看護学テキストNiCE
老年看護学技術
最後までその人らしく生きることを支援する
こちらの商品は改訂版・新版がございます。
編集 | : 真田弘美/正木治恵 |
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ISBN | : 978-4-524-26063-8 |
発行年月 | : 2011年6月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 438 |
在庫
定価3,520円(本体3,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
高齢者に看護を実践する技術について、その論理的な思考過程と技術の基本的な概念、実践に必要な知識や考え方をまとめたテキスト。明確な根拠をもって看護介入ができるようになることを重視。疫学データ、基本的な病態生理とともに看護介入に伴う思考プロセスをわかりやすく示し、代表的な疾患については事例とともに具体的な看護を解説する。「老年看護」の全体像を把握し、発展的に考える基礎が身につく一冊。
第I章 現代の高齢者とその理解
A.高齢者の発達的特徴
1 老化とは
2 老年期の発達と成長
B.高齢者と環境
1 環境に対する反応
2 高齢者を取り巻く社会的環境
C.高齢者の健康
1 生活不活発病(廃用症候群)
2 老年症候群
3 老年病
D.高齢者の看護
1 老年看護の理論と原則
2 老年看護の特徴
3 老年看護の目標
4 老年看護を構成する要素
5 老年看護の技術
第II章 老年看護の基本技術―ヘルスアセスメント
A.ヘルスアセスメントとは
1 老年看護におけるヘルスアセスメントの意義
2 高齢者の示す症状の特徴
B.ヘルスアセスメントの実際
1 高齢者への面接のすすめ方
2 面接の構造と老年看護におけるポイント
3 身体所見のとり方と老年看護におけるポイント
4 看護問題の確定と看護計画の立案
5 高齢者総合機能評価
第III章 高齢者の生活と看護―加齢変化とフィジカルアセスメントの技術
1.呼吸
A.基礎知識
1 高齢者における呼吸とは
2 成人の呼吸の構造と機能
3 高齢者の呼吸の特徴
4 高齢者の呼吸機能低下に影響する要因
B.看護実践の展開
1 アセスメント
2 目標
3 介入
4 評価
5 看護技術が高齢者に及ぼす影響
2.食事
A.基礎知識
1 高齢者における食事
2 成人の消化器の構造と機能
3 高齢者の摂食機能の特徴
4 高齢者の摂食機能低下に影響する要因
B.看護実践の展開
1 アセスメント
2 目標
3 介入
4 評価
5 看護技術が高齢者に及ぼす影響
3.排泄
3−1 排尿
A.基礎知識
1 成人の下部尿路の構造と機能
2 高齢者の下部尿路の特徴
3 高齢者の下部尿路機能低下に影響する要因
B.看護実践の展開
1 アセスメント
2 目標
3 介入
4 評価
3-2 排便
A.基礎知識
1 直腸・肛門管の構造と機能
2 高齢者の直腸・肛門管の特徴
3 高齢者の排便機能低下に影響する要因
B.看護実践の展開
1 アセスメント
2 看護目標
3 介入
4 評価
4.動作と移動
A.基礎知識
1 高齢者における動作と移動とは
2 成人の筋骨格系の構造と機能
3 高齢者の動作と移動の特徴
4 高齢者の動作・移動能力低下に影響する要因
B.看護実践の展開
1 アセスメント
2 目標
3 介入
4 評価
5 看護技術が高齢者に及ぼす影響
5.睡眠
A.基礎知識
1 高齢者における睡眠とは
2 睡眠の構造と機能
3 高齢者の睡眠の特徴
4 高齢者の睡眠に影響を及ぼす要因
B.看護実践の展開
1 アセスメント
2 目標
3 介入
4 評価
5 看護技術が高齢者に及ぼす影響
6.体温
A.基礎知識
1 高齢者における体温調節とは
2 成人の体温調節
3 高齢者の体温調節の特徴
4 高齢者の体温調節に影響する要因
B.看護実践の展開
1 アセスメント
2 目標
3 介入
4 評価
7.清潔
A.基礎知識
1 高齢者における皮膚の清潔とは
2 成人の皮膚の構造と機能
3 高齢者の皮膚の特徴
4 高齢者の皮膚保護機能低下に影響する要因
B.看護実践の展開
1 アセスメント
2 目標
3 介入
4 評価
5 看護技術が高齢者に及ぼす影響
