 | : 2013年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 260 |
在庫
定価2,750円(本体2,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
食生活が豊かになる一方、食の安全を覆す事故、食の安全情報の氾濫がみられる今日、食品衛生、食の安全の深い理解と習得がより一層求められている。本書は、「食べ物と健康V―食品の安全性」の改訂新版として、管理栄養士国家試験出題基準「食べ物と健康4。食品の安全性」に準拠し、その意義を正確かつ十分に理解できるように編集。さらに学習者の興味をひく最新のトピックを「コラム」として効果的に配置。脇組み解説も充実。
第1章 食品の安全
A.食品の安全とは
B.ゆらぐ食の安全とリスクコミュニケーション
C.リスク回避のための食のリテラシー向上
D.地産地消と食の安全
第2章 食品衛生と法規
A.食品の安全性確保とリスクアナリシス
1 リスクアセスメント
2 リスクマネージメント
3 リスクコミュニケーション
B.食品安全基本法と食品衛生法
1 食品安全基本法
2 食品衛生法
C.食品衛生関連法規
1 生産段階における安全の確保を図るための法律
2 食肉の安全確保を図るための法律
コラム 法律を読むのは難しい?
3 水の安全確保を図るための法律
4 食品衛生にかかわる資格制度を定めた法律
5 食品表示に関する法律
D.食品衛生行政組織
1 消費者庁
2 食品安全委員会
3 厚生労働省
4 農林水産省
5 地方自治体
E.食品の国際規格
1 コーデックス規格
2 ISO規格
●練習問題
第3章 食品の変質
A.微生物
1 分類と命名法
2 真菌類
3 細菌類
a.細胞の形態
コラム 細菌の分類
b.細胞の構造
c.芽胞形成能
d.rRNA遺伝子の塩基配列
4 ウイルス
コラム バクテリオファージ
B.食品の腐敗
1 食品微生物の発育条件
a.温度
b.酸素
c.pH
d.水分活性
e.栄養源
f.細菌の増殖曲線
2 腐敗
a.脱アミノ作用
b.アミノ酸の脱炭酸反応
c.脱アミノ作用と脱炭酸作用の併用作用
3 微生物による食品の腐敗
4 主な腐敗微生物
a.バシラス属細菌
b.スタヒロコッカス属細菌
c.クロストリジウム属細菌
コラム 腐乳
d.ミクロコッカス属細菌
e.シュードモナス属細菌
f.ビブリオ属細菌
g.腸内細菌科の細菌
h.その他
C.油脂の酸敗
1 油脂の酸化
2 油脂の酸化の原因
a.酸素の影響
b.温度の影響
c.光の影響
d.水分
e.金属の影響
3 油脂の酸化の判定
a.酸価
b.過酸化物価の測定
4 トランス型不飽和脂肪酸
a.トランス脂肪酸の定義
b.トランス脂肪酸が含まれる主な食品
c.トランス脂肪酸の食品表示
D.食品の変質の防止
1 冷蔵・冷凍法
コラム 最近の冷蔵庫
2 乾燥法(脱水法)
3 塩蔵・砂糖漬
4 薫煙法
5 加熱法
a.牛乳
b.缶詰食品
c.食肉製品
6 紫外線
7 放射線
8 食品添加物
9 真空包装
E.鮮度・腐敗・酸敗の判定法
1 生菌数の測定
2 揮発性塩基窒素量の測定
3 K値
4 トリメチルアミン量
5 水素イオン濃度(pH)
コラム 衛生観念の喪失
●練習問題
第4章 食中毒
A.食中毒とは
1 食中毒の定義
コラム 食中毒と感染症
2 食中毒の届出
B.食中毒の発生状況
1 食中毒統計
コラム 食中毒事件数、患者数は実際には統計数より多い?