8.コミュニケーション
A.基礎知識
1 高齢者のコミュニケーションとは
2 コミュニケーションとは
3 高齢者のコミュニケーションの特徴
4 高齢者のコミュニケーションに影響する要因
B.看護実践の展開
1 アセスメント
2 目標
3 介入
4 評価の視点
5 看護技術が高齢者に及ぼす影響
9.性
A.基礎知識
1 高齢者における性とは
2 成人における性の構造と機能
3 高齢者の性の特徴
4 高齢者の性機能の低下に影響する要因
B.看護実践の展開
1 アセスメント
2 目標
3 介入
4 評価の視点
第IV章 高齢者に特徴的な症状と看護―老年症候群
1.起立・歩行障害
A.基礎知識
1 定義
2 疫学
3 病態と生理学的特徴
4 主な症状と生活への影響
5 対処の方法(セルフケアの視点から)
B.看護実践の展開―予防と治療
1 起立・歩行障害を予防する
2 起立・歩行障害を有する高齢者の看護
2.感覚機能障害
A.基礎知識
1 定義―高齢者における感覚機能の変化
2 疫学(有病率)
3 病態と生理学的特徴
4 主な症状と生活への影響
5 対処の方法(セルフケアの視点から)
B.看護実践の展開―予防と治療
1 感覚機能障害を予防する
2 感覚機能障害を治療する
3 感覚機能に障害がある高齢者の安全を配慮した環境への支援
4 感覚機能障害を代償する日常生活の自立に向けた支援
3.摂食・嚥下障害
A.基礎知識
1 定義
2 疫学
3 病態と生理学的特徴
4 主な症状と生活への影響
5 対処の方法(セルフケアの視点から)
B.看護実践の展開−予防と治療
1 摂食・嚥下障害を予防する
2 摂食・嚥下障害を治す
C.実践におけるクリティカルシンキング(演習(1))
4.脱水
A.基礎知識
1 定義
2 疫学(有病率)
3 病態と生理学的特徴
4 主な症状と生活への影響
5 対処の方法(セルフケアの視点から)
B.看護実践の展開―予防と治療
1 脱水を予防する
2 脱水を治す
5.低栄養
A.基礎知識
1 定義
2 疫学(有病率)
3 病態と生理学的特徴
4 主な生理機能障害と生活への影響
5 対処の方法(セルフケアの視点から)
B.看護実践の展開―予防と治療
1 低栄養を予防する
2 低栄養を治す
6.皮膚掻痒感
A.基礎知識
1 定義
2 疫学(有病率)
3 病態と生理学的機序
4 主な症状と生活への影響
5 対処の方法(セルフケアの視点から)
B.看護実践の展開―予防と治療
1 皮膚掻痒症を予防する
2 皮膚掻痒症を治す
7.痛み
A.基礎知識
1 定義
2 疫学(有症率)
3 病態と生理学的特徴
4 主な症状と生活への影響
5 対処の方法(セルフケアの視点から)
B.看護実践の展開―予防と治療
1 痛みを予防する
2 痛みを緩和する
8.褥瘡
A.基礎知識
1 定義
2 疫学(有病率)
3 病態と生理学的特徴
4 主な症状と生活への影響
5 対処の方法(セルフケアの視点から)
B.看護実践の展開―予防と治療
1 褥瘡を予防する
2 褥瘡を治す
C.実践におけるクリティカル・シンキング(演習(2))
9.尿失禁
A.基礎知識
1 定義
2 疫学(有病率)
3 病態と生理学的特徴
4 主な症状と生活への影響
B.看護実践の展開
1 尿失禁を予防する:一過性尿失禁を回避する
2 尿失禁を改善する
10.便秘・下痢
10-1 便秘
A.基礎知識
1 定義
2 病態と生理学的特徴
3 主な症状と生活への影響
4 対処の方法(セルフケアの視点から)
B.看護実践の展開―予防と治療
1 便秘を予防する
2 便秘を治す
10-2 下痢
A.基礎知識
1 定義
2 病態と生理学的特徴
3 主な症状と生活への影響
4 対処の方法(セルフケアの視点から)
B.看護実践の展開―予防と治療
1 下痢を予防する
2 下痢を治す
11.不眠
A.基礎知識
1 定義
2 疫学(有病率)
3 病態と生理学的特徴
4 主な症状と生活への影響
5 対処の方法(セルフケアの視点から)
B.看護実践の展開―予防と治療
1 不眠を予防する
2 不眠を治す
12.うつ
A.基礎知識
1 定義
2 疫学(有病率)
3 病態と生理学的特徴
4 主な症状と生活への影響
5 対処の方法(セルフケアの視点から)
B.看護の実践の展開―予防と治療
1 うつ病性障害を予防する
2 うつ病性障害を治す
13.寝たきり
A.基礎知識
1 定義
2 疫学(有病率)
3 病態と生理学的特徴
4 主な症状と生活への影響
5 対処の方法(セルフケアの視点から)
B.看護実践の展開―予防と治療
1 寝たきりを予防する
2 寝たきりを治す
14.せん妄
A.基礎知識
1 定義
2 疫学(有病率)
3 病態と生理学的特徴
4 主な症状と生活への影響
5 対処の方法(セルフケアの視点から)
B.看護実践の展開―予防と治療
1 せん妄を予防する
2 せん妄を治す
C.実践におけるクリティカル・シンキング(演習(3))
15.転倒
A.基礎知識
1 定義
2 疫学(発生率)
3 病態と生理的特徴
4 転倒に伴って生じる身体的損傷と心理面への影響
5 対処の方法(セルフケアの視点から)
B.看護実践の展開
1 病院・施設高齢者の転倒予防に対する看護
2 転倒発生時のケアおよび再転倒予防に対する看護
16.感染症
A.基礎知識
1 定義
2 疫学(有病率)
3 病態と生理学的特徴
4 主な症状と生活への影響
5 対処の方法(セルフケアの視点から)
B.看護実践の展開―予防と治療
1 肺炎
2 尿路感染
3 疥癬
4 感染性胃腸炎
第V章 高齢者に特徴的な疾患と看護―事例による展開
1.急性期の看護(胃がん)
A.胃がんとは
1 疫学
2 病態生理
3 危険因子
4 臨床症状
5 診断
6 治療
B.胃がん術後(周手術期)の急性期の看護
1 胃がんをもつ人への理解
2 看護の目標
3 アセスメントの視点―Aさんの場合
4 看護問題の明確化
5 看護介入の技術
6 評価
2.リハビリテーション看護(大腿骨頸部骨折)
A.大腿骨頸部骨折とは
1 疫学
2 病態
3 危険因子
4 臨床症状
5 診断
6 治療
B.大腿骨頸部骨折のリハビリテーション看護
1 大腿骨頸部骨折の高齢者への理解
2 看護の目標
3 アセスメントの視点―Aさんの場合
4 看護問題の明確化
5 看護介入の技術
6 評価
3.慢性期の看護(慢性閉塞性肺疾患)
A.慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは
1 疫学
2 病態生理
3 危険因子
4 臨床症状
5 診断
6 治療
B.慢性閉塞性肺疾患(COPD)の看護
1 慢性閉塞性肺疾患(COPD)をもつ人への理解
2 看護の目標
3 アセスメントの視点
4 看護問題の明確化
5 看護介入の技術
6 評価
4.認知機能障害の看護(アルツハイマー病)
A.アルツハイマー病とは
1 疫学
2 病態
3 危険因子
4 臨床症状
5 診断
6 治療
B.アルツハイマー病の看護
1 アルツハイマー病をもつ人への理解
2 看護の目標
3 アセスメントの視点―Aさんの場合
4 看護問題の明確化
5 看護介入の技術
6 評価
5.緩和ケア(大腸がん)
A.大腸がんとは
1 疫学
2 病態
3 危険因子
4 臨床症状
5 診断
6 治療
B.大腸がん患者の緩和ケア
1 進行・終末期の大腸がん患者への理解
2 看護の目標
3 アセスメントの視点―Aさんの場合
4 看護問題の明確化
5 看護介入の技術
6 評価
6.パーキンソン病の看護
A.パーキンソン病とは
1 疫学
2 病態
3 危険因子
4 臨床症状
5 診断
6 治療
B.パーキンソン病の看護
1 パーキンソン病をもつ人への理解
2 看護の目標
3 アセスメントの視点―Aさんの場合
4 看護問題の明確化
5 看護介入の技術
6 評価
第VI章 老年看護技術の新たな動向と課題
1.感染症をめぐる最近の動向と課題
A.新興・再興感染症と老年看護のあり方
1 新興・再興感染症とは
2 医療現場での留意点
B.新型インフルエンザとパンデミックに対する老年看護のあり方
1 パンデミックとは―新型インフルエンザA(H1N1)を例として
2 パンデミックに対する老年看護の現場での備え
2.高齢者の薬物療法
A.薬物療法における看護の動向
B.高齢者の薬物療法の問題点
1 高齢者における薬物有害事象と多剤併用の問題と対策
2 高齢者の薬剤の管理上の問題と対策
C.高齢者の薬物療法に対する看護師の役割と薬剤師との協働
3.老年看護技術の新たな動向と課題
A.看護用具を開発する