2 年次別発生状況
3 食中毒病因物質
4 月別発生状況
5 食中毒の原因食品
6 食中毒の原因施設
C.微生物性食中毒
1 細菌性食中毒
a.サルモネラ属菌
b.腸炎ビブリオ
c.病原大腸菌
コラム ユッケと牛肝臓の生食禁止
d.カンピロバクター菌
e.ナグビブリオ
f.エルシニア・エンテロコリチカ
g.ブドウ球菌
コラム 耐性菌とは
h.ボツリヌス菌
コラム 乳児ボツリヌス症
i.セレウス菌
j.ウェルシュ菌
k.プロビデンシア・アルカリファシエンス
l.その他の菌
2 ウイルス性食中毒
a.ノロウイルス
b.肝炎ウイルス
c.ロタウイルス
D.自然毒食中毒
1 動物性自然毒
a.フグ毒
b.シガテラ毒
c.麻痺性貝毒
d.下痢性貝毒
e.その他の動物性自然毒中毒
2 植物性自然毒
a.キノコ毒
b.ジャガイモ毒
c.ウメ、アンズ、ビルマ豆、キャッサバ等
d.ギンナン
e.オゴノリ中毒
f.その他の植物性自然毒中毒
E.化学性食中毒
1 ヒスタミン(アレルギー様食中毒)
2 メチルアルコール
F.食物アレルギー
1 食物の摂取によるアレルギーとは
2 アレルギー物質を含む食品
a.食品、原材料
b.表示
コラム パンデミック化する食中毒
●練習問題
第5章 食品による感染症・寄生虫症
A.経口感染症
1 コレラ
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
2 細菌性赤痢
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
3 腸チフスならびにパラチフス
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
4 ロタウイルス感染症
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
5 サポウイルス感染症
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
6 アストロウイルス感染症
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
7 腸管アデノウイルス感染症
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
8 急性灰白髄炎(ポリオ)
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
B.人獣共通感染症
1 ブルセラ症
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
2 炭疽
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
3 結核
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
4 リステリア症
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
5 仮性結核
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
6 野兎病
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
7 レプトスピラ症
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
8 プリオン病
a.プリオンとプリオン病
b.牛海綿状脳症
c.バリアント(変異型)・クロイツフェルト・ヤコブ病
C.食品から感染する寄生虫症
[原虫症]
1 アメーバ赤痢
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
2 ジアルジア症
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
3 クリプトスポリジウム
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
4 サイクロスポーラ症
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
5 トキソプラズマ症
a.概要
b.感染経路
c.症状・治療・予防
[蠕虫症:線虫によるもの]
1 回虫症
a.概要
b.生活史
c.症状・治療・予防
2 アニサキス症
a.概要
b.生活史
c.症状・治療・予防
3 鉤虫症
a.概要
b.生活史
c.症状・治療・予防
4 顎口虫症
a.概要
b.生活史
c.症状・治療・予防
5 鞭虫症
a.概要
b.生活史
c.症状・治療・予防
6 旋毛虫症
a.概要
b.生活史
c.症状・治療・予防
[蠕虫症:吸虫によるもの]
1 肝吸虫症
a.概要
b.生活史
c.症状・治療・予防
2 横川吸虫症
a.概要
b.生活史
c.症状・治療・予防
3 肺吸虫症
a.概要
b.生活史
c.症状・治療・予防
4 肝蛭症
a.概要
b.生活史
c.症状・治療・予防
[蠕虫症:条虫によるもの]
1 広節裂頭条虫症・日本海裂頭条虫症
a.概要
b.生活史
c.症状・治療・予防
2 無鉤条虫症
a.概要
b.生活史
c.症状・治療・予防
3 有鉤条虫症
a.概要
b.生活史
c.症状・治療・予防
コラム 新しい寄生虫による生鮮魚介類の食中毒
●練習問題
第6章 食品中の汚染物質
A.カビ毒(マイコトキシン)
1 アフラトキシン
コラム なぜ総アフラトキシンはB1、B2、G1、G2という名前がついているの?
a.アフラトキシンM
2 フザリウム系カビ毒
コラム 国際がん研究機関(IARC)
3 パツリン
4 オクラトキシンA
5 ステリグマトシスチン
6 黄変米毒
B.化学物質
1 化学物質の審査及び製造等に関する法律
2 POPs
a.POPsとは
コラム 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)
3 農薬
a.農薬とは
b.ポストハーベスト農薬と特定農薬
c.農薬の安全確保のための規則
4 動物用医薬品
a.動物用医薬品とは
b.動物用医薬品に対する規制
5 ダイオキシン類
6 ポリ塩化ビフェニル
a.食品中に残留するPCBの暫定的規制値
7 内分泌かく乱物質
コラム 油症事件
C.有害元素・放射性物質
[有害元素]
1 カドミウム(Cd)
コラム イタイイタイ病
2 水銀(Hg)
a.無機水銀
b.メチル水銀(有機水銀)
コラム 水俣病と第二水俣病(新潟水俣病)
3 鉛(Pb)
4 ヒ素(As)
コラム ヒ素中毒事件
5 スズ(Sn)
a.無機スズ
b.有機スズ
[放射性物質]
1 放射性物質とは
2 放射性物質による汚染
コラム 東日本大震災と原子力発電所事故
コラム 放射性物質に関わる単位
D.食品成分の変化により生ずる有害物質
1 ヒスタミン
2 N-ニトロソ化合物
3 過酸化脂質
4 ベンゾ[a]ピレン
5 ヘテロサイクリックアミン
コラム 薬物代謝と代謝活性化
6 アクリルアミド
7 トランス脂肪酸
コラム 食用油中のグリシドール脂肪酸エステル
E.混入異物
1 異物の定義と種類
2 異物混入と衛生
3 異物混入の原因と防止
●練習問題
第7章 食品添加物
A.食品添加物の有用性と安全性
1 食品添加物の有用性
2 食品添加物の安全性
B.安全性評価
1 毒性試験
a.急性毒性試験
b.反復投与毒性試験
c.繁殖試験
d.催奇形性試験
e.変異原性試験
f.発がん性試験
g.抗原性試験
h.体内動態に関する試験、一般薬理試験
2 最大無毒性量
3 1日摂取許容量
4 使用基準
コラム 実質安全量
C.食品衛生法による分類と表示
1 食品添加物の指定制度
2 食品添加物の規格および基準
a.成分規格
b.保存基準
c.製造基準
d.使用基準
3 食品添加物の表示
D.主な食品添加物の種類と用途
1 保存料
2 防カビ剤
3 殺菌料
コラム 乳酸菌による食品保存―バイオプリザベーション―
4 酸化防止剤
5 着色料
6 発色剤
7 漂白剤
8 甘味料
9 調味料
10 香料
11 栄養強化剤
12 その他の食品添加物
●練習問題
第8章 食品衛生管理
A.HACCP(総合衛生管理製造過程)
1 HACCPシステムとは
2 わが国におけるHACCP
3 HACCPシステムと一般的衛生管理プログラム
B.食品工場におけるHACCP
1 衛生的な原材料の確保
2 施設・設備の衛生管理
3 品質管理、クレーム処理
4 従業員の衛生
5 洗浄と消毒
a.洗浄
b.消毒
C.ISO22000
D.家庭における衛生管理
1 清潔に保つ
a.手洗いの励行
b.食器や調理器具の洗浄と消毒
c.害虫や害獣による調理場所の汚染防止
2 生の食品と加熱済み食品とを分ける
3 よく加熱する
4 安全な温度に保つ
5 安全な水と原材料を使う
E.洗剤
1 界面活性剤
a.石けん
b.合成洗剤と洗浄剤
コラム 界面活性剤の生分解
2 台所用洗剤
3 殺菌・消毒剤
a.次亜塩素酸ナトリウム
b.アルコール
c.洗浄除菌剤
d.その他の殺菌・消毒剤
F.衛生動物
1 衛生動物の影響
2 衛生動物の種類と特徴
a.ダニ
b.ゴキブリ
c.ハエ
d.ネズミ
●練習問題
第9章 食品の器具と容器包装
A.器具・容器包装と法規制
B.材質の判別
C.器具・容器包装による食品汚染
1 缶詰におけるスズの溶出
2 ポリカーボネート食器や缶詰からのビスフェノールAの溶出
3 ポリ塩化ビニル製器具・容器包装および玩具からのフタル酸エステルの溶出