B.看護技術の評価方法を標準化する
C.看護技術の習得に可視化できる測定機器を用いる
付録 評価スケール・アセスメントツール
演習問題 解答への視点
練習問題 解答と解説
索引
超高齢社会を迎え、高齢者を対象とした看護のニーズが高まっている。一方で、要介護高齢者の増加が社会的問題となっており“いかに最後までその人らしく生きるか”、つまり単に“長く”生きるだけでなく、その“質”が問われる時代となった。そのような価値観の確立は、看護の考え方にも例外なく影響を及ぼしている。
本書は、基礎看護教育課程にある学生が老年看護を学ぶにあたり、看護師が専門技術を提供するさいに必要となる基本的な視点と、看護の構成概念についてまとめている。その目的は、(1)老年看護の対象である高齢者の健康状態が本人の社会生活にどのような影響を与え、(2)高齢者にはどのような機能障害と潜在的な強みがあり、(3)どのような看護技術を提供することによって、より“その人らしい生活”の実現を支援できるか、ということの理解をはかることにある。そのために、可能なかぎり新しい知見に基づき、論理的な思考過程の展開のもと、学生が習得すべき必要な技術をわかりやすく紹介した。
本書では、あらゆる健康レベルにある老年期の人々を、自らの力を発揮しつつ社会で生活する存在としてとらえている。年齢を重ね、さまざまな心身の機能障害に適応しながら自己実現を希求する人々に対し、看護師は、それぞれが最善の健康状態を保ちながら生活を営み続けられるよう、専門技術を提供して支援する役割をもつ。いわば看護師は、高齢者の生活に視点の基盤を置いて支援する“専門職”であり、その専門性の裏打ちは、看護介入の具体的手段である“看護技術”にあるといえるだろう。看護の核心ともいえる看護技術は、その具体的な過程において、当然、明確な目的と根拠をもって意図的に用いられるべきものである。本書では、看護技術を学ぶにさいして、その専門技術の独自性と全体像を示すとともに、そこから臨床現場で応用することが可能な発展的な理解につなげることができるように、以下の点で工夫している。
本書の特長
1。高齢者の生活機能の視点から考える(第III章):人間の日々の営みを構成する、呼吸、食事、排泄、などの“生活機能”別に項目立てし、加齢にともなう生活機能障害の特徴、その原因(関連する疾患も含める)、そして生活機能の不充足を満たす具体的な看護を、看護過程の展開のなかで紹介している。
2。老年症候群の視点から考える(第IV章):高齢者に特徴的な、起立歩行障害、感覚機能障害、摂食・嚥下障害、などの“老年症候群”別に項目立てし、その原因(疾患を含む)とともに、それらの障害が具体的にどのように高齢者の生活に影響し、また、いかに高齢者自身がセルフケアによって損なわれた生活機能を補いうるか、さらに、それらの理解を前提とする看護が行うべき「予防」または「治療」について、同様に看護過程の展開のなかで紹介している。
3。代表的な疾患について事例を展開する(第V章):事例により、治療や健康レベルに応じた看護技術の展開を示すとともに、高齢者がもつ潜在的な力(強み)へのアセスメントの視点を具体的に記述し、健康状態の維持や予防的な健康行動につながる看護介入の発展性を示している。
4。個々の項目の特徴について:老年期に現れる健康状態について、病態生理と症状による生活機能障害の性質および生活への影響とのつながりを示し、そこから生じる高齢者のニーズと期待される看護の機能および具体的な方法を明示している。具体的には、(1)疫学データを示す:老年期によくみられる症状や重要な疾患について、それぞれの疫学データや関連する施策の動向を示し、高齢者の健康状態について社会レベルでの理解を促す。(2)基本的な病態生理をおさえる:図や写真を活用し、症状や疾患における基本的な病態生理をわかりやすく解説する。(3)看護技術による介入の目的とプロセスを重視する:それぞれの介入技術について根拠とそれによって現れる影響や評価の方法を示し、看護介入の明確な目的性と思考プロセスの重要性を強調する。
世界に類をみない超高齢社会を迎えたわが国において、誰もが幸せに老いることのできる社会の実現に向けて、本書がおおいに活用され、自己実現の大切さが、より多くの学生に伝わることを願っている。
2011年6月
真田弘美
正木治恵