4 ポリ塩化ビニル製ラップフィルムからの溶出物
5 カップ麺容器からの溶出物
●練習問題
第10章 食品の安全性問題
A.輸入食品
1 輸入食品の現状
2 監視体制
a.輸入食品に対する国際基準
b.輸入食品の監視・指導
B.残留農薬のポジティブリスト制
1 残留農薬に関する新しい制度(ポジティブリスト制)の概要
2 農薬の残留基準の考え方
3 残留農薬の監視・指導
C.無(減)農薬栽培食品
1 有機農産物および有機加工食品
2 減農薬栽培食品および無農薬栽培食品の表示禁止
D.遺伝子組換え食品
1 遺伝子組換え食品
2 わが国における遺伝子組換え食品の安全性評価
3 遺伝子組換え食品の表示行政と制度
E.放射線照射食品
1 放射線照射食品とは
2 世界における照射対象商品
3 わが国における照射対象食品
4 放射線照射食品の検知法
5 最近の放射線照射の違反事例
コラム 弱い電子線による食品の照射
●練習問題
付録
参考図書
練習問題解答
索引
食生活が豊かになる一方、食生活を取り巻く環境は近年大きく変化し、いくつかの食の安全を覆す事故や事件が起きたこともあり、食環境の科学的な研究成果とその内容を正しく理解したいといった、食に対する市民の関心が高まっている。こうした情勢の変化に的確に対応するため、食品安全基本法が制定され、新たな食品安全行政を担う食品安全委員会が2003年7月に内閣府に設置された。このような体制の整備により、食を取り巻く危害要因が人の健康に与える影響、食の安全とそのリスクの関係について科学的知見に基づいて評価することができ、その情報をもとに市民とリスクコミュニケーションする仕組みもできあがり、パブリックコメントも実施されている。一方で、食品安全委員会の調査によると、2003年から2008年の5年間で一般市民と行政や専門家の間で食の安全についての認識のギャップを感じる人が増えたという。ここに氾濫する食の安全の情報に飲み込まれ、食の安心を確信できない市民が増えている現実がある。この食の安全と安心の間の大きなギャップが埋められるか。この課題において、食品衛生を研鑽し、食の安全と食育推進も担う管理栄養士の役割は重要である。
2006年に刊行された『食べ物と健康III―食品の安全性』の意思を受け継ぎ、2010年12月に改定された管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)に準拠し、この度改訂新版として本書『食べ物と健康 食品の安全』を刊行することになった。「食べ物と健康」の出題基準には、「食品素材の成り立ちを理解し、食品の生産から加工、流通、貯蔵、調理を経て人に摂取されるまでの過程における安全性の確保、栄養や嗜好性の変化についての理解を問う」ことが明記されている。本書においても、出題基準の大項目である「食品の安全性」に従って、中項目として「A。食品衛生と法規」、「B。食品の変質」、「C。食中毒」、「D。食品による感染症・寄生虫症」、「E。食品中の汚染物質」、「F。食品添加物」、「G。食品衛生管理」、さらにそれぞれの小項目を網羅し、これらの意義を正確かつ十分に理解できるように編纂を心掛けた。改訂新版を機に、気鋭の研究者に新らたに書き下ろし執筆をお願いしたため、関連類書に比べて、多様化する微生物由来(寄生虫性)食中毒や食品の放射線汚染等、食の安全をめぐる最新の情報が多数提供されている。これらは「コラム」や本文のサイドに「補足解説」として配置し、学習者が各項目の内容の理解をより深められるよう工夫した。
食の安全問題においては、市民にゼロリスクが存在しないということを認識させ、リスクトレードオフの概念も合わせて理解を進めていかなければならない。これらの背景を認識し、食の安全情報を適正に市民へコミュニケートしうるだけでなく、市民への食の安心感も増大させうる資質を持つ人材の育成が緊喫の課題となっている。本書がそのような食の安全・安心とそのリスク評価・管理、食育推進の担い手となりうる管理栄養士の育成の教材となれば幸いである。
2013年2月
編